まちカド木属性   作:ミクマ

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賭けに乗ってみる気はあるかな

「葵〜? いますか〜?」

 

 家にいた葵は、玄関からのその声に従いそこに向かう。

 そこにはシャミ子の他に白澤とリコが立っており、それを疑問には思ったものの、葵は三人を中に通す。

 

「それで……どうしたんですか?」

 

「実はだね……」

 

 白澤達はあの店舗を追い出されてしまったらしく、ばんだ荘の一階に移転を検討しているとのことだ。

 

「……俺の監督責任ですね」

 

「葵クンのせいではないよ。気にしないでくれたまえ」

 

「……」

 

 ウガルルのよりしろを強靭にしたのは、紛れもなく葵である。

 作ったらハイおしまい、というのは絶対に許されないだろう。

 軽く落ち込む葵だったが、それに構う様子もなくリコが声をかける。

 

「ほんでな〜? 新生“あすら”は本格的に、葵はんにもキッチン協力して貰いたいんよ」

 

 旧“あすら”が営業中だった頃、葵は既にキッチンに入っては居たのだが、それはあくまでリコの助手と言った所だった。

 

「葵はんも、もうウチの助け無しで調理入れるやろうから〜」

 

「ええ、もちろんお手伝いしますよ。

 ……ただ、ばんだ荘のキッチンでそこまで一度に調理できますかね」

 

「その辺はうまいこと調整するわ〜」

 

 リコはそこで意味深に笑い、そして喬木家のキッチンをみる。

 

「……リコ君、やめたまえ。衛生法とか色々うるさいのだ」

 

「え〜、いけず〜」

 

「……冷蔵庫ぐらいなら貸しますよ」

 

「葵はんやさし〜わぁ。通年無料食券あげる〜」

 

 そうして一応の話は付き、白澤達は諸々の把握の為、あえて葵を連れず部屋に戻っていった。

 なんとなく嫌な予感のした葵だが、とりあえずは魔力料理の為の反復的な復習を一人で行うことにする。

 

「……ん?」

 

 しばらくの後、葵はばんだ荘が騒がしくなるのを感じる。

 多少の予想はしていたが、葵が思っていたよりも騒々しかったので外に出ると、外廊下にはばんだ荘の住人達が集っていた。

 あからさまに面倒そうな顔の桃を発見し、葵は心臓がキュッとなってしまう。

 

「……桃」

 

「葵……」

 

 階段を登った葵が声をかけると、桃は少し疲れたような声で名前を呼び返した。

 

「色々と……大丈夫かな、桃」

 

「シャミ子がボスとしての仕事をしただけだし、少しくらい問題ないよ。……それに」

 

 そこで桃は沈黙し、それに葵は首を傾げていたのだが、しばらくすると桃は顔を反らした上で口を開く。

 

「……それに、どうしてもうるさかったら……葵の家にいる」

 

「桃……」

 

「……だめかな」

 

 そんな懇願に葵は軽く呆けていたが、すぐに満面の笑みになる。

 

「……大丈夫。いつでも来て欲しい」

 

「……うん」

 

 ■

 

「……ここも、だんだん賑やかに……もどっ……てきたな……?」

 

 葵は呟く途中、謎の頭痛に襲われていた。

 隣に居るシャミ子に悟られないよう、その言葉は言い切ったのだが、口をついたそれに自分自身でも困惑している。

 

「おかーさんも似たような事言ってましたよ。葵、昔のここの事覚えてるんですか?」

 

「……どうだったかな……結構住んでた……はず」

 

 顎に手を当て、首を傾げる葵。

 葵の過去の記憶は曖昧なところも多い。

 もしかしたら、忘れているという事実さえ忘れているのかもしれない。

 “なっちゃん”との思い出がいい例である。

 

(……でも、それとはなんとなく……違うような)

 

 そんな考えごとをしつつも、葵はあすらの開店準備を手伝う。

 葵はホール側とキッチン側を往復し、複数の作業を並行していた。

 

「葵は〜ん。手ぇ止まっとるよ〜」

 

「あぁ……ごめんなさい」

 

 ばんだ荘のキッチンは狭く、案の定と言うべきか少々面倒なところも有る。

 とはいえ、葵にとっては長年上階で慣れ親しんだ物であり、リコは様々な調理場を転々としてきた経験故か、二人ともすぐに適応していった。

 

「や、葵。制服似合ってるね〜」

 

「杏里……まだ準備だし、制服の必要も本当はないんだけどね」

 

 いつの間にか訪れていた杏里は、開店祝いの花束を持っていた。

 

「シャミ子から葵も料理作るって聞いたよ。

 この前のキャンプ飯美味しかったし、通っちゃおっかな〜」

 

「フフ……お待ちしております」

 

 一応お客様であるが故に、葵はそう敬語で返したのだが、杏里はニヤニヤとした表情になる。

 

「う〜ん……葵の敬語、結構違和感有るなぁ」

 

「優子達の入学式の頃からしばらくはこんな感じだったでしょ?」

 

「そうじゃなくてさぁ〜」

 

 杏里はわざとらしく肩をすくめるも、葵はその理由に心当たりがない。

 

「ま、いっか。頑張ってね〜」

 

 そう言って杏里は、いたずらっぽい笑顔を見せた後にウインクをし、そして帰っていった。

 しばらく葵は困惑したままであり、そんな状態の彼に白澤が話しかける。

 

「葵クン。調子はどうだね。リコ君が無茶ぶりとかしていないかね?」

 

「問題ありませんよ。店長こそどうですか」

 

 葵に声をかけた白澤は、本気でそれを心配している様子だった。

 

「む……お客様が本当に来てくれるかは不安だな……」

 

「大丈夫ですよ……きっと」

 

 葵のその言葉には根拠はない。

 しかし、シャミ子による町のボスとしての選択こそが、葵の不安を打ち消す要素だった。

 

 ■

 

 翌日。白澤の不安は覆され、新生あすらは大繁盛であった。

 

「葵はん。2卓のオーダー任せたわ〜」

 

「はい」

 

 ホールはシャミ子だけでなく桃とミカンも加わり、葵達も狭いキッチンで忙しなく動く。

 時折ホールに加わりつつ、葵は業務を全うしていた。

 

「せんぱぁい……似合ってるねぇ」

 

「ご注文のいちごパフェと鳥のえさです」

 

「無視しないでほしいなぁ。これせんぱいが作ったの?」

 

「ええ、ごゆっくりどうぞ」

 

「せんぱいの敬語……結構ぐっとくるなぁ……」

 

 そんなしおんの戯言を聞き流した葵はキッチンに戻り、そしてしばらくの後。

 

「軽ぅく落ち着いて来たみたいやなぁ。葵はん、休憩入ってエエで〜」

 

 リコのその言葉に従い、葵は軽く制服を着崩して空いた席に座ると、適当にメニュー表を眺め、そして近くの者を呼ぶ。

 

「桃〜」

 

「葵……」

 

 軽く濁った目をした桃は、葵の笑顔を見て嫌な予感がしたらしい。

 

「その服もすごくいいと思うよ。で、桃色スマイルください」

 

「……」

 

「駄目かなぁ……」

 

 本気で残念がっている様子の葵を見て、桃は嫌々ながらも引き攣った笑顔を見せた。

 

「……葵がそういう意地悪すると闇落ちするかも」

 

 桃のそんな呟きを聞いた葵は、見世物になりそうな百面相と化す。

 

「……冗談だよ。落ち着いたら……葵に似たようなことして欲しい」

 

「スマイルでも何でもござれだよ。桃限定だけど」

 

「……シャミ子もじゃなくて?」

 

 葵はそれには答えず、微笑みを返すのみだった。

 そして休憩はつつがなく終わり、葵がキッチンに戻るとホールから叫び声が響く。

 

「あ……あああああ!」

 

「優子?」

 

「け、けけけ、けっかい! 結界!」

 

「……あっ」

 

 ここでようやくシャミ子達は、あすらの結界を移転し忘れていることに気がつく。

 シャミ子と桃はダッシュで前店舗に向かい、そして結界を持って戻る。

 

「……け……結界、移転完了……」

 

「私も急すぎて抜けてた……シャミ子……気づいてくれてありがとう」

 

「……大丈夫かな」

 

 葵自身、“すぎこしの結界”には詳しくはなく、不安は隠せない。

 

「二日、結界の保護から外れたくらいなら……普通は問題、無い……はず。

 “特定の魔法少女にめっちゃ恨まれててマーキングされてるまぞく”なら、捕捉される可能性あるけど」

 

「……」

 

 桃の言う、その可能性を聞いた葵は思わずリコを見つめるも、リコは笑顔を崩さない。

 

「葵はん、なぁにぃ?」

 

「いや……」

 

「念のためしばらくリコさんと白澤さんの近くに居る」

 

 視線を外し、桃の言葉を聞いた葵はしばらく考え、そしてとある提案を出す。

 

「……なら、そのしばらくの間は……リリス様にここにいてもらって、俺がゴミ拾ってるのがいいと思う」

 

「え……?」

 

「単に戦力を集中させるより、アドバイザーをフリーにしておいたほうが良いと思う。

 桃達はリリス様経由でテレパシーして貰って。俺は離れててもそれが出来るからね。

 桃とミカンで手に負えなさそうなのが来たら、俺も呼び出して欲しい」

 

「そう……だね。それがいいかも」

 

 葵の提案に桃は少し考える素振りを見せた後に納得した様子だったが、葵自身は少しすると軽く笑う。

 

「まぁ、もしも桃とミカンで手こずるのが来たとしたら、俺が一人加わっただけでどうにか出来るとも思えないけど」

 

「……葵はもっと自信持って。葵が後ろに控えてくれているだけで、安心できるんだから」

 

「……フフ、ありがとう桃」

 

 ■

 

 そうしてそんな提案通り、葵は河川敷でゴミを拾っていた。

 籠と火ばさみを装備していた葵は、ポケットのスマホが震えるのを感じる。

 

「……もしもし」

 

『よう、喬木』

 

「長沼先輩……どうしましたか」

 

 電話の相手は学校の先輩である長沼。

 彼が電話をかける用事などあったかと、葵は首を傾げる。

 

『あの喫茶店が移転したと聞いてな、行ってみたのだが……喬木お前居ないじゃないか』

 

「用事がありましてね。昨日は居ましたけど」

 

『そうか、まあいい。それより、あそこの制服は良いものだな』

 

「は?」

 

 葵は思わず呆けた声を返したものの、長沼が後に続けそうな言葉は何となく察していた。

 

『ウェイトレスも良い……店の外観はアレだが良い店だ』

 

「……妙な事考えてたら先輩を今すぐにでも……」

 

 シャミ子達の危機を想定した葵は暗い声で威嚇するも、長沼はわざとらしく笑いながら言葉を返す。

 

『ハハハハハ、勘違いをするな。俺が好きなのは二次──』

 

 葵はその後、長沼の“布教”を適当にあしらいつつ、そこそこの時間電話を継続し、そして切る。

 その間も葵はごみ拾いをしており、同時進行により地味に疲れていたのだが、唐突に声が脳内に響く。

 

『小僧よ。酒が飲みたいぞ』

 

 それは言うまでもなく、蛟からのテレパシーだ。

 それなりに人目がある故に、葵は口には出さずに返す。

 

『俺、酒なんて買えませんよ。我慢してください』

 

『買えぬのならば作ればよかろう』

 

『捕まります!』

 

『何に捕まるというのだ。汝ならば其処いらの有象無象なぞ蹴散らせるだろう』

 

 本気でそう考えているらしい蛟の言葉に、葵は密かにため息をつく。

 

『……そんなことしたら魔力捧げるどころじゃなくなりますよ』

 

『……人の世も窮屈になったものだ……』

 

 葵と蛟の会話は、大体このような雑談ばかりである。

 蛟に加え、リリスからのテレパシーが四六時中葵を襲うのは日常茶飯事だ。

 そのうち葵がブチギレるかもしれないが、それはまた別のお話。

 

 そのまま葵はごみ拾いを続け、今度はリリスの声が響く。

 

『葵よ、魔法少女らしき者があすらに来た』

 

『助けは要りますか』

 

『……見た限りでは、桃とミカンで対処は問題なさそうだが……』

 

 そこで言葉を切ったリリスは観察を再開したらしい。

 

『……全体的にとにかく雑、だな』

 

『……とりあえず、そっちに戻ります』

 

『まあ問題はなかろう。ゴミを拾いながら帰ってくると良い』

 

 リリスの言葉に従い、葵は早歩き程度のスピードでばんだ荘への道を戻り始めたのだが、とあるポイントでばんだ荘方面からの地響きを聞き取る。

 

『今、例の魔法少女をミカンが倒したぞ。やはり問題はなさそうだな』

 

『……そうですか』

 

『……む?』

 

『リリス様?』

 

『不味い! 早く戻れ!』

 

 強化の加減を調整し、葵は跳躍を繰り返して直線の最短距離でばんだ荘に向かい、そして近づいてくると頭に声が響く。

 

『その他の皆さんも! その場で停止ー!』

 

「ッ!?」

 

 シャミ子からの大音量のテレパシーを聞き、葵は思わず体勢を崩してしまうも、どうにか着地してあすらに入ろうとする。しかし。

 

「待ってぇ……せんぱぁい……」

 

 葵に話しかけた者は、いつもでは考えられないほどに焦ったしおん。

 

「小倉さん?」

 

「無差別に制圧するから入っちゃダメぇ……」

 

「は……?」

 

 葵がフリーズしている内に、しおんは謎の液体の入った三角フラスコを取り出し、あすらの窓から投げ入れた。

 

「ッ……!?」

 

 そのフラスコが光ると同時に、葵の意識は途切れる。

 

 ■

 

「──っぁはぁっ!?」

 

 葵の目が覚めると、そこはばんだ荘の中だった。

 周りを見れば、白澤を除くあすらにいた面々と紅っぽい魔法少女が倒れていた。

 

「葵! 起きたんですね!」

 

「せんぱい……? こんな早く……?」

 

「……?」

 

 葵は起きていたシャミ子としおんに心配され、そして意識が途切れる直前の感覚を思い返す。

 

「あれは……リリス様の魔力が乱れて……逆流……?」

 

「なるほどぉ……よりしろとの繋がりがあったから、距離があっても薬の効果を受けたんだねぇ。

 だけど直撃ほどのダメージは受けなかった……って事かぁ……」

 

「小倉さん、何したの?」

 

 しおんが先程投げ入れたのは、魔力の流れを一瞬だけショートさせる薬であるらしい。

 何故そんな物を持っているのか、それについて葵はツッコみたかったが、緊急事態っぽかったので抑えた。

 

「……それで、今どんな状況?」

 

 床に転がるバクのオブジェ、そして眠っている桃、ミカン、リリス、リコ、紅い魔法少女。

 リコに恨みの有りそうな紅い魔法少女の襲撃により、白澤は封印されてしまったらしい。

 そしてそれを見たリコがブチ切れ、止めるためにその場の全員を気絶させざるを得なかった……と、言うことのようだ。

 

「よく二人で俺を運べたね……」

 

「すごく重かったよぉ……」

 

「葵……身体起こせますか?」

 

「……ダメだ。ある程度の魔力操作はできるけど……」

 

 葵は口と腕を軽くしか動かせず、ついでに先程から蛟からの反応もない。

 何故か床に転がっていた運転免許証から、魔法少女の名は『(シュ)紅玉(ホンユー)』と判明はしたが、それだけではどうにもならない。

 

「まず、店長の封印をどうにかしましょう。

 封印って、魔法少女の生き血でしか解けないんですか?」

 

「桜さんメモいわく……」

 

 光の力の封印は、光のエネルギーで等価交換するのが最も効率が良い。

 油性ペンを油で落とすようなものらしい。

 闇のパワーで光の封印を解くとなると、経年劣化と膨大な思考回数が必要になる……との事だ。

 

「同じ理由で、せんぱいの力での解放も時間がかかるかなぁ……」

 

「じゃあ! 二つの案の真ん中はできませんか?」

 

 シャミ子が提案したのは、紅玉の夢の中で彼女と交渉をし、ギリギリまで生き血を分けてもらい封印を弱める。

 そして残りの封印をまぞくの力でどうにかする、というものだ。

 

「葵は体調悪そうですし、今回は私だけで頑張ります!」

 

「……がんばれ」

 

 実の所、葵の魔力操作自体はほぼ本調子に近い。

 とはいえ、万が一が有るといけないので、葵はシャミ子の言葉に従った。

 今葵が動くのならば、魔力操作の一部を代行する“何か”がなければダメだろう。

 

「というわけで……せんぱいの新技、今こそ出番だよ」

 

「……そんな物無いけど」

 

「ちょっと待っててねぇ」

 

 困惑する葵を放置し、しおんは外に出ていった。

 

「足止メ!!!」

 

ぎゃ────!!

 

「何やってるんだ……?」

 

 謎の叫び声が響き、少しの後にふらつくしおんと、戦闘フォームのウガルルが部屋に戻る。

 

「アオイ、大丈夫カ」

 

「……あんま大丈夫じゃないかも」

 

「アオイの代わりに、オレ頑張ル」

 

「お願いね……ん?」

 

 張り切るウガルルに微笑んでいると、葵の懐に入った携帯が震える。

 ウガルルに頼んでそれを見せてもらい、画面に映っていた名前は──。

 

「優子?」

 

『本物の葵ですか!? 私が死の際に聞いている幻聴でなく!?』

 

「落ち着いて……」

 

 寝ているはずのシャミ子からの電話。

 しおんによれば、携帯という概念がシャミ子のテレパシーを補強しているらしい。

 葵は困惑せざるを得なかったが、しおんが続けた言葉に今度は目を見開く。

 

「せんぱい、私の賭けに乗ってみる気はあるかなぁ……」

 

 ■

 

 紅玉の夢の中。

 ナビゲーターの金魚であるジキエルに襲われているシャミ子は、戦闘フォームの一部である二枚貝に篭っており、そこでしおんと会話をしていた。

 

『助っ人を送り込むよ〜』

 

「助っ人?」

 

『じゃあいくよ〜』

 

 ユルいしおんの言葉が終わり、二枚貝の上に強烈な光が輝く。

 そして次の瞬間、夢空間に新たなる二人の人物が現れる。

 

「んがっ! 仕事ダッッ!」

 

 一人はウガルル。

 そしてもう一人はまず自らの手のひらを見て、次に周囲を眺めると震えだす。

 

よし……よしっ……! 成功だァッ!

 

 その人物。それは黒い毛皮の防寒具を身に着け、歓喜の叫びをあげる葵。

 

「葵!? ウガルルさん!? どうやってここに……」

 

「オレの実体魂じゃなイ、霧のようなもノ! 

 魔法少女の中動けル! むしろ実家のようナ安心感!」

 

「俺の場合はややこしいから、ウガルルちゃんの力を借りているとだけ言っておこう!」

 

 葵はそこで言葉を切り、大きく深呼吸をする。

 

「……まだ課題はあるけど……これでようやく! 共に戦えるッ!」

 

「ボスの道を切り拓ク! ボスッ……」

 

 葵とウガルルは目配せをし、そして同時に叫びだす。

 

「ここはおれたちに任せて先に行けーっ!」

「ここはオレたちに任せテ先に行ケーっ!」

 

「あっ、そのセリフすごくいい……でも……こんな危ない場所で……!」

 

「気にするナ! オレはここに残っテ、刺し身祭をする! 食い放題ダ!」

 

「俺は……っ! ようやく! 優子に並び立てるようになったんだ! 

 優子を守る! ようやくそれが果たせる時が来た!」

 

 いままでに見せた事の無いようなテンションで葵は叫ぶ。

 彼は今、全身を歓喜の渦に呑み込まれていた。

 ジキエルからシャミ子を庇い、そして先に進ませた二人。

 

「さぁて……初陣だよ、ウガルルちゃん……全力で行くよ!」

 

「おウっ!」

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