雄英高校に限らず、ヒーロー科の授業は何かと怪我をすることが多い。昨今のヒーローにはまず一番に戦闘力の高さが求められるためだ。怪我が多いということは、当然保健室の利用頻度も高いということだ。
「はい。終わりましたよ!」
「タブンネ!」
「ありがとうございます。」
個性の関係上保健室の常連となってしまっている緑谷にとって見慣れた場所ではあるのだが、この人がいるときは、少し体が硬くなってしまう。
「いや~自分でもほれぼれしてしまう出来栄え、完璧ですよ完璧!」
「タブンネ~♪」
「………あの。」
「はい?」
「本当に大丈夫なんですよね…?」
「大丈夫も何も完璧ですよ完璧!!ね!?」
「タブンネ~!!」
「ほら!!」
それのたぶんねが怖いんですけど!!そんな緑谷の叫びは保健室の空気に消えた。
――
「彼女を後継者にかい?」
「そのつもりだよ。」
雄英高校の校長室で向かい合う形で座っている二人。一人は雄英高校の校長根津。一人は雄英の屋台骨リカバリーガール。そんな二人が緑茶をすすりながらしているのは、リカバリーガールの後継者についての話だ。
「しかし君からそんな話をされるとはね。」
「オールマイトが後継を育ててるのを見て、私もそろそろと思っただけさね。」
ワンフォーオールの後継者。すなわち次の平和の象徴の育成。そんなものを掲げて今頑張っているオールマイトを見て、自分も次を意識した。それだけの話だとリカバリーガールは笑う。
『この子が居れば完璧に治せますよ完璧に!!ヒーリングに関してこの子を超えられるのなんていないと言っても過言ではありませんからね!!』
雄英に入ったばかりの頃の彼女がそう笑って言っていたのが、不意に頭をよぎる。保健室に入り浸っては私から治療のいろはについて聞いていた彼女は、たまになら保健室を預けていいくらいには成長した。
「平和の象徴として社会に必要とされる彼のように、雄英の屋台骨も次世代に引き継がれるべき存在。君が認めるなら僕に異論はない。」
「そうかい。」
ふたりしてズズッと緑茶をすする。
「がしかし、まだまだ本人や周囲の人間に話すのは駄目だね。私の後継を名乗るならもっと頑張ってもらわないと。」
「厳しいねぇ。」
「当たり前を求めているだけだよ。いついかなる患者が来ても、その人にあった適切な治療を施してやるっていう当たり前をね。さて―」
もうそろそろ預けていた保健室を返してもらおうかね。そう言って席を立ったリカバリーガールを見送った根津は、思いにふける。
(次世代か…。)
学校は次の世界を育んでいく場所だ。何も彼らだけの話ではない。
「…君たちが作るのは、果たしてどんな世界だろうか。」
今この学校にいる次の世代の者たちが作る世界に思いを馳せながら、根津はおかわりした緑茶を啜った。