The Another World 作:MAXIM_MOKA
_日本軍が異世界基地に到着したのと同時刻、玉座の間
「皇帝陛下、ご報告が。」
一人の兵士が玉座で寛いでいた皇帝に跪き、話しかけた。
彼はゲルーニャ侵攻軍との連絡係であったのだが...
「おお、待っておったぞ。どうだ、蛮族の都市は落とせたか?」
皇帝は兵士に対し、嬉々とした様子で訊いた。
「...ゲルーニャ侵攻軍、全滅いたしました。」
そんな皇帝に対し、その兵士は少し顔を青くしながら答えた。
その瞬間、玉座の間が静まり返る。
「な...。...な、何かの間違いだ!もう一度門に派遣しろ!今度は20万だ!早くしろ!」
皇帝は顔を真っ赤にしながら叫び声にも聞こえる声で命令をした。
処刑を恐れた兵士は、ただ頷くことしかできなかった。
「...これはいいことを聞いた。」
陰に隠れていた一人の男が呟き、陰に紛れ、どこかに消えた。
_異世界基地、通称「RDH」
信幸達は後でゲート前で会う約束をし、それぞれが散策することになった。
それぞれがどこに行ったのかをみていこう。
~成哉~
「ん~...いいなぁ。」
成哉は戦車を間近で見ながらそう呟いた。
彼がいるのは兵器保管庫なのだが、博物館のようになっている場所があり、そこは立ち入り自由となっていた。
さらに、そこにはT-34やIV号戦車などの有名所からクーゲルパンツァーやツァーリ・タンクなどの珍兵器まで、様々な戦車の模型・実物が置かれていた。
「お、これもいいな...あれも...」
ミリオタの彼は兵器保管庫の中を彷徨っていった。
~涼香~
「~♪」
涼香は食料・娯楽区域に出店しているお店でラーメンを啜っていた。
この区域は様々な料理店や、ゲーム会社などが自由に出店することが許されており、彼女は大食い系の店にいた。
最初入ってきたときは周りから「こんなに食えんのか?」と思われていたのだが...
「か、替え玉20杯突破!まだまだ余裕そうだ!」
この店の店員がカウンターを持ちながらそう叫んだ。
なんと余裕で完食し、さらには店側の用意した替え玉大食い企画に参加し、その記録を伸ばし続けているのだ。
結果的に、彼女は替え玉30杯を突破したところで店側に「もうやめてくれ!」泣きつかれたため、渋々といった感じで退店した。
なお、この後他の大食い店を食い荒らしたため、大食い系の自衛官らから尊敬されることになった。
~信幸~
信幸はアパート街のようになっている居住区域にある三人の部屋に荷物を置き、広場に向かおうとしていた。
「...あ?」
ふと信幸が路地裏を見たときに、人影が見えた。
もしかしたら他の軍人なのかもしれないが、それにしては小さかった。
「...まあいいか。」
そこまで脅威にはならんだろうと思った信幸は、そう呟いた後、広場の方へと再び歩き出した。
〜広場〜
「おーい、信幸ー!」
信幸が広場に着くと、成哉の呼ぶ声が聞こえた。
門の近くに設置された噴水に2人が腰掛けていた。
「おう、遅れてすまんな。」
信幸は謝罪しながら2人に駆け寄り、噴水に腰掛けた。
「気にすんなって!」
成哉は笑いながらそう言うと、何処からか急に対物狙撃銃を取り出し、空に向けて一発の銃弾を撃ち込んだ。
<!?>
信幸や涼香を含めた、成哉を除く軍人全員が突然の銃声により動きが止まった。
「成哉、何を…。」
涼香が成哉に問おうとすると、それを成哉が手で制し、「まあ見とけって。」と言った。
そして3秒後、音がしたかと思うと、噴水の目の前にドラゴンの亡骸が降ってきた。
重力加速度のついた亡骸は辺り一面に散らばった。
よく見ると、それに紛れて人の手や足のばらけたパーツが見えた。
「んー、まあ偵察兵って所かな。」
成哉はそう呟きながら、亡骸のパーツ一つ一つを、立体パズルを組み上げるかのような感じで噛み合わせ始めた。
人間の方はバラバラになって、完全に潰れたパーツもあったが、ドラゴンの方は奇跡的に亡骸が砕け散っただけであったらしく、ほぼほぼ狙撃される前の姿に戻った。
「…頭がない…。」
思わず涼香がそう呟いた。
その硬い鱗に包まれていた頭は、綺麗に無くなっていた。
あの距離、およそ10kmほどの距離から当てたと考えると、もはや化け物だろう。
これにより、軍人達の気が急激に引き締まり、いつのまにか警戒体制になったかのように、自主的に警備区域で警備を行う軍人が現れ始めた。
この一つの狙撃の成功。
これが、一方的な大虐殺の合図だとは誰も知らなかった。
【挿絵表示】
地図です。
赤がゲートとその周辺の広場
黄が居住区域
青が食料・娯楽区域
緑が研究施設など
紫が訓練施設
橙が兵器保管庫
となっています。
また、これには描いてないですが、正十二角形の頂点は部屋となっており、様々なレーダーや目視による監視が行われ、各部屋は辺の中にあるエレベーターでつながっています。