ポケモン×ヒロアカ短編集   作:烏賊焼き

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ぼうくんポケモン

 春。これから始まるヒーローの卵としての学生生活に胸を膨らませながら登校した私、取蔭切奈はこれまで生きてきた15年の人生の内一度も味わったこともない興奮を味わっていた。

 

 (恐竜だああああああああぁぁぁぁああぁあぁあああ!!!!)

 

 4月の学校行事と言えばだれもが思い浮かべるだろう入学式。しかしヒーロー科の生徒にはそんな時間的余裕は存在しないらしく当然のようにキャンセルされ迎えた個性把握テスト。そのさなかに目撃した一人の個性が、完全に恐竜だったからである。私が好きなものと公言している、恐竜だったからである。

 大きさは全長が大体12~3メートルといったところか。鋭い牙が生えた巨大な頭に、その体躯に見合わないほど小さな腕。太くてたくましい尻尾とそんな体を支えるべく発達した両足。簡単にイメージとして伝えるならティラノサウルスと言ったら大体伝わるだろう。王冠のようなトサカが生えていることや首周りにある羽毛のようなものなど多少の差異は見受けられるが、100人が100人これを見たらティラノサウルスという言葉が頭をよぎる、まさに恐竜の王としての威風堂々とした姿だった。

 

 (絶対に友達になってやる!)

 

 オールマイトが目の前に現れたとしてここまで興奮することがあるだろうか?いや、ない。自分の分をきっちりこなしながら、それでも彼のほうを見てしまうのはしょうがないだろう。彼が個性を発動するたびに釘付けになっている私を周りの人がどう見るかなんてその時は考えもしなかった。

 

 「あの!」

 「ん?」

 「今ちょっといいかな?」

 「いいけど…?」

 「私取蔭、取蔭切奈。取蔭って呼んで。」

 「俺?俺は暴竜君氏(ぼうりゅうくんし)。暴竜って呼んでくれ。」

 

 放課後駅に歩いていく彼に声をかける。切れ長の瞳に赤い髪という一見怖そうな見た目の彼だが、その実人当たりは良さそうだ。

 

 「アンタの個性って…。」

 「『恐竜』だぜ?」

 「やっぱり!」

 

 その反応は久々だな!と言って笑う彼に釣られるようにこちらも笑顔になる。彼曰く小学校辺りまではクラスの人気者だったらしい。

 

 「なんていう種類なの?」

 「ガチゴラスって言うんだ。」

 「聞いたことない…!まさか論文も書かれてない新種!?」

 

 目を輝かせた私に対して、彼は困ったように頬を掻いた。

 

 「いやー?その話をするならちょっと俺の前世について話さないとな。」

 「前世?」

 「おう。前世。信じてくれるか?」

 「聞いてから決める。」

 

 彼はそっかそっかと笑って語りだした。

 

 「俺の前世では化石化した生き物の一部を復元させることに成功してたんだよ。その復元された生物の一つがこいつ、ガチゴラスだ。こっちの世界でいうところのティラノサウルスの位置に君臨していたそうでな。だから新種というよりバージョン違いって言った方が正しい。」

 「へぇー。道理で強いわけだ。」

 「いや、こいつの強さ=太古に君臨してたガチゴラスの強さってわけじゃないぜ?」

 「そうなの?」

 「おう。化石から見つかってる諸々の証拠から推計したガチゴラスより明らかに弱くなってるそうなんだ。」

 「あれで?」

 「あれで。」

 

 そういう意味では復元は失敗してるんだ。ボールを撫でながらそう言う彼の顔はどこか物悲しそうだった。

 

 「そもそも一個体の生物として死を迎えて化石になった後で、自分の生きていた時代のはるか後になって生き返らせる。それだけならまだしも生前の力を振るえない。こいつが不幸だという人が居ても俺は否定できない。」

 「………。」

 「でも俺は違うと思う。幸せかどうかは他人が勝手に自分の尺度で測るものじゃない。そいつがどう感じるかだ。…まあこいつは『自分の幸せとはいったい何なのか?』って哲学できるほど頭がよろしくないんだが。」

 

 茶化すようにそう言った彼だが、帰ってきたのが私の沈黙だったためか少し困ったように咳払いする。

 

 「…でもこいつにも夢がある。」

 「夢?」

 「ああ。俺たち二人の夢。この超人社会で誰もが一度は思い浮かべるような夢だ。」

 

 「NO.1ヒーローになる。」

 

 そう話す彼の目の奥に、かの暴君竜の輝きが見えた気がした。

 

 「俺とこいつがまだまだガキだった頃に、テレビにオールマイトが映ってな。それ以来こいつが体を鍛えるようなことやり始めたから聞いたんだ。『ああなりたいか』って。そうしたらこいつは返事するみたいに鳴いてくれてさ。それ以来二人の夢なんだ。」

 

 「だから俺は、こいつと一緒にヒーローの頂点()になる。」

 

 そう言って笑う彼にこらえきれなくなって笑ってしまった。途端に恥ずかしくなったのか真っ赤になって頬を掻く彼にゴメンゴメンと謝る。

 

 「だって同じだからさ私も。」

 「お?てことは―」

 「「ライバル。」」

 「登校初日からライバルができるだなんて、流石天下の雄英高校だな。」

 「ありがたい話だよまったく。」

 

 お互いに獰猛な笑みを浮かべて拳をぶつけ合いそのまま分かれる。ライバルの別れはそれでよかった。

 

 ((明日からよろしくな。ライバル…。))

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なお翌日二人が『出会ったその日に一目ぼれした取蔭が放課後暴竜に告白しに行った』という噂を一緒に否定して回る羽目になるのはまた別の話。

 

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