The Another World   作:MAXIM_MOKA

11 / 19
ノブくんが重要なことを訊き忘れていますが、分かりますか?
あ、3つの暗号が分かった人は書き込んでもらって構いません。


エルフと魔法 2

簡易尋問室はホ区域の外れのほうにあったため、軍務官達はあまりいなかった。

そのため、魔法の訓練を誰にも見られずすることができた。

信幸たちは簡易尋問室の近くにある簡易訓練所の中で、ジュリーを前に椅子に座っていた。

 

「まず、魔法っていうのは想像力が大切なんです。火がランプの中で燃え上がっているイメージだったり、滝の水が滝壷に溜まっていくイメージだったりです。なので、基本的に魔法を使える人たちは想像力が豊かなんです。ここまではいいですね?」

彼女はそこでいったん区切り、理解できているかを確認した。

三人とも頷いており、信幸に至ってはメモを取っているため、ジュリーは安心して話を続けることができた。

 

「ですが、基本的に魔法を使うには才能がないといけません。ごく稀に魔力がない人でも才能がある場合があります。お三方はおそらくそれですね。では、魔法を使うために必要なことをお話ししますね。魔力回路と呼ばれるものに魔力を通し、魔力が体中にめぐるイメージをします。次に魔法の形をイメージします。これは先ほどお話ししましたね。そして、形になった魔法をどのように動かすかをイメージします。手に保っておきたいのならその場に留まるイメージを、前に飛ばしたいのなら前に飛んでいくイメージをすればいいのです。...話が長くなりましたね。とりあえず皆さんの魔力回路を開きますね。」

彼女はそう言うと、腰につけていた杖を手に持った。

 

「魔力回路を開くには、濃縮された魔力を頭に直接流さなければなりません。まあ、濃すぎる魔力は体に悪影響を与えますが...。学校では、教師が生徒一人一人の頭に魔力を流し、魔法の才能の有無を確認、クラス分けを行っているのです。では、少し目をつむっててくださいね、魔法に変換されていない、濃縮された魔力の光は体に悪いですから。」

それを聞いた三人は何の合図もなく、同タイミングで目を閉じた。

そして、信幸は頭に杖がふれる感覚と、頭が痺れる感覚がした。

痺れの感覚は段々と強くなり、軽い痛みへと変わってくる。

3秒ぐらいすると、頭の中で何かが切れる音と共に、痛みがスッと消えていった。

 

「はい、貴方は目を開けていいですよ。」

信幸はその言葉を聞き、目を開けた。

すでに彼女は信幸の前から消えており、涼香に魔力を流していた。

濃縮された魔術の色は紫色で、まるで稲妻のようだった。

 

「はい、貴女も目を開けていいですよ。」

彼女は涼香にそう言うと、今度は成哉に魔力を流し始めた。

...杖を叩きつけるように、だが。

成哉からは「いたっ」という声が漏れた。

 

「はい、貴方も目を開けていいですよ。」

彼女はそう言うと、目を開けた三人の前に立った。

 

「では、魔力回路に魔力を通してみてください。イメージするだけですよ。」

信幸は電池と型、豆電球、針金を使った、簡単な回路を思い浮かべた。

外れた電池を型にはめ、プラス極から電流が針金を通り、豆電球を光らせ、そしてマイナス極に帰っていく。

そんなイメージをすると、頭の中でバチッとスイッチが入るような音がした。

 

「お、皆さん早いですね。では、体の中に魔力が流れるイメージをしてみてください。ここで意外と躓く人がいるんですよね。」

ほかの二人も同タイミングで魔力を通せたらしい。

まるで教えたことがあるかのようにジュリーはそういった。

信幸は、今度は人体をイメージした。

心臓が脈を打ち、体中に血液が巡り、心臓に帰ってくる。

今度は全身が温かくなった。

 

「...本当に早いですね、三人とも躓いてないですし。では、その魔力を魔法に変換してみてください。魔法には火、水、雷、植物、大地、光、闇、そして身体の8つの属性があります。基本的に相反する属性を同時に持つ魔法使いはいませんし、基本的に三つ以上の属性を持った魔法使いはいませんからね。」

信幸は彼女の言葉を聞きながら、手の中ですべての魔法がとどまるイメージをした。

そうして出てきたのは、小さな火と光の玉だった。

 

「ふむ、貴方は火属性、光属性、身体属性ですね。で、貴女は...へ!?」

ジュリーは涼香の方を見て絶句した。

涼香の体の周りを、小さな魔法が七つが回転していたのだ。

 

「ぜ、全属性!?ありえません!最も多かったと言われる魔法使いでも、属性は五つだったのに!!」

ジュリーはかなり取り乱していた。

どうやら八つの魔法を持った魔法使いは本当にいなかったらしい。

 

「なんか出来ましたよ??」

涼香は適当にそういった。

それを聞いたジュリーはさらに取り乱し、

 

「なんとなく?なんとなくで史上初を成し遂げないでください!そんな軽い気持ちで八属性の魔法使いとなったら、他の魔法使いの心がへし折れますよ!」

と言った。

次に成哉を見て、

 

「あんたもさり気なく相反する属性を同時に出してんじゃねえですよ!光と闇ってなんですか!中二病ですか!!」

と口調を変えながら叫んだ。

中二病呼びがツボに入ったらしい涼香は、腹を抱えながら転げまわっていた。

 

「中...フフッ...中二病...フフフフフ...光と闇...。」

ずっと同じフレーズを吐き、変な笑い方で転げまわり、そこそこの勢いで信幸にぶつかった。

 

「てめぇ...。」

どうやらそこそこ痛かったらしい信幸は、涼香を睨んだ。

 

「...あ、隠密魔法はどの属性にも属さない、無属性と呼ばれるものです。基本的に無属性を持っている人はいないので、学校でも基本的に無属性のことを学ぶことはありません。無属性の人は無属性専用のクラスで学びます。」

彼女は何かを思い出したかのように、隠密魔法のことを話した。

信幸はそれをメモすると、目を瞑り、魔法を操作し始めた。

ジュリーが言っていた通りに、まずは可燃物に燃え広がる火をイメージする。

その火にガスが送り込まれ、酸素が送り込まれを繰り返し、火が青白くなっていく。

 

「...なんか、凄いことになってますね。」

ジュリーの声を聞いた信幸が目を開けると、青まではいかないものの、青みがかった白い火が、手の中で燃えていた。

ためしにそれを的に投げてみると、当たった瞬間に火が爆発し、的が溶けた。

 

「おお...。」

信幸は驚愕のあまり、声を漏らした。

それを見たほかの二人も、自身の魔法のイメージを膨らませながら、様々な魔法を使っていく。

 

「...そういや、お前に訊き忘れていたな。」

信幸は何かを思い出し、ジュリーにそう話しかけた。

それを聞いたジュリーは信幸の方を向き、ほかの二人も信幸の方を見た。

 

「何のためにお前はここに来たんだ?」

信幸の質問にジュリーは少し考えるような素振りを見せると、口を開いた。

 

「まあ、言っておいたほうがいいんでしょうね。いいでしょう、話します。」

彼女はそう言うと、なぜ来たのかを三人に話し始めた。





【挿絵表示】


はい、正解は何のために基地に入ってきたのか、でした。
わかった人はいますかね?
あ、書いてないですけど、11話(ここ)と12話(次)の間に、ノブくんたちがジュリーに自己紹介しています。

2722字?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。