まちカド木属性 作:ミクマ
「今度の土日、俺居ないから」
とある日、葵はシャミ子にそう言った。
「お出かけ……ですか?」
「そうだね。部活の合宿……みたいな」
「葵、部活なんて入ってたんですか?」
「最近ね。ほぼ幽霊部員なんだけど、合宿は付き合ったほうが良いかなって」
「そうなんですか……楽しんできてくださいね」
笑いながら返したシャミ子はその後、少し考える様子を見せる。
「でも……合宿って……少し、憧れるかもしれません」
「……封印弱まって、優子も元気になったし……その内、どこか一緒に行こうか」
「……はい! 楽しみにしていますね」
■
「おはよう風間くん」
そんなこんなで土曜の朝。葵は風間家を訪れていた。
「なんでお前がここに……駅での待ち合わせだろ。つーかここの事誰に聞いた」
「前に柴崎さんから」
「あいつ……」
額に手を当て、堅次は苛ついている様子だ。
「……まあ入れよ」
「お邪魔しまーす」
リビングに案内された葵は、そこにいるメンツを確認する。
桜と南、そして堅次の妹の之江に二人の母だ。
葵はリュックからある物を取りだすと、風間母に近づく。
「風間さん、はじめまして。風間くんの同級生の喬木です。こちら、お土産です」
「あ、どうも。息子がお世話に……」
「土産あるとかどんだけこの家来る気満々だったんだお前!」
「ところで、水上さんと大沢先生はどうしてここに?」
「……駅に行こうとした所で会って、ここでグダグダしてやがるんだよ」
桜はテーブルに突っ伏し、南は扇風機に当たって髪を乾かしているようだ。
そんな二人に堅次はキレる。
「集合時間とっくに過ぎてんだよ!」
そこでインターホンが何度も連打され、堅次は恐る恐る玄関に向かい扉を開ける。
そこには凄まじい視線の芦花と眠そうな千歳。
リビングに入った芦花は、仮部のメンツがグダグダしている姿を見て、珍しくツッコミ役に回る。
「大沢先生と桜に喬木さんまで……皆さんまさか風間さん宅にお泊まりで!?」
「いや……ねぇから」
そう堅次は否定し、芦花は寝不足のテンションで興奮したが、すぐに座布団に突っ伏した。
「いい加減にしろお前ら!」
そんな中、風間母の気遣いでお茶が出され、堅次は二人を寝過ごさせ“アレ”に行くのを諦めさせようとする。
「喬木はアレの事知らねーんだろ?」
「俺は合宿みたいなものとしか聞いてないかな」
「お前それでよく来る気になったな……」
「……風間先輩はアレの重大さが何も分かってないんですね」
「そう、何もわかってないんだ。わかってないんだよ! 何もなっ!」
“アレ”とやらについては顧問の南も知らないらしい。
ただ、仮部が唯一まともにしている部活動、という事のようだ。
部の存続に響くのか、と堅次は南に聞き肯定される。
それを見ていた風間母は堅次の後頭部を引っ叩く。
「アホ。なら迷ってないでさっさと行きなさいよ」
「痛ってーな別に迷ってねーよ!」
「いーや迷ってた、間があった迷ってたね。
いいじゃん正体わからないイベント。
血が騒ぐじゃん。あの子達が楽しみにしてたイベントなんでしょ?
なら絶対面白いって。どうせ行かなかったら家でゴロゴロだろ?
そっちの方が100倍青春してるって、母さんそう思うよ」
沈黙が走る。そしてまず南が口を開く。
「堅次君、いい親御さんを持ったな」
「え? あっ、どうもです。いや普段放任なんですけどね!」
次に桜が。
「ですよね100倍青春。しますよね100倍青春! お母さんの言うとおりです!」
「え? うん……そんな……100倍青春って連呼されると恥ずかしいんだけど!
あと私貴方のお母さん違う!」
そして葵が。
「風間くんのお友達として風間くんと100倍青春してきますね風間さん!」
「初対面の子にそこまで熱く言われるとは思わなかった!」
「いいぞ! 血が騒ぐみたいなアレに!」
「先輩、之江っち。私と一緒に100倍青春しよう!」
「さあ行こう風間くん! 未知の合宿で100倍青春だ!」
怒涛のセリフを聞いた兄妹は顔を反らして赤面している。
そして二人が行く決意をするとアラームが鳴り響き、芦花と千歳が飛び起きた。
「というわけで風間さん! 私と100倍青春しにアレしに行きましょう!
さあ行きましょうすぐ行きましょう青春100倍はすぐそこです!」
「わかったそれ以上言うな! 行くから! 早く出るから!」
風間母が悲鳴を上げる中、仮部の部員たちは出発した。
■
アレとやらは船で行くらしく、葵達はそれに乗っていた。
芦花達が謎の修行をしていると同じ穴のムジナが寄ってくる。
そんな様子を感涙しながら写真を取る少女。
彼女は芦花の妹、つつじである。
堅次とつつじは何か因縁があるようで言い争っていた。
「ああ、噂の妹さんか」
「あん? 何だテメェ……あ! テメェタマちゃんの舎弟じゃねーか!」
「舎弟……?」
妙な単語に葵が困惑しているとまた別の集団。
異様に小物臭い別の学校のゲーム制作部だ。やはり初対面の葵が問う。
「どちら様?」
「ただのザコ共だ。放っておけ」
「ザッ!?」
千歳が切り捨てると、続けて堅次に向かい話す。
船の中にいるアレの参加者を牽制してこいという命令だ。
少し癪な様ではあるが、堅次とついでに芦花は去っていった。
「俺も暇だし適当にぶらついてくるかな」
そう言って葵は部員たちの元を離れ、船内を散策する。
そうする内に人気のない場所に迷い込んだようで、葵は別の場所に行こうかと考えた。
と、そこで誰かの話し声が耳に入る。
「……はい、では手はず通りに」
二人で話していたようだが、すぐに片方の気配は消えた。
もう片方の人物は葵に気がついたようで、近づいてくる。
「あら、貴方も参加者さんでしょうか」
「……ええ」
「そうですか、ではよろしくお願いいたしますわ」
警戒しながらも返事をした葵にそう返す少女。
その語尾はどこか取ってつけた感じだった。
「わたくし、
「……喬木葵です」
お嬢様然、と言った感じの彼女はそう名乗った。
「何でついてくるんです?」
「偶々方向が被っているだけですわ」
時間を潰せたと思った葵は、何故かついて来る妃乃と名乗った少女と共に、部員達の元に戻る事にした。
そこには、芦花と袋を被ってグロッキーな堅次。
そして本物のゲーム制作部部長の高尾に、もう一人謎の少女。
「あら、ハタちゃんですわね」
妃乃と、彼女がハタとよんだ少女はよく見れば、同じ学校制服を着ている。
妃乃によれば、彼女は高不動はたという名前であり、妃乃と同じゲーム制作部らしい。
三人は堅次の被った袋を外そうと、謎の言い争いをしていた。
■
【ようこそ 橋本名選手の冒険離島へ!】
船が泊まり、外に降りると港にはそう書かれた看板が立っており、それを見て仮部の部員たちはテンションを上げている。
どうやら“アレ”とはこう言う名前のイベントのようだ。
未だグロッキーな堅次は之江に担がれている。
先程言い争っていた三人は堅次についてソワソワと誤魔化し、之江に疑われていた。
「フッフッフ。ようこそ橋本名選手の冒険離島へ」
唐突にやってきた、コスプレをした老人がそう言う。
あからさまに言わされてる感満載で之江はツッコみ、更には堅次が息絶え絶えに遅れてツッコみ、共々妹にめんどくさがられていた。
「風間くん大丈夫かな? 妹さん、手伝おうか?」
「あー、大丈夫……っス」
之江に遠慮された葵は今、堅次の分の荷物も持っていた。
そして一行は大会のエントリーの手続きに入る。
「はいは〜い。テンション高いのはわかったからちゃっちゃと受付しちゃってねー」
「あっゲロ子先輩じゃん」
「喬木ィ……あんた相変わらず生意気ね……」
葵がゲロ子と呼んだ、受付のバイトをしている女性。
彼女は一応学校の先輩ではあるが、全く敬われていない。
受付の用紙には自身の属性を書く必要があるようで、そのノリを知らない之江はやはりツッコむ。
仮部の部員達が己の属性を名乗ると、続けて葵も叫ぶ。
「俺は木属性の喬木葵だ!」
「喬木センパイもそのノリやるんすか!?」
その堂々とした自己紹介にモブ達が慄き、兄妹にも注目が集まる。
と、ここで二人に助け舟が出され芦花達が変わりに紹介を始めた。
部員たちの紹介と、之江のツッコミ。勿論葵も乗る。
「風間くんはどんな不利な状況だろうと、必ずそれを覆す策を出す凄い人だよ」
「喬木センパイは兄貴のどこをそんなに評価してるんすか!?」
「つまり、風間さんは我が部に新しい風を舞い込んだ風属性なのです!」
「それって風間って名字から取っただけじゃないっすよね!?」
そして、いつの間にかモブ達の間に名前が浸透していた之江に注目が集まると、彼女は風属性のただの妹と小声で言う。
するとモブ達に妹属性と認識されたことで、先ほどを凌駕するリアクションが帰ってきたのだった。
■
会場への道、森を往く参加者達。
「それで、万願寺さんのところの部員は二人だけ?」
「いいえ、他の子達はちょっと遅れてくるはずですわ」
「ふぅん……」
葵は仮部のメンバーから少し遅れて歩き、妃乃と話していた。
質問にそう返された葵は目を細める。
「何でさっきから俺達の所についてきてるのかな?」
「貴方達、何だか面白そうな雰囲気が漂っていますわ。それも……喬木さんは特に、ですわね」
「……へぇ」
要領を得ない説明に対しての警戒を緩めない葵は、前を見る。
そこには、堅次の反対側の肩を持つ権利をかけて争っている女性達。
色々あって、堅次に怒った之江は兄を置いて走っていき、会場に一番乗りされると思ったモブ達が追いかける。
「……あらあら。喬木さん、どうします?」
「……一応追いかけようかな」
「なら、私もそうすることにしますわ」
追い越さない程度に走り始める葵。
それに特に苦にも思ってないようについてくる妃乃に、葵は少し驚いていた。
そしてたどり着いた会場、そこは倒れた参加者たちで死屍累々といった状況だった。
ステージには極めて怪しい覆面集団。
その集団は大会を乗っ取ったと宣言し、樽の中に橋本さんを閉じ込めているようだ。
「不穏な雰囲気、かな」
「ですわね……フフ」
演出ではなく、本気で戦慄している様子の参加者を見て、之江はついに音を上げ兄に助けを求める。
ようやく復活した堅次が会場にたどり着き、事情を聞いた彼は警察を呼んだ方がいいのではと提案した。
そして沈黙のあとに参加者からのブーイングが響く。
「風間くん、そうじゃないでしょ」
「喬木ィ! お前は比較的まともな方だと思っていたのに!」
「闇の袋欲しがる人間がまともなわけ無いよね……」
「クッ、確かにそうだった!」
「お二人ともそれはどういう意味ですか!?」
なんだかんだあって再び現れた覆面の一人。
その話によれば、橋本さんを助けるには鍵が6つ必要らしい。
ただしモブ参加者の活躍によって既に3つは集まっていたのだが。
やる気になった堅次が、もう一つの鍵をぶん取ろうと覆面を追いかけ始めると、それを見て妃乃が口を開く。
「あの殿方もなかなか面白い人ですわね。喬木さんはどうします?」
明らかに試されていると、そう葵は感じる。
「……いや、ここは風間くんに任せようかな」
「あの殿方の事、信頼してらっしゃるのですわね」
葵が答えると、妃乃はニコリと笑ったのだった。
■
その後、堅次たちは覆面に追いつき4つめの鍵を手に入れたようだ。
道中、ショーン・コネコネ先生と船堀含む料理部と遭遇したらしい。
そして昼。
この大会では食材が配布され、参加者が各々で食事を作るルールだった。
(覆面が乗っ取ったのにこの辺りはそのままなんだな……)
そんなこんなで葵は屋外の炊事場に食材を並べていた。
(まあ昼だし、そこまで重いものじゃなくていいだろうけど……でも体力使うのかな)
葵の目の前にある物は統一性があまりない食材に、沢山のパンと玉ねぎ。
そこに堅次が話しかけてくる。
「お前料理できたんだな」
「毎日の昼の弁当も自作だよ」
「そうなのか。んで、何つくんだ?」
「サンドイッチだね。そこまで重くなくて、足りなければつまみやすい」
葵は堅次に対して食べるかと聞くも、彼は船堀に昼を頼んでいたらしい。
足りなければ来るといい、と堅次を見送った葵はサンドイッチを作り始める。
食材の処理が完了し、いよいよ挟むという場面になった辺りでまた客人。
「手際いいですわね」
「……万願寺さん。自分の所の料理は?」
妃乃の答えは笑顔の沈黙。
「……これ食べるかな?」
「あら、勧めていただけるのならいただきますわ」
(よく言うよ……)
他の部員達が料理をしている方向が騒がしくなってきたので、堅次は食べなさそうだと当たりをつけた葵。
わざとらしい返答だったが、妃乃に完成品を渡すことにした。
「美味しいですわねぇ、うちのシェフにも負けなさそうですわ」
「それはどうも」
(シェフね……やっぱりお嬢様か。……でもそれにしては結構アクティブっぽいけど)
「あっ、そうですわ。お礼にこちらを差し上げますわ」
葵に差し出された物は2つのおにぎりらしき包み。
「作ってないんじゃなかったの?」
「そんな事一度も言ってませんわよ」
「……まあ、いただきます」
それは特に不味いというわけでもなく、普通に食べられるものだった。
育ち盛りの少年らしく葵は軽く平らげ、それを見ていた妃乃は笑っていた。
「ごちそうさま」
「お粗末様でしたわ。……この後、少し付き合っていただきたい用事があるのですが」
「……まぁいいかな。でも、残りのサンドイッチ入れるバスケットか何か借りてくるよ」
船堀等の泊まる民宿に向かった葵はそこで、船堀の料理に部員のカレー、更には芦花の焼いた干物を食べている堅次を見た。流石にきつそうだ。
船堀から望みのそれを借りた葵は待っていた妃乃と合流し、彼女についていく。
たどり着いた場所は島の総合グラウンドで、更にその中のテニスコートに向かう。
妃乃はレンタルの申込みをしていたようで、スムーズに受付を済ませた。
「こんなところまで来て何の用かな?」
「喬木さん、ソフトテニスは出来ます?」
「ルールは一応わかるけど、ほとんど経験はないかな」
葵は、4月に入ってから知り合った友人がそれをやっているのを何度か見た事があったが、自信があるものではない。
妃乃は自身の荷物からラケットを取り出すと、葵にアドバイスを行い諸々の道具をレンタルさせる。
「わたくし、兼業ソフトテニス部なのですわ」
そう言った妃乃はラリーを提案し、葵は乗った。
彼女が合わせているという所もあるだろうが、葵はある程度の知識と何より運動神経は有ったので軽くついていく事が出来ていた。
妃乃はだんだんペースを上げ、それについていく葵に満足そうだ。
そこで余裕が出来てきた葵は気になっていたことを聞く。
「それで、万願寺さん。あなたあの覆面の仲間なんでしょう?」
一瞬硬直し、ボールを落とす妃乃。
続けて不敵な顔になり、葵の方を向く。
「どうしてそう思うのです?」
「色々と怪しすぎるよ。他の部員がずっと見えない事とか、会場で笑ってた事とか」
それを聞いて今度は微笑む妃乃。
「焦らないんだね」
「ええ。わたくしはバレても特に計画に支障はないと、そう思っておりますわ」
「ならあの覆面必要ないんじゃない? すごい追い込まれてたけど」
「甲州ちゃんには可哀想なことをしましたわ」
よよよ、とワザとらしく泣くフリ。甲州、というのが覆面の一人の名前らしい。
妃乃を見て葵は一つため息をつく。
「……まぁ、俺はバラさないでいてあげるよ」
「あら、ありがとうございますわ」
「それで、このテニスが鍵を賭けたゲームなのかな」
「いいえ。これはただ、喬木さんと少し遊びたかっただけですわ。鍵は……そうですわね」
考える様子を見せた後、コートの外に置いた荷物に向かい鍵を取り出すと、葵のもとに戻る。
「明日、わたくしとまた遊んで頂けるならここでお渡し致しますわ」
妃乃は挑発的な口調でそう言った。
葵はそれに一瞬面食らったが、その後微笑する。
「面白いね。でも、ただ貰うだけじゃ面白くない」
葵はそう言うと、今度は自身が荷物からあるものを取り出す。
携帯のストラップだ。
「これ、
「……何ですかコレ? まあいいでしょう、その通りに致しますわ」
葵からそれを受け取ると、妃乃はまた笑った。
「そろそろ戻りましょうか。中々楽しかったですわ。
……ところで、そのラケットの使い心地はどうでしたか?」
「うん? ……ちょっと軽いかな、手応えが足りない感じ」
「そうですか……」
■
テニスコートを後にした葵は、堅次から居場所をメールで聞き海岸に向かった。
そこでは大量の参加者達が遊んでおり、橋本さんを助ける気はなさそうだ。
「喬木お前どこ行ってたんだ?」
「ちょっと腹ごなしに散歩だね」
仮部の部員と高尾は様々な理由で海に入れない様だ。
と。そこで何故か、普段着組と水着組の女子で騎馬戦をする展開になった。
「ふっ、この勝負貰ったですの。
なぜなら、水着というレアアイテムを装着している私は、長時間高レベルプレイヤーみたいなもの!」
水着組のリーダーである高不動はそう宣言した。
「ふっ、レア物の水着を手に入れた所で、しばらく使ったらこれ世界観に合わなくない?
で結局見慣れたすっぴん服に戻ってくるものなのよ。それが私達!」
「なんだかわかんねーけど騙されるな! コイツら一回も水着着てないぞ!」
普段着組の高尾の宣言は風間にツッコまれていた。
そんな意味不明な流れで始まった騎馬戦を眺めていた喬木は、ふと思ったことを隣にいる妃乃に聞こうとした。
「そういえば万願寺さんは水……」
「怨めしい……乳なんて邪魔なだけですわぁ……切り落として差し上げましょうか……」
(大丈夫かこの人……)
怨嗟の声を吐き出す妃乃に葵はドン引きしている。
万願寺妃乃、その胸は絶壁であった。
「……あ、喬木さん。何の話ですわ?」
「……ああ、万願寺さんと高不動さんって口調被……」
「被ってませんわ! ハタちゃんは“ですの”で、わたくしは“ですわ”ですわ!」
葵のもう一つの質問は途中で遮られ、凄まじい勢いで否定された。
そんな中、騎馬戦を継続する高尾と高不動が謎の会話を始める。
「貴方、高尾さんといいますの? ……なるほど道理でこの力。
高尾さんも“高”の系譜を受け継ぐ者……ですが、リミッターの解除の粗さを見るに訓練はしてないようですの」
「系譜!?」「リミッター!?」「いや、それより……」
「“高”ってつく名前、日本全国にたくさんいるんですけど!?」
「俺の“喬木”って同じ意味だけどどういう扱いなんだろうなぁ……」
高不動の言葉にモブと堅次がツッコむ中、葵はそう呟いていた。
激戦の末、騎馬戦の勝者はチーム衣服すっぴん派となり、倒れた高不動から飛んできた何かを拾った堅次は微妙な顔をしていた。
それを堅次は返そうとするも、高不動に押し付けられてしまったようだ。
高不動が去ると、今度は葵が堅次に近づく。
「そうだ風間くん、これ渡しておくよ」
「ッ!? コレ……」
「さっきのも鍵でしょ? 俺も一つ手に入れたんだけど、風間くんが持ってたほうが良さそうかなって」
■
夜、夕飯と風呂を済ませた葵はぶらついていると、何故かずぶ濡れの堅次と遭遇した。
「どうしたのさ風間くん、風邪引くよ?」
「……お前も少し前に風邪引いてたじゃねぇか……」
「まあ、また風呂入ってきたら?」
「……そうする」
堅次が立ち去ろうとした所で、葵は背中からまた声をかける。
「明日何があるか分からないけど、頑張ろうか」
「面倒事は勘弁だがな……」
堅次を見送った葵はまた歩き、今度は妃乃に遭遇する。
「こんばんわ、ですわ」
「こんばんわ。……明日、何をやらせる気なのかな?」
「なんだと思います?」
「常識的な範囲にしてほしいかな……ハァ」
妃乃の微笑みながらの意味深な言葉に、葵は思わずため息をついた。
「ヒノの考えは何時もぶっ飛んでまスゥーの」
「……ん?」
橋本名選手の冒険離島、一日目終了。