まちカド木属性   作:ミクマ

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能力解説回、短い。


他人事じゃないんだよ

「やあ。遅くなったかな」

 

「葵? どうしてここが分かったんですか?」

 

 せいいき桜ヶ丘にある廃工場。

 まぞくと魔法少女の二人がいるこの場所に、多少距離のある別の高校に通っている少年が遅れて到着した。

 

「私が呼んだの」

 

「そうなんですか? ……でもどうして? 飛び道具修行なんですよね?」

 

 これから行う目的に自身の幼馴染が合致すると思わず、なぜ呼ばれたのかと疑問符を浮かべる。

 そんなシャミ子を見た桃が疑いの目を向け、その相手は愛想笑いを返す。

 

「……もしかして、言ってなかったの? 葵」

 

「言ってないってなんの事ですか?」

 

 二人に目を向けられた葵はひと息つき、その身に宿る力を軽く引き出す。

 とはいえ、シャミ子はまだそれを感じ取れないようではあるが。

 

「やっぱり、……変な魔力だね」

 

「えっ……? もしかして葵も、なんですか? 一体いつからそんなファンタジーな存在になってたんですか!?」

 

「ずっと昔から、だね。まあこんな状況にでもならなければワザワザ言うことでもない、と思ってたんだよ」

 

 そう語る葵はまだ何か誤魔化している様子があるも、桃が元の目的を果たそうと急かす。

 シャミ子は説明される過程で妙な形の壁や、輪ゴム鉄砲を奪い詰め寄る桃に怯えると、涙目で葵に助けを求め見つめる。

 

「そもそも魔力って何なんですかぁ。そんなの感じ取れないし出すなんて全然わかりませんよぉ……」

 

「最初は皆そう言うよ。まず形から入ろう」

 

「あおいぃ〜助けてください」

 

「ごめんね……。そうなった以上、身を守れる位にはなったほうがいいかなって俺も考えてるんだよ」

 

「そんなぁ……」

 

 幼馴染が宿敵の側についたことにまぞくは絶望する。

 そんなやり取りを聞き流しながら桃は何かを探している様子で、その目についた物はシャミ子が抱える間抜けな像だった。

 それを求める桃からシャミ子が庇い、その目がさらに湿る。

 そして桃の欲するものを聞いた葵は制止の言葉を発する。

 

「あぁ、的が必要なら作ろうか?」

 

「作る、って……?」

 

 葵は懐のカバンからあるものを取り出して、シャミ子達に見せる。

 

「爪楊枝……? 葵、それいつも沢山持ってますけど……。それがどうかしたんですか?」

 

「よく見ててね。魔力弾とは違うけど、何かヒントになるかもしれない」

 

 パッケージから一本を取り出して持ち、葵が集中を始めると、どこからかメキメキと音が鳴る。

 それは言うまでもなくその爪楊枝からのもので、僅かな間の後葵の手のひらの上に邪神像と同程度の高さの、元をそのまま大きくした様な形のオブジェが乗っていた。

 目を丸くするシャミ子に対して、桃は冷静に分析する。

 

「なるほど。あの噂はこういう事だったんだね」

 

「そう、これが俺の武器。煮沸されたような植物でも強制的に成長させることができる。携帯性とコスト的に使いやすいんだ」

 

「ちょっと見せてもらってもいいかな、それ」

 

 その申し出を特に否定せずに渡し、眺める桃を更に眺める葵。

 そして未だ呆けるシャミ子に目をやった。

 

「優子、大丈夫か?」

 

「……はっ! えっと、今日だけで衝撃の事実が多すぎてちょっと……」

 

「ただの木って訳じゃないみたいだね、これ。でも、コストとか気にするなら普通の魔力弾の方がいいんじゃない?」

 

「ああ……。実を言うと、魔力を直接放出して発射とかはあんま得意じゃないんだよね。だから今日役に立てるかどうかは正直微妙かなって」

 

「ふぅん……。まああなたがいてくれたらシャミ子は逃げないだろうし、修行を始めようか。シャミ子、これ持って集中してみてくれる?」

 

 あからさまに正義な雰囲気の杖を押し付けられたシャミ子は、凄い表情をしながらも渋々言葉に従い、気を張り始める。

 無意識に動いているらしいしっぽに持ち上げられるスカートを桃が抑えている様子が見に入り、葵は思わず赤面して目をそらす。

 

「今夜はガッツリしたものが食べたい!」

 

「そういうのじゃない。……葵、どうかしたの?」

 

「ああ、いや、なんでもないよ。……ご飯、家に連絡しとこうか? 優子」

 

 桃は話題をそらす葵を不審に思うも、それよりも更に顔を真っ赤にしているシャミ子にフォローを入れる。

 魔力開放について解説しているうちに出た、エコーの聞こえそうな気合の入った桃のキーワードを聞いて、シャミ子は困惑した後に目を輝かせる。

 

「見てみたいです、『フレッシュピーチハートシャワー』。これ使って、使って」

 

「見せたくない」

 

「えぇ〜。じゃあ葵は……」

 

「俺、残念ながらそういうのないから」

 

 桃は少し照れた様子で解説を続ける。

 

「魔族として覚醒したなら技っぽいもの一つや二つ持ってるはずだし、……だからこそ暴発しないように監視してたわけだし」

 

「えっ。監視してたんですか!?」

 

「ここ一週間ぐらい感じてたあの気配、やっぱ桃だったのか」

 

「……そこは引っかからなくていい」

 

 その後、何故か気合を入れてファミレスの名前を連呼するシャミ子と、それに突っ込む桃を見て葵は口を抑えて密かに笑う。

「おばか!」とシャミ子に説教を始めた桃を葵は執り成そうとする。

 

「シャミ子もそんなに悪い子じゃないのにっ……!」

 

「まあまあ、優子はすっごくいい子だから」

 

「えっ、うん……。まあそこはよくわかるけど……。って論点がおかしい! まぞくってだけで問答無用な人に会ったら、一瞬でじっくりぐつぐつ煮込まれるかもしれないんだよ! だから……!」

 

「にこまれる! ……ところでさっきおばかって言ってませんでしたか!?」

 

「言ってないよ! おばか!」

 

 そんな心の底から必死そうな桃を見て葵は思わず笑みをこぼす。

 

(さすがは桜さんの妹だな……)

 

「葵! 何笑ってるの!? あなたにとっても他人事じゃないんだよ!」

 

 

 なんだかんだあって修行を再開し、日没直前まで妙な文言を立て続けに出したシャミ子はそこでようやく、とても小さな魔力塊の放出に成功したのだった。

 しかしそれは主の元に戻ろうとし、桃から当たるとどうなるか聞いたシャミ子は今度こそ逃げ出した。

 

(結局この的使わなかったな……。まぁ一応回収しとこう)

 

 それをカバンにしまい廃工場を一度眺めると、シャミ子に付いていく桃を見て自身も追いかける。

 涙目で必死に走るシャミ子を見ながら、桃が薄らに笑みを浮かべていることに葵は気がつく。

 

「……皆が仲良くなりますように、だっけ」

 

(……! ……本当に、とっても優しい子だよ……)

 

 せいいき桜ヶ丘に、自ら出したそれに追いつかれてしまったまぞくの悲鳴が響いた。

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