皆様ありがとうございます。
マザーシップの頭脳に相当するAI基盤にインプットされている、思考アルゴリズム。それは今、眼前に見える不可解な光景に疑問を抱いていた。
今回の戦いは、最終形態の移行までに殲滅出来る可能性そのものが97.19%の数字だった。たとえ最終形態に移行する異常事態になったとしても、最終的な勝率は100%であることも。
しかし、ならば、何故。
何故、
マザーシップの指向可能な全火力をたった1人に叩きつけているのに。その弾幕が、全ての逃げ場を塞いでいる筈なのに。全ての攻撃の命中率が、100%の筈なのに。
マザーシップは考える。何故此処まで想定外の事態が連続的に発生しているのかを。AIリソースのおよそ10%を使い、因果律を元にこの世界を再観測する。たかが10%と侮るなかれ。マザーシップのAIは、全力を出せば
だが、
侵略前に観測したあらゆる未来にも、観測したあらゆる因果律の果てにも、こんな光景など、こんな事態など観測されていなかった。
有り得ない光景、有り得ない事態、有り得ない未来。そして再観測された未来は。
マザーシップは困惑した。
だが、未来が見えないという事は。それはつまり、
認めない、認めない。認められない。そんな事実など、そんな可能性などけして認めない。未来を再観察。
この時、マザーシップは1つ。たった1つ、致命的な間違いを犯していた。
彼は、ストーム1は。最早。
彼の身体能力は、フォーリナー大戦の壮絶な戦闘経験を経て、一戦。また一戦と経過する毎に
そしてこの戦い。マザーシップという最大最悪の敵を前に、遂にその殻を打ち破った。
研ぎ澄まされた視覚は1mm単位で敵の動作や攻撃を見極め。
研ぎ澄まされた聴覚は間違いなくあらゆる音を聞き分ける。
研ぎ澄まされた嗅覚は光学兵器が
研ぎ澄まされた前庭感覚は、己の身体の状態を1mmの間違いもなく脳に伝え。
研ぎ澄まされた固有覚と触覚で、1mmの間違いなく身体の行動をコントロールする。
そして研ぎ澄まされた神経は、極限にまで
それ等全ての情報を統合し、答えを叩き出す脳の能力は。
無論、フォーリナーの因果律式を基とした未来観測と比べれば、それは赤子のように弱い。100光年以内の光景など分からないし、並行世界への分岐点など分からない。しかし、それでも
それはつまり、『因果律の変更』以外の何物でもない。
しかも彼は、
最早、神業とさえも呼ぶ事もおこがましいソレを、明確にストーム1は咀嚼し、己の力の一部としている。故に、彼は最早人類でありながら人類を超越した存在。マザーシップの未来予測を拒否する化け物。因果律で動くのではなく、因果律
マザーシップとストーム1はの力関係は、最早
今、この時、この瞬間、この戦場においては。
残された最後の方法は、真っ向勝負。己の能力を総動員し、眼前の敵を倒すまで終わらないエンドレスゲーム。そこに確定された未来など存在しない。
マザーシップにとっては、
また一発。ストーム1の反物質弾が、大気吸収口に吸い込まれた。
マザーシップの大気吸収口から、炎が上がる。まるで悲鳴のような甲高い音が、弾幕の着弾音に紛れて響き渡る。
(どうだ、マザーシップ。反物質の弾丸はひとたまりも無いだろう?)
思考の片隅でそう思いつつ、思考の殆どを戦闘行動に集中。レーザー飛来、一瞬後の被弾箇所、左肩と右足。アーマースーツの筋力補強機能を稼働させ、強引に運動ベクトルを変換。飛来したレーザーを紙一重で回避。続いてプラズマ砲弾を片手間に迎撃。
(まだだ、まだだ、まだだ。まだ奴を落とすには火力が足りない)
幾らストーム1が規格外の領域に到達しているとはいえ、土台は人間。そもそも土台が違うマザーシップと対するには、やはり不利であるという事実は否めない。
そして、マザーシップは隠し札をオープンした。
マザーシップの側面4箇所に存在している放出口が解放。そこは以前の戦いにて、
直後に彼の頭脳が観測した、一瞬先の未来に顔を歪ませる。
重い音と共に現るは、
軍が半壊状態だったとはいえども、僅か8機で欧州司令部を急襲、壊滅させた…フォーリナーの通常戦力の中でも随一の戦闘能力を誇る、赤い死神。
それが、
(ふッ、ざッ、けッ………!!!?)
マザーシップに手一杯なのに、よりにもよってレッドカラーを50機以上、同時に相手にしろ?幾らストーム1とはいえど、
レッドカラーが一斉にストーム1に向けて戦闘機動を開始。ストーム1もマザーシップの攻撃を中止し、レッドカラーの迎撃を最優先。しかし、レッドカラー特有の超機動力、耐久力によって大した効果も上がらず、しかもマザーシップの全力攻撃に常に襲われている。そのような状態で、しかも50機以上のレッドカラーの迎撃など、出来るわけが無かった。
100m以内に接近したレッドカラー4機が、ストーム1へ砲口を向ける。
彼の頭脳が観測した未来でも、
(ッ、そ………!!!)
レッドカラーのレーザー砲に光が灯り──
──
「!?」
思わず、後ろを振り返るストーム1。其処には。
「レンジャー1-7、戦線に復帰!!戦闘を再開する!!」
「レンジャー4-3、戦闘再開!!奴を死なせるな!!」
「レンジャー7-6、突貫!!俺達の死に場所は此処だ!!」
「タンク2、ぶちかます!!当たればワンパンの戦車砲だオルァァ!!」
3つの歩兵部隊と1両のギガンテスが、それぞれの全速力を持って戦場へと飛び込み、レッドカラーへと攻撃を与える姿が見えた。
レッドカラー50機以上の攻勢を躱すのは、確かにストーム1たった1人には不可能だ。
だが、彼は1人ではない。
彼には共に歩める仲間がいる。彼には背中を預けられる戦友がいる。彼は
彼は、彼等は。
自然と、戦士達は大きく息を吸い、そして声高に叫ぶ。
『E、D、F!!E、D、F!!』
人類の守護者の名を、地球の守護者の名を。天上より現れし侵略者に、その名を知らしめるように。
マザーシップを1人で叩き落とすストーム1の戦闘描写を考えていたら、なんかとんでもない化け物が誕生した。何でSFなのに超能力バトルみたいな展開になってるんですかね。(白目)
お陰で決着が更に先延ばしに…
ちなみに今話のタイトルは、地球防衛軍3のミッション名「異邦人集結」と対極の名前にしました。