昔の夢をみた。
自分の無力さを呪ったあの日の夢を
「あ…あぁ…カナ…エちゃん…」
「七火…君……」
血まみれのカナエを抱きかかえるともう見えてはいない目を開き、冷たくなっていく掌で頬を伝う涙をふいて小さく名前を呼ぶ。
「…僕…カナエちゃんの事…守れんかった…」
「泣かないで…七火…君…悪いのは私…の方だから」
「そないな事あらへん…僕が弱いさかい…僕がこの刀を使いこなせへんさかい…僕が…」
「自分を…責めないで…ずっと…笑ってい…て…皆を…お願いね…」
その言葉を最後にカナエ手が冷たくなり地面に落ちた。
「あぁぁぁッ!…童磨ぁぁッ!!必ず貴様を殺したるッ例えこの身修羅へ変わろうともッ僕の手で必ずッ!!」
「に…さま…兄様!!」
「ハッ…しのぶ?…」
瞼を開けると心配そうな顔でこちらの顔を覗き込むしのぶが目に入った。
「うなされていましたが大丈夫ですか?」
「あぁ起こしてもうたか?かんにんな」
「いえ、私は大丈夫ですが…」
「僕も平気、ちょい古傷疼いただけやで…しのぶもしかして眠れへんのちゃうか…そや!久しぶりに一緒に寝よか?」
上半身を起こし掛け布団をめくり、敷布団の空いているスペースを手でポンポンと軽く叩く。
「もう!!兄さん!!子供扱いしないで下さい!!全く!朝早くの出発ですから早く寝て下さい!!」
等と強がった事を言いながら布団に入ってくる辺り、やはり哪吒蜘蛛山の十二鬼月の事が気に掛るのだろう。
(言葉と行動逆やん…まぁそれ程不安なんやろ)
「兄さん早く横になって布団をかけて下さい!!寒いです!」
「おっと、かんにんな」
しのぶに急かされ横たわり布団をかけると、とても懐かしい香りが鼻をくすぐる。
(この香り懐かしい…カナエちゃんとおんなじや…)
「もし…哪吒蜘蛛山にいる十二鬼月が童磨だったら…」
「心配あらへんよ、そうやったら次は必ずこの手で頸を斬るまでやで」
「そうですね、おやすみなさい兄さん…」
「はい、おやすみなさいしのぶ…」
安心したのかしのぶはすぐ寝息を立てて眠りにつき、それにつられ七火も眠りについた。
「ここにも死体か…それにしてもこの山けったいな匂いするなぁ、これも鬼の仕業か?」
哪吒蜘蛛山に着いたが辺りは暗く鬼の活動が活発になっているのか、既に六人の隊士の死体を見つけた。この山に複数の鬼がいるらしくしのぶやカナヲ、秋千代とバラけて鬼を探している為早く見つかると思っていたが未だ鴉からの報告がなく手こずっているようだが、こちらの方向に鬼が居るのは間違いない。
「こっちから嫌な感じがするさかいこっちにおる筈やけど…またや…」
七火の周りに風きり音と共に半分に切られた小さな蜘蛛達が落ちてくる。
「さっきからおんなじ蜘蛛襲うてくるが…鬼の血鬼術か?…気持ち悪おしてしゃあない…」
嫌な感じがする方へ近く程蜘蛛の数が多くなっていく。
「この先に蜘蛛の親玉がおるに違いあらへん…うわ!危な!?」
先へ進もうとした瞬間、木の影から鋭い爪のような物がこちらを切り裂こうとするが回避し、距離をとる。
「何や…首なしの鬼?」
邪魔な木々をなぎ倒し現れたのは大柄な首のない鬼だった。
「首があらへんのに動いてる?…いや、あの体から伸びてる糸に操られてるんか」
首なしの鬼の攻撃を避けながら分析していく。
「首があらへんなら体をこもう刻むか」
刀の柄を鞘を握り、首なし鬼との間合いを一気に詰める。
「月の呼吸、玖ノ型降り月・連面」
刀を振るうと首なし鬼目掛け無数の斬撃が降り注ぎ、一瞬にして首なし鬼は跡形もなくなり消えていく。
「いっちょ上がりや」
服についた砂埃を払い、糸を操る鬼の元へ向かった。
「クソ…俺…こんな所で…死ぬ…のか…あ?」
十二鬼月との戦闘で日輪刀は折れ今にも首をへし折られそうな時、ぼやけた視界に何かが飛び込んできた。
「影の呼吸、壱ノ型…影狼!!」
「何だ…優しいこ…え!?ぐえッ!?」
十二鬼月の手が急に離れ川に落下し、水面から顔を出すと首胴体、脚と三つに斬られ消えていく十二鬼月とその前に立つ薙刀を持った大柄な女性が立っていた。
「だ…誰だ…あんた」
「あ…あのあの!だ…大丈夫ですか?…猪さん」
こちらに気づいて逆お姫様抱っこをされ川から上げられた。
「何で…おれ…女に抱きかかえられてんだ…」