あらすじにて言及しておりますが、この作品は更新凍結となった「EDF日本支部召喚」を短編として再構築した作品となります。前作とは異なり、短編前提で1話1話を可能な限り濃密に、そして設定が破綻しないように注意して書いていく予定ですので、前作の時のような更新ペースは期待しないでください。書き溜めしようかとも思いましたが、なんだか気持ち悪かったので書き溜めせずに投稿していきます。
それでは、再構築された
第1話 始まり
2013年7月17日。
その日は、人類史を、地球の歴史を大きく塗り替える日となった。アメリカ合衆国カリフォルニア州に存在している電波望遠鏡群「CARMA」が突如、その機能を大きく損傷させる程の出力と指向性を持った宇宙からの電波を受信し、それをきっかけに最大十数時間の時間差と出力の差異を持って、全世界の電波望遠鏡がこれを受信。最初は地球を包み込む程、それそこ宇宙規模の自然災害。それとも何らかの兵器実験が疑われた。しかし数ヵ月後、この調査を進めた調査団が国連総会の場で「宇宙人」の存在を明言し、その事態は決定的と なった。
歴史上初めて、明確に地球外生命体の存在、そして地球への接近が確認されたのだ。
2013年、全世界のあらゆる話題がその一点に集約した。宇宙分野のあらゆる専門家があらゆるメディアを通じて討論し、あらゆる者達が
2014年、人々は漸く落ち着きを見せ始め、そして疑問に思い始めた。
「
大小様々な説が飛び出た。友好説や融和説、偶然説や探究説。そして、侵略説。
殆どの人々が楽観的な説を推す中、しかし一部の人は最悪の侵略説を叫び続けた。「もはやSFだった物語は現実となったのだ」と。「例え楽観的説論が正解だったとしても、備え無しである程愚かな事は無い」と。
大多数の人類が楽観的な雰囲気を持ったまま宇宙人来訪の準備を進め始める中、2015年2月1日。
しかし実際の所は、EDF結成によって生まれる膨大な軍需産業と軍需経済の蜜を吸い取る為、多くの先進国と多国籍企業の協力の下に迅速な整備が進む事となる。結局の所、その手の人間からしたら異邦人の存在などどうでも良く、自分の懐が温まればそれで良かったのだ。一般人も、大騒ぎこそすれど自分の日常が変わらないのなら他人事とさえ捉えていた。
それが終わったのは2017年4月1日の事だった。
全世界に地球外生命体「フォーリナー」が襲来、地球侵略を開始した。此処に、
しかも人類にとって運が悪い事に、4月1日はエイプリル・フール。つまり「嘘をついても良いという風習」がその日に存在していた。それだけにフォーリナーの侵略を冗談のキツいウソと捉えてしまった人が多く、それ故に初期の避難活動に支障を起こし、結果的に世界的に膨大な犠牲者を生み出す事となった。
その日から、人類の壮絶なる生存戦争、「フォーリナー大戦」の幕が上がった。
各国軍とEDFは連携や仲違いを起こしながら、あらゆる場所で防衛戦線を展開。あらゆる兵器や手段を用いて、フォーリナーの巨大生物や兵器と苛烈な戦闘を全世界で巻き起こす。しかし、その力の差は余りにも圧倒的に過ぎた。僅か15日で制空権がフォーリナーの手に落ち、残った陸軍と海軍も膨大な物量の巨大生物や未知数のテクノロジーの兵器の前に、戦士達は次々と倒れていった。そして欧州戦線の崩壊をきっかけに、各戦線は次々と崩壊。人類の有力な戦力はほぼ全てが壊滅する事になる。それは2017年4月1日より、僅かに約半年の事だった。
しかし、例外がただ一つ存在していた。
EDF日本支部と日本国、つまりは日本列島防衛戦線。この戦線は戦線の小ささと人類戦力の小ささにも関わらず、フォーリナーの新種や新兵器の殆どが真っ先に確認される程の苛烈な攻防戦を繰り広げていた。そして各戦線が崩壊していく半年が経過しても、北海道、関東、中国地方西部、四国、九州を完全放棄しつつも唯一「戦線」としての防衛戦を展開可能な軍隊となっていた。しかし、残されたのは3600万の人類を押し込んだ関西全域と東海地域、中国地方東部。そしてそれを守る僅かばかりの残存戦力。日本政府と自衛隊は組織的に崩壊、EDF日本支部も戦力は限界に近く、最早反撃など夢の中の夢、人類の命をほんの少しだけ引き延ばすだけの抵抗に過ぎなかった。目の前に広がるは、
それを見たフォーリナーの
人類至上長い2時間の戦いの結果、EDF日本支部は攻撃部隊の8割を喪失しながらも、マザーシップの撃墜に成功。
それは、正に奇跡の勝利と言っても過言ではなかった。そしてそれをきっかけに、マザーシップ船団は宇宙の彼方へと姿を消していった。人類は、余りにも多大な流血を以って、異邦人の船団を地球から追い返したのだ。
数日後、EDF日本支部は地球奪還作戦「オペレーション・リィーカァプチャ」を発動。まずは日本列島の完全奪還を目指し、再攻勢を開始。約2ヶ月で日本列島を完全奪還*2し、世界各地への戦力投射を開始。最初こそ近辺の極東からだったが、やがて人類支配領域の拡大と再構築されたインフラの拡大に合わせ、欧州や南北アメリカ、オセアニア等の地域にも派遣を開始。各戦線に於いて、フォーリナー大戦の経験を生かして再び生まれた新型戦艦による強力な火力支援によって橋頭堡を確保し、現地人類勢力と合流*3。インフラ整備と戦力拡充、化学食糧の提供などを施しつつも巨大生物を掃討。そして2021年10月30日、遂に最後の巨大生物を掃討し、地球奪還作戦は成功。
人類は地球全土を取り戻し、地球に残されたフォーリナーを絶滅させたのだ。それは、フォーリナー大戦勃発より約4年半の事だった。
そして、人類は世界復興の道を歩み始める。殆どの街が瓦礫と化し、森林の多くは灰となり、原子力発電所が存在していた地域は人の制御がなくなった事によってメルトダウンが発生。最低でも数十kmの範囲が放射能に汚染され、人類が近づけない不可侵領域と化した。海は石油プラットフォームより漏れ出た大量の石油と、海岸部に存在する原子力発電所より漏れ出た放射能汚染によって甚大な被害を受けた。空は唯一、何も変わらない青空を見せる。畜産業は文字通りの全滅と言って良い程の損害を受け、化学的に生産される化学食糧に代替された。
結論から言うと、地球の自然は致命的なレベルで破壊され、最早フォーリナー大戦以前の姿を取り戻すのは不可能なのは確実だった。しかしそれでも、残された土地で再び人類は文明の再建を始めた。何も完全に元通りにする必要は無い。何せ人類は、僅かに
フォーリナーが遺していったテクノロジーを吸収した人類は、僅か数年で大きな復興を見せた。都市部には新品なビル群や住宅地が立ち並び、側にはEDFの基地や地下シェルターが建設され、市民達に安心感を与える。郊外には基地の他に対宙超大型兵器が建造され、再びフォーリナーが襲来した時に宇宙空間で船団を完全破壊する為の防衛網が張られた。
人類は再び、点在状態でこそあれど安泰の地を手に入れる事が出来たのだ。
2028年6月27日午後11時55分、東京基地第9監視塔内。周囲を見渡せる頂点部に、4名のEDF兵士が居る。2名は外を適度に見張り、2名は中央に置かれたテーブルでトランプを楽しんでいる。
「おらフルハウスゥ!これでどうだ!」
「悪い、フォーカードなんだわ」
「うっそだろお前!?いやイカサマしてんだろ絶対、その運の良さはあり得ねえって!?」
「してないって。さっきお前に服に仕込みが無いか確認させたばっかだろう。さ、出しな」
「だーから言ったろ。其奴と賭けしたら割に合わないどころか全部持ってかれるって。イカサマしてるようで全くしてない豪運を其奴は持ってるんだよ」
「俺等もどんだけこいつに掛け金持ってかれたのか、数えたくない」
「だー、畜生…ホラ」
EDF第3世代アーマースーツの機能に搭載された圧縮空間から、コンビーフの缶詰を取り出し、テーブルに置く。それを向き合っていた兵士が受け取り、圧縮空間に仕舞い込む…と思いきや。彼は手袋を外し、巻き取り鍵を手に取ってペリペリと缶を開け始めた。
「あ、お前此処で食うのかよ」
「小腹満たしと夜食を兼ねて。欲しかったらポーカーで勝ってからな」
「もうやらねぇよ。ベット出来る最低金しか残ってねぇ」
開封されて姿を現した塩漬けの牛肉に、齧り付く。
「…相変わらずあんま旨くないな…」
「そりゃ天然食糧と比べたらなぁ…」
「本物のコンビーフを食いてぇ」
「1個100gで
「無理」
「なら諦めろ。畜産業の再建は進んでるが、このまま平和だったとしても数十年後の話だろうさ」
「そうだな…」
底に残されたコンビーフを口の中に運ぶ。
そして時刻は、2028年6月28日となった。
それは、あまりにも突然で、唐突だった。
6月28日午前0時0分ジャスト。日本列島全域を、目の前にある自分の手足さえも見えぬ程の「光」が覆い込んだ。
それは外のみならず、建物内や果てには地下でさえ例外ではない。しかし、それ程の強烈な「光」であるにも関わらず、誰1人としてその視力を損なう事は無かった。
数秒後。「光」は何もなかったかのように消失し、再び本来の景色を映し出した。
「…………今、のは、何だ?」
東京基地第9監視塔の彼等は、その現象に対し呆然としていた。
しかし次の瞬間、基地全域に響き渡る音量と数の警報音が響き渡る。その警報音の意味は、「第一種即時出動態勢移行」。かつて存在していたアメリカ合衆国が定めていた「
「ッ…!周囲警戒!!」
4人は直ちにアサルトライフル「AF20」の安全装置を解除。初弾を装填して構え、外を睨む。その上空を、東京基地よりスクランブル発進した戦闘機「ファイター」の編隊が通り過ぎた。
それは何も、東京基地だけの話ではない。
千歳基地、帯広基地、山形基地、岐阜基地、広島基地、高知基地、福岡基地、鹿児島基地、そして日本列島に於ける「首都」に相当する大阪基地、そして46都道府県*4の同様に第一種即時出動態勢が発令。陸海空、全軍が出動し臨戦態勢へと移行した。
同時にあらゆる都市に第一種即時出動態勢による避難命令が発令されると共に、民間の携帯やPCなどの通信端末に、以下の文章がほぼ同時に送信された。
-Jアラート発令-
該当地域:日本列島全域
詳細:6月28日0時0分、該当地域にてフォーリナーの攻撃の可能性がある正体不明現象が発生しました。EDF日本支部はこの事態を受け、第一種即時出動態勢を発令、合わせて該当地域の避難命令を発令しました。該当地域にお住まいの皆様は、直ちに防護アーマースーツを着用し、最寄りのシェルターへと避難してください。
都市部に住まう市民達は、響き渡る警報音とJアラートの内容を見て、支給されていた防護アーマースーツを着用して家や会社、建物から飛び出し、最寄りのシェルターへと整然としながらも殺到した。
「落ち着いて避難して下さい!避難ルートにはEDFの兵士達が守備に付いています!何があっても決して足を止めず、冷静にシェルターへ向かって下さい!」
避難活動を支援する部隊の1人が拡声器でそう呼び掛ける。
彼等の眼前には、歩道を飛び出して道路にも溢れて歩く市民達。彼等の任務は全国の3600万人の市民達を無事に、そしてパニックを起こさせる事もせず、かつ1分1秒でも速くシェルターへと避難誘導させる事。これだけを聞くと困難にも思えるかも知れないが、こういった事態に備えてEDFは年に4度、不定期的に避難訓練を実施していた。
正直言って
その為には、必要とあらば己の命さえも捧げる覚悟さえも持って。
騒然としているのは市民達だけではなく、EDF日本支部も似たような状況だった。
各軍各部隊は当然だが、特に騒然としているのは大阪基地にあるEDF情報本局。彼等は不明現象発生直後から発生した、日本列島外の全通信途絶の原因調査と、不明現象の調査、フォーリナーの存在の確認などで正にてんてこまいな状態となっていた。
「札幌基地より観測データ受信!!」
「第2宇宙観測台より報告!現在もフォーリナーに相当する人工物は確認出来ず!!」
「データサーバーの負荷がイエローに突入!このままでは46分後にサーバーがパンク状態に陥ります!!」
「不必要なデータを全て他部局のサーバーに一時避難させろ!実行前に連絡を入れて許可を取り付ける事を忘れるなよ!!」
騒然とする中、情報局長の席に設置されていた固定電話が突然鳴り始める。局長は1秒にも満たぬ反射速度で送話器を掴み取って通話を開始。
「もしもし!?」
『きょくちょー!お願いがあるんだけど!』
「篠ノ之博士ですか!?分かってると思うんですが今忙しいんですよ!!」
『分かってるから手短に言うよ!!あの現象の発生前後の全国の
「全部ですか!?」
『全部!!そこから全部洗って異常なデータを見つけ出す!!今は猫の手も借りたいでしょ!?早く決めて!!』
「…分かりました、直ぐに送ります!」
『頼んだよ!』
短い通話を終え、荒々しく通話機を置く。
「不明現象発生時の前後観測データ全てを、篠ノ之博士に送れ!!最優先だ!!」
同時刻、大阪基地兵器開発部室。
本来ならまだ勤務時間外で、誰一人としていない筈の室内に、1人の女性の姿があった。
「……………………………」
彼女の姿は、余りにも特異的。胸元が開いたデザインのエプロンドレスと機械風のウサミミカチューシャを頭に付けた、まるで不思議な国のアリスの様な、かなり独特な服装を着込んでおり、側から見ても、というかどう見てもEDFの科学者には見えない。何ならEDF職員にも見えないし、寧ろ不審者として捕まるのが自然なそれだ。
しかしこれが彼女の
彼女の名前は、篠ノ之束。
不思議の国のアリス風の研究衣を着こなすと共に機械の様なウサミミを着用する姿は変人以外の何者でも無いが、そのふざけた格好とは裏腹に、数多くの新技術をEDFに齎した現代のエジソン。
その功績は抜粋するだけでもフォーリナーテクノロジーを利用した兵器開発、圧縮空間の開発、第2及び第3世代のアーマースーツの開発、ウイングダイバー及びフェンサーの兵種開発、自立衛星AIの開発、etc。彼女の頭脳は多岐に渡る分野に於いて画期的な発明を数々と起こし、フォーリナー大戦時には数十の新技術の開発に成功し、数百もの新兵器の開発に携わっている。殆どの兵士の間では「兵器開発部無くして人類の勝利は無かった」と言われているが、正確には「篠ノ之束の頭脳無くして人類の勝利は無かった」というのが正しい。彼女が新たに開発した技術をきっかけに、他の者が其処から発想を得て更なる開発に成功する件もあり、EDFは彼女の代用になり得る頭脳を発掘する事は出来ていない*5。
その為、彼女は
そんな彼女は今、2台の第二世代量子コンピュータ、2台の画面、2個のマウス、2個のキーボードを利用し、情報本局から送られてくる膨大なデータを調査していた。目はギンギンに開き切って2台の画面に映し出す情報を脳に読み取り、両手は目にも止まらぬ速度で2つのマウスの操作と2つのキーボードの操作を忙しなく行う。
「………巫山戯るな………」
不意に、彼女の両手が止まる。徐々に両手は握り拳を作り、ギリギリとその手から音が鳴らんばかりに力が入り始める。
そして両手が振り上げられ。
「何っで!今来るんだよクソッタレのフォーリナーァッ!!」
振り下ろされ、その着地点となった2つのキーボードを
「フーッ、フーッ…!!ああ、もう、予備のキーボード持ってこなきゃ…!!これも全部フォーリナーのせいだ!!アンのド畜生野郎共、全員死ね!!共食いして絶滅しろ!!自害してこの世から居なくなれ!!箒ちゃんやちーちゃん、いっくんにりーちゃんを殺した事を死んで詫びろォッ!!」
自分がキーボード壊したと言うのに、この責任転嫁。まぁ彼女のみならず、全人類がフォーリナーには憎悪を抱いているから、その感情自体は当然といえば当然ではある。だからと言ってキーボードを2つも壊していい理由にはならないが。
「…待ってろフォーリナー、お前達が一体何をしたのか、直ぐに丸裸にしてやる…!!」
予備のキーボードをパソコンに接続し、作業を再開。
その後、兵器開発部室は明かりが消える事なく、一夜中タイピング音が響いていた。
突如、何の前触れも無く日本列島全域を襲った不明現象。
それが引き起こした事は何か。それが判明したのは、およそ13時間後のことだった。
今回は此処まで。次回をお楽しみに。