次からは追記やらなんやらで時間かかります。
6月28日午後1時47分、EDF日本支部、第一会議室。
其処に集まっているのは、日本支部司令長官「大石宏光」を筆頭に参謀長や戦術士官等、日本支部を動かす重要人物が集っていた。…その中に一人、机に突っ伏して動かないウサ耳とエプロンドレスの格好をした女性がいるが、彼等は意図的に無視していた。
「…すまない、もう一回言ってくれ。何がどう起こったんだ?」
その声を挙げたのは、日本支部司令長官 大石宏光。
彼を含む全員の表情は驚愕や困惑に染まり、報告を伝えている情報局長自身も内心信じられない事ではあると思っている。
「…では、もう一度申し上げます。日本列島は、「転移」したと考えられます」
『…………………はぁ?』
以下同音、しかしそれも無理はない。フォーリナーや先の不明現象に関する報告が始まるのかと思ったら、初手で「日本列島の転移」と言われる等、彼等でさえ思ってもいなかった。
「…この場でいう以上、それは決して誤った報告では無いのだろうが…だとしても、どうしてそのような結論になった?」
「報告書は読みましたが…これに関しては、調べた本人が直接言った方が早いでしょう」
そう言って、情報局長はその人物…突っ伏している女性、篠ノ之束に視線を向ける。それに合わせて全員が束に視線を向け、その気配に気付いたのか、束はゆっくりと顔を上げ、首を横に傾けてコリを剥がす。
「…篠ノ之博士、大丈夫ですか?」
「ん〜…まぁ、うん。だいじょーぶ。7年前とかはもっとエグい労働してたし。説明だよね?」
「はい」
「おk」
ポキポキと骨も鳴らし終え、数枚の書類と会議室の中央に設置されている立体映像プロジェクターのリモコンを手に取り、立ち上がる。
「ほい、そんな訳で説明始めるよ〜。まずフォーリナーの観測に付いては、宇宙観測チームによると白。未だにフォーリナー、もしくはそれに相当する人工物は確認出来てないよ。寧ろ、問題はこっち」
リモコンを操作し、立体映像プロジェクターを起動。すると、其処には円状に座る皆に見えるよう配慮して複数枚の画像が立ち上がる。その絵は、どうやら星空の画像らしい。
「これは昨日、つまり6月27日に観測出来てた日本列島から観測出来た天体。で、例の不明現象発生後に観測してる天体がコチラ」
画像が切り替わる。其処には、同じく星空の画像。しかし、先の画像と比べても星の位置や数が全く合っていない。
「…この画像は?」
「言ったでしょ?不明現象後に観測出来てる画像だって。つまり、今、私達の上に浮かんでる天体の画像がこれ」
『…………………』
「異常は他にも。まず水平線の距離拡大。約4.65kmから約4倍の17kmに。これを考えると、多分惑星直径も3倍とか4倍になってるんじゃないかな?全衛星の通信が途絶したからなんとも言えないけど。この変化にも関わらず、重力加速度は9.8065
「博士」
「…ごめん。えーと、次に大気汚染。これはもう劇的だったね。日本列島に於ける空気質指数*1の平均判定は橙から緑。空気が物凄く、信じられないレベルで美味しくなった。汚染地域は相変わらずだろうけど、少なくとも都市部で汚染を気にする必要は無くなったかもね。今後の観察は必要だけど。次は海洋汚染。これも空気質指数と同じくらい改善。ぶっちゃけ言ってフォーリナー大戦前よりも水質良いよ。その証拠に、昨日まで絶滅してるのが確実視されてた海洋生物が日本列島付近にメッチャいるのを、生きてた海底ソナーの一部が拾ってる」
「んなっ…!?」
「た、だ、し!確認出来た海洋生物は全種類が未知の生き物。地球の海洋生物に似てるっちゃ似てるけど、毒性があるかないかとかは実際に調べてみないと分からないよ」
「で、その他諸々の計測データに関しては多少の差異こそあれど、今言った異常に比べたら報告する必要がない程度の物。これら全てを纏めた結論を言うなら…突拍子の無い事なんだけど、それこそ「日本列島が全く異なる星に転移した」なんて事じゃないと、説明出来ないんだよ。これで、私から話すことは終わり」
そう言って、彼女は着席。
星の座標変化等、十分な根拠を持って発表されても普通、「日本列島が転移する」など聞いたら万人は「あり得ない」と言うだろう。しかし彼等EDFは、あの地獄を生き延びてきた者達の反応は、少し違った。
「…フォーリナーの仕業か?」
「それはまだ不明。だけどその可能性も捨て切れないね」
「しかしもし奴等の仕業だとしたら、一体何の為に?」
「10年前の復讐も十分に考えられる」
「いや、それだったら転移と同時に攻撃している筈。半日も待つのは考えられない」
「転移そのものがフォーリナーの新兵器というのも考えられる。邪魔な奴を容易に排除出来るなら…」
「しかし転移前はフォーリナーはまだ観測されていなかった。奴等の仕業なら果てしない距離から我々に攻撃を…」
憶測が憶測を呼び、ザワザワと騒めく第一会議室。
が、日本支部司令長官が静かにテーブルを叩き、数秒の間を置いて沈黙が再び訪れる。
「此処で憶測を話し合っても何も始まらん。情報局長、篠ノ之博士。他に何か情報はないか?」
「日本列島が転移したという情報以外、何も…」
「こっちも同じく。そもそも私の本来の所属は兵器開発部、私独自に調べられるのもこれが限界だよ」
「これ以上の近辺調査となると、海軍空軍の出動が必要となります。衛星の通信は未だにロストしており、宇宙からの調査は不可能です」
「…調査に最適かつすぐに動かせるのは?」
「第1、第3、第7、第9飛行中隊、第1、第2艦隊、そしてアリコーン級潜水戦闘空母1番艦 アリコーンです」
「そうか…いや待て、アリコーンだと?予定だと確か、昨日補給を終えて太平洋にいた筈だぞ」
「それが…現場の手違いで補給物資の搬入に多大な遅れが生じていたようです。補給を終えて東京湾より出航後、日本領海内を航行中に転移に巻き込まれたようです。」
「…あの艦も巻き込まれたのは幸運と言うべきか、不運と言うべきか…兎に角状況は分かった」
大石が立ち上がると同時に、会議室に座っていた全士官も立ち上がる。
「今回の転移事象はとても隠しきれるものではないだろう。市民達には嘘偽り無く公表する。全EDF陸軍部隊は起こり得る混乱に備え、治安維持に努めよ。空軍海軍はフォーリナーの襲来に備え、いつでも出動出来るように。第1、第3、第7、第9飛行中隊、及び第1、第2艦隊、アリコーンに出動を要請。日本列島周辺を調査しろ。どんな細かい事でも良い、何かあったらすぐに報告させるのだ。
皆も分かっているだろうが、此処が正念場だ。我々には物資が限られている。弾薬、燃料、食料。全てが万全とは言い難い。日本列島外の補給が停止した今、我々は戦わずして斃れる恐れすらある。これを乗り越え、生き残らねばならない!諸君らの健闘を期待する!」
『了解!!』
同日午後2時、日本列島より南30km地点の海。
穏やか海の中。深度200mに、その艦はいた。その全長は495m、全幅116m、全高54m。とても潜水艦とは思えない巨体を持つその艦の名は、「アリコーン」。
フォーリナー大戦後、世界復興の最中に建造されたEDFの決戦兵器が一つ、「決戦要塞X7-1」のナンバリングが与えられた超兵器。
潜水艦でありながら戦闘機の離着艦機能、200mmバーストレールガン2基、600㎜レールキャノン1基、VLS48基、CIWS8基を搭載する
本来ならばこの艦は、昨日の時点で東京湾から出航して太平洋へと駆り出している筈だったのだが、補給物資搬入の手違いで出航時刻が半日遅れるトラブルが発生した。本来なら単なるトラブルというだけで何の問題も無い筈のものだったが、先の不明現象…否、「転移現象」に巻き込まれてしまった。
唯一連絡が取れた日本支部からの要請により、まずは日本列島付近の哨戒任務に付いていたが、つい先程日本支部より、転移現象に関する情報が届けられた。これを共有する為、アリコーン艦長 マティアス・トーレスは発令場の艦内放送を用いて全艦に情報通達を行なっていた。
「…以上が13時間前に本艦…否、日本列島周辺に確認された不明現象の詳細だと思われる」
『…』
沈黙。
無理もない。日本支部が保有する通常艦隊とは異なり、決戦要塞X7-1として建造されたアリコーンは、人類の中でも最高峰の人材が選ばれてきた。それ故に人員の出身は多国籍に渡り、だからこそそのショックは大きい。
日本列島周辺が転移したと言う事は、彼等は一瞬にして「故郷」を失った事と同意義と言えるのだから。
「…皆の気持ちは分かる。私も皆と同じだ。護りたかった故郷は、帰りたかった故郷は、あの瞬間の一瞬で遥か彼方に消え去った。しかしそれで我々が立ち止まる理由になり得るか?」
「否、そうはなり得ない!我々にはアリコーンしか無いのか!?否!!まだ我々には3600万の守るべき市民達が、日本列島がある!!EDFが、我々が立ち止まってしまうその時は、人類が滅亡するその瞬間だ!まだ人類は絶滅などしていない、ならば我々は立ち止まってはならない!たとえ故郷を失っても、たとえ戦友を失っても、たとえ家族を失ったとしても!我々は人類を守る為、今此処に立っている!今こそ、その使命を果たす時が来た!!」
「この情報と同時に、我が艦アリコーンに指令が届けられた!我々はこれより浮上し、日本列島南部海域の調査を開始する!航空戦力も動員し、徹底的に付近の状況を調べ上げる!!」
「アリコーン、浮上を開始せよ!!」
海面を、巨体が割ってその姿を表す。
縦揺れが収まった直後、船体後部の…水上艦ならば艦橋に当たるであろう箇所の膨らんでいる楕円部の一部が開放。全長およそ480mの滑走路が出来上がる。そして、楕円部を屋根とした部分に仕込まれていたエレベーターが作動し、船体内部の格納庫にて整備されていた戦闘機 ファイター2機が姿を表す。
エレベーターが固定された直後、ファイターはアフターバーナーを開始。最大速度マッハ4を叩き出す大推力エンジンが火を吹き、急加速を開始。100m程進んだところで、機体下部の補助ブースターが起動。低速域にて超機動を行う事を主目的として搭載されたそれは、副次的に超短距離での離陸を強引に可能とした。下部から提供される推力によって強引に機体は勢いよく離陸し、直後安定飛行が可能な速度に到達。そのままアフターバーナーを継続し、水平線の先へと飛行していく。
再び2機のファイターが離陸。それを繰り返し、最終的には30機のファイターがアリコーンより離陸した。
用語解説
アリコーン
エースコンバット7DLCに登場する超兵器。原作では「潜水航空巡洋艦」という艦種になっているが、プレイヤーからしたら「お前潜水航空「戦艦」だろ」と言わんばかりの量のミサイルとCIWS、レールガンの弾幕を展開し、凄まじい耐久力を誇る。
前作におけるデスピナ枠。
マティアス・トレース
こちらもエースコンバット7DLCに登場する。原作のネタバレとなるので多くは語れないが、異色な経歴から水上艦艦長からアリコーン艦長となる。
恐らくエスコン随一の狂人。