The Another World 作:MAXIM_MOKA
分かりましたか?
これで他の暗号も解読できると思いますよ。
仕掛けは非常に簡単です。
かな入力の方なら一発でわかります。
信幸は突然の襲撃に焦りながらも、一つの疑問を口にした。
「なぜこいつらがここにいるんだ?!」
その言葉に、ジュリーは、「恐らくですが...」と話し始めた。
「これ、この前の丘での戦いの、残党兵だと思います。敵陣地のさらに後ろのほうに待機していたところ、大将どころか全兵の首を取られて、それにビビッて森の近くで隠れてたのでしょう。そして、数
彼女は分かりやすいたとえを出しながら、毒入りの解説をしてくれた。
ジュリーの、質問していないところも答えてくれるところを信幸はそこそこ気に入っていた。
しかも、分かりやすい。
「なるほどね、要するに馬鹿共ってことか。」
信幸はそう返答すると、成哉の肩をたたく。
「おい、交代だ。俺は機関銃であいつら殺すから、お前運転しろ。暴れていいぞ。」
信幸の指示を聞いた成哉は、悪い笑みを浮かべた。
「...マジで?」
笑みを浮かべながらそう言う成哉に、信幸は「マジだ」と返し、運転席と助手席の隙間から体を出した。
「?」
ジュリーはどういうことか良く分かっていなかった。
信幸は、内側に開いていた車両後部のドアを閉めると、中央にあった梯子を上る。
上側には固定機関銃がついていた。
「さて、ぶっ放すぜ!」
成哉はそう言い放つと、アクセルを思いっ切り踏んだ。
車は急加速していき、次々と前側にいた車両を追い抜かしていく。
その時、通信機からサッキヤルヴェン・ポルカが流れ始める。
涼香が爆走する成哉運転の車両を見て、気を利かせてCDを流してくれたようだ。
成哉は調子が乗ってきたらしく、ドリフト走行をしながら車両を走らせていた。
「おおぶれるぶれる。」
信幸はそう呟きながら、機関銃を撃ち始める。
振り落とされないの?と皆さんは思うだろうが、彼が特殊すぎるだけである。
ダダダダダダダという連射音と、車のエンジン音に交じって、時折、衝突音が聞こえてくる。
これは爆走している車両に残党兵が撥ねられている音だ。
「うわわわわわ!スピード落とせぇぇー!」
ジュリーは車両内で振り回されながら成哉に叫ぶ。
成哉は聞こえてないらしく、スピードが全然落ちない。
ジュリーは揺れる車内の中、窓を見ると、涼香が砲撃をしていた。
それに巻き込まれて何人もの敵兵が吹き飛ばされる。
よく見ると他の車両も発砲していた。
「うわぁ...容赦ねぇ...。」
ジュリーはその光景を見て、思わず普段からはとても想像できないような口調でそう呟いた。
次に運転席のほうの窓を見た瞬間、敵兵が一人跳ね飛ばされる。
その窓はかなり赤く染まっていた。
それを見たジュリーは、思わず吐きかけ、口を押える。
「な、なんで...いつもはあのくらいなら吐き気も来ないのに...。」
ジュリーはそう呟く。
恐らく、彼女が吐きかけたのは、はねられた敵兵だけが原因ではない。
人を撥ねても何も反応しない、成哉に対する無意識的な恐怖と嫌悪感も原因であろう。
そうなるほど成哉は全く反応しないのだ。
「ん、弾切れ...げっ、流石にやり過ぎだろ...。」
信幸は梯子を下りながら運転席側の窓を見て、顔を少し青くしながらそう呟いた。
「ひぇ!」
ジュリーは信幸を見て、思わず変な悲鳴を上げた。
信幸は血に濡れていたのだ。
恐らく撥ねられた敵兵の飛び散った血がかかったのだろう。
「...エルフの森に川ってあんのか?」
信幸は自分の血生臭い匂いに不快感を覚えながら、ジュリーにそう聞いた。
ジュリーは「あ、ありますけど...」と血濡れの信幸に軽く引きながら返答した。
「...おい成哉、交代だ。さすがにやり過ぎだ。」
信幸はそう言いながら成哉を運転席から助手席に押し退け、ハンドルを握る。
「うぇ?...ぎゃああ!!」
成哉は一瞬呆然とするが、窓を見て、悲鳴を上げた。
そしてそのまま助手席で気絶した。
「前が見えねえ...。」
信幸はワイパーを動かし、血をふき取ると、ドアの窓を開け、運転しながら発砲する。
最初こそ1000人以上いたのが、すでに100人ほどになっていた。
そして、射殺されていく味方を見た彼らは散り散りになって逃げ出した。
しかし、無情にも彼らは射殺されていく。
「お、お、俺は...俺には娘がいるんだ!降伏する!」
そんな時、信幸が撃とうとしていた一人の兵士が、そう叫びながら武器を投げ捨て、頭を伏せた。
「...降伏した奴は殺すな。捕虜として捕まえるんだ。」
信幸は通信機を付けてそう全員に通達すると、その兵士から照準を外した。
「...なんで皇国兵なんかを...。」
非常に機嫌の悪そうな声で、ジュリーはそう呟いた。
「...うちの軍、というよりかは国際法だ。降伏した者は捕虜として人道的に保護する。異世界でもそれは健在だ。例え祖国の地を踏み荒した奴でも。」
信幸も少し機嫌の悪い声でそう言うと、ジュリーは黙った。
もしも国際法が無かったら、信幸は完全な私怨で彼を射殺していたであろう。
しかし、信幸は国際法だからというだけで彼を殺さなかったわけではない。
降伏した兵は、家族がいると言っていた。
信幸は中東の、反乱軍から占領した小さな農村にて、反乱軍に両親を殺された、少女を見た事があるのだ。
その子は一人で、村の建物の壁に寄りかかっていた。
信幸は不思議に思い、その子に、何があったのかを聞いた。
少女は「私の父親は、反乱軍に殺された。私はベットの下に隠れていたから助かったけど、どうやって生きていけばいいのかわからない。」と泣きながら言った。
信幸は少女に暖かい言葉をかけなかった。そのような言葉は勇気付けるのにはいいが、それ以外は意味がないためだ。
では何をしたのか。
彼女を養子として迎え入れてくれる人物が来るまでその子を世話したのだ。
料理を作り、服を洗い、寝かせる。
そんな生活が続いて一か月後、裕福だが、不妊であった若い夫婦が彼女を養子として迎えたいとの申し出があった。
少女にそのことを話すと、「少し寂しい」とは言ったが、喜んでいた。
その少女は夫婦に引き取られ、今は幸せに暮らしているらしい。ネット環境もあるらしく、一か月に一回、メールが届いてくる。
この少女は結果的に報われたが、世界には親を失い、養子にもなれず、そのまま死んでしまう子供もいる。
つまり、降伏した兵と少女の父親を重ねてしまったということだ。
結局、降伏したのはその兵士だけであり、ほかの兵士は全員射殺された。
「...結局、降伏したのはお前だけか。」
信幸は車両から出て、いまだに頭を伏せている兵士に声をかけた。
兵士は頭をあげ、信幸の顔を見る。
「...俺をどうする気だ?」
兵士は少し怯えながらも、落ち着いた声で信幸にそう訊いた。
「捕虜として手厚く保護する。娘にしばらくは会えないだろうが、いずれ会わせてやれるかもしれん。」
信幸がそう返答すると、兵士は「よかった...」と呟き、その場に倒れた。
手首をつかむと、脈打っていたので、緊張の糸が途切れて一気に疲れ、眠ってしまったのだろう。
兵士を運ぼうと手を伸ばすと、「マリア...」と兵士が寝言を言った。
恐らくこの兵士の娘の名前だろう。寝顔は安らかだった。
信幸が兵士の手足を縛り、車両に乗せると、ジュリーが助手席の上から顔を出した。
「さっき降伏してた奴ですか。...まあ、降伏するということはまだ若い兵士か、或いは仕事がないから兵役に就いたのでしょうね。とりあえず、成哉を起こすのを手伝ってください。」
ジュリーはそう言って頭を助手席に戻すと、ビンタする音が聞こえてくる。
信幸は苦笑いしながら兵士を座席の上に乗せると、助手席のほうに歩いて行った。
なお、成哉を起こすのに30分近くかかったのはまた別の話。
④PEEFTYEQ* SMSYGID2``'DY (54B2LS>4
今回の暗号は今までの暗号法と一緒に、もう一つ仕掛けがあります。
ヒントは「3UH``O}」です。
また、小文字も含まれているため要注意です。