The Another World 作:MAXIM_MOKA
信幸が入ったのは、長机と、二席の椅子がセットされた、簡易的な尋問室だった。
「よし、座らせろ。」
信幸は椅子に座り、成哉にそう指示をした。
成哉は少女を椅子に座らせるように降ろすと、扉の近くにもたれかかった。
「んじゃ、これから尋問を始める。まず、名前と年齢は?」
信幸はまず初歩的なことから聞き始めた。
「...ジュリー・アーガスト、121歳です。」
少女...といっても高校生ぐらいなのだが、彼女は少しの沈黙の後に質問に答えた。
その見た目に反して地球では老人の年齢なのは、エルフの特徴であろう。
「ん、ジュリーさんね。で、うちの基地にはどうやって入ってきたの?警備はかなり厳重にしてたんだけど。」
これはおそらく誰もが疑問に思っていることだろう。
サーモグラフィーカメラ、赤外線センサー、赤外線カメラ、監視カメラなど、様々な監視アイテムと軍務官達の目があるのだ。
それを突破できるということは只者ではないということだが...。
「?隠密魔法で簡単に突破出来ましたけど。」
流石にこれには信幸も驚いた。
この世界には魔法が、特に隠密系の魔法があるということは、もしかしたら今までの警備を見直すことになるかもしれないのだ。
「...あ、隠密魔法はかなり珍しいので、そこまで心配しなくていいですよ?」
彼女は冷や汗をたらした信幸を見て察したのか、安心させるようにそう言った。
「...悪いが、俺たちは魔法が使えなくてな。ここで使ってみてくれないか?」
信幸は半分興味でそう聞いた。
「別にいいですけど...。」
彼女は受諾すると、右手に小さい火を出した。
可燃物がないのに火が燃えているというのは実に不思議だ。
「...あなたと後ろにいる変態、あと一人は魔法の素質がありますよ?」
後ろからは「誰が変態だ!」と聞こえてきた。
しかし、この基地にいる三人が魔法の素質があるというのはどういうことだろうか。
なんとなく素質を持っている残り一人は誰か想像がつくが。
「Hey信幸!ここでエルフを尋問してるって聞いたんですけど!」
いきなり扉を開け放ってきたのは涼香だった。ちなみに扉の近くにいた成哉は思いっきり扉と壁に挟まれていた。
信幸はジェスチャーで「彼奴が素質持ち?」と聞くと、彼女はコクリと頷いた。
「おお、本物のエルフじゃないですか!!」
涼香は興奮しながらそう言った。
それを見て信幸は、「そういやコイツ異世界モノのラノベとかコミックとか大好きだったなぁ」と思い出した。
「うっひゃあ!?」
ジュリーはいきなり変な声を上げた。
どうやら涼香にいきなり耳を触られたことに驚いたらしい。
「おお、本物...。」
涼香はそう呟きながら、ジュリーをまじまじと見つめた。
「...魔法でも、覚えてみます?」
彼女の提案を信幸は頷いて了承した。
彼女は一足先に尋問室を出て、信幸は興奮しすぎてその場で立ち尽くしている涼香と、挟まれた衝撃で鼻血を出していた成哉を引き摺りながら尋問室を出た。
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ヒントとして、``は濁点を表しています。
因みに次話もこれの続きです。