異世界ヒーロー   作:氷雨蒼空

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第十一話 冒険者

冒険。それは時に未知の秘境に挑むこともある危険な行為。

それ故にそれなりに熟練されたものを仲間に引き入れるべきなのだが、オラリオのダンジョンに挑むにあたり、楓は人選に苦戦していた。

 

 

オラリオのダンジョンに挑む冒険者のパーティーでは。ポーターやヒーラーにスミスが組み込まれることが多い。

 

何せ不測の事態に陥ると予定していた期間よりも長く留まることが考えられるために、それを見越したパーティー編成を組むからだ。

 

だか悲しいことに、現在楓のパーティーに参加してくれそうな者はいなかった。

何せどこのファミリアにも所属していないためにレベル無しの加護無し。

そして実績すら無いために、彼らを知らないものは敬遠してしまうのだ。

 

では知り合いに頼むことにいざなっても、ヘスティアファミリア等の親しい者達は、ギルドから召集を受け、前回のオラリオ襲撃の件から対策の為の会議を行っていた。

 

団長クラスが出席している以上、団長に許可無しに人員の貸し出しなど無論出来ることも無く、結局人が集まらずに途方に暮れることとなる。

 

「最悪ポーターはアクアに任せるとして」

 

「なんでよー! カエデさんちょっと辛辣すぎやしませんか! もう少し私に優しくしてよ! 敬ってよ!」

 

アクアという存在の性格を既に把握してしまったせいか、流石に敬うことが心憚られる楓は、

 

「さて、野良の冒険者を探すか」

 

アクアの言葉を軽くガン無視。

 

 

「無視しないでよー!」

 

そんな一同の側を一人の人物が通りすぎていく。

汚れた鉄兜と革鎧の人物は、修繕から戻ってきたばかりの装備を革袋に入れ、それを抱えて歩いていた。

 

 

「あ~! ゴブリンスレイヤーじゃない! アンタ暇でしょ! ちょっと私達に付き合いなさいよ!」

 

「ゴブリンか?」

 

「違うわ。冒険よ! 泣いて喜ぶがいいわ。このアクア様が冒険に誘ってあげるのよ。世界中のアクシズ教徒も羨ましがる栄誉なことなんだから!」

「そうなのか?」

 

ゴブリンスレイヤーが楓達に確認するように尋ねると、三人は揃って肩を竦めて見せる。

 

「そうか。だがゴブリンでないなら断る」

そう告げて歩き始めるゴブリンスレイヤーだが、アクアは突如ゴブリンスレイヤーの体にすがり付く。

 

「御願いよぉ~! 私ここで借金を減らさないといけないの! いい加減じゃがまるくんのバイト嫌なのよぉ! この間なんかロリ巨乳の女神に『宴会芸しか取り柄がないのかい?』なんて馬鹿にされたんだからぁ!」

 

一体二人の神の間にどのような争いがあったか等、この場の四人にとって至極どうでもいい話であったのだが、共通して言えることは、この水の女神が非常に哀れであったことだ。

 

「まぁ、ダンジョンにはゴブリンも出るみたいだしいいんじゃねえか?」

「出るのか?」

 

モードレッドの助け船に反応したゴブリンスレイヤーに、アクアがこくこくと頷くと、暫くして考え込んでいたゴブリンスレイヤーは、

 

 

「分かった。それなら行こう」

 

こうして野良パーティーにゴブリンスレイヤーが加わったのだった。

 

 

「え? ダンジョン?」

 

楓が続いて声をかけたのはクウェンサーとヘイヴィアの二人。

防壁工事は既に一段落し、特にやることもなく手持ちぶさたにしていた二人は、今後のことを考えてギルドで自分達でも出来そうな仕事を探していた所であった。

 

「別にいいけどよ。呑気にダンジョントライしてていいのか? 大体俺達は武器はあるけどオラリオの連中みたいな身体能力無いんだぜ? 武器が通じない相手に出くわしたらそれこそアウトだっつうの。オブジェクト相手ならそりゃ分析官としての能力はいかせるけどよう」

 

「ポーターを頼みたい。お前達の戦闘力不足は此方で補う」

「いいんじゃないかヘイヴィア。ダンジョンには元の世界に帰るためのヒントが意外にも転がってるかもしれない。お姫様が働いてるのに俺達だけブラブラしてるわけにもいかないだろ」

 

クウェンサーの最もな意見に頭を掻くヘイヴィア。

 

「しょうがねえ。相棒が世話になったみたいだしな。それに」

ヘイヴィアはモードレッドに視線を向けて、

 

「気の強そうな女がパーティーにいるっていいもんだ」

「こんな時に相変わらずだなヘイヴィアは」

 

呆れるクウェンサーに、ここぞとばかりにヘイヴィアは食って掛かる。

 

「お前はいいよな! 合流するまでの間に俺がどんな思いしたかわかるか! 出会う女大抵はネタ枠だぞ! ドMクルセイダーに爆裂中毒の中二病のロリっ子に宴会芸が取り柄の女神様だ! うぅ・・・・・何だか爆乳上司が恋しくなったぜ」

 

「ハイハイ。そのうち会えるさ」

 

ここぞとばかりに不幸な身の上をぶちまけるヘイヴィアに、モードレッドが肩を叩き、

「どうでもいいけどよ、早く準備しろよな」

 

容赦ない扱いをするのだった。

 

 

 

 

 

「12時の方向にコボルト3じゃモードレッド! ヘイヴィアは集音器を使い索敵、決して発砲するでないぞ。ゴブリンスレイヤーはヘイヴィアとクウェンサーの警護! クウェンサー、マッピングは出来ておるな?」

 

「ばっちしだ皇帝様」

 

楓の指示によりこの場の指揮を任されたネロにより、パーティーは遺憾なく能力を発揮していた。

 

「支援魔法の準備出来たわよ!」

「了解じゃ。アクアはゴブリンスレイヤーとモードレッドにそのままブレッシングとパワードをかけい!」

 

「任されたわ!」

 

そんな光景を眺めながら、楓は・・・・・・暇していた。

 

「なぁ、俺は?」

「奏者は黙ってふんぞりかえっておれば良い。仲間を信じて任せるのもリーダーの責務じゃ」

 

確かにネロの言うことも一理あることは理解していた。

現状ではコボルトの数は八体だが、モードレッドの一撃はその斬撃の衝撃だけで周囲のコボルトを巻き込み、あっという間に数を減らし、それに巻き込ませない形でゴブリンスレイヤーを後方に回す。

 

楓の出番は、モードレッドもしくはゴブリンスレイヤーの漏らした敵が、接近しなければ無い。

 

例え接近したとしてもそれはそれでネロが片付けてしまうため、やはり暇なことに代わりはない。

 

これがパーティー。

 

確かに連携が整っており、それぞれ適材適所というものな合わせた形でネロが指示をだしている。

 

その指示は多くの戦場で指揮を重ねていたネロだからこそ出来ることで、楓には出来ないことだった。

 

「どうした奏者?」

「いや。ネロは凄いなと思ってな」

「今頃余の凄さがわかったのか。ふふん。もっと誇るがよい。お主は素晴らしいサーヴァントを従えておるのだぞ」

「おいネロ! こっちは終わったぞ。」

 

前方のコボルトの群れを片付けたモードレッドが、どこか不機嫌そうな顔を浮かべて戻ってくる。

 

「どうだった?」

 

ぶっきらぼうに尋ねてくるモードレッドに、ずいっと顔を近付けられ驚きつつも、

 

「鮮やかな手際だ。流石モードレッド」

「だろ?」

 

途端に機嫌を良くする。

 

「さぁて俺達は魔石回収しますか」

「俺も手伝おう」

 

ヘイヴィアとクウェンサー達を手伝い、ドロップアイテムや魔石回収をしていると、その近くをオラリオの冒険者達が通りすぎていく。

 

「んだ、見ねえ顔ばっかだな。大方ラビットフットの噂に当てられて冒険者になったんだろうが、死にたくなかったら調子に乗るんじゃねぇぞ」

 

目付きの悪い、額と左頬に傷を持つ中年の冒険者はジロりとクウェンサー達を睨んで歩き去っていく。

 

「んだよマスター。止めんなよ!」

 

今にも殴り掛かりそうなモードレッドを止めた楓。

 

「悪意のない言葉だ。あの男の目はルーキーを疎んじる目ではなく、心配するような目をしていた」

「んだよ。ツンデレさんかよ。ま、でも全部が全部そんな親切な野郎じゃねえさ」

 

 

回収した魔石やドロップアイテムを楓から受け取り、ヘイヴィアは鞄に詰め込んで背負い直す。

 

そうしてクウェンサーの回収も済んだところで再び歩き出した。

 

 

そうして18階層直前で、楓達は階層主の洗礼を受けることとなった。

 

「おいおいおい! オブジェクトなら兎も角として、こんなデカイ怪物がいるなんて聞いてねぇぞ! この間のオーガ以上じゃねえか!」

 

「うへぇ。ハンドアックスも通じるかわかんないな」

 

及び腰になるヘイヴィアとクウェンサー。

そんな中、

 

 

「くそが! ルーキーがこんなところまで来やがって! こっから逃げろ! コイツは通常の階層主じゃねえ! レベル4以上相当の亜種だ!」

 

数刻前に上層で出くわした額と左頬に傷痕を持つ男ことモルド=ラトローが叫ぶと、ゴライアス亜種が巨大な豪腕で襲いかかってかる。

 

まともに直撃を受けたら一溜まりもないそれをに、モルドは避けきれずに死を覚悟した時だった。

 

「てやあああああ!」

頭部まで覆う完全霊装姿のモードレッドが立ちふさがり、その豪腕の勢いを殺しにかかる。

 

だが、通常のゴライアスであれば抑え込めただろう豪腕の威力は、亜種ということもあってか殺しきれず、途中でモードレッドは判断を切り替えモルドの体を豪腕の軌道上から投げ飛ばして逸らす。

 

そのまま取り残されたモードレッドは吹き飛ばされ、壁に体を激突させた。

 

あのレベル6を圧倒した鬼の手を倒せるモードレッドでも、まさかの力負けにネロはこのゴライアスがただの魔物でないことを察知する。

 

「奏者!」

「わかってる!」

 

 

楓が鬼の力でネロとモードレッドを強化しようとした時だった。

 

「随分とヒヨったんじゃない楓」

 

頭上から聞こえた声にとっさにネロが跳躍しアエストゥス・エストゥスを構えると、上空から降りてきた人物の大鎌がネロを霊装ごと吹き飛ばした。

 

「お前は・・・フラニーなのか?」

「気安くその名前で呼ぶな裏切り者!」

 

とても重量物を扱っているとは思えない警戒な動きのフランチェスカ=ヴェルズと、さらにゴライアスによる攻撃で、もはやこの場は乱戦状態に陥っていた。

 

三つ巴の戦いの中で、モルドはよろよろと立ち上がりクウェンサー達に走りよってくる。

 

「何ボーッとしてやがる! 今のうちに逃げやがれ」

「そう言われても仲間を見捨てて逃げるほど俺達は人間をやめちゃいない。アンタ冒険者なんだろ? もし仲間が窮地に陥ったら逃げるのか?」

 

「くそが。優等生ぶりやがって」

吐き捨てるモルドに、クウェンサーはゴライアスを注視して尋ねる。

「あいつは自己再生とかそんな感じの能力は持ってるのか?」

 

「あると考えた方がいい。だが俺が以前相対した似たような化け物には数秒のタイムラグがあった」

 

モルドの情報を元にクウェンサーは頭の中で戦略を組み立て始めるなか、ヘイヴィアが顔をひきつらせ始める。

 

「おいおい相棒、まさかと思うが戦うつもりか?」

「楓達は足止めを食らっているし、ゴライアスもそっちに集中している。なら残った俺達で戦うしかないだろ。アクア! ハンドアックスに付与魔法をかけて威力を強化できるか!」

 

「爆発威力、もしくは効果倍増っていう意味ではできるも知れないけど、それでも限界あるわよ? あのゴライアスを倒すには到底およばないわ」

「別にそこまでの威力は求めてない。だが、できるか? スピードも腕力も凄まじ過ぎる」

 

 

「何か悪巧みあんなら聞かせろよモヤシ」

 

モードレッドがクウェンサーの元へとやって来ると、クウェンサーが不敵な笑みを浮かべる。

 

「ああ。モードレッド、お前にしか頼めない。あいつの注意を惹き付けてくれ! 出来れば出し惜しみせずに大技ぶちかまして欲しい」

 

「へ! 期待すんなよ。マスターの鬼の力がセット出来ない以上、俺もレベル6“程度”しか能力がねえ」

 

モードレッドの言葉にモルドは驚きの顔を浮かべる。

 

「おいおい、レベル6を程度扱いかよ。お前ら一体何もんなんだ」

 

 

モルドの問いにクウェンサーとヘイヴィアとモードレッドは、互いに顔を見合せ、そして得意気な笑みを浮かべた。

 

 

「「「冒険者さ」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

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