EDF日本支部召喚:Restart   作:クローサー

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思ったより話が進まなかった。


第3話 接触

日本列島より西南西980km地点の上空に、空気を裂く物体が飛行していた。

 

「…まさか、転移なんてものが現実になるなんてな…」

 

決戦要塞X7-1 アリコーンより発艦したファイターのコックピットで操縦桿を握るパイロットが、小さく呟いた。

ファイターはフォーリナー大戦後に生まれた第6世代戦闘機であり、フォーリナーのテクノロジーをふんだんに使用したEDF最強かつ唯一無二の制空機である。機体構成はカナード付きデルタ翼機を採用。推進力となる双発エンジンには3枚パドル式左右独立三次元推力偏向ノズルを使用し、各所に補助用の小型ブースターを取り付けており、低速時には小型ブースターを使用して戦闘機とは思えぬ超機動を行う事が出来る。

搭載兵器は20mmガトリング砲2門、最大24の目標を同時に撃破可能な全方位多目的ミサイル誘導システム「ADMM」、汎用レールガンユニット「EML」の3種。最高速度はマッハ4に達し、巡航速度もスーパークルーズとなるマッハ2を発揮する、正に怪物と形容出来る性能を誇る。

 

そんな機体が何故そんな地点を飛行しているのかというと、正に今パイロットが呟いた「転移現象」が原因だ。

 

事態を把握したEDF日本支部は、とても隠せるものではないと判断して転移を発表。シェルターでその発表を聞いた市民達は混乱や不安に包まれる事となったが、フォーリナーの姿は確認出来ないという事もあり、EDF日本支部が想定していた暴動などは幸運にも起こることは無かった。

しかし、突然の出来事故にEDF日本支部の物資は限られている。食料は化学的に生産される化学食料を中心としていた為に、配給制とすれば日本列島の生産施設で十分に賄う事が出来るが、燃料弾薬となるとそうは行かない。日本列島は無資源地域だった為に、燃料弾薬は日本列島外からの補給に頼り切っていた。

補給が途切れ続ければ、EDF日本支部は1年で燃料が尽き、戦わずして自滅する。この緊急事態に、第1、第3、第7、第9飛行中隊、第1、第2艦隊、アリコーンは日本列島外の調査任務に出動していた。

 

「果たして、どうなるのやらな…ん?」

 

レーダーに明確な反応。

 

(数1、速度120km/h、IFF反応無し、同高度で接近中…か)

「此方SACS3。アリコーン、応答求む」

『此方アリコーン、どうした?』

「レーダーにアンノウン1捕捉。これより接近及び捕捉、アンノウンが飛行してきた地点の地域調査を試みる」

『了解した、直ちに日本支部に報告する。映像記録を開始せよ』

「了解」

 

ヘルメットに搭載されている超小型高性能撮影カメラを起動し、録画を開始。

自然と操縦桿を握る手に力が入る。ここから先は未知の領域、何が起こるか分からない。

 

(全兵装安全装置解除。…まだ引き金に指は掛ける段階じゃないな)

 

ファイターは僅かにエンジン出力を上げ、アンノウンへ接近する。

数分後、パイロットの視界に、アンノウンを目視する。しかしそれは、ある意味想定内で、しかしある意味想定外の物だった。

 

 

「……… Dragon()………?」

 

 

 

 

 

 

晴天の空の中、1匹の竜が1人の人間を乗せて羽ばたいている。

クワ・トイネ公国の竜騎士マールパティマは、「ワイバーン」と呼ばれる飛竜に乗り、公国の北東部の沿岸哨戒の任に就いていた。

クワ・トイネ公国の北東方向には何もない。青い海が広がっているだけだ。しかし現在、クワ・トイネ公国は隣国のロウリア王国と緊張状態が続いており、何もない北東方向からのロウリア王国軍の奇襲も十分に考えられた為、こうした哨戒任務も発生している。

今日も何もないまま哨戒任務が終わる、そう思っていたマールパティマの視界に、異物を目視する。

 

「ん…?」

 

よく目を凝らし、それを見る。双方が真っ直ぐ近づいている為、接近は速い。

 

「なん、だ…?羽ばたいていない?」

 

彼がよく知る飛竜は、羽ばたかなければ空を飛ぶことは出来ない。しかし真正面から向かってくるそれは、一切羽ばたいていない。彼はすぐに通信用魔法具を懐から取り出して司令部に報告する。

 

「我、未確認騎を発見。これより要撃を開始し、確認を行う」

 

高度差は殆どない。マールパティマは一度未確認騎とすれ違い、後方より距離を詰める事を選択する。

そして、未確認騎とすれ違った。

 

(なんだ、あれは…)

 

マールパティマの認識からすれば、未確認騎は文字通り「未知」だった。羽ばたいておらず、何処かから大きい音が響いている。そして彼の位置からは見えていないが、茶色の胴体に蒼色で書かれた知らない模様が2つ描かれている。

彼はワイバーンを羽ばたかせて反転、未確認騎の追跡を開始する。大きな風圧を受けつつも、一気に距離を詰めれる。その筈だった。しかし追いつくどころか逆にあっという間に距離を離され始める。

慌ててワイバーン最高速度の235km/hで追跡を試みるが、それでさえも未確認騎は速く、段々と視界から小さくなっていく。

 

「なんなんだ、アレは…っ!?」

「司令部!!司令部!!我、未確認騎の確認、追跡を試みるも速度が違いすぎて追い付けない!未確認騎は本土マイハーク方向へ進行!繰り返す、未確認騎はマイハーク方向へ進行した!」

 

 

 

 

 

 

マールパティマからの報告を聞いた司令部は、大慌てとなっていた。

第三文明圏最強の兵器であるワイバーンでさえも追い付けない未確認騎が、よりにもよってクワ・トイネ公国の中枢都市マイハークに接近していると言うのだ。未確認騎は速度からして、既に本土領空へ侵入している可能性が非常に高い。

マイハーク付近に駐屯していた第6飛竜隊に魔法通信が掛かり、緊急指令が流れる。

 

『第6飛竜隊、全騎発進。未確認騎がマイハークに接近中、領空侵入の可能性極めて大。発見次第直ちに撃墜せよ。繰り返す、発見次第直ちに撃墜せよ』

 

緊急指令を受け、第6飛竜隊が次々と滑走路より空に舞い上がった。全力出撃、12騎全騎。

そして直ちにマイハーク北東方面に飛行し、運良く未確認騎との真正面の正対に成功した。最初は点ほどに小さく見えた未確認騎は、あっという間に大きくなっていく。

その姿に、第6飛竜隊隊員は各々の感想を持つ。

 

「速いな…全員、聞け!導力火炎弾の一斉射撃で未確認騎を撃墜する!未確認騎は我が方の速度を凌駕しているとの事だ、攻撃のチャンスはすれ違う一瞬のみ!各人、日頃の訓練の成果を見せろ!」

 

第6飛竜隊隊長の指示を受けてワイバーン12騎は横並びとなり、口を開けて火球を形成していく。これこそがワイバーンが第三文明圏で最強と言われる所以、導力火炎弾。12発の導力火炎弾を受けて無事だった物体は、少なくとも彼等は知らない。

そうして攻撃のタイミングを伺っていたら、未確認騎は突如として高度を上げ始めた。

 

「なぁっ!?」

 

ワイバーンの最高高度4000mを飛行していた第6飛竜隊にとって、未確認騎の更なる高度上昇は想定の外も外。彼等からしたら4000m以上の高空を飛ぶなどあり得ない事なのだ。

それ故に、ワイバーンの最高高度4000mしか飛行出来ない第6飛竜隊は未確認騎が真上を飛んでいくのを見守る他に無く、唯々己の無力を嘆くしかなかった。

 

 

 

 

 

 

クワ・トイネ公国政治部会。

公国を代表する者達が集う会議の中、首相のカナタは内心で頭を抱えていた。

前日、軍事卿から正体不明の飛行体がマイハーク上空に侵入、同都市を偵察するように旋回飛行した後に去っていったという報告が上げられた。その飛行体は飛竜ワイバーンが追いつかぬ程高速、かつ辿り着けない程に高空を飛行していた。

所属は不明、機体に国旗と確認できる物も見つかっていない。

 

「この報告について、皆はどう思い、どう解釈する?どんな意見でも構わない」

 

カナタの言葉に、真っ先に情報分析部長が発言する。

 

「当部分析担当班によると、西方の第二文明圏列強国「ムー」が開発している飛行機械に酷似しているとの事です。しかしムーの飛行機械と、今回の飛行物体の速度が余りにも違いすぎる上に、何よりも距離が広大過ぎます。我が国から2万kmも離れているのです、幾ら何でも、この距離を飛行するのは非現実的であると思われます」

 

結局は振り出しに戻り、場が膠着する。その時、外交部の幹部がドアを破らんばかりの勢いで場に飛び込んでくる。

 

「報告します!!」

 

その幹部から上げられた報告は、大きく纏めると以下の点になる。

 

本日朝、公国の北側海上に全長およそ300mにも及ぶ超巨大船が出現。海軍が臨検を行ったところ、EDF日本支部という国?の外交官と接触、敵対の意思が無いという旨を伝えてきた。他にも複数事項が判明。

1.EDF日本支部は、突如としてこの世界に転移した。

2.元の世界と断絶した為、哨戒機にて付近の捜索を行っていた。その際にロデニウス大陸を発見。捜索活動中に公国の領空侵犯をしてしまった事は深く謝罪する。

3.クワ・トイネ公国と直ちに会談を行いたい。

 

余りにも突拍子も無い、普通なら考えられない内容に政治部会は荒れた。

しかしEDF日本支部という統治機構は礼節を弁え、尚且つ謝罪や会談の申し入れは一応の筋は通っている。

この事から、まず外交官を官邸に招待する事が決定された。

 

 

 

 

 

 

クワ・トイネ公国公都 首相官邸の応接室前。

国を取り纏める首相のカナタは、政治人生に於いてこれ以上にない程の緊張を抱いていた。

通常ならまず外務局の者が交渉や会談を打ち合わせ、外務卿が国交締結を取り仕切った後、数多くの根回しや長い静観を経て初めて、クワ・トイネ公国に於ける政務元首の首相が、相手国の元首と条約宣言を行うのがクワ・トイネ公国の順序であった。

しかし、現在のクワ・トイネ公国は隣国のロウリア王国と緊張状態が続いており、準戦時体制にある。この状況に於いて、力のある国とは関係を持っておきたい。そして万が一、EDF日本支部が覇権的な思想を持っていた場合。クワ・トイネ公国は潜在敵国を2つ持つ事となり、その国力が耐えられる可能性はより低くなる。

首相が担当者に緊張するなど情けない話だが、しかし未確認騎、超大型船の両方は想像を絶する程に高度な技術力を示している。その国力は本物である事は間違いない。故に、彼が緊張を隠せないのは無理もなかった。

 

(…入るか)

 

応接室内には、一足先にEDF日本支部の使者を通してある。

ドアを開けて入室すると、使者…EDF日本支部情報局員の3名は席を立ち、一礼した。

 

「初めまして、EDF日本支部情報局の田中と申します。急な訪問にも関わらず、国の代表が対応すると聞き及んでいます。光栄の極みです、どうかよろしくお願いします」

「ええ、よろしくお願いします」

 

クワ・トイネ公国は首相カナタ、外務卿リンスイ、外務局員5名となる。

 

「司会進行を務めます、クワ・トイネ公国外務卿のリンスイと申します。よろしくお願い致します。…早速ですが、EDF日本支部の皆様、貴国の来訪理由をお伺いたい」

「はい、まずは資料を配布してよろしいでしょうか」

 

情報局員の1人が資料を配布する。しかしその資料を見て、リンスイは顔をしかめた。

 

「すみませんが…何と書いてあるのか全く読めません」

「…同じ日本語を話していたので、もしやと期待はしましたが…流石に都合が良すぎましたか。私達も、ここに来るまでに町で見た看板の文字が読めませんでした。しかし言葉は日本語で話す事が出来る…何故なんでしょうか?」

「いや、私達からすれば大陸共通言語をあなた方が話しているように聞こえるますぞ」

「そうなのですね…そのような不思議な事が起こるとは…では、資料の内容を口頭でご説明致します。私達は、この国から北東およそ1000km付近に位置する、EDF日本支部という…統治機構から参りました。…単位は通じますか?」

「無論、しかしお待ちを。あの位置には国など無かった筈。確か群島があり、海流がとても乱れる海域です。一部の島には集落はあったようですが…集落が集まり、国を形成したという事でしょうか?」

「いえ。私達が統治している島は約36万6千㎢*1の国土を有しており、お考えの集落ではありません」

 

リンスイは説明された国土面積に面食らった。確かに一国として十分な広さであるが、しかしそんな巨大な島が発見された報告は聞いた事が無い。カナタや他の者も唖然としている。

 

「申し上げにくい事ではあるのですが…我々は「地球」と呼ばれる惑星から、何らかの形でこの世界に転移してきたと考えられています。その原因は判明していません」

「確かに、政治部会に於いてもそのような報告は受けました。しかし、国ごと転移など…一体どれ程の魔力を必要とするのか、想像が尽きません。失礼ですが、我々からすればあなた方はおとぎ話を元に、ホラ話を吹聴しているように聞こえます」

(まりょく…?)「信じられないのも無理はありません。我々も客観的な証拠が無ければ到底信じ得ない事でしたし、我々が地球にいた頃に「1000km先に国家ごと転移して来た」など言う者が現れたら、あなた方と同じ反応をしたでしょう。そこで、貴国から使節団を統治地域…日本列島に派遣して頂けないでしょうか?お互いの国をよく知るため、そして直接見た者の報告であれば、貴国も我々を信じる事が出来るでしょう」

「それは…………しかし…………」

「外務卿」

 

返答しあぐねてたリンスイを見て、カナタが割って入る。

 

「卿の気持ちも分かる。しかし、彼等はマイハーク上空に騎を飛ばし、大型船で来訪して来ている。群島集落が集まって国を形成した所で、いきなり大型船を造れる筈がない。我々の知り得ぬ力を持つ方々が、使節団を派遣し自らの目で確かめてほしいと申しているのだ。何よりも、礼儀を弁えておられる。条件次第だが、国交を前提に付き合っても良いのでは?」

 

カナタはリンスイから田中達に視線を移し、向き合う。

 

「EDF日本支部の方々よ。国交を開始するにあたり何を望む?観光に来た訳ではあるまい」

「第一に情報、第二に食糧や資源。我々はこの世界について余りにも何も知らない。この世界に付いて、可能な範囲で全て教えて頂きたい」

「ほう、食糧とな」

「はい。我が国は食糧需要は膨大です。勿論、貴国一国のみで対応可能であるという楽観的な考えは持っておりません。今後他国にも、食糧調達の交渉は行うつもりです」

「ふむ…貴国の食糧自給率は如何程か?」

「申し訳ありませんが、まだ答えられる段階ではありません」

 

一切顔色を変えない返答。答えの奥を読み取る事は出来ない。

 

「…国家転移と申されましたな。我が国が初めての接触であるか?」

「はい。今回の訪問が、転移後初の外交活動となります」

「ならば貴国は運がいい。いや、もしや神に祝福されているのかも知れませぬな。我が国は大地の神の祝福を受けている。穀物や野菜類が、 特段人の手を入れずとも生えてくるのです(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)貴国の食糧事情がどの程度にもよりますが、我が国ならかなりの部分を応じられると思いますよ」

「…ッ!?」

 

ピクリと、情報局員全員の表情が一瞬崩れる。

 

「……………………それでは、EDF日本支部は使節団受け入れの準備を迅速に(・・・)準備致します。期限については、改めて」

「分かりました。外務卿、可能な限り準備を早くして差し上げなさい。大使についてはある程度権限を持たせて派遣するように」

「承知致しました」

 

 

 

 

 

 

会談後。

 

「…本当か否か、しかし決して無視出来る物でもない」

「資源もそうですが、それ以上に食糧事情は深刻な物ですからね。年々増加しつつある、化学食糧が原因と思われる健康被害と化学食糧特有の不味さ。これを部分的にでも解消出来るなら…」

「受けない手はない。しかし…「まりょく」とは何だろうな」

「この世界特有の言葉か、それとも…本当に魔法があるのかも知れませんね」

「まさか…と思いたいがな」(フォーリナーの例もある…頭の隅に入れておくようにしておくか)

*1
EDF日本支部が統治しているのは本州、北海道、四国、九州のみである為、フォーリナー大戦前に存在していた日本国の国土面積と比べると、およそ8000㎢縮小している。




次回はクワ・トイネ公国による日本列島の視察。
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