The Another World 作:MAXIM_MOKA
やったゼェェェェ!!
なんかリクエストエピソードがあったらお願いします〜
広場の奥にあった道を信幸達の車両は走っていた。
「…。」
信幸が無言でハンドルを握っていると、今度は二つの分かれ道が現れた。
ジュリー曰く、最初の道さえ外さなければ少し間違えても大丈夫、との事なので、信幸は勘で左に進む。
「あ、そうそう、言い忘れてました。迷路を突破するとで…うぇぇ…。」
ジュリーが何かを思い出し、それを言いかけた。
しかし、その言葉は嗚咽によりせき止められてしまった。
「大丈夫か?」
成哉がジュリーの方を見ながらそう声をかける。
ジュリーは、
「だ、大丈夫です。魔力が回復する時はこういう事がよくあるので。」
と返事をした。
その間にも信幸は分かれ道をほとんど勘で進んでいく。
「随分と適当に進んでますね。まあ、特に問題はないですけど。…あ、何言おうとしたか忘れました、すみません。」
ジュリーが信幸の進み方に少し苦笑いをしながらそう言うと、今度は申し訳なさそうな声で謝罪した。
「んぁ、別に謝んなくてもいいぞ。思い出した時に言ってくれ。」
信幸は気にしていないようで、いつも通りの声でそう言った。
その時、また広場に出た。今度は一辺50m程の、正方形の広場だ。
「お、半分ほど進んだようですよ。」
ジュリーは広場に着いた事を確認すると、信幸にそう言った。
信幸は、残り半分か、と呟くと、そのまま広場の奥にある道へと車両を走らせる。
しばらく車内は静かな時間が続いた。
「にしても、この森、本当に深いんだな。」
奥の道をある程度進んだところで、成哉がそう呟いた。
「この森は魔力が非常に濃いので、空間が歪んでるんですよ。だから見た目の割にかなり深いんです。外から見るとエルフの住処なんて木の隙間から見えますけどね。だからと言って木を切り倒すと蔓に首絞められて殺されますけど。」
ジュリーの解説に、成哉は少しゾッとした。
成哉はふざけ半分でだが、「木を切り倒した方が早くね?」と提案していたからだ。
そしてまた静かな時間が続く。
そんな時、成哉が欠伸をした。
「ふぁ…ちょっと寝るわ。ジュリー、代わってくれ。」
成哉はそう言うと座席を後ろに倒し、後部座席に移動した。
ジュリーは溜息をつきながらも助手席に移動し、背もたれを元に戻した。
「隣失礼しますよ。」
ジュリーは信幸にそう言うと、シートベルトをつけた。
「ん」と信幸は短く反応した。
数分ほどの静寂の後に、ジュリーが口を開いた。
「…なんで信幸さんは軍人になったんですか?純粋な疑問なんですけど。」
彼女の質問に信幸は「んー」と考える仕草を見せると、
「まあ、過度な愛国心からかね。国のためなら命だって投げ出せるって自負してんだよ、俺は。」
と答えた。
どうやら自身の過度な愛国心は自覚していたらしい。
「な、なるほど。…信幸さんは、なんと言う国から来たんですか?」
ジュリーはまた信幸に質問した。
簡単な質問なので信幸は短く「日本って言う国だ」と返すと、またジュリーは質問して来た。
「一体どんなところなんですか?」
その質問に、信幸はまた考える仕草を見せ、
「んー、そうだなぁ。発展していて、程よく植物も生え、人間や動物が平和に、楽しく暮らしている。飯も美味い。そんなところかね。」
と返答した。
ジュリーは少しだけ沈黙すると、
「…あの、いつか連れて行ってもらうことってできますか?」
と言ってきた。
信幸はその質問を聞いて少し驚いた。
まさか日本に行きたいだなんて言うとは思っていなかったからだ。
信幸は少しだけ思考すると、
「…まあ、許可が取れるかは分からんが、別に良いぞ。ただし、ゲルーニャ関連が落ち着いてからだ。」
と答えた。
こんな状況の中、日本本土で休息を取るのは恐らく無理だろう。
そもそも異世界基地はかなり快適なので、本土に戻ろうとする軍務官も特にいないのだが。
「分かりました。今回の騒動が終わったら皆で行きましょうね!!」
ジュリーは目を輝かせながらそう言った。
なぜそこまで日本に興味を持つのかはわからないが、騒動終了後には恐らく休暇がもらえるため、まあいいかと信幸は思った。
「だってあの料理店で食べた食事がおいしかったんですもん!!」
...やはり彼女は、心が読めるのだろうか?
「結構進んだが、まだか...?」
かれこれ走って数十分。分かれ道を何回も進んだのだが、まだゴールは見えなかった。
道を間違えすぎたのだろうか。
「んーいや、多分次の分岐を右に進めば突破できますよ。最後の分岐は右っていうのが決まってますので。」
ジュリーは信幸の呟きに反応し、そう言った。
信幸はそれを聞き、「そうなのか」と口の中で呟いた。
そのまま三分ほど暫く静かな時間が続く。
そして、分かれ道がまた現れた。
信幸はジュリーが言った通りに、右に曲がる。
すると、すぐに明るく開けた場所に出た。
信幸はブレーキを掛け、通信機を付ける。
「ゴールだ、しばらく休んでいいぞ。」
それだけ言うと、信幸は通信を切った。
すぐにジュリーが話しかけてくる。
「お疲れ様でした。おそらく迷路の突破速度、最速ですよ。」
ジュリーはそう告げると、その直後に「あ...」と、何かを思い出した顔になる。
信幸が「?」と頭に疑問符を浮かべると、
「...そういえば、迷路を突破したらエルフの住処に着くってわけじゃないんですよ。実は、迷路の次に、謎解き地帯がありまして...。」
ジュリーは少し言いずらそうにそう言った。
信幸はそれを聞いて一瞬硬直すると、
「はぁ...取りあえずそれは後で考える。今は少し休ませてくれ。変わらない景色ばかりだったから少し気が狂いそうなんだ。」
と、疲れたようにそう言った。
ジュリーが申し訳なさそうな顔をすると、「気にすんな」といい、欠伸をした。
この後、何気に迷路地帯よりも疲れることになるとは思っていなかった。
次のお話で20話を遂に迎えます。
無事にここまで来れたのはうれしい限りです。
自分の中では15話程度で打ち切りになるんじゃないかって思いがあったので...。