まちカド木属性   作:ミクマ

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結構意地悪なんだね

「良ちゃん。やっぱりいた」

 

「あっ、お兄」

 

 街の図書館、学校の授業を終えた葵は朝に決めた待ち合わせの前にそこに立ち寄っていた。

 シャミ子の妹である良子がいつもの様にいるのではないかと、当たりをつけていたのだ。

 葵は目の前で開かれている分厚い本を見て問いかける。

 

「それ借りるのかな? 持つよ。カバンもね」

 

「ありがとう、お兄」

 

「そろそろ時間だし、行こうか」

 

「うん」

 

 ■

 

「あれっ? 桃、どうしたんだ?」

 

「桃……さん?」

 

 シャミ子との待ち合わせの場所である商店街、そこについた葵は予想していなかった人物を見て疑問符を浮かべた。

 呼ばれた名を聞いた良子は復唱し、やはり同じように問う。

 

「えっと、この子は親友の桃ちゃんです」

 

 シャミ子は少し慌てた様子でそう答え、隣の桃は言葉で表せないような表情を浮かべた。

 二人の様子を見た葵は思わず吹き出しそうになるも、良子にはその後ろに立っていた故にバレることは無く、振り返る頃には普通の表情に戻っていた。

 

「それで二人はどうして一緒に?」

 

「図書館で宿題してて、お兄が迎えに来てくれたの」

 

「良は勉強できますからね! 葵、ありがとうごさいます」

 

 姉妹が先を歩き出し、それに後ろからついていく桃に葵は小声で話しかける。

 

「それで、どういう事なの?」

 

「正体隠してほしいんだって、話大盛りにしちゃったみたいで」

 

「あぁ……」

 

 姉妹の家での調子を思い浮かべた葵は深く納得する。

 しかし同時に、隠さなくても別に良子の態度が変わったりはしないだろうと考えるものの、当人達の問題だろうとそれを引っ込める事にした。

 

「今日はですね〜、初めてのバイト代で良子にプレゼントしちゃいます!」

 

 そうシャミ子は胸を張って良子にそう言うが、小学生とは思えぬ気遣いによって却下されてしまう。

 

「そんなこと言っちゃだめですよ! なんでも選んで」

 

(おや?)

 

「……じゃあ包帯と家庭の医学」

 

「おねーちゃん怪我しませんから! 衛生兵にならなくていいんですよ!」

 

(しそうだけどなぁ……。いやそれよりさっきのは……)

 

 内心ツッコミを入れつつも、シャミ子と話している良子の顔が僅かに横を向いたように見え、振り返ってその場所を確認する。

 

(あの店は……)

 

 ■

 

 商店街を巡るうちに立ち寄った書店で、分厚い兵法書を手に取る姉妹が繰り広げる漫才を聞きつつ、葵は桃が何かの本を真剣な目で眺めている事に気がつく。

 

「桃?」

 

「ッ! あ……葵……」

 

 葵が後ろから声をかけると、桃はビクリと背を伸ばして立ち読みしていた本を閉じ、後ろ手に本を陳列に戻しながら振り返った。

 

「……見てた?」

 

「立ち読みしてたこと? 中身は見てないよ」

 

「……そう」

 

 安堵した様子でシャミ子達の方を見る桃に、葵は背後から声をかける。

 

「ハンバーグ。楽しみにしてるみたいだよ、優子」

 

「……あなた、結構意地悪なんだね……」

 

 姉妹の元に歩いていく桃を横目に、先ほど良子が取っていた本のある棚にこっそり向かう。

 葵はこの本なら買われる心配はないだろうと考えつつ、値段を確認していた。

 

(こっちも割と興味ありそう……。まあ財布的に問題はないけど、今日はあっちを優子に買ってもらった方がいいよね)

 

 書店を出て、来た道を戻り始めた所で桃が葵に声をかけた。

 

「気づいてる?」

 

「あぁ、うん。……優子から言ってもらったほうが良さそうかな」

 

 良子の望む物が分からず、ひじきの袋を持ちながら不安気な顔をするシャミ子を呼び、その店を指差して伝える。

 

「ちっちゃいカメラ……。といかめら? 良、これが欲しいんですか?」

 

 葵としてはそれとなく提案してもらうつもりだったのだが、かなり直球な言葉でシャミ子は良子に向かってそう聞いた。

 ただ、むしろそれが良かったのか素直な気持ちを表に出してもらう事ができ、シャミ子はごきげんな様子だ。

 

「どう? 半分出そうか?」

 

「いえ、今日は私からのプレゼントですから」

 

 小声でのその会話の後、シャミ子が本人的には威厳があると思っているムーブで良子に語りかける。

 

「お姉……ありがとう……」

 

 涙をポロポロとこぼしながら礼を言う妹に困惑し、続いて明かされた事実に驚愕する。

 

「だってお姉最近無理してるとき、しっぽがしなしなになるからわかりやすい……」

 

「わかるわかる」

 

「えっそうなんですか!?」

 

「……気づいてなかったんだ」

 

 ■

 

「はい、これで大丈夫」

 

「ありがとう、お兄。……あと、さっきの桃さんとの事も」

 

 ベンチに座りながらカメラのセットアップを終え、説明書を読んでいる良子に渡した葵はそう礼を言われた。

 それを聞いた葵は前を向き、そこで話しているシャミ子と桃を見て微笑みながら言葉を返す。

 

「どういたしまして。でも、今日こう出来た一番の理由はやっぱり、優子がプレゼントをするって言い出したからだよ」

 

「……お兄はいつも、良もお姉の事も見守ってて助けてくれてる」

 

「俺も、二人にはずっと助けられ続けてるんだよ。もちろん、清子さんにもね」

 

「そう……なのかな。でも、いつかお礼したいな……」

 

「うん、楽しみにしているよ」

 

 夕暮れの中、その健気な言葉に葵は心を弾ませていた。

 

 ■

 

「次は、お兄一人で撮らせてほしい」

 

 良子の希望で撮られた、最初のツーショットと次のスリーショットを見て葵は、今日の一件があって本当に良かったと心の底から喜んでいると、次の提案が出された。

 葵は一人ならと、茶目っ気で大きめのポーズをして撮ってもらうが良子は微妙な顔をしていた。

 

「えっと……お兄……」

 

「うん……? あっ……フフッ」

 

 見せられた三枚目の写真、それは夕日により思いっきり逆光となっていたのだった。

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