EDF日本支部召喚:Restart   作:クローサー

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死地へ

三重県 志摩市 都市部中央。

その上空には、6隻のキャリアーと、世界各地を…否、地球を今もなお蹂躙するフォーリナーの母船 マザーシップが浮かんでいる。輸送船 キャリアーのハッチから小型ヘクトルによる空挺が行われ、都市部はおよそ80の小型ヘクトルによって完全な占領下に置かれている。

その郊外に、EDF日本支部の最後の攻撃部隊は居た。規模は僅かに一個大隊、法外な戦闘力を持つマザーシップを墜とすには、明らかな戦力不足。しかし、その事実を前にしても、彼らの目は死んではいなかった。

 

『…此方はEDF日本支部。これより、最終作戦「アイアンレイン」を発動する』

 

EDF日本支部大阪基地より発信された大石の通信が、全員の通信機を通じて届く。

 

『フォーリナーの攻撃で世界は壊滅状態。EDFも、最早我々だけだ。敵の力は凄まじく、世界が滅びるのも時間の問題。しかし、我々は、我々だけは諦めるわけにはいかない。我々は攻撃されるのを待ちはしない。残った戦力でマザーシップを強襲し、マザーシップを撃墜する。それだけが、人類が助かる道である!三重県志摩市に襲来したフォーリナーの戦力は、マザーシップ及び護衛飛行船団6隻、空挺済みの小型ヘクトル80。対する我々の戦力は一個歩兵大隊及びギガンテス10両、EJ24戦闘機及びF-15J戦闘機によって構成された二個飛行隊のみの敗残兵だ。しかし君達全員が今戦争を今日まで戦い、生き残ってきた一騎当千の古強者だ。だからこそ私は、君達が100万の軍集団に匹敵する事を信じている』

『今、此処で断言しよう。君達は間違い無く、「英雄」だ。我々の、希望だ』

 

『…全部隊、攻撃開始!!!!』

 

それが、合図だった。

鬨の声を上げ、EDF日本支部攻撃陸軍部隊は志摩市に向けて突入していく。それは空気を震わし、志摩市に響き渡る号令へと変える。

ギガンテス10両、ハンターチームが時速75km/hの速度で突出し、突撃していく。

 

「全車、狙えぇ!!」

 

ハンターリーダーが号令し、各車の砲塔に搭載されている140mm砲が小型ヘクトルに向けて照準を開始。優秀なデータリンク能力と姿勢制御能力によって、目標が重複する事なく照準を完了する。

 

「撃ち方始め!!」

 

同時に、10両の戦車の主砲が咆哮。勢い良く打ち出された新型砲弾は、小型ヘクトルの装甲をたやすく突き破り、内部でめちゃくちゃに暴れまくって機能を破壊。僅かな差がありながら、しかしほぼ同時に10機の小型ヘクトルが崩れ落ちて地面に倒れ、爆発。

 

「各個に撃て、輸送船直下まで潜り込むんだ!!」

 

続けて放たれる砲撃によって次々と小型ヘクトルを破壊していくが、同時に小型ヘクトルに装備されてあるマシンガンやレーザー砲、プラズマ迫撃砲による攻撃が開始される。マシンガンとレーザー砲はハンターチームに集中するが、プラズマ迫撃砲はその後方、歩兵部隊へ向かって落ちていく。

 

「散開!!」

 

歩兵部隊は小隊規模で分散を開始。其々が空を睨み、プラズマ砲弾が着弾するおおよその地点に当たりをつけて回避する。しかしずっと完璧な回避をしきれるわけもなく、避けきれなかった者や爆風をまともに受けた者達は大きく吹き飛ばされ、その者達は起き上がって再び走り出すか、それとも2度と動かなくなるかの二択となる。

 

「ッ…!ハンターチーム、処理速度を上げるぞ!もっと注意を此方に向ける!」

『これでもこのじゃじゃ馬を何とか乗りこなしているんですがねぇ!?まぁいいや、派手に突っ込んで大暴れしましょうや!!』

 

ハンターリーダーの指示に、副隊長が景気良く応える。

その中で副隊長が「じゃじゃ馬」と揶揄したのは、彼等が操っているギガンテスそのものである。ハンターチームのギガンテスは、生産性の一切を無視して極限まで性能を突き詰めた最終決戦モデル。最大速度75km/hにも及ぶ機動力に加え、フォーリナー大戦中期に開発された特殊装甲を採用。これによって酸、プラズマ、レーザーに対して有効的な防御能力を手に入れた。内部の電子能力も、陸上自衛隊の10式戦車のC4Iシステム(データリンク能力)や指揮・射撃統制装置を搭載し、効率よく敵に打撃を与える一個の狩人の群れへとギガンテスを進化させる。

 

小型ヘクトルの粒子砲とレーザー砲の弾幕が、ハンターチームに襲いかかる。しかしギガンテスの特殊装甲の前に決定的火力となるには力不足であり、次々と140mmによる反撃で小型ヘクトルが倒れていく。しかし、上空の輸送船6隻からハンターチームの処理速度には劣るが、それでも恐るべきペースで小型ヘクトルが次々と降下していく。

 

『くそ、次から次へと輸送船から降りてくる!!これじゃキリがない!!』

『隊長、輸送船を落としましょう!!』

「ダメだ、角度が悪い!もっと近付かないと有効打にならないぞ!!」

 

輸送船…というより、フォーリナーの大型兵器の殆どは強力な装甲で守られており、弱点以外の攻撃は一切を受け付けない。輸送船の場合、下部のハッチの中にある放出口が唯一の弱点であり、その角度故に陸戦部隊以外では輸送船の撃墜は不可能である。

この短い討議を交わしているだけで、数十発ものレーザーや粒子弾がギガンテスに被弾。まだ問題ないが、こうして被弾し続けていればやがて装甲は疲労し、貫通を許すかもしれない。

が、彼等は構わず突き進む。構わず撃ち続ける。ノーガードの殴り合い、しかし相手は無限大に倒れ、無限大に増える。このままでは限界はすぐに見えていただろうが、この戦場にいるのは彼等だけではない。

 

「撃てぇ!!!!」

 

歩兵部隊から、数百発のロケット砲弾やスナイパーライフルの銃弾の弾幕が展開。彼等が持つ武器も有効射程圏に入り込み、火力戦が始まった。

 

 

 

 

 

 

場面は変わって、EDF日本支部大阪基地 オペレーティングルームへ。

 

「歩兵部隊、交戦を開始しました!」

「輸送船団、現在もなお小型ヘクトルを投下中!!やはり輸送船を撃墜しなければ…!」

「ハンターチームは引き続き機動戦闘を継続!火力と機動力でヘクトルを翻弄し、歩兵部隊の援護を!隙あれば輸送船への攻撃も構わん!!ああクソッ、ハンター2突出し過ぎだ!少し下がれ!!」

 

部隊を管制するオペレーターや状況を逐一観察するレーダー員、そしてEDF日本支部の最高指揮官かつ最終作戦 アイアンレインの総指揮官の大石の怒号によって騒乱となっている。大石もその騒乱に負けぬ程の声を張って各部隊への指示を送りつつ、時には自ら無線機を取って直接指示を送る。

戦況は、互角に近い。火力と射程はEDFが上回っているから小型ヘクトルは次々と倒せているのだが、輸送船6隻から次々と小型ヘクトルが降下してきており、数が思うように減らない。このまま近付けば歩兵部隊の大損害も免れないが、かといって遠距離から削っても輸送船からその分を補充されるだけで、結局は弾と時間と命の無駄な消費に終わる。ならば損害覚悟で防衛線を強行突破し、輸送船団を壊滅させるしかない。

 

「…やっぱり。司令、輸送船団より降下される小型ヘクトルのペースが落ちてきています」

「何?」

「最初は分間72機でしたが、現在は60%程度です。この調子で小型ヘクトルを漸減し続ければ…」

「いずれは輸送船直下まで潜り込めるか…よし」

「大変です、司令!!」

 

新たな戦術指示を出そうと無線機を手に取った矢先、それを止めるかのように一人のオペレーターが声をあげた。

 

「どうした?」

「世界各地で一斉に戦闘が始まりました!世界中至るところでEDFの旗が掲げられているとのことです!!」

「何だと!?すでに各地のEDFは壊滅したはずだろう!!」

旗を掲げているのは、市民達(・・・)です!!生き残った市民達がEDFの旗を掲げ、世界中で戦闘を開始したようです!!彼等は「カインドレッド・レベリオン」と名乗り、各地から続々と、我々に向けて(・・・・・・)通信が入っています!!すべて内容は同じ…!!」

 

 

『幸運を祈る』……以上です!!」

 

 

「…ッ!!!!」

 

その瞬間、大石の頭の中で全てが繋がった。突然の市民達の行動、そしてEDF日本支部に向けたただ一言の通信。その理由と意図を、彼は理解した。

理解したからこそ(・・・・・・・・)、彼は己を激しく嫌悪し、机に拳を叩きつけた。

 

「…ハンターチーム、聞け!!現在飛行船団から降下される小型ヘクトルの数が減りつつある!しかしこれ以上の時間を掛ければ、マザーシップからの砲撃が始まる恐れがある!!故に君達は戦線を全速力で強行突破し、輸送船団を撃破!返す刀で小型ヘクトルを包囲し、殲滅しろ!」

『ハンターチーム、了解!全車行くぞ、後ろは構うな!!』

 

 

 

 

 

 

ギガンテスのエンジンが咆哮し、コンクリート製の壁を突き破る。

視界が開けた刹那、50m先に小型ヘクトル2機と交戦する歩兵部隊を発見。照準し、速射。一機撃破するが、もう一機が脅威(ギガンテス)に気付き、歩兵部隊を無視して砲口を向ける。が、その瞬間歩兵部隊からの全力射撃。ゴリアスとスティングレイによる一斉射は、ダメージを負っていたヘクトルに更なる大ダメージを与え、その巨体をバラバラにした。

ギガンテスは勢いそのままに別方面の援護に向かい、歩兵部隊は続けざまに上空の輸送船へ攻撃。他方面からもいくつかのロケットが飛来し、弱点に合計数十発を受けた輸送船は全機能を停止。地上を向けて垂直落下を開始した。

他の箇所でも小型ヘクトルの戦線を突破し、次々と輸送船へ攻撃、撃墜に成功しつつある。この勢いを保てれば、マザーシップの護衛戦力は殲滅出来る事は明白。

 

だが、そんな簡単に事は運びやしない。

 

突如、マザーシップの下部の装甲が解放。そこからおよそ全長300mの細長い物体が出現し、展開される。

 

『マザーシップから巨大砲台が展開ッ!!』

『…ッ!!全部隊に緊急連絡!!巨大砲台に急速なエネルギー充填を確認!!』

『全員散開しろっ!!急げぇ!!!!』

 

攻撃が一時中断し、全陸軍部隊は回避行動を取る。その最中、展開されたマザーシップの巨大砲台から甲高い音が響き、一部の部品は白く輝き始める。

 

そして。

 

 

──キィィィッ!!!!

 

 

真下から、一直線。巨大砲台から白いレーザーが照射され、そのまま町を切り取るかのように角度を付けて振るわれた。

 

『あ…』

『逃げ』

 

刹那、直線4km、半径200mの範囲が、核に匹敵する業火によって全てを消し飛ばした。

 

地獄は、まだ始まったばかりだ。


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