The Another World 作:MAXIM_MOKA
__ゲルーニャ第二侵攻軍side
「なあ、何か見えないか?」
一人の兵士があるものを見て、隣の兵士に話しかけた。
話しかけられた兵士や、その近くにいた兵士たちは月明かりを頼りにそれを見つけた。
夜空を背景に浮かび上がってきたのは、何かの立体的な骨組み。
そう、異世界基地である。
周りからは「おお...」や、「何だあれは?」などの呟きが聞こえてきた。
「我らの神聖なる丘にあのようなものを作るのは、身の程も知らぬ蛮族もいたものだな。丘の所有者は我らであると教えねばならぬ。男は殺せ。女がいた場合は貴様らの好きなようにさせてやろう。」
侵攻軍の総大将が周囲に響き渡る声でそういうと、兵たちは勝利と、女のことを妄想し、いやらしい笑みを浮かべ、雄叫びを上げた。
それと同時に、巨大な爆発音とともに兵士たちは意識が消え去った。
それを間近で見た総大将は絶句する。
あの一回の爆発で何十人もの兵が物言わぬ肉片となったのだ。
さらに、凶報が舞い込む。
「伝令!今の爆発を含め、12箇所で爆発、最低200名が死亡、10名が重軽傷です!」
「なにっ...。」
伝令兵からの報告を聞き、総大将は再び絶句する。
総大将は今まで以上に頭を回し始める。
まるで隅に追い込まれて殺されようとしているゴキブリのように。
「...!!あの魔法攻撃は連続でできないようだ!今だ、突撃せよ!」
空を飛ぶということを思いついたゴキブリのように、彼はその考えに行き着いた。
実際、考え方はよかっただろう。
迫撃砲は手動装填なため数秒ほどのラグがある。
だが、相手が悪かった。
このような突撃は、簡単に言えば針1000本で岩を割ろうとするようなものである。
岩に少しのダメージはあるかもしれないが、針がすべて折れてしまうだろう。
そんなことに、彼は気づいていなかった。
__ホ区域side
「先制攻撃成功っと。」
信幸はそう呟くと敵の方を数秒凝視すると、再び通信機を動かす。
「長篠の再来だ。三列に並べ。決して敵に弾が飛んでこない時間を作らせるなよ。」
信幸はそう指示すると、成哉の方を向いた。
「成哉、お前は俺と一緒に総大将を殺れ。」
「了解。二人同時射撃か。」
成哉は信幸の指示に従い、背中に背負っていた狙撃銃を取り出す。
信幸もそれに合わせて、腰のベルトに付けていた組み立て式の狙撃銃を組み立てた。
そして信幸は再び通信を入れる。
「撃て。弾切れになったら二列目、三列目と交代してリロードしろ。」
信幸が射撃命令を出すと同時に、銃声が辺りに鳴り響き始める。
「おし、やるぞ。」
「了解。」
二人は狙撃銃を構え、スコープを覗き込んだ。
敵は少し近づいてきたといっても、1kmにも満たないので、狙撃にはあまり適さないのだが...。
「ん、総大将発見。中央の奥。なんか台の上に乗ってるっぽい。」
成哉はものの数秒で総大将を見つけた。
これが600人以上をヘッドショットで殺害した男の実力である。
「了解、こちらも見つけられた。」
信幸も成哉の助言により見つけることができたようだ。
「「さよならだ。」」
信幸と成哉の声が重なると同時に、二発の一際大きい銃声も重なった。
__総大将side
「光の矢...。」
総大将は終わる気配がない銃弾の雨を見てそう呟いた。
自称先進国であるゲルーニャ皇国だが、銃の製造ができるほどの技術力と、種族全てを平等に扱っている平等性がこの世界での先進国の定義なため、銃の製造もできず、帝国民以外のすべてを蛮族と侮り殺戮している彼らは、実のところ後進国である。
「考えろ...考えるんだ...味方は3万は死んだ...敵は一人も死んでいない...。」
また彼は頭をフル回転させ、この状況から脱する方法を考え始める。
しかし、そんな彼に二発の凶弾が迫る。
「そうだ、思いついたぞ!」
彼はその言葉を最後に頭に二発の銃弾を受けて倒れた。
「!?そ、総大将が殺られたぞ!!」
側近のその言葉はみるみる内に前線まで到着し、大規模な混乱を招いた。
あるものは逃走しようとして斬り殺され、またあるものは突撃して射殺されていった。
「...終わった。」
その側近の兵士は、その言葉を最後に自決した。
__異世界基地side
「うっし、敵全滅!」
信幸はガッツポーズをしながらそう言った。
実際には100人ほど生きているのだが、ほぼ誤差の範囲内だろう。
また全区域に信幸は通信を入れた。
「敵軍全滅!我々の勝利だ!繰り返す、敵軍全滅!我々の勝利だ!」
信幸のその通信とともに、辺り一面から歓声が聞こえた。
あるものは抱き合っているし、あるものはハイタッチを交わしていた。
...勝利といっても、一方的な殺戮だったのだが。
「ん~、お疲れ様です。」
涼香がそんなことを言いながら、区域別の壁から飛び降りてきた。
「お前そこ登るなよ。」
信幸は涼香の頭にチョップを食らわせた。
涼香は頭を手で押さえながら、
「ちょっと!痛いじゃないですか!」
と言った。
彼女としては真剣に言っているため、信幸はため息をついてまたチョップをし、居住区域へと歩き出した。
すでに夜の中央広場は軍務官で賑わっており、食糧・娯楽区域や訓練施設も賑わっていた。
「とりあえずジュリーでも連れて飯でも食いにいくべ。」
成哉のその提案に二人は頷くと、居住区域に向かった。
空では、青い星と月が星々とともに浮かんでいた。
UV500!!