The Another World 作:MAXIM_MOKA
魔法の訓練を一通り終えた信幸たちは、ジュリーと涼香を居住区域で留守番をさせ、ホ区域で警備を始めた。
「俺、迫撃砲引っ張り出してくるわ」と信幸は尋問室とは逆方向にある、簡易兵器保管庫へと向かっていったため、成哉は一人で警備を行っていた。
「...ん、今気付いた。もう夕暮れか。」
成哉は独り言でそう呟いた。
太陽が
「街灯とかほとんどないし、星はきれいに見えんだろうな...。」
そんな事を言いながら、成哉は異世界に来たということを再確認する。
仙台事件、ベルリン事件、異世界基地建設、ドラゴン撃墜、そして、もうそろそろで始まるであろう、この丘での戦い。
全てはたった一ヵ月前に始まったのだと思うと、この基地の建設速度を含め、全てが早く感じられた。
にしても、なぜこんな早く基地を建設できたのだろうか。
噂によると全ての建設会社を雇い入れ、急ピッチで建設したらしいが。
後、中央広場に小さな神社を作る計画があるとか。
そんな事を考えている間も、太陽はゆっくりと沈み、大きくなっていく。
そして、反対側には大量の星々と、
「持ってきた。」
成哉は横から信幸に話しかけられた。
誠也が信幸の方を見ると、彼は横に連結された、1ダース程度の迫撃砲をロープで引っ張っていた。
「おお、並べんの手伝うわ。」
成哉はそう言うと、迫撃砲の反対側へと回り込み、信幸と共に敵陣方向へ迫撃砲を向けた。
「にしても、随分と星が見えんな。」
信幸は空を眺めながらそう呟いた。
明かりが必要そうなので、成哉はここで懐中電灯ではなく、LEDのランプを取り出した。
「そんだけ明かりが少ないんだろ。」
成哉はそう言い、ランプを点灯し、少し持ち上げた。
それと同時に、信幸は急に真剣な顔になり、敵がいるであろう方向を見た。
「おい、いきなりどうし...」
声を掛けようとした成哉を信幸は手で制し、10秒ほどその方向を見つめ、何かを見つけたような仕草をとった後に、全区域に通信を入れた。
成哉の通信機も起動し、ピッという音を鳴らした。
そして、信幸は息を吸い、
「敵襲!!!繰り替えす、敵襲!!!ホ区域正面より敵来襲!距離およそ20km!」
と声を張り上げた。
成哉も信幸が見ていた方向をよく見てみると、確かに丘一面を横に並んで進んでくる敵が見えた。
「よく見えたな、こんな暗い中。」
成哉は驚きながら信幸に声を掛けた。
「そんな事はどうでもいい、迫撃砲に弾を込めろ。一斉射撃だ。」
成哉は「はいはい、戦闘となると人が変わるんだから」と苦笑いしながら、迫撃砲に弾を込めていく。
数分程度で弾が込め終わると、信幸は弾着時間のずれを計算しながら迫撃砲の角度と位置をずらしていく。
「よし、じゃあ撃つか。」
その言葉を聞いた成哉は一瞬硬直した。
そしてその間に信幸は迫撃砲を一番離れた位置に置いたものから発射していく。
「ちょっ...。」
成哉はちょっと動揺していた。
明らかに早いし、全てを一人でやっているからだ。
「さて、見てろ。」
信幸は成哉にそう言い、敵の方を見た。
「3...2...1...弾着、今。」
それと同時に、敵陣が爆発した。
恐らく100人以上は死んだだろう。
こうして、異世界での初の戦いの火蓋が切って落とされた。
そして、異世界側にとっての悪夢が始まった。
さあ、次は本当の戦闘です。
まあ、蹂躙と言ったほうが正しいでしょうか。
では、また。