まちカド木属性   作:ミクマ

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ここまで出来るようになったんだね

 翌日。

 桃達はシャミ子が10年前の事を思い出せないかと、あれやこれやと講じるもやはり無理なようだ。

 そんな中、葵は案の定落ち込んでいた。

 

「……葵。コアの動物形態、知らなかったんでしょ? 私も知らなかったんだし、仕方ないよ」

 

「あぁ……」

 

「葵……」

 

 桃が励ましの言葉をかけるも、葵は今回こそ立ち直れなさそうな様子だ。

 どんな言葉をかけるべきか、桃はそう悩んでいるのだが答えは出ない。

 その間もシャミ子は記憶を探っていたが、リリスがある提案を出す。

 

「ここはシャミ子の力を使うと良いかもしれん。

 ……でもこれまぞく的には部外秘だから、桃とミカンの前では説明したくなぁい。

 ……あ、でも葵には説明しても良いぞ」

 

 リリスが冗談めかしてそう言うと、空気が凍ってしまった。

 葵は反応をせず、変わらずうつむいている。

 

「……リリスさん」

 

 桃にジト目で見られた邪神像はその身を縮こまらせていた。

 何だかんだあり、よりしろに移ったリリスは説明を始める。

 リリスの一族の能力、それは生物に限らず“あらゆる有情非情の無意識に侵入する能力”であるらしい。

 そして侵入した上で、そこにある知識などを覗いたり改ざんが出来る、とのことだ。

 

「よくよく考えなくても凄い力ですね、それ」

 

「そうだろう? もっと余を崇めるが良い」

 

「別にリリス様を讃えてるわけじゃないです」

 

「なにを〜!?」

 

 しかし、シャミ子はそれを聞いてもよく理解は出来てはいない様だが。

 とにかく、シャミ子の力をシャミ子自身に使うことで、10年前の記憶を見ることが出来る……かも、しれない。

 夢の中に入れるのはシャミ子とリリスのみの様で、説明をある程度理解したらしいシャミ子は張り切りだした。

 

「私、小さいころの記憶あまり無いので見てみたいです」

 

「優子、ちょっと待った。手を出してくれないかな」

 

「はい……?」

 

 そう言われたシャミ子は手を出し、葵はそれを握り集中を始める。

 

「これって……」

 

「前、桃にやった魔力の譲渡だね。まぞくにも出来るみたいで安心した。

 夢の中にはついて行けないけれど、これ位だけでもサポートさせて欲しい」

 

「葵……ありがとうごさいます!」

 

「気をつけて……いや、頑張ってね。優子」

 

「はい!」

 

 そうしてシャミ子は葵の手を握ったままソファに寝転がり、目を閉じる。

 手だけでは無く、シャミ子は無意識にしっぽも葵の腕に絡ませており、それを見た葵は言葉には出さないが信頼の証と受け取り微笑む。

 しばらくすると、シャミ子は無事記憶の中に入れたとリリスが言う。

 

「葵のおかげでシャミ子は調子が良い様だ。シャミ子も感謝しているぞ」

 

「……どういたしまして。そう伝えてください」

 

 葵の力をシャミ子の魔力に染め譲渡する行為は、それなりに集中力がいる。

 相手の色に染めぬまま渡せば、逆に葵の色に染めてしまう。

 逆に相手の魔力が葵に逆流する可能性もある。

 具体的にどうなるのか、それを実験する訳にも行かない為、葵は細心の注意を払っている。

 

「……葵、何か分かったりする?」

 

「うーん……音だけでも聞こえたりしないかなと思ったけど、無理かな。

 でも、優子の……何て言うのかな。魂? みたいなものが不思議な動きをしてる……かも。

 例えが思いつかないけれど、優子が頑張ってることは分かるかな」

 

「そうなんだ……」

 

 桃にそう語る葵はわずかに笑顔をこぼしている。

 シャミ子がそれだけ強くなっていることが分かり、葵は嬉しいのだ。

 

 ■

 

「優子……? 優子っ!?」

 

 葵は叫ぶ。それに何の意味もないと分かっていても。

 

「葵? どうしたの?」

 

 葵は唇を噛み、代わりにリリスが説明をする。

 

「……シャミ子を、見失った」

 

「……俺も、さっき言った魂みたいなものを感じ取れない。魔力自体は渡せているけれど……」

 

「ノイズが……本人も忘れていた、いやな記憶が大量に出てきたのだ。想定外だった」

 

 リリス曰く、シャミ子は自らの心の深部でしばらく迷子になり、数日眠ることになる。

 そしてその間“嫌な記憶”に追われるらしい。

 それの説明がされている間にも葵は試行錯誤をするが、結果は出ない。

 

「駄目だ……」

 

「葵……」

 

「……俺が大量に力を流し込めば、何かしら掘り起こせるかもしれないけど……。

 それこそ、優子にどんな影響が出るかわからない」

 

「……やっぱり、やらせるべきじゃなかった。迎えに行く方法を考えよう」

 

「余だって助けたいのだ! だが捜索の手間とコストを考えると……」

 

「だとしても! 断固助けに行きたい!」

 

 桃は心の底から叫び、そして戸惑いながらも言葉を続ける。

 

「……私。わけわからないこと言ってると思うんだけど、以前シャミ子に夢の中で助けられたことがある……気がする。

 だから効率が悪くても、根拠が希薄でも、あの子をこの状況で放って置きたくない。

 なんとかして、リリスさん」

 

「むぅ……とりあえずは、葵。そのまま魔力を流し続けてくれ。

 シャミ子が葵の力を借り、自分自身で現状を打破するかもしれない」

 

「それは、もちろん。俺に出来ることならば……何でも」

 

 リリスの言葉を聞いた葵は集中を続けるが、その顔は暗かった。

 

 ■

 

 シャミ子の記憶の中。

 病院の廊下のようなそこをシャミ子は歩いている。

 

「どどどうしよう、どうすれば!?」

 

──……子? 優子っ!?──

 

「……この声、葵? ……葵、私の声聞こえませんか?」

 

 返事は無い。

 しかし幼馴染の声を聞いたことで、シャミ子は多少の落ち着きを取り戻した。

 そしてシャミ子は思い出す。

 

「葵の魔力を貰ってるんでしたよね……何だか、暖かいものに包まれてるような感じです」

 

「……君、いい武器を持ってるよね? おとーさんの杖」

 

「こ、これ?」

 

 そこで、葵とは別の声が虚空から響く。

 それがどこから聞こえているのかシャミ子は考えず、とりあえずはその声に従う。

 

「ここは君のフィールドだし、いい感じに変形できると思うよ。

 それに葵くんの力があるから、とんでもなくずるい武器に変えられるはず。

 それであいつらをやっつけちゃおうよ」

 

 ■

 

「ッ……!?」

 

「葵!? どうしたの!?」

 

 葵の漏らした声に桃は取り乱す。

 

「……大丈夫。一瞬だけど、優子の気配が感じられた。優子は今も頑張ってるんだ」

 

「そう……なの?」

 

「それよりも……」

 

 シャミ子の手を両手で握り、祈るように集中をしていた葵だが、そこで目を開いて桃を見る。

 葵に見つめられた桃は多少驚いてはいたが、すぐに切り替える。

 

「……うん。シャミ子を助ける方法を考えるよ。

 ここで悪夢の中にシャミ子を放置したら私、今後この子の顔をまともに見られなくなると思う。

 それは……嫌だから」

 

 桃はそう言うが、封印中のリリスではシャミ子を助け出すことは出来ないらしい。

 それを聞いた桃はフレッシュピーチハートロッドを構えて腕に添え、三人に止められる。

 葵は片手をシャミ子から放し、杖を持つ桃の左手首を押さえていた。

 

「それはダメだ! 桃が消えたりしたら本末転倒だろう!?」

 

「そもそも若造ひとりの生き血で古代の封印の全解除はムリだ! 別な方法を考えるぞ」

 

「……わかった」

 

 桃の言葉を聞いた葵はシャミ子に手を戻し、リリスは説明を続ける。

 迷子のシャミ子を見つけるためには、夢の中で動ける探索役が必要らしい。

 その探索役に向いているのは魔力が強く、そしてシャミ子と魂のチャンネルが近い存在でないといけないようだ。

 

「……ひらめいた」

 

「……桃?」

 

「葵、シャミ子の事背負いながら魔力渡せる? 運べるならおんぶ以外でもいいけど」

 

「……?」

 

 桃のその問いに葵は脳内で試行錯誤を始める。

 

「……いける、はず。でもどこに行くの?」

 

「小倉さんのラボ……移動しながら説明する。とにかく背負ってみて」

 

「わかった……」

 

 桃のその言葉に葵は従い、譲渡を途切れさせないよう注意しながらもシャミ子を背負い、そして部屋を出る。

 背にかかる重み。ここ数ヶ月ほどしていなかった行為だ。

 今も巻き付いているシャミ子の長いしっぽは、その数ヶ月前には無かった感覚。

 少し前まででは考えられなかった程に、シャミ子からは生命の重みを感じられた。

 桜が丘高校に向かい走る中、葵はまたもシャミ子の気配が大きくなるのを感じる。

 しかし、それだけでは葵の不安は拭いきれなかった。

 

「私が闇落ちすれば、シャミ子の夢に入れるかも知れない」

 

 たどり着いたしおんの部室。

 葵は数日前に高校の中に入るのを躊躇ったが、流石に今度は立ち止まったりはしなかった。

 そして始まった桃の説明には、リリスですら困惑を隠せないようだ。

 

「そんな方法が……しかし本当にできるのか……?」

 

「たしかに一か八かだけど……皆の協力があれば、なんとかなるかもしれない」

 

 桃は既に覚悟を決めたらしい。

 そしてそんな様子を見た葵が声を上げる。

 

「リリス様! ……俺も、闇落ちすることは出来ませんか?」

 

「む……? 葵が……か? むぅ……。

 魔法少女の闇落ちでも、夢に潜れるという確証は余にもないのだ……。

 ましてや葵は特殊だ……」

 

 リリスは考えを教えていたが、それを桃が静止する。

 

「出来るにしろ出来ないにしろ、ここは私に任せて欲しい」

 

「どうして……っ!」

 

「葵の光にも闇にも染まる力は、きっとこの先にも役に立ってくれる。

 それを闇だけに染めるのは、駄目」

 

「く……ぐっ……」

 

「でも、もし桃が戻れなかったらその後は……」

 

「分かってる」

 

 声にならない声しか上げられない葵。

 その代わりにミカンが桃を心配する言葉をかけるが、やはり桃の意志は硬い。

 

「姉のコアを見つけて取り戻したいとか……そのためにこの町を守るとか。

 今だって諦めてないけど……でも、それより大事にしたいものが出来たから。

 ……やれるだけやってみる」

 

「桃……分かった……桃にも、魔力を渡す」

 

「二人同時に出来るの?」

 

 決意の言葉を聞き、葵はそれを後押しすることに決めた。

 桃に問われると、葵は胸に手を当て大きく息を吐く。

 ……次の瞬間。

 葵から溢れる力が跳ね上がり、それを感じ取った周囲の者は驚愕し、しおんはカメラを連射していた。

 

「俺の奥の手。魔力譲渡との併用は初めてだけど……問題ない。

 闇落ちによる弱体化は避けられないけれど、その後のベストコンディションは維持し続けられるはず」

 

 葵はシャミ子を寝かせ、片手を桃に差し出すと握り返される。

 

「お願い」

 

「……行くよ」

 

 葵は力を流し込み始め、桃のコアの力を感じ取る。

 そしてしばらくの後。

 

「……優子を、頼んだ……っ」

 

 ■

 

 桃による救出はつつがなく完了し、葵はシャミ子の魂を再び感じ取れるようになった。

 起きたシャミ子に、リリスが闇落ちについての説明をしていると、よりしろが自らの喉を突く。

 

「……おはよう」

 

「桃、おかえり……」

 

「葵、ありがとう。助かったよ」

 

「どういたしまして……」

 

 起きて礼を言う桃に葵はそう返すも、元気がないようだ。

 そこで葵は桃とシャミ子の手を離し、自らの力を解除した。

 そしてミカンが変身し、立ち上がった桃にクロスボウを向ける。

 しおんによれば、桃を光の側に引き戻すために光の魔力をぶちこむ必要があるらしい。

 

「多少無理してでも……今は戻ったほうがいい」

 

「……分かりました」

 

 シャミ子は桃から離れ、それを見たミカンは矢を発射する。

 桃はどうにか光の側に戻れたようだ。

 その間、葵は座ったままだったが、ミカンの一言で正気を取り戻す。

 

「……それはそうと、壮絶な緊張を強いられたので呪いがもうダメです」

 

 ……シャミ子を背負っていた葵は楊枝を入れたカバンを持たず、ポケットや服の裏に仕込んだ物もフラついたせいで間に合わなかった。

 

「……あ、ダメだこれ」

 

 呪いが大規模に発動し、しおんの部室は崩壊した。

 

 ■

 

 その日は各々休むことになり、そして翌日。

 葵はせいいき記念病院の前で、ある病室の窓を見つめていた。

 

「葵」

 

「……」

 

 そこに声をかけたのはシャミ子と桃。

 葵は沈黙したまま、ゆっくりと顔を二人に向けた。

 

「お話、しましょう」

 

「……場所を変えようか」

 

 三人が向かったのは桜の樹が生えた高台の公園。

 葵は柵の外を向き、二人に顔を向けず話し出す。

 

「俺は今回……いや、10年前から何の役にも立っていない」

 

「そんなこと……」

 

「俺は今まで、何一つ情報を掴めていなかった。

 優子がまぞくになってから沢山の事がわかったけれど、俺は……」

 

「他のことを沢山頑張っていたじゃないですか! 

 勉強して、おかーさんから料理を教わって、私たちのことを助けてくれました!」

 

 葵はまだ外側を向いている。

 

「俺は……本当に優子達の事を助けられていたのか?

 俺が居なくても、良ちゃんは勉強が出来ただろう。

 俺が居ても、優子の病気をどうにか出来た訳じゃない。

 そもそも、俺が居ること自体が清子さんの負担になっているんじゃないのか?」

 

「違います!」

 

 葵はシャミ子に否定されるも、話を止めない。

 

「今回だってそうだ。俺が居なくても、桃は優子を助けられただろう。

 ミカンもリリス様も小倉さんも、大切な役割が有った。だけど俺は必須じゃない。

 そもそも、俺が何か情報を掴んでいれば……優子が記憶を探る必要もなかった。だから……」

 

「葵!」

 

 そこまで葵が言うと、シャミ子に胴にしっぽを巻かれながら抱きしめられ、桃には手を握られる。

 

「そんな事、言わないで……」

 

「……」

 

「葵、こっちを向いてください」

 

 シャミ子と桃は二人がかりで葵の向きを変え、そして話し出す。

 

「私たちには、葵が必要なの。それは葵自身にも否定なんかさせない」

 

「何度も言っていますけれど、私は葵が居てくれるだけで嬉しいんです! 

 葵が居なくなったりしたら嫌なんです! 

 それはおかーさんも良も、桃も皆も同じはずです。

 葵も、皆がそうだって分かってますよね?」

 

 葵は何も言わず、柵に寄り掛かりうつむく。

 

「それに今回のことだって、間違いなく葵にしか出来ないことが有った」

 

「え……?」

 

「私が夢の中で迷子になっていた時も、葵の事が感じられた……。

 それに1回だけでしたけど、葵の声が聞こえたんです。

 だから桃が助けに来るまで、私は凄く安心できました」

 

「私も……闇落ちなんて初めての経験だったけど、不安はなかったよ。

 何でか分かる?」

 

 シャミ子の言葉と、桃の問い。

 それを聞いてようやく、葵は顔を上げる。

 

「葵が魔力を渡してくれたから。

 だから、魔力を使い果たして消えるなんてことが絶対に無いって、そう思えた。

 葵がいてくれたから、私も凄く安心してシャミ子を助けに行けた」

 

「……でも、俺が情報を得ていれば記憶を探る必要も、優子にも桃にも負担をかける事も無かったかもしれない……」

 

「……葵。私が夢の中に行かなかったら、絶対に分からなかった事があります」

 

「……?」

 

 葵にとって、否。誰にとっても衝撃の事実。

 今回の一件で掴んだソレをシャミ子が話す。

 

「な……に、それ……」

 

 シャミ子は記憶の中で千代田桜に遭遇し、そして話した。

 彼女の助けを借り、10年前の真実を見た。

 千代田桜はコアとなり、シャミ子の命を今この瞬間も支えている。

 シャミ子の中にあるコアは、シャミ子が強くなれば……取り出せる。

 それを聞いた葵は崩れ落ちた。

 

「桜さんが……」

 

「私が強くなれば、また桜さんに会えるんです。

 でも、私ひとりじゃ無理なんです。

 桃が、皆が……葵が居てくれないとダメなんです」

 

「優、子……」

 

「シャミ子は、姉に町を守ってって頼まれたんだって。

 私はシャミ子を手伝う。葵はどうするの?」

 

「桃……」

 

 二人の言葉を聞き、葵は悩む様な表情を見せる。

 

「……二人に、聞いて欲しい話がある。……俺が、この体質になった時の話」

 

 ■

 

 記憶の中。シャミ子と桜の会話。

 

「もう一つ、葵くんの事なんだけれど……」

 

「葵も……桜さんが助けたんですよね?」

 

「そうだね……」

 

 桜はそこで言葉を切り、周囲を見渡す。

 

「この領域、葵くんの力で満ちてる。それに、さっきのずるい武器もそう。

 葵くん、ここまで出来るようになったんだね」

 

「葵の力……」

 

「私が葵くんに教えたのは、日々を平穏に過ごせるようにする為のもの。

 戦いの為のものは教えてない。ここまで鍛えたのは葵くん自身。

 葵くんが戦いに身を投じる可能性もあるとは思っていたけど……。

 その決意を固めたのは……」

 

「……?」

 

 桜に見つめられるも、シャミ子は疑問符を浮かべている。

 

「葵の力ってなんなんですか? 葵に……何があったんですか?」

 

 シャミ子の問いに、桜は顎に手を当て考える素振りをする。

 

「それは……葵くん本人から聞いたほうがいいかな」

 

「でも……葵が話してくれるかどうか……」

 

「きっと、まっすぐ聞けば話してくれるよ。

 葵くんは、アレをずっと抱え込んで苦しんでいる。

 私から伝えたのはヨシュアさんと、清子さん。

 でも……葵くんの心を解きほぐせるのは、優子ちゃんだけ」

 

「そんな……おかーさんにもできないのに、私じゃ無理です」

 

「ううん、優子ちゃんにしか出来ない。

 優子ちゃんに会う前の葵くんって、今とは全然違かったの。

 変わったのは、優子ちゃんに会ってから。

 葵くんを変えられるのは、あなただけ」

 

「でも……」

 

 自身のなさそうなシャミ子に、桜は一つのアドバイスをする。

 

「葵くんって、桃ちゃんに似てるところが多いんだ。

 桃ちゃんを変えられた優子ちゃんなら、葵くんも変えられるよ」

 

「私が、桃を変えた……?」

 

「今の桃ちゃんにとっての大切なものは、葵くんと同じ」

 

「それは……桜さんなのでは……?」

 

「ううん。優子ちゃんに自覚はなくても、それに一番近いのは優子ちゃんなんだよ。

 あなたならきっとできる。だから、葵くんを──」

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