異世界ヒーロー   作:氷雨蒼空

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第三話 冒険を始めよう。

クウェンサー達がオラリオの街でベル=クラネルとの邂逅を果たした頃、もう片割れのヘイヴィアは、数十キロ離れた先のアクセルの街に滞在していた。

 

元々は南大西洋方面での作戦が終了し、ちょっとしたバカンスの最中の出来事であったせいか、対して焦りはしていなかったけれども、それでも今頃クウェンサーが、姫様や爆乳上司相手にラッキースケベを発動しているんじゃないかと考えたら、今の自分の恵まれない環境を前にヤキモキするのも同然であった。

 

「くそ。女性比率が物凄く高いのに、全く心が踊らないってどうなってやがんだよ! バランスおかしいだろ! なあカズマさんよぉ!」

 

「うんうんわかるよヘイヴィア君。女性がこんなにいるのにまともなのはセイバーさんだけだ」

 

「何でそんな悟った顔が出来るのかわからねぇが、俺は決めた! 元の世界に何がなんでも帰るぜ! 相棒だけに美味しい思いさせてられるか! 何で俺ばっかりネタ枠が集中するんだよ! やっぱ許せねぇ」

 

「落ち着きたまえヘイヴィア君。君にとてもいい店を紹介しようじゃないか。君は俺の命の恩人だ。残念なことにあそこのゴブリンスレイヤーは興味を示さないようなので、ここは男二人だけの秘密としてだね」

 

「お、それってもしかして」

 

 

 

「ゴブリンか」

 

 

「「ちげーよ!」」

 

 

 

「そうか」

 

てっきり自分の名前が聞こえたのでゴブリンの話と勘違いをしたゴブリンスレイヤーは、ゴブリン絡みでないと知ると、店を開いて道具の手入れの続きを再開した。

 

現在この場はカズマの屋敷のリビングなのだが、相変わらずアクアは暖炉の前を陣取り、ダクネスとめぐみんが仕切りにクエストに行こうと迫っている。

 

ここまでは日常の光景なのだが、これからヘイヴィアと“例の店”へ行くことを考えているカズマにとって、あの三人と言う障害はどうしても排除したかった。

 

 

が、まるで典型の如くカズマの頭の中に妙案が思い浮かぶ。

 

「そう言えばギルドにゴブリン絡みの依頼があった気がするなぁ」

 

「あるのか?」

 

即座に食いついたゴブリンスレイヤーの様子に、カズマはしめたと考えつつ、ダクネス達をちらりとみやる、

 

「どうせならゴブリンスレイヤーさんと一緒に行ってきたらどうだ? 俺達はウイズの店とかに買い出しの用があって行けないが、たまには違う人とパーティーを組んで行ってみるのも悪くないと思うぞ。ほら、お前達の凄さってのも見てもらう絶好のいい機会じゃないか」

 

「なるほど! 確かにカズマの言うとおりだな!」

 

「そうですね! この私の真の実力を見せつけてやるとしましょう!」

 

ポンコツ二人が釣れたところでカズマは残ったポンコツを見やると、流石に付き合いが長いせいか、残り一人はテコでも動かないと言わんばかりにソファーにしがみつきカズマを睨んでいた。

 

「私は行かないわよ」

「いいのかアクア」

 

「何よ」

 

「今ここで自分の凄さを見せつけて置かないと、お前ただのソファーにしがみつくだけしか取り柄がない自称女神で定着するぞ。俺は別にそれでも構わないが、人知れず町中に噂が広まってるかもな」

 

「しょ、しょうがないわねぇ! 今回ばかりは偉大なるアークプリーストの実力を見せてあげようじゃないの!」

 

どんなに能力がカンストしている女神でも、知力と幸運は平均以下のポンコツ駄女神。

 

カズマの策略を前に見事はまった最後の砦たる女神は、早速二人を引き連れて先にギルドへと向かってしまった。

 

 

「それでは私も貴女方について行くとしましょうか」

 

 

「「へ?」」

 

ポンコツ三人を見事出し抜いたことで、カズマとヘイヴィアは安心仕切っていただけに、まさかの伏兵の登場に言葉を失いかけた。

 

 

「え、えと、セイバーさんはゴブリン退治に行かないんですか?」

 

声を強張らせるカズマのセリフに、セイバーはちらりとゴブリンスレイヤーの“ある持ち物”を一瞥し、そっと目を反らした。

 

「今日は体の調子が優れないので」

 

 

 

((ちくしょー! あれか! あれのせいか!))

 

 

 

ゴブリンスレイヤーが手際よく小瓶に移し代えている液体を見て、二人は血の涙を流すのだった。

 

 

 

 

 

 

「ゴブリン退治ですか? 確かにありますね。依然サトウカズマさん達に探索してもらったキールのダンジョンなのですが」

 

 

 

「「またそこ!?」」

 

かつてキールのダンジョンにて苦い思い出のある、置いてけぼりを食らった女神と、悪魔に体を乗っ取られたクルセイダーは、何とも言えない複雑な顔を浮かべるのだが、

 

 

「かまわん。そこにゴブリンがいるなら殲滅するまでだ」

 

 

なんとも頼もしい言葉を口にするゴブリンスレイヤーに、今までに見たことない笑みを浮かべる受付嬢のルナ。

 

 

「本当ですか! 冬の時期ってどの冒険者さんも活動してくれなくて困ってたんですよ! それじゃあお願いしますねゴブリンスレイヤーさん」

 

「えーと、マジで行くの? 私的には明日からでもいいんじゃないかと思うんですけど」

 

「そ、そうだな。あのダンジョンに潜るならそれなりの準備は必要かと思うぞ」

 

 

「えーと、私的には爆裂魔法は中で使えませんし」

 

各々に言い訳を並べ始める三人を前に、ゴブリンスレイヤーはただひとこと。

 

 

「行くのか行かないのか? 俺は行く」

 

そう告げて兜越しに三人をじっと見つめてくるのだった。

 

 

 

結局、ゴブリンスレイヤー一人で行かせることに、良心の呵責に耐えかねたダクネスが、半ば二人を無理やり引きずって行く形で同行することとなった。

 

 

 

 

「ねえ、このダンジョンは既に探索済みだから、私的にはめぐみんの魔法で吹き飛ばしていいと思うの!」

 

「そうですね! 私の魔法なら」

 

「それは駄目だ。入り口から高威力の魔法(きせき)を放ったところで、ゴブリンが奥に拡張していれば何れどうにかして外に出てくるだろう」

 

問答無用で却下するゴブリンスレイヤーを前に、アクアがいよいよ二人に耳打ちを始める。

 

「ちょっとこの人マジでヤバいんですけど! ゴブリンに如きに警戒しすぎじゃないかしら」

 

「いや待てアクア。私達はさほどゴブリンの生態に詳しくない。きっとゴブリンスレイヤーは私達以上にゴブリンを知っているからこそ警戒しているのだろう。く! ゴブリン! 想像するだけで武者震いが」

 

顔を赤くし身もだえするダクネスを放置し、アクアはめぐみんへ耳打ちを始めた。

 

「ちょっとめぐみん! もういっそのことヤラカしキャラを活かして、ド派手にぶっぱなしちゃいなさいよ。ほら早く」

 

 

「誰がヤラカしですか誰が! そう言うアクアこそヤラカしじゃないですか! アンデットに集られたり要らないところで結界張って大惨事引き起こしたりと、私以上ですよ」

 

 

「ひどいわめぐみん! 私の場合は良かれと思ってのことじゃない! めぐみんはただの中毒症状でしょ!」

 

「言いましたねアクア! この際ですからはっきりさせようじゃありませんか」

 

二人が取っ組み合いを始めようとしたところで、ダクネスが二人の肩を叩きダンジョンを指差した。

 

「どうでもいいが行ってしまったぞ」

 

 

 

かつてバニルによって一時的に灯されていたダンジョン内の灯りは、仮の主がいなくなった後はすっかり元の薄暗さを取り戻していた。

 

最も以前の様子など知らないゴブリンスレイヤーにとって、その情報はさほど重要ではなかった。

その証拠に、なんの奇跡を使用しなくても暗闇の中を平然と前に進んでいた。

 

ぐしゃり!

 

「ひ!」

 

まるで空を切るような音共に、前方から聞こえた音を耳にしたアクアが小さな悲鳴をあげる。

 

「一つ。ただの雑魚か。斥候ではない。恐らくこのダンジョンに住み着いて間もないのだろう」

 

「そんなことまでわかるのか?」

 

「大抵の渡りは住みかを定めると、最初は好き勝手に探索をしたりするが、そう長くない期間で命令系統の流れが出来上がり、組織だった行動をするようになる」

 

そう話ながら、ゴブリンスレイヤーは雑嚢を下ろして袋から小瓶を取り出すと同時に、持っていたナイフを使ってゴブリンの腸を引きずり出した。

 

「い、ひいいいいい」

 

そして三人に過酷な選択を迫る。

 

「選べ。どっちを体に塗るのか」

 

この時、アクアとダクネスに新たなトラウマが生まれ、めぐみんもまた、ゴブリン退治に対して別の意味での恐怖を覚えることとなった。

 

 

「臭いよぉ。ひぐ生臭いよぉ」

 

「さ、流石にこの臭いはキツいな。プレイとしては頂けない・・・・・」

 

「カエルの唾液がまだましだってことを初めて知りました・・・・」

 

「ゴブリンはメスに対する嗅覚が優れている。臭い消しにはゴブリンの生き血や糞尿が一番効果的だ。連中絶えず不衛生で自分の臭いに関しては違和感を感じないが、それ以外の臭いはすぐにわかる」

 

淡々と説明するゴブリンスレイヤーは、通路の曲がり角に差し掛かり、ゴブリンの気配を察知して立ち止まる。

 

「この奥はどうなっている」

 

「えーと、確かそのままであれば隠し通路があったわね。てかグレムリンとかが少ないわね」

 

 

「グレムリン? ゴブリンの亜種か?」

 

「違うわよ。下級悪魔の一種よ」

 

「なるほど。魔神の眷属か。ゴブリンでないのなら無理して相手する必要はないが、この建物の造りでは、襲撃された場合には迎撃するしかあるまい」

 

「やけに冷静過ぎるんですけど。普通ここは怖がるところでしょ!」

 

「そうなのか?」

 

「そうよ」

 

「そうか」

 

「・・・・・ねぇダクネス。私、この人カズマ以上に偏屈な人とみたわ」

 

「おいアクア! 本人を前にしてそう言うことを言うのはどうかと思うぞ」

 

そんなやりとりが繰り広げられる中、ゴブリンスレイヤーは持っていた筒状の何かを通路の先へと投げ込んだ。

 

乾いた音が地面を通して反響する中、何かが吹き出す音の直後に醜悪な悲鳴が響き渡る。

 

「GROOOOBAAAAA」

 

「え、何よ今の! てか怖いんですけど!」

 

「催涙筒だ。今のうちに畳み掛ける」

 

言うが早いか飛び出したゴブリンスレイヤーは、持っていたこん棒で真っ先に近づいたゴブリンの頭を叩き潰す。

 

飛び散る脳漿で床が滑りを帯びる中、ゴブリンの手から引ったくった歯こぼれしたナイフを奪い取ると、それをそのまま投擲する。

 

アクアに迫ろうとしたゴブリンは、その時点で喉から刃を生やして前のめりに倒れると、ゴブリンスレイヤーは念を入れるように、その頭部を流れるような作業の如くこん棒で叩き潰した。

 

「三つ。門番を中継地点に設け始めている。恐らくだが数は十以上はいるだろ」

 

「十って多いんですか?」

 

恐る恐る尋ねるめぐみんに、ゴブリンスレイヤーは静かに地面を見下ろした。

 

 

 

床のすり減り具合や、ゴブリンの足跡らしきものや埃の散り具合をたしかめているのだ。

 

もっとも鉱人導士であれば、床のすり減り具合の目利きを正確に出来るだろうが、この場にいない者のことを考えてもしょうがない。

 

 

「依然は百の大群と戦った。だが、そのときは多くの冒険者達に助けられた。敵の数が多いか少ないかの基準で言えば、ゴブリン相手に戦い慣れている者が少ないこの状況では多いと言える。そして」

 

ゴブリンスレイヤーはゆっくりと立ち上がり、松明に火をつけて通路を照らして見せた。

 

素人にはわからないが、ゴブリンスレイヤーにははっきりとわかる事実がそこにあった。

 

「隠し通路があると言ったな。連中はそれを早々に見つけ、更に奥へ拡張しているようだ」

 

依然は閉じていた筈の隠し通路は、荒々しい口火が開けられ、更にその地下へと続くような広大な闇が広がっていた。

 

「えーと、このメンツだけで行くんですか? うちのカズマさんなら行かないと思うの」

 

「好きにしろ。止めはしない。だが、ここにいるゴブリンを駆逐しなければ、恐らく明日にでも付近の集落はゴブリンに襲撃を受けるだろう。先程は十と言ったが、拡張された状況からしてシャーマン以上の個体がいるだろう。となれば組織としての群れが形成されていると考えた方がいい。アクセルの街が襲われるのも時間の問題だ」

 

「そ、それなら尚更援軍を」

 

「一匹でも逃がせばゴブリンは新たな群れを組織する。仲間を呼びに行くのなら好きにしろ。俺はここに残りゴブリンを殲滅する」

 

 

頑なに意見を変えないゴブリンスレイヤー。

 

不安そうな顔を浮かべるめぐみんを前に、ダクネスがゆっくりと前に出る。

 

「行ってくれめぐみん。ここは私とゴブリンスレイヤーで食い止める」

 

「ちょっとダクネス!」

 

「アクアも行ってくれ。状況が状況だ。一刻を争う。道中で魔物に襲われでもしたら、爆裂魔法一発しか撃てないめぐみんだけでは危ないからな。それに」

 

ダクネスは二人へ振り返り、

 

 

「このシチュエーション・・・・・凄く燃える展開過ぎておかしくなりそうだ! はぁはぁ! 二人へ行けと命じて自分が残り、ゴブリンにる数の暴力に晒されなす統べなく組伏せられはぁはぁ! もう辛抱たまらんヒャッハー」

 

興奮した様子で奥へと走って行くのだった。

 

「・・・・あれは何か恐怖心を打ち消す魔法(きせき)でも使ったのか?」

 

実にいつもと変わらぬ抑揚の無い声で尋ねるゴブリンスレイヤーに、二人は揃って、

 

 

「「いいえ、あれが平常運転です」」

 

 

ダクネスのポンコツぶりを隠すこともしなかった。

 

 

「そうか」

 

そしてそれを聞いても驚きもしないゴブリンスレイヤーもまた、平常運転であったことは言うまでもない。

 

 

 

 

 

ゴブリンスレイヤー達がキールのダンジョンに潜っている頃、カズマとヘイヴィアは、セイバー連れてアクセルの街でも有名な、働けば働くほど貧乏になる不思議な店主のいるウィズ魔法具店へと足を運んでいた。

 

本来であれば今頃サキュバスサービスのお店に予約へしに行ってる頃合いなのだが、流石にセイバーに付きまとわれている状況では行くにも行けず、結局ウィズの店に来てしまった次第。

 

「へい! いらっしゃい! これはこれは日々悶々と沸き上がる欲を堪えきれずに色々ともて余している客人よ。お? 今日は世にも奇妙なお連れ様がいるではないか? どれどれ・・・・・・」

 

店に入って早々に舐めるように見つめられたセイバーは、驚きのあまりに後ずさると、慌ててカズマが割って入る。

 

「おいバニル。セイバーさんはこの街の人じゃないんだ。止してやれよ」

 

「ふーむ。なるほど道理で。喜べ客人。今ならそこの成金客人の将来性からサービスで占ってやろう。貴様の血縁者が早々遠くない街で、鬼の力を宿した者と共にいる」

「血縁者・・・・・? バニル殿と言ったな。それは本当ですか?」

「私はどこぞの女神と違って曖昧な甘言で人々を惑わすことはせんよ。どこぞの女神と違ってな!ふはははは」

 

ここぞとばかりにこの場にいない女神を罵る大悪魔に、ヘイヴィアが胡散臭そうな視線を向けていると、今度はバニルの視線がヘイヴィアに突き刺さる。

 

「普段から相方に美味しいところばかり持っていかれる不幸で哀れな客人よ。貴様の相方もこの場に客人の血縁者と共にいるのが見えた」

 

「マジかよ! クウェンサーがこの世界に来てるのか!」

 

期待と喜びに満ちた声を上げるなか、バニルはカズマを見てニヤリと笑みを浮かべる。

 

 

「して、世界の存亡に関わる情報があるのだが、我がウィズ魔法具店の上得意様よ。この魔道具をお一つ買わないか?」

 

「相変わらずだなバニルは。で、なんだよそれ」

 

「聞いてくれるか上得意様よ! これはだな、旅の灯り事情を解決してくれる便利なカンテラでな。スイッチ一つで内蔵魔力の循環で輝くエコなカンテラだ」

 

「デメリットは?」

 

 

「放熱機構がイカれててな。一度スイッチをつけると止まらず、高熱を発して持ち手が火傷してしまことと、最後には大爆発を起こすという難点がある」

 

 

「「要らんわああああああ」」

 

 

カズマとヘイヴィアが声を揃えると、バニルは残念そうにいつもの決まり文句を口にし始める。

 

「我がポンコツ店主はどういうわけかガラクタを買い集めることに関しては異常なまでの才能を発揮してしまってな。今も返品の為に箱詰めの最中なのだ」

 

「それでウイズガラクタいつも通り焦げてるわけか」

 

カウンターの中の床で、黒焦げになって横たわるウイズの姿に、ヘイヴィアが何とも言えなさそうな複雑な表情を浮かべた。

 

「本当、この街って不思議な連中が多いのな」

 

「して情報代代わりに買って行かぬか?」

 

「しょうがない。いくつか買っていくよ。武器として使えそうだしな」

 

「へい毎度! それではその気前に応じてサービスしてやろう」

 

「何で上から目線なんだよ」

 

「許してやってくれヘイヴィア。バニルはこういう奴だが悪い奴ではない」

 

「ぬははは。そう言うことだ。女子に蔑まれることで興奮する妙な性癖を持つ客人よ」

 

「絶対こいつ悪い奴だろ!」

 

性癖を暴露されあわてふためくヘイヴィアを余所に、バニルはマイペースに話を始める。

 

「まずここより先のダンジョン。以前私が利用しようとしたダンジョンで災厄が目覚めようとしている。急がなければ尊い命が二つ失われるだろう。そしてそこの女騎士。心して聞くがよい。この世界に呼ばれたのは偶然ではなく必然。人間の魔導師達が産み出した産物がこの世界に汝らを巻き込んだ邪神が呼応しておるわ。その産物は貴様がよくしっているものに相違ない。急がなくては貴様の血縁者は遠からず死ぬ運命にあるだろう」

 

「・・・・・・そうですか」

 

「悲観することはない。それは遠い未来の話。そして異界の邪神が動くと同時にこうして抑止力が集まっているのが証拠。まだまだ抑止力としては足りぬが、数が揃えば強力な力となろう」

 

「つまりは同じ仲間を探せってことだな」

 

「ふむ。普段煩悩まみれな客人にしては察しが良いな」

 

「なぁ、さっきからあんた俺にだけ言葉がきつくないか!?」

 

「おっとすまぬ、汝の悪感情が我輩好みであった故にちいな。そう怒るな客人よ。貴様達に教えておこう。最大の選択肢は生かすか殺すかだ。何れ選ばなければならない。それだけは努々(ゆめゆめ)忘れぬようにな! それでは我輩は忙しいので用が済んだら帰るがよい!」

 

 

 

まるで捲し立てられるような速さであったのだが、バニルの予言めいた言葉を前に、店を出てから暫くセイバーは押し黙っていた。

 

 

「つうかどうするんだよカズマ。カズマ達が以前行ったダンジョンでとんでも無いことが起きそうなんだろ?」

 

心配気な顔を浮かべるヘイヴィアに、カズマは困り果てたように頭を掻く。

 

「それについては皆が戻ってきてから話し合おう。何せセイバーさんの身内の話だってあるんだ。最もアイツらまさかキールのダンジョン行っててりしないよな」

 

「ゴブリン討伐だろ? ゴブリンって言ったらそこら辺にあそうな感じがするけどな」

 

そんな益体もない話をする中、前方から慌てた様子の見慣れた二人の姿を確認する。

 

 

「見つけましたよカズマ!」

 

「カズマさん大変なの! 危険が危ないの!」

 

「落ち着け二人とも! あとアクア、毎度のことながらその言葉間違ってるからな。恥ずかしいから他の人がいる前で使わないように! って他の二人は?」

 

アクアとめぐみんしかいない様子に、嫌な予感を覚えたカズマ。

 

 

 

そして、案の定、この後バニルの予言が当たっていたことを確信する三人であった。

 

 

 

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