お互いに何も知らない関係からどうにかなる話   作:椎本琉莉

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めっちゃくちゃ頑張りました。色々ゆかりさんの歌聴きながら書きました。大阪生まれなので実感湧いてなかったんですが、最近関西弁の可愛さに気付いてきました。


琴葉茜視点でのとある話

 初めて、ゆかりを見た日を思い出す。

 小さくなって凍えとって、まるで可愛らしい小さなうさぎみたいやな、と。

 同時に、興味を惹かれたんやなウチは。この子助けて、接点持ってこれからこの子と仲良くしよかなと思ったんよ。

 話してみると、ちょっと硬いけどそこがまた可愛らしいなあと思ったなあ。やから家に誘われた時はほんまにびっくりしたわ。

 でもそれ以上にとても嬉しかったな、仲良く出来ればいいなと思いながら話しかけたら最後にはウチに気を許してくれてるなんて。

 ほんで電車乗って一旦出かけとる間はほんまに色々どうしようかなあ思ってゆかりが頭の中から離れんかったわ。

 んでいざ家に行くとご飯はめちゃくちゃうまいし。ゆかりはさらに可愛いし。襲いたくなってまうほどにな。

 冗談めかして言ってみたら本気にしよったしウチのこと気になってるとか言いおったから、ウチもう火がついてもうて。女の子で生まれてて良かったわ。よーここまで乙女のままでおったわ。あ、これ言ったん秘密やで。

 まあその後はラブラブやってんけど……

「ゆかりん〜」

「ゆかりん!」

「ゆーかーりーんー?」

 なんなんあの乳でか女。ゆかりの親友らしいけどなーんか友情超えた感情感じるで。

 とか、思っとったらこんなことあったわ……

 とある日、自分家のリビングにて。

「お姉ちゃんお姉ちゃん」

「んー?どうしたん葵?」

 琴葉葵。ウチの双子の妹で、標準語や。ずっと離れて暮らしとってんけど高校生なる時にウチがこっちに引っ越して運命の再会ってやつや。

「今度私の追っかけてるバンドがこの辺で初ライブするんだって、一緒に行かない?」

「んー?ええけど、なんて名前なん?」

「jamバンド。最近巡音ルカってシンガーソングライターと一緒に活動してるんだよ」

 巡音ルカ……というと。

「あのロックからバラードまで歌う綺麗な女の人やろ?」

「そうそう!有名だよね、でjamバンドってとこがその巡音ルカさんに声掛けられて一緒に活動してるの」

「へー、リーダーは誰なん?」

「弦巻マキさん!」

「ブフォッ──」

「お、お姉ちゃん!?」

 マキマキ、凄い人やったんか……忙しいとはゆかりから聞いとったけど……

「ちょ、ちょい待って」

 すぐにマキマキに電話を繋げる。

『はいはーい、どしたの茜ちゃん?』

「とりあえずウチの双子の妹と電話変わってくれへんか?」

「ん、お姉ちゃんその電話相手誰?」

『いいよー、あっさては気付いたなー?』

「その通りや、ほれ葵」

「んー……?もしもし……えっ、あっ、あのマキさん!?……あ、あの私琴葉葵です……はい……ええっ、ずっと教えてなかったんですかお姉ちゃん……気楽にって、そう言われましてもずっと追っかけてる身としては……いえいえいえいえ!」

「こんなになってる葵久しぶりに見たなあ、少し懐かしいわ」

 ウチらが再開した時もこんなんやったなあ……

「はい、必ず行きます!……はい、お姉ちゃんに代わりますね。」

携帯を手渡される。

「どうやったー?」

『ファンがいてくれてすっごい感動してる、しかも友人の妹とはね!』

「それは良かったわあ。んで、なんでずっと教えてくれへんかったん?」

『有名になってから二人に教えようと思ってたんだよー、まだゆかりんには秘密だよ?』

「んなアホな、もうとっくに有名ちゃうん?巡音ルカさんと手を組んでるんやろ?」

『もー、言い方ぁ〜。でもそうだね、バレてるかもしれない』

「まあせやったら、ウチらの住んでるあたりの近くでライブやるんやろ?ウチ行くならゆかりも誘っていくけどどうなん?」

『別にいいよー?』

「おしきた、まあそんだけや。ほなな」

『はーい、まったね〜』

 電話を切ると。

「お姉ちゃん、お姉ちゃん、お姉ちゃん」

「なんやなんや葵」

「その、マキさんとはどういう関係なの!?」

「ん?友人関係やけど……」

「お姉ちゃんにそんな接点があったとは!?」

「失礼やな!?」

 少ししてピンポーン、と音が響く。ゆかりが来たんかな。玄関へ向かい、ドアを開けるとそこにはやはりゆかりが。

「おっ、ゆかり!ええとこに来た」

「どうも茜。ええとこに来たとはどうしたんですか?」

「まま、理由は中で話すからとりあえずあがってーな。葵ー、ウチお茶入れるから話し相手になってやー」

「う、うんわかったお姉ちゃん!」

「では……おじゃましまんにゃわ……」

 ん?今の……とか思っとったらゆかりは途端に顔を赤くして

「なんでもないです、お邪魔します」

 と、すぐに隠そうとした。

「もー、ボケが恥ずかしがったらあかんやん」

「そっちも反応遅れてるじゃないですか、せっかく昔の大喜劇とか見て関西の文化に触れようと頑張ってるのに空振りした私の身にもなってくださいよ」

「おお、悪い悪い。思わず懐かしんでもうたんや。まあ部屋ん中で待っとってーや」

 と言いながら、キッチンへと入り紅茶を入れる。まあ目の前なんやけどなリビング。

「ではでは」

「あ、ゆかり!」

「これはこれは葵ではないですか。どうしました?少し表情が硬いですが」

「あの……jamバンドって知ってる?」

「ええ、マキさんがリーダーをしてるやつですね」

「そのマキさんとお姉ちゃんが友達みたいで……」

「そうみたいですね、最初間にバチバチと火花散ってましたけど」

「えっ、ゆかりもマキさんと接点が……?」

「はい、なんなら学生時代からの付き合いです」

「そうだったの!?どんな感じで毎日過ごしてたの?」

 それは聞いたことあらへんかったな。ティーポットで紅茶の葉踊らせたりお菓子用意しながら聞こか。

「まず、私達二人でバンド組んでましたね。マキさんがギターで私がボーカルです」

「ゆかりも音楽を……」

「ええまあ……今でもちょくちょく二人でカラオケ行きますよ。最近は向こうが忙しくて行けてないですけどね」

「ゆかりの歌聴いたことないなあ……どんなの歌うの?」

「結構なんでも。ロックからバラードまで」

 へぇ、それは……

「是非とも聞いてみたいなあ、カラオケまだゆかりと行ったことないねんけど」

 と言いつつ、紅茶とケーキをテーブルに置く。それを見てハッとした葵は口に手を当てながら謝る。

「あっ、立ち話させちゃってごめんねゆかり。座って座って」

「せやせや、食べてええで」

「ではではいただきます」

 ◇

「あ、せやせや」

 ケーキをゆかりが食べ終わった頃、本題を思い出す。

「そういや、この辺でマキマキが初ライブするらしいで。一緒に行かん?」

「ライブ、ですか。いいですね。たまにはそういったものも行きたいと……マキさんがですか!?それは行きます」

 遅れてゆかりが食い気味に体を乗り出す。

「お、おお、どしたん……」

「いえ、そういったものは私達共通の目標であったので……そういう場に立つとなれば行かなければ、と」

「なるほどなあ、それは行かなあかんな」

「それで、いつぐらい先ですか?」

「一ヶ月後らしいで、ほれ」

 そう言いながらライブの日にちが書かれたサイトを見せる。

「ふむ、本当にちょうど一ヶ月ほどですね。この日なら空いてます余裕で。行きましょう」

「よっしゃ、じゃそういう感じで」

 ええ感じにまとまったところで。

「あ、茜」

「ん?どしたん?」

「あの……この家って、空き部屋とかあるんですか?」

「あるで、それが?」

「あの……」

 ゆかりは顔を赤らめて。

「その、ライブ終わったら言います」

「ん?わかったわ〜」

 ははーん、ウチと一緒に暮らしたいって感じやな?とは言わずに少し話して晩御飯ともにしてから解散した。

 ライブ当日。

 ここまで驚いたんは、チケットの抽選率がえげつなかったところや。当たらへんって言っとった知人もおったわ。

『うう、まさか当たらないなんて……私ずんだ餅作って皆さんの帰りをお待ちしてます……』

 とか言っとったな。ウチらは当たって無事買えたけどな。

「さて、ライブ会場やで!ゆかり、葵!」

「そうだねお姉ちゃん、この日を待ちわびたよ!」

「ええ、本当に。ではでは……」

 ライブが始まるまで十分ほど。周りは人で溢れている。

「ほんまに人がいっぱいやなあ……」

「そうですね……」

 そうしているとアナウンスが流れる。

『まもなく、巡音ルカさんとjamバンドさんによるライブが行われます。チケットをお持ちの方は……』

「よっしゃ、行こか」

「はい、行きますか茜」

「お姉ちゃん楽しもうね!」

「せやな、いっぱい楽しむで!」

 ライブが始まった。巡音ルカの美声やバンドによる演奏が圧巻で息を飲む。同時に、心は高揚感で満たされる。

「マキさん……」

 葵はマキマキを見てうっとりしとる。するとマキマキはこちらを向いて。なんと。

 ウィンクを葵に飛ばしたんや。

「はううっ、マキさん……」

「もはや言葉も出んぐらいになっとるな……」

 そうして、最後の曲も終わりを迎えた時。

「ゆかりん!会場に来てるんでしょ!ステージに上がりなよ!」

 ゆかりがマキマキに呼ばれる。

「へ、は、はい!」

 たじたじしながらも呼ばれるままにステージ上に上がるゆかり。ライブ会場全体でどよめきが起きている。

「へえ、この子があなたの言ってたゆかりちゃんって子なのね?」

 巡音ルカさん、色気半端ないなあ……

「そうそう、突然だけどゆかりん!学生時代歌ってたの、歌おうよ!」

「えっ!?でもそんな……」

「いいからいいから、愛しのあの人にいい所見せたくないの?」

「あっ、そんな言い方ずるいです!やらなきゃいけなくなるじゃないですか!」

 満面の笑みを見せるマキマキと、顔を赤らめながらも怒るゆかり……ううん、複雑やけど親友同士ってあんなんなんかな……

「はあ……分かりました……」

 スタンドマイクを握るゆかり。

「よし、みんな!あの曲行くよー!」

 そして、演奏が始まる。

 一瞬目を閉じたゆかり。

 再び目を開く彼女の顔は。

「……かっこいいし、綺麗やん」

 凛々しく、美しく……あんなん、見たことない……

「突如、私が呼ばれてしまったことに困惑はしますがこうなった以上魂を込めて歌わせて頂きます」

 そして歌い出す。

 その歌声で会場は沸き立つ。

 その歌声で泣きながらペンライトを振る人もいる。

 そう、まるで。まさに歌姫。その瞳はまるでマキマキの太陽のような輝きの黄金の髪と瞳に照らされた月のよう。

 マキマキの演奏があって輝く。

 ゆかりの歌声がマキマキをより一層輝かせる。

 その相乗効果は留まることを知らへん。それは巡音ルカさんでさえ、ただ涙を流すばかり。

「こんなん……惚れ直すに決まってるやん……」

 多分、この歌声で複数人がゆかりへの恋に落ちた。いや必ずそうや。

 そして、ウチもまた。よりゆかりに惚れるばかりやった……

「皆さん、ありがとうございました……!」

 演奏が終わる。

「ふふ、愛しのあの人にも気持ちが届いたみたいだよゆかりん」

 そら、せやろ……あんなん、惚れ直さんわけないやん……

「それなら良かったのですが……」

 そして、拍手が起きる。

「「うおおおおゆかりさーん!!」」

「へ!?」

「みんな、ゆかりんの大ファンになったみたいだね?」

「うう……これが狙いですか……」

「まあね〜、実はねルカさん……」

「待って、それは私が言うわ。実は私あなたの歌声聞いて、とってもいいライバルになりそうだと思ったの」

「ライバル、ですか……」

「ええ、だから音楽をやめたと聞いた時は本当に残念だったのよ?でも……」

「ゆかりん、私が気付かないとか思ってた?時々ライブ会場とか見てため息ついてたの」

 それは、ウチも気付いとった。

「だから、復帰したいのかなって思ってね」

「マキさん……ありがとうございます……!」

 ゆかりは涙を流す。そしてアンコールの掛け声も。

「さて、茜ちゃん!ここに来なよ、私も歌うからさ!四人で歌おうよ!」

「えっ」

 ええええええ……!?

 辺りが静寂に包まれる。

「でもそんな、ウチ歌なんて!?」

「んー?鼻歌ですら上手かったじゃん?」

「聴いとったんか!?」

「お姉ちゃん、歌上手いもんね」

「ちょっ、葵……もう、しゃーないな……」

 ライブ会場全体は再び沸き立つ。

「茜ちゃーん、頑張れー!」

「いい歌声期待してるぜ!」

 辺りからそんな声を聞きながらステージ上に上がる。

「えー……琴葉茜です……」

「茜ちゃん、もっと自然体で!」

「そうです、マキさんの言う通りです!」

「ああもう!ウチが琴葉茜や!ここまで来て逃げたらウチの名が廃る!最初に歌っとったやつ、行くで!あれはウチも実は練習してたんや!」

「あ、やっぱり」

「なるほどね茜ちゃん?」

「なんや二人とも、なんも知らんと行くのは失礼やから聴くのは当然やろ!」

「ふふ、やっぱりいい人ですね茜」

「もう、茶化さんといてや!」

 そうしていると、巡音ルカさんが切り出す。

「じゃあ……行くわよ?」

「はい!」

「よし!」

「よっしゃ!」

 そうして、最初で最後になるやろうウチら四人の歌が始まる……

「あー……ビックリしたわほんま!」

「ええ、確かに。マキさん……」

「んー?私はみんなと事前に打ち合わせはしてたけどなー」

「私は」

「ウチは」

「聞いてません!」

「聞いとらん!」

「あはは、息ピッタリじゃん」

 あのライブの日から数日。さっきの四人と、葵でウチの家でくつろいでいる。

「あの……私がここにいるの……」

 葵がもじもじしとる。

「ええやろ、ウチの妹やねんから」

「そうですよそうですよ」

「そう、なのかな……わかったよお姉ちゃん!ゆかり!」

「あっ、せやせやゆかり。ライブ終わったらとかなんとか言っとらんかった?」

「あっ、そうですね……でもこの場で言う……」

ルカさんとマキマキがゆかりを見つめとる。にやにやしながら。

「ああもう……あの、私!茜と一緒に暮らしたいです!」

「あら〜」

「まあまあ〜」

「ええで、もちろんや!ウチ来いや!」

「ありがとうございます……!」

 そうしてルカさんが話をあの時のように切り出す。

「ふふ、それでみんなはどうするの?」

 最初にマキマキ。

「んー……私はゆかりんさえ良かったら一緒に音楽活動したいなあって」

 次にゆかり。

「ええ、私もそう思ってました。多忙になりそうですけどね」

 次にルカさん。

「私はあなた達を見てたら昔の仲間とライブをしたくなったわ。ミクやリン、レン、あとその他の人とまた連絡をとらなきゃ」

 次に葵。

「えーと……私はお姉ちゃんを応援するだけだけど……」

 最後にウチ。

「せやな、ゆかりと一緒におれるんやったらどこまででも」

「茜……」

「マキマキが演奏で、ウチらがダブルボーカル……いや葵もやから三人や」

「えっ、お姉ちゃん!?」

「いいですね、それは」

「うん、私もそれやりたいね!」

 ゆかりとマキマキの二人が賛同する。

「じゃあ、私はお邪魔みたいね?またね、ライバルの生誕を祝いながら今日はワインを飲むとするわ」

 と言いながらルカさんは立ち上がる。

「またなルカさん、負けへんで!」

「強く出たわね、私だって負けるつもりは無いわよ?ああそれと……ルカ、でいいから」

「わかったで、玄関まで見送るわ……」

「あ、ルカさんは私が見送るからお姉ちゃんはここで三人で話してて」

「ん?わかったで」

 そうして二人が部屋を後にする。

「そういやさ、バンド名どうすんの?」

「ん?そうだね、どうしよっか。他のうちのバンドのメンバーは各々好きなことするみたいだしね」

「でしたら、『UNKNOWN GIRLS』なんてのはどうでしょうか?」

「あんのうんがーるず?どういう意味なん?」

「だってほら、私と茜、何も知らないところから結構色々なったじゃないですか」

「そうだね、それがなかったら今の状況は無いわけだし」

「そして、知らない私達同士が知り合ったことで」

「ウチはマキマキと交友を持って」

「私は葵ちゃんと知り合って」

「ほら、未知の関係からこうなった訳ですから」

「せやな、何も知らへん関係から」

「どうにかなっちゃいました、茜と知り合わなければ平行線のままだったはずでしたから」

「ウチも、そんな風に思っとったで」

「ふふ、何も知らない関係からどうにかなる……そうだね。私もゆかりんと出会わなければこうはならなかったと思う」

「ですね、全ては些細なきっかけでも」

「せやな、出会って歩み寄れば」

 なんも知らへん関係からでもいくらでもどうにか出来る、そう思ったウチらであった。




ん〜上手くオチ付けられましたかね……ですが、個人的にはこれでヨシ!(安全確認猫)
ゆかりさんには、たまにはかっこつけてもらわないと!
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