「状況はどうなっている!?」
「帯広基地からコードブラック-ケースαが発令!!詳細状況不明なれど、複数のスカウトチームが蟻型巨大生物と交戦中との事です!!」
「近海で投入可能な全海軍を北海道近海に集結させろ!!アリコーンも緊急招集だ!!全空軍もスクランブル出撃態勢に移行!!北海道から巨大生物を1匹たりとも逃すな!!」
「ミッドナイト爆撃機、カロン爆撃機、ファイターは既にスクランブル態勢!!第5、第6、第7艦隊も出航準備中!!先程まで哨戒任務を遂行していた第8高速艦隊の各分艦隊は既に200ktで北海道に向け航海中!!最寄りの第2分艦隊は後5分で北海道近海に到達可能!!」
「フロントライン、スプリガン、グリムリーパー各隊に本部権限による出撃準備命令を送信!!オメガチームは既に出撃済み!!」
「巨大生物に関する詳細状況は無いのか!?」
「スカウトチームからの情報が錯綜しており分かりません!!各隊は遅滞戦闘を続行中!!」
「帯広基地からの増援部隊の到達は最寄りの部隊でも後3分かかります!!空挺機甲部隊は突破阻止線を急速構築中!!第6機甲大隊及び第8歩兵連隊の到達予想は後30分後!!」
「北海道から巨大生物を1匹たりとも出すな!!もし突破されたら、それは世界の終わりに等しいと思え!!」
『サー、イエッサー!!』
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!」
「右側面、15匹!!」
「リロードする、援護を!!」
「俺がやる、焦ってマガジン落とすんじゃねぇぞ!!」
「全員焦るなよ!増援がもうすぐ来る、足止めを第一にするんだ!!」
最初に巨大生物と接敵する事となったスカウト1-1-11。
彼等は今、全火力を眼に迫る蟻型巨大生物に投射している。AF20アサルトライフルやスパローショットM3ショットガン、50mm軽速射砲による弾幕で蟻型巨大生物の突進や接近を阻んでいる。
「クソッタレ!!彼奴ら6年前より硬くなってやがる!?」
しかし、巨大生物はこの6年の中で進化していたらしい。今迄は充分な威力を誇っていたAF20やスパローショットM3の銃弾の効き目はやや悪いように見える。そして偵察部隊であるが故に、ロケットランチャーなどの重火器を充分な数で持ってこなかったのが仇になった。
ゴリアスD2のロケット弾頭が、1匹の蟻型巨大生物に直撃。半径十数メートルの爆発によって複数の蟻型巨大生物を吹き飛ばす。
「隊長のゴリアスと50mmが頼りです!!外さないで下さいよ!?」
「お前らこそ、弾幕薄くするんじゃないぞ!!近付かれたらゲームオーバーだ!!」
巨大生物の基本戦術は
フォーリナー大戦前の戦術では、巨大生物の耐久力や数に押し潰されるのは目に見えている。その最中に生み出された、
これをギガンテスやベガルタなどの機甲部隊が行うならば比較的容易い事。しかしこれを歩兵部隊が行うとなると、戦前の軍隊よりも技量を必要とする。
一つに、目の前に迫る巨大生物の大群の恐怖心を押さえ込む必要がある。
一つに、時速50km/hで迫る巨大生物の大群を確実に足止めする為の火力投射箇所を常に判断し続ける必要がある。
一つに、常に全力後退しつつ火力投射を行い続ける必要があり、周辺の正確な地形判断と一定以上の体力を必要とする。
殆どは機甲部隊にも求められる事だが、
幾ら第3世代アーマースーツの機能があっても、並大抵な身体能力と精神力ではフォーリナーと戦うことは出来ない。つまり故にEDFは少数精鋭主義による、究極的な質の獲得を第一とし、そして成功した。
だが。
「畜生、畜生、畜生!!こいつら一体全体何体居るんだよ!!!?」
スカウト1-1-11は、巨大生物の物量に押し潰される寸前に陥っている。
6人の
「泣き言を言う暇があったらマガジンを交換して引き金を引き続けるんだ!!応援はもうすぐ来る!!」
「つっても目の前まで詰められてますよ!?言っちゃあれですが、めっちゃキツいです!!」
「俺達が奴等の昼飯になりたくなきゃ死ぬ気で踏ん張るんだよ馬鹿野郎!!!!」
怒号と銃声、巨大生物の悲鳴と足音が鳴り響く戦場。スカウト1-1-11は半包囲寸前の絶体絶命下に置かれてても、決して絶望に膝を付くこと無く全力を尽くしている。
「レーダー捕捉。スカウト1-1-11は未だ健在のようです、よくやってくれてます」
「総員、安全装置解除」
スカウト1-1-11の後方から、地上を人間離れした速度で走る
『スカウト1-1-11、聞こえるか?此方オメガチーム、20秒後に合流する』
「此方スカウト1-1-11!!此方は半包囲寸前、20秒も保つか分からん!!」
『10カウントする。合図で歩兵は伏せるんだ』
「了解ィ!!」
眼前に迫る蟻型巨大生物。ひたすらに弾幕を張って阻止しているが、数匹が被弾に構わず突破してくる。
隊長のゴリアスランチャーの砲口が火を吹き、超音速のロケット弾頭が地面に着弾。爆発によって迫った巨大生物を吹き飛ばす。
巨大生物の壁が更に接近。全火力投射によって抑え込もうとしても、しかし物量はその火力以上に多い。
遂に巨大生物の牙が、隊員の1人を喰らおうと迫る。
咄嗟に後方に飛び込み、閉じた牙が空間を切り裂く。全力で飛び込んだ弊害で身体は完全に宙を浮き、そして背中から地面に着地。身動き出来なくなった彼に、巨大生物が群がろうとする。
しかし、巨大生物の行動が叶う事は無い。
通信越しの合図。一斉に残りの5人の歩兵も地面に伏せた。
同時に8本の赤い光線が空間を切り裂き、巨大生物群を数秒で
「………あぶ、ねぇ………」
「間一髪、だったな…よく耐えてくれた」
レーダーで周囲の安全を確認していた、地面に倒れているスカウト1-1-11の隊長の元に、1人の兵士が手を差し出す。隊長はその手を掴み、立ち上がって顔を合わせた。
「此方こそ、救援に感謝します。オメガチーム」
現在のEDF日本支部には、5つの精鋭部隊が存在する。
ストームチームとして構成されるフロントライン、スプリガン、グリムリーパー。彼等は全人類の中でも最精鋭かつ最強の、人類史最大のジャイアントキリングを成した
決戦要塞X7-1アリコーンを守護するシュヴァルツェ・ハーゼ。欧州の地獄の戦場に生まれ落ちた、フォーリナー大戦によって
そして、オメガチーム。
彼等は
しかし『英雄』を追いかける事は出来ても、『英雄』と肩を並ぶ事は、並の武器では不可能だった。
ブレイザー…またの名を、原子光線銃。
その武器は、法外ともいえる程のコストと技術力を結集して作り上げられた、フォーリナーテクノロジーと純粋科学が融合した超技術の集大成。全長僅か1mの銃に装填されるエネルギー・カプセルには
だからこそ、
少数精鋭主義の結晶の一つであるオメガチーム、そして全世界で僅か13人しか持つ事を許されない超兵器。
この2つのピースが合わさったらどうなるのか?
その結果が、スカウト1-1-11の眼前に広がる、
「此方オメガチーム、スカウト1-1-11と合流に成功。死傷者及び負傷者は無し」
『帯広基地、了解しました。…オメガチーム及びスカウト1-1-11へ。現在後方では空挺装甲部隊と第6機甲大隊、第8歩兵連隊による突破阻止線を構築中です。貴方達には北方へ強行偵察、巨大生物の巣穴の発見をお願いします』
「オメガチームより帯広基地、我々のみでの強行偵察か?」
『いえ、多方面から複数のレンジャー隊が5分後に強行偵察します。しかし推定規模の戦力差によって、多くの成果は持ち帰れないと推測されます。また爆撃機による掃滅爆撃も、巨大生物がゲリラ化する可能性があるとして、現時点では不可能です』
「了解した」
オメガチームの隊長が帯広基地との通信を終え、再びスカウト1-1-11に声を掛ける。
「…という事だ。我々はこれより巨大生物の巣穴を発見する為に強行偵察を行う事になった」
「了解しました、英雄部隊と共に行動できる事は光栄です!」
「むず痒い事を言わないでくれ。本物の『英雄』には負けるさ。…スカウト1-1-11はグレイプに乗車して、車内から援護射撃を頼む」
「其方は?」
「俺達は──」
その時。レーダー画面の上端が、赤に染まる。
「──どうやら話の時間は終了らしいな。すぐにグレイプに乗ってくれ」
「了解」
オメガチームはブレイザーに装填されていたエネルギー・カプセルを交換し、スカウト1-1-11はグレイプに乗車し、車体横に小さく付いている覗き窓を開放。そこからAF20やスパローショットM3の銃身を通し、射撃準備に入る。
「グレイプのドライバー、聞こえるか?」
『感度良好です、オメガチーム』
「全速前進だ。火力と速度で前方を強行突破する」
『全速前進、ですか?』
グレイプの最高速度は100km/h。不整地の此処ではどれだけ出せても70km/h程度しか出せないが、それでも並の兵士ではとても追い付ける速さでは無い。
「ああ、全速前進、真っ直ぐにだ。
『…了解!発進します!!』
グレイプのエンジンが咆哮を上げ、前進を開始。ギアを最高のタイミングで切り替え、理論値に近い加速性能で加速を開始。同時にオメガチームも疾走を開始。
「………うっそだろ?」
グレイプ横の覗き窓から、疾走するオメガチームを目撃した隊員の1人が、思わず呟いた。既に時速は60km/hは出ているだろう。しかしそれでも、オメガチームは
確かに第3世代アーマースーツの筋力補助機能を全開に発動し、走る事が出来ればグレイプにも並走出来る速度は理論上獲得出来る。しかしそれを達成するには、恐ろしい程の難易度を必要とする。簡単にイメージするなら、
故に、それが出来るのはごく一部の部隊に限られている。
そして、眼前に蟻型巨大生物の大群が目に映る。同時に、オメガチームのブレイザーとグレイプの50mm軽速射砲が咆哮。8つのレーザーが巨大生物を灰に還え、50mm軽速射砲で巨大生物の体を穴だらけにする。
真上から見れば、
相対速度は100km/hを超え、僅か接敵から僅か数秒で2つの波は衝突。
そして、
「………スゲェ」
小波の中心部、グレイプを操るドライバーは、眼前の光景に思わずそう呟いた。
彼はただアクセルをベタ踏みし、真っ直ぐ、真っ直ぐに進んでいる。左右には一切曲がっていない。既に巨大生物の大群のど真ん中にいるのにも関わらず、何かとぶつかる気配もない。
当然だ。
何故なら、
前方を中心に集中砲火される8丁のブレイザーのレーザーは、十何体かの巨大生物を貫通し、瞬時に灰と還し、更に十何体を瞬時に灰と還す。
(これが、英雄部隊…)
そして、黒い大波を、越えた。
「戦況は?」
「帯広基地の空挺装甲部隊が構築した突破阻止線におよそ5000の蟻型巨大生物が接敵。部分的破綻の危機に陥りましたが、後続の第6機甲大隊及び第8歩兵連隊が間に合い、殲滅に成功しました。強行偵察については、オメガチーム及びスカウト1-1-11の合同部隊以外は被害甚大。撤退を余儀なくされました」
「衛星が1つもない影響が重いな…戦力の集結状況はどうだ?」
「第8高速艦隊は既に北海道を包囲。沿岸部に巨大生物を確認次第、直ちに主砲砲撃によって殲滅しています。アリコーンは600mmレールキャノンによる強行偵察部隊へ超遠距離砲撃支援を展開中。フロントライン、スプリガン、グリムリーパーは北海道以外の出現に備えて即時出動態勢で待機しております。空軍は全爆撃機はスクランブル態勢。帯広基地のファイターは現在突破阻止線に接近する巨大生物を漸減中」
「今の所は、なんとかなるか…」
「しかし油断は出来ません。現時点で推定される巨大生物の規模は、
「…最低クラス3の巣穴か」
「クラス3以上になると、重装甲弾頭及び空間制圧弾頭テンペストミサイルによる
「…時間を掛けれないな。奴らの増殖力を考えても」
「司令ちょーかん、いま良いかな?」
「篠ノ之博士?…手短に」
「分かってる。さっき帯広基地の生物分析部から私宛にも直接データが届いてね。調べてみたんだけど、これが割と大事なデータって事が判明したんだ。はい、これが精査したデータの書類」
「見よう。……………………何だと?」
「中々クソッタレなくらいに愉快なデータだよね。もしかしたら奴等、
EDF日本支部が文字通りの全力出したら、北海道が物理的に無くなってしまいそうだ…いや帯広基地とかがあるから無理なんだけども。