骸骨の魔王と騎士   作:頭領

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リザードマンからエ・ランテル騒動まで


漆黒の

ザイトルクワエ、ドライアード、トレントを新たに魔獣登録したデア・シルト達は、次の日を1日中カルネ村での畑作りに費やし、ユグドラシルの食材がこの世界でも収穫可能か実験を始めた。

管理は基本、ザイトルクワエ達に任せ、定期的に村人が寝静まった頃にマーレ達が現れ土地を回復するのがナザリック内でも決まり、この実験が成功すれば、ユグドラシル硬貨の回収が非常に楽になるため、モモンガの期待も大きくマーレ達もやる気を見せていた。

そして、次の日には、デア・シルトは再び森に入り、念願のアゼルリシア山脈攻略に動きだす為に最後の準備を始めていた。

 

 

「さてと、リュラリュース。今日こそはアゼルリシア山脈に行きたかったが、カルネ村にザイトルクワエ達を移住させた結果水不足が起きている。その為、トブの大森林内部の湖周辺を支配下において川をカルネ村まで通すぞ」

 

 

現在のカルネ村では、"無限の水差し"をひっくり返して放置する事で水不足を凌いでいるが、流石にそれで解決とはデア・シルトも考えていないので、リザードマンを支配ついでに川を作る事にした。

湖周辺は、主にリザードマンとトードマンの生息を確認しているが、リザードマンが南側に住み、カルネ村に近いので彼らのみ説得する事にして。トードマンは、後でリュラリュースが対応する事になる。

因みに川を作るのは、ザイトルクワエが大地を掘り返しながら進むだけで作れる。

 

 

 

「リザードマンですか……奴らは閉鎖的で他種族だけでなく同種族でもあまり交流が無いほどですぞ、話し合いに応じるか怪しい所ですな」

 

 

「リザードマンを知っているのか?」

 

 

「はい、数年ほど前にワシの支配下に置こうと調査した事が有ったのですが、奴ら、食糧難に陥り同族同士で争いを始めよって諦めたのです」

 

 

「ほう、詳しく話せ。リザードマンの場所は知ってるが情報は多いに越したことはない」

 

 

「はっ」

 

 

リュラリュースの説明によると、リザードマンは湿地帯に住み、過去にはトードマンとの戦争で敗北、二年前には主食の魚が不漁続きでリザードマン同士で争い、二つの部族と多数のリザードマンが死亡した事で食糧難を乗り切るなど、そこそこハードな歴史があった。

しかし、そんな事はデア・シルト達には関係なく問題なのは、過去の争いでリザードマンを纏めるのが難しくなっている事だった。

 

 

(さて、どうする?一つ部族を選んで他は潰すか?それともある程度減らして残った奴を一つに纏めるか?)

 

 

悩んでいるとデア・シルトの元に、一体のシャドーデーモンが現れる、何やら報告があると言うので初めて見る、ハムスケとリュラリュースに注意してから、シャドーデーモンを影から出し報告を受け取る。

 

 

「デア・シルト様、リザードマンに動きがありました。奴らザイトルクワエの復活に気付き、戦うか逃げるか代表の者が相談してる模様です」

 

 

「ほう?それは朗報だな。しかし、何故ザイトルクワエの復活が気付かれた?」

 

 

デア・シルトがリザードマンに良く気づいたな、と感心している様子に、恐る恐るリュラリュースが手を上げ困った様に発言する。

 

 

「恐れながら、デア・シルト様、この森に住む者の大半が先日のザイトルクワエ復活に気づいております、何とか騒ぎが大きくなる前に支配下の者達は落ち着かせる事は出来ましたが。リザードマン達はザイトルクワエがデア・シルト様の支配下にある事を知らないのが原因かと」

 

 

リュラリュースによると、森に住む者は食うか食われるかの中で生活している為、自分より強い存在には日々神経を張り巡らしているとの事で逆にザイトルクワエほどの存在に気が付かないのがおかしいとの事だった。

 

 

「ハムスケさんは、気付かなそうですよね」

 

 

「シュ、シュラム殿~それは酷いでござるよ!」

 

 

「うるさいぞ、ハムスケ。計画を説明するからちゃんと聞け」

 

 

からかうデア・シュラムと抗議するハムスケでは、騒ぐ理由として、デア・シュラムの方が悪いのだが、無意識でハムスケを注意する。仲間にしてからハムスケの扱いはドンドン雑になっている気がするのは、やはりハムスケの中身が残念過ぎるのが原因かも知れない。

静かになった所でデア・シルトが語った計画は、ハムスケの扱い以上に雑なものだった。

 

 

 

デア・シルト達が森に入り、話し合いを始めた同時刻、トブの大森林の湖の南側にある、リザードマンの集落でも話し合いが行われていた。

彼らが話し合っているのは二日前に起きた地鳴りとその正体である巨大な樹木の化け物に対する相談である。リザードマンの中では既に戦いを挑むことは決定事項として決まっており。今の話題は、残す人数や役割、他の種族との連携などである。

 

「戦士10名、祭司3名、狩猟20、オス70、メス100、子供若干名、これでどうだ?」

 

 

「もりのようすおかしい、せんし、ふやす」

 

 

「いや、戦士より祭司か狩猟を増やし、陸での生活を考えるべきだ」

 

 

最初に大まかな人数を示したのは、グリーン・クローの族長シャースーリュー・シャシャ。彼の弟ザリュース・シャシャが命懸けで各部族を周り説得に成功したからこそ、今のリザードマン5部族による大連合が成立していると言っていい、その影響か自然と話し合いの中心は彼になっている。

次に、たどたどしい言葉で意見を話したのはレイザー・テール族長キュクー・ズーズー、その身を守る骨の鎧は僅かに魔法の光を発し、彼のたどたどしい言葉の原因でもある、リザードマンに受け継がれている四至宝の一つ白竜の骨鎧を身につけた、元はリザードマンの中では超がつくほど聡明で名が知られている彼の意見は誰も無視できない。

そんな彼の言葉に反論したのは、狩猟が得意な部族スモール・ファング族長のスーキュ・ジュジュ、彼は実際に何処かに移動する巨大な樹木の化け物を目撃しており、今回の戦いがどれだけ無謀なのか一番理解している。だからこそ話し合いでは、残った仲間が生き残れるよう知恵を絞っている。

 

 

「ドラゴン・タスクの戦士は全員参加する予定だぜ」

 

 

「ゼンベル!貴様止めなかったのか!」

 

 

「一応、止めはしたがわかってんだろ?俺んとこの奴らはそんなばっかだ、ガハハハ!」

 

 

布一枚で遮られた会議の場に、遠慮せずに入って来たのは、戦いを好み強さが優先されるドラゴン・タスク族長ゼンベル・ググー。彼が話し合いから一時離れていたのは生き残りを出すとは考えておらず、全員を戦わせる方向に煽っていたので慌てて止めに行った為である。ただ、その結果は空しくほとんど意味をなさなかったが。

 

 

「それより、ザリュースとクルシュはどこ行った?」

 

 

「ふん、クルシュにはリザードマンの未来を託す事に決まった」

 

 

「……ああ、そうかい」

 

 

話題に上がった、ザリュースはリザードマン最強の戦士であり、四至宝の一つフロスト・ペインを持つ者として今回の戦闘には否応なく参加が決まっている。そして、クルシュは、レッド・アイの族長代理で唯一メスであり、生き残る仲間を預かる者として生存が決まっている。

彼らは、合ってからそう時間は掛からずに両思いになり現在は、別れの時を惜しむように未来の希望を作ることに励んでいる。

集まった者の中にそれを責める者いない、それほどに今回の戦いは絶望的だった。

 

「族長!!とんでもない魔獣が人間を乗せて、こちらに近付いてきます!!」

 

 

話し合いが止まり沈黙の中に、若いリザードマンの声が響き、族長達は、とんでもない魔獣とやらが味方かはたまた敵か、そして乗っている人間は何者なのか、言葉には出さず顔を見合わせると覚悟を決め外にでる。

怯えが見てとれる仲間達の間を通り、件の訪問者を見える所に来ると確かに誰も敵わないようなとんでもない魔獣と予想より幼い人間がこちらに向かって来ていた。

魔獣は、リザードマン達から少し離れた所で止まり、リザードマン達を軽く見渡すと族長で視線を止め、上の人間に何か会話をしてから、再び視線を戻しリザードマン達に話しかける。

 

 

「それがしの名前はハムスケ!お主達には、森の賢王と言えば伝わるでござるか!」

 

 

ハムスケと名乗った魔獣の言葉に、リザードマン達は驚きの声が上がる。森の賢王の名はリザードマン達にも有名で彼らが比較的安全に過ごして来れたのも森の賢王がリザードマンを縄張りから追い出すことをしなかったからである。

 

 

「そして、僕はハムスケさんの飼い主、デア・シュラムです。皆さんには、トブの大森林の支配者デア・シルト様のお言葉を告げに来ました」

 

 

は?と信じられない事を聞いたリザードマン達の動きが止まる。

 

 

「何を呆けてるでござるか!!シュラム殿に失礼でござろうが!!」

 

 

「あ!す、すまない。俺はリザードマン代表シャースーリュー・シャシャ!話を聞かせて頂きたい!!」

 

 

「シャースーリューさんですね、デア・シルト様のお言葉は至極単純です。従うか死ぬか選べ、です!」

 

 

笑顔でハッキリ伝えるデア・シュラムにその場の全員が寒気を覚える。しかし、急に言われても選ぶことなど簡単には出来ないし、今はそれより優先するべき事があり、震えそうな声を抑えシャースーリューは、返答を告げる。

 

 

「突然その様な事を言われても選ぶことは出来ぬ、森の賢王殿には、我らの生存をお許しになられた感謝はあるが時間が欲しい。それより今は先日現れた魔樹について我らは話し合っていたのだ、森の賢王殿にもどうかお力をお借りしたい」

 

 

「お主ら!話を聞いておらなかったでござるか!それがしでは無く、シュラム殿がお話してるのでござるよ!!」

 

 

「まぁまぁ、ハムスケさん落ち着いて。お父さんもこうなるのは分かってたから。皆さんがお話にしていたのは、あちらのザイトルクワエについてですよね」

 

 

「あ……」

 

 

デア・シュラムが指差した先には、まだ遠いが確実に集落に向かって近づいてくる、魔樹の姿があり。初めて実際の魔樹を目の当たりにしたリザードマンの呟きだけが妙に響いた。

 

 

「安心して下さい、あれもデア・シルト様の支配下に入って居ますので、皆さんが従って下さるのなら危害は加えません。ただし私達は、この先の湖からカルネ村まで川を作りたいのでリザードマンの皆さんには、少し移動をお願いしますが」

 

 

リザードマン達の頭は、淡々と告げるデア・シュラムの言葉が理解出来ないほど真っ白になっていた。

その間もゆっくりと進んでくるザイトルクワエを誰もが眺めるだけになっていた時、集落から落ち着けと力強い声が響き我に帰る。

 

 

「兄者!あれが……」

 

 

「弟よ……我らは死なずに済むかもしれん」

 

 

「何を言っている兄者?うお!何者だ!」

 

遅れて駆け付けたザリュースは周囲の光景を理解しきれず一人騒ぎ立てる形になってしまう。そんな彼を面白い人だなぁとデア・シュラムはぼんやり眺め腰にぶら下げていた剣を見てデア・シルトの言葉に続きがあったことを思い出す。

 

 

「あ!その剣フロスト・ペインですね!忘れてました、素直に従えないと言うなら四至宝の持ち主を代表にデア・シルト様直々にお相手になるそうですよ!」

 

 

「一体何を言っているのだ…兄者!呆けてないで!説明してくれ!!」

 

ザリュースに、まだ虚ろげなシャースーリューが状況を説明するが、話を聞いていたザリュースの顔は周囲と同じく困惑した様子を見せる。

その間も木々が不自然に避けるように動いて作られた道をザイトルクワエが進んで、とうとうリザードマン達から全体像が見えてくると返事を待っていたデア・シュラムが、もう一度問いかける。

 

 

「リザードマンの皆さん!返事はまだですか?あと数分でザイトルクワエがここを通りますよ!!」

 

 

ハムスケの上から必死に身体を動かし存在をアピールするデア・シュラムに、各部族の代表が顔を見合わせ無言で頷くとシャースーリューとザリュースが下に降りて、跪く。

 

 

「我らリザードマン。森の支配者デア・シルト様に忠誠を誓います」

 

 

「そうですか!それは良かった。では、ザイトルクワエが通るのでリザードマンさん達は、少し離れていて下さいね」

 

 

「はっ」

 

 

その後、リザードマンの集落には分断する様な大きな川が中央に流れるようになった。

しかし、その川はデア・シルトが連れてきた精霊により管理され今までより多くの魚が泳ぐ姿が見え、リザードマンが食料に悩まされる事も少なくなり、それと同時にリザードマンが今まで食べてこなかった食物はカルネ村に送られるようになった。

 

 

 

 

「ゲヘナ?」

 

 

「はい、デミウルゴス提案の作戦です。成功すれば一気に大量の物資が手に入りますから、俺として賛成です」

 

 

リザードマンの制圧が昼過ぎには終わり、暇をもて余していたデア・シルトは、珍しくモモンガから連絡を受け、太陽が昇っている時間からナザリックに戻ってきていた。

いつも通りまずは自室に転移すると、そこには既にモモンガが待ち構えており、休む間もなく書類を渡された。

デミウルゴス提案のゲヘナは、簡単に言えば大胆な強盗だったが、身代わりにする組織や得られる物資や情報など詳しく調査され、ナザリックが得られる報酬は大変魅力的だった。一通り書類に目を通したデア・シルトも概ね賛成だが、一つ問題があった。

 

 

「この漆黒の英雄って?」

 

 

「……シルトさん」

 

 

「却下」

 

 

「…やっぱり、そう言うと思いましたよ」

 

 

計画の最終段階では、各地で暴れた強盗犯の悪魔をデア・シルトが華麗に倒し英雄として君臨する所まで考えられていた。

勿論、そんな扱いをされたい訳でもないデア・シルトからしたら、そこだけは断固拒否する内容であった。

しかし、本当に得る物は多くナザリックを一番に考える今のモモンガからすると、どうしてもこの作戦は実行したいとも考えているがこの友人の性格を考えるに意見を変えさせるのは相当難しいとも理解している。しばらく悩んでからモモンガは一つ大きな決断をする。

 

 

「……シューティングスター」

 

 

「は?」

 

 

「この作戦に乗ってくれるなら、シューティングスターを差し上げます!!」

 

 

「マジで……?」

 

 

「マジです!!俺は本気ですよ!!」

 

 

シューティングスター、それは膨大な量の課金アイテムを持つモモンガからしても、大変貴重なアイテムでもあり、下手をしたら一番リアルマネーをつぎ込んだ、ある意味思い出のアイテムでもある。

それをデア・シルトに渡すと言う本気度の表れにデア・シルトも少し悩み、諦める。

 

 

「…分かりました。モモンガさんがそこまで言うなら俺も折れない訳にはいかない」

 

 

「じゃあ!!」

 

 

「ええ、柄では無いですけど英雄とやらにならせて頂きますよ。ただし、今さら態度を変える気はありませんので実績だけは積みますが実際に英雄と呼ばれるかは別ですよ?」

 

 

「ええ!それで問題ありませんよ!そこら辺はきっとデミウルゴスが上手くやります!」

 

 

「じゃあ、早速シューティングスター下さいよ。前から試したい事あったんですよね」

 

 

勢い良く宣言した割には葛藤が見えるモモンガの手から指輪をぶんどると早速自分の指に嵌めて見る。友人の何とも情けない声が聞こえるが無視して、指輪を起動する。

 

 

「……は?」

 

 

「どうしました?」

 

「モモンガさん……これとんでもないアイテムに変わってますよ……」

 

 

デア・シルトが発動をキャンセルして、次はモモンガが起動する。瞬間、脳内に情報が流れ込み、何か大きなものと繋がる感覚が襲い、まるで世界を思いのままにできるかの様な思考に染まる。

ユグドラシルからこちらの世界に来て、変化した魔法は幾つか確認していたがこれほどまでに変わったものは初めてかも知れない。デア・シルトが言うとおり、シューティングスターは、とんでもないアイテムに変化していた。

 

 

「まさか……願いを叶えるアイテムに変わったのか…?」

 

 

モモンガの呟きにデア・シルトも頷く、彼らが味わったのはまさしく不可能を可能にする全能感。そして、それが間違いないと言う強い感覚。

 

 

「失敗した……」

 

 

「今さら遅いですよ、早速一回使うんで返して下さいよ」

 

 

「え!?いやもうちょっと考えましょ!!」

 

 

「いや、ナザリックの利益になる事なんで心配しないでください、それにやまいこさんのもあるでしょ?」

 

 

確かにナザリック内には、もう1つシューティングスターは存在する。逆にメンバーほとんどが重課金者のアインズ・ウール・ゴウンにあと1つしか存在しない。

モモンガは、悩んだが宣言した手前取り消す訳にもいかず渋々指輪を現所有者のデア・シルトに渡す。友人がナザリックの利益になると言ったのでそれを信頼し期待する思いも込めて。

 

 

 

「モモンガさんにも手伝って貰いたいんだけどいい?」

 

 

「その前に何をするか、教えて貰えますか?」

 

 

「シューティングスターの使い方でニャル測が盛り上がったの知ってます?」

 

 

「ニャル測が?」

 

 

ニャル測とは、ニャルちゃん測定の略称で無料の掲示板である。ユグドラシルで情報が多数のっているがその分、ガセネタも多く信憑性が低い。

そんな掲示板の情報で万能に近いアイテムを消費しようとしていることにモモンガは不快感を示すがデア・シルトもそれは理解しているようで、大丈夫大丈夫と軽く笑いながら言う。

 

 

「どっちにしろ無駄にはならないから。その盛り上がった内容ってのが、シューティングスターでユグドラシル硬貨の獲得を選ぶと凄い量出るんだってさ。実際に試した動画と画像が挙がってたんだけど小さいギルドの宝物殿がパンクするレベルでさ」

 

 

「へぇ、面白そうな話ですけど、シューティングスター使うほどですかね?」

 

 

「そこはあれよ、持ち主の自由さ」

 

 

「……ほんと失敗した」

 

 

「アハハハ!!」

 

 

楽しそうに笑うデア・シルトとは対称的に肩をガックリ落としたモモンガは、まず玉座の間に行き宝物殿へ直接ユグドラシル硬貨を送れる様に設定を変更して、八階層へ転移した。いつぞやのコキュートスとの約束を守りヴィクティムの元を転移先にするとヴィクティムも連れて八階層中央でシューティングスターを起動する。

 

 

「ほんと凄いなこれ」

 

 

「考え直しましたか?」

 

 

「いーや、シューティングスターよ!!ユグドラシル硬貨をありったけ寄越せ!!」

 

 

「あ!ちょ!?」

 

 

デア・シルトがモモンガの制止を振り切り、願いを言うと少しの間が空いてから何もなかった地面から一枚の硬貨が浮き出てくる。

は?と二人で顔を会わせていると二枚目、三枚目と徐々に硬貨の出てくるテンポが上がり始める。

心配そうに眺めていたヴィクティムも、おお!と小さな手でパチパチと拍手してくれて二人で良かったと喜んでいると異変に気付く。

 

 

「……シルトさん、いつの間に山が出来たんですかね?」

 

 

「……モモンガさん、山は作られてる最中ですよ」

 

 

振り向いた頃には、二人の背を超える硬貨の山が出来ていた。それも進行形でドンドンと大きくなっており、そのスピードも早くなっていた。

 

 

「モモンガさん!ゲート!ゲート開いて宝物殿に送って!!」

 

 

「あ、はい!《転移門》!!」

 

 

慌ててゲートで沸き出る硬貨に蓋をするが、次は横に広がり始めスピードも上がる。

 

 

「嘘だろ!?モモンガさん!ゲートもっと横に!」

 

 

「すいません、ゲート固定したんで無理です」

 

 

「精神安定化してやがる!?ヴィクティム!パンドラズ・アクターかシャルティア呼んできてくれ!」

 

 

「はっ!少々お待ちを!!」

 

 

ヴィクティムが急いでいるのだろうがフヨフヨと漂いながらゲート要員を呼びに行く。その間にどうにか拡散を防ぐ為デア・シルトは、大盾を取り出し山を作ろうとするが反対側に流れるだけで上手く入れる事は出来ず、ドンドンと八階層に硬貨の海が出来始める。

硬貨排出は更にスピードが上がる。

 

 

「頑張って下さい、リキャストタイムが切れたんで、こっちも宝物殿に送ります!」

 

 

「よし!これで……何でまた上に行き始めるんだよ!!」

 

 

「あ、固定しちゃった」

 

 

「モモンガ!!」

 

 

二人が言い合いを続ける間も、まだまだ硬貨は増え続け、勢いも収まる様子もない。

 

 

「モモンガ様!!デア・シルト様!!私をお呼びと聞きシャルティア・ブラッドフォー……これは?」

 

 

「良く来たな、シャルティア。緊急事態だ」

 

 

「あ、はい」

 

 

「宝物殿に直接転移できるようにしてあるから。お前は、上を押さえてくれ。俺が入れてくから」

 

 

喧嘩の結果、落ち着いた二人は淡々と宝物殿に勤しんでいた。そのおかしな光景にシャルティアは、困惑したが呼ばれて命令を受けたからには頑張ろうとしたが重大な事実に気付く。

 

 

「申し訳ありんせん……わらわ、宝物殿に入った事がないでありんす……」

 

 

「マジか!!ヴィクティム!パンドラズ・アクターだ!」

 

 

「シルトさん!宝物殿行きのゲートから逆流してる!宝物殿が限界だ!」

 

 

「嘘だろ!!どうすんだよ!」

 

 

「あ、あれだ!六階層のコロッセウム!あそこにしましょう!」

 

 

「それだ!ヴィクティム!ゲートから六階層に移動してコロッセウムにいる奴ら移動させろ!」

 

 

「お任せを」

 

 

「シャルティア!お前は上からゲートだ!私のゲートが閉じる!」

 

 

「《メッセージ》、パンドラズ・アクター!今すぐ八階層に来い!え?今休憩中?いいから来い!来れば分かる!」

 

 

結局この騒動は、ナザリック全体を巻き込み。宝物殿の1つ目の部屋はユグドラシル硬貨で埋め尽くされ移動すら困難な状況になった。六階層のコロッセウムも観客席に配置されていたゴーレムごと埋まり使用不可になり、大量のユグドラシル硬貨が玉座の間や八階層などの余っているスペースに山になって保管されるようになった。

ナザリックの知恵者三人の見解では、おそらく宝物殿全体と同等の量のユグドラシル硬貨が排出されたのではないかとの事で消費するのにどれ程時間が掛かるかは検討もつかないと報告された。

 

 

 

 

 

リ・エスティーゼ王国国王直轄領エ・ランテルは、三重の城壁で守られており。城壁外周部には有事の際に軍の駐屯地として利用する為、様々な設備が整えられている。

その中でも一番場所を使って作られているのが戦争などで死亡した者を弔うための共同墓地である。

この世界では、弔われない死者などからアンデットが発生する可能性が高いと考えられており、墓地と言うのは非常に大切な施設でもある。しかし、それでもアンデット発生の詳しい原因は分かっておらず。共同墓地は、衛兵隊や冒険者が毎夜巡回して管理されている。

 

 

「…今、何か聞こえなかったか?」

 

 

「おいおい、ビビらすのは止めてくれよ」

 

 

今日の見回りを終えた衛兵達が、最近アンデットが少ないことに油断して世間話をしていると一人の衛兵が急に話すのを止め、辺りに聞き耳を立てる。他の衛兵は、彼の冗談だと軽く受け止めるが、次第に彼の言った事が冗談では無かったと痛感することになる。

墓地をぐるりと囲んでいた、死者と正者の境界線の壁は、その数十分後には、意味を成さなくなっていた。

 

 

「アンデットどもを通すな!!我々が抜かれれば多くの市民が死ぬことになるぞ!!」

 

 

エ・ランテルの冒険者組合長プルトン・アインザックは、自らも参加して、壊れた木材を無理矢理に縛り付けた盾をアンデットの大群に押し当てては、後ろから冒険者に武器で殴らせ時間を稼いでいた。

少し前に遡れば、彼は今だに終わらないデア・シルト達の様々な書類を夜遅くまで整理していた。

若い冒険者が組合に信じられない報告を知らせにやって来るまでは。

 

「街の中にアンデットの大群が発生!!その数、数千!!現在も数を増やして街の中に集まっています!!」

 

 

若い冒険者の叫びにプルトン・アインザックは、最初こそまたデア・シルトが何かやらかしたか?と正常な判断を下せなかったが、すぐに街の様子がおかしいことに気付き、外に出ると何故今まで気が付けなかったと後悔した。

普段の街を照らしている魔法の光より、あちらこちらから建物が燃える光で街が照らされ。寸前まで寝ていた住人はそのままの姿で奥へ奥へと逃げて行く。中には、家族を守るためか武器ですらない物で身を固めてアンデットの中に消えていく。

まさに地獄としか言い様の無い光景が目の前に広がっていた。

 

 

「アインザック組合長!!」

 

 

若い冒険者の声で意識を戻したアインザックは、組合員に冒険者を叩き起こして来いと命令すると若い冒険者と共に市民を守るため戦いに向かい、現在に至る。

 

「ミスリル級の応援はまだか!!」

 

 

「無理ですよ!ミスリル級はスケリトル・ドラゴンを相手にしてますから!!」

 

 

「なんだと!?」

 

 

アインザックの叫びに答えたのは、銀級冒険者"漆黒の剣"ペテル・モーク。彼は決して高位の冒険者では無いが現在の状況では、銀以上の冒険者は各地に散って対処に当たっているため、街一番の大通りを守る大役を彼のチームに任されていた。

 

 

「アインザックさん、後は俺達に任せて一旦情報集めに戻ったほうがいいんじゃないですか?」

 

 

「バカな事を言うな!!」

 

 

軽口を叩きながらも必死に急ごしらえの盾を押しているのがペテルと同じ漆黒の剣のメンバー、ルクルット・ボルブ。本来ならチームの目となり耳となり働くレンジャーの彼も今の状況では、ただ必死に力仕事をするしかない。

ルクルットの言うとおり、本来なら銀級の冒険者ではなく組合長であり、引退したとは言え彼らより元は上位のアインザックが指揮を執るべきではあるのだが。

 

 

「私が抜けては壁が崩壊するだろうが!ダイン!次が来るぞ!!」

 

 

「任せてるのである!」

 

 

アインザックが言った通り、低位の冒険者達は既に形振りかわまず正者に突撃してくるアンデットにより多数の者がケガをして盾を支える事が難しくなっている。その為、アインザックが代わりに盾を支える中心となっていた。

もう何度目かわからないアンデットの波に、ダイン・ウッドワンダーも漆黒の剣の一員として、皆を奮い立たせるため果敢に殴り付ける。

それでも、やはり疲労の性かアンデットの処理が徐々に遅くなる。

 

 

「《クィック・マーチ》!ペテル!」

 

 

「任せろ!」

 

 

最後の一体をペテルが倒した所で、僅かな時間だが息を整える。だが先ほどの魔法を使った漆黒の剣の魔法詠唱者ニニャは、これで魔力切れと力なく呟く。それは、この場に居るもので魔法を使える者がいなくなった事を意味した。未熟な者が多いこの場で支援なく疲労困憊の状態で後何れだけの時間耐えれるだろうか、その間にこの騒ぎは収まるだろうか、僅かに残っていた戦意が消え絶望的な雰囲気だけが広まっていった。

それでもお構い無しに次のアンデット達が彼らに目をつけ歩み寄ってくる。

 

 

「糞!こんな時にあの無茶苦茶な男がいてくれたら!!あの男は何をしている!!」

 

 

アインザックが壊れかけの盾を乱暴に殴るが誰もそれ責める事は出来ない。彼の言った"無茶苦茶な男"はきっと今話題の漆黒の全身鎧だろうと誰かがぼんやりと考えていた。

 

「来るぞ!!」

 

 

まだ諦めていないペテルの声で我に返った者達が慌てて動き出した瞬間、迫っていたアンデットの大群に何かが降って来た。

それは、アンデットごと押し潰し轟音と共に地面を周囲に撒き散らした。咄嗟に身を隠したアインザック達が粉塵舞う中に影を見つけると、それはため息混じりに話しかけてきた。

 

 

「正当な報酬も評価も受けれずに頑張って冒険者を続けている俺に対して、無茶苦茶な男とは随分な言い様じゃないか?なぁ?アインザック組合長?」

 

 

「デ、デア・シルト君!?来てくれたのか!」

 

 

「ええ、カッパーのプレートぶら下げて来ましたよ?」

 

 

「あ、いや、お、おかしいな?二日前には一回目の報酬と一緒にカルネ村に送った筈なんだが……」

 

 

「届いてないのなら、意味がないよなぁ?」

 

 

何処から来たのかは分からないが、凄まじい衝撃を受けた筈の漆黒の全身鎧の男は、アインザックに平然と詰め寄り先ほど以上にアインザックを震えさせる。

冒険者達が唖然としている中でも、デア・シルトとアインザックは言い合いを始め、誰かの横に宙を舞ったスケルトンの一部が落ちてくるまで続いた。

 

 

「そうだ!言い合いをしている状況では無いのだよ!!」

 

 

「あ?ああ、それならもうすぐ終わるから、あんたも着いて来い、正当な報酬と評価の為証人は必要だからな」

 

 

「は?一体君は何を……」

 

 

デア・シルトが言葉を遮り上を指差す。

 

 

「え……?」

 

そこには、何十体もの天使が本来持っている剣ではなく、松明を持って空を飛んでいた。

数からしてエ・ランテル中に天使は飛んでいるようで空を見渡せば、あちらこちらに光が見えた。

 

 

「あの天使達に持たせているのは"正者の灯火"ってマジックアイテムでな、生命を感知するアンデット系は生きてる生物よりあれを優先して狙う。武器を持てなくなるデメリットのお陰で効果範囲が凄まじく広い。これだけの数を揃えればアンデットが進行している地域全て効果範囲に入ってる筈だ」

 

 

「あ、あの天使達は一体何処から……まさかマジックアイテムか?」

 

 

「教えてもいいが、誰にも話すなよ?下手したら戦争に繋がるからな」

 

 

何だそりゃ?と言いたそうなアインザック達に、聞くか?ともう一度問うと首を激しく降り否定するので、じゃあ気にするなと移動を開始する。

先ほどとは立場が逆転してアンデットを追う形で天使達の後ろを着いて行くと各地で戦っていた冒険者達と合流する。アンデットを攻撃する者もいたが、それでもアンデット達は上空の天使を攻撃するように跳ねたり建物に登り落ちるを繰り返し、全く天使には攻撃が届かなかった。

 

 

「あ!あれはスケリトル・ドラゴン!あれでは天使が殺られてしまうぞ!!」

 

 

「安心しろ、護衛はちゃんと付けてある」

 

 

2体のスケリトル・ドラゴンが天使めがけ飛び出し、それを見た慌てた冒険者が声を上げるがデア・シルトは焦らずに返答する。

その態度に不満が有ったのか続けて冒険者が何か言おうとした所で2体のスケリトル・ドラゴンは、龍の形をした電撃に飲まれ呆気なく散った。

 

 

「魔法に絶対耐性のあるスケリトル・ドラゴンが……」

 

 

「ん?ああ、こっちの世界じゃそう思われてだっけか」

 

 

スケリトル・ドラゴンは、本来第六位階以下の魔法の無効化能力なのだが、こちらの世界で知られているのが第六位階魔法までであり、結果として絶対耐性と誤解されている。これは、人間の最高位魔法詠唱者が第六位階までしか使えないのが大きな要因であり、一応伝説レベルで第六位階以上の噂があるがほとんど信じられていないのが原因でもある。

陽光聖典達から話を聞いてそれを知っていたデア・シルトは、目的地まで距離があったので、ついでに自己紹介がてら色々と説明したが、頭のおかしい奴呼ばわりされ話すのを止めた。

明らかに怒っているデア・シルトを先頭にすっかり萎縮した冒険者達は、しばらく移動してようやく目的地の共同墓地を囲う城壁までたどり着く。

共同墓地前広場には、何十体もの天使達が松明で周囲を照らし、その下には何千ものアンデットが群がる光景が広がっていた。

 

 

「さて……お前らに話だけしても信用されないのは、よーく理解した。なら今度は、実際に力の一部を見せて信用されないのか試そうと思う」

 

 

「デ…デア・シルト君?つ、次は何をする気かね?」

 

 

不安そうなアインザックの言葉を無視して、デア・シルトは振り返らず背中のグレートソードを軽々と抜き、見せつける様に構える。

それだけで冒険者達は、様々な反応を見せた。頼もしさを感じる者、恐れる者、頬を染める者、嫉妬する者。

 

 

 

「今から、あのアンデットどもを一掃してくる」

 

 

それだけ言うとデア・シルトの姿が一瞬で消える。

驚愕する冒険者達が周囲を見渡すと一人の冒険者が上を指差す、一斉に上を見上げればどれだけ飛んだのか月を背負ったデア・シルトが真紅のマントをたなびかせ、クロスする形で剣を構えていた。

 

「《龍星落》」

空中で止まっているかの様に見えていたデア・シルトが、一気に加速していき、躊躇いなくアンデットの山に突っ込む、少しの間が空き、地鳴りが鳴ると先ほどアインザック達の前に現れた時とは比べ物にならない衝撃と爆音が生まれ、地面とアンデットが噴火するが如く宙に舞い上がる。

デア・シルトによって生じた、地面とアンデットの残骸の混じった雨が降ってくると冒険者達は頭を守り止むまで必死に耐えるしかなかった。

やっと止まった所で冒険者達が恐る恐る共同墓地側を覗いた時には、数分前まで大量に居たアンデット達の姿は跡形も失くなっていた。

残っていたのは、衝撃の凄まじさを物語る巨大なクレーターだけだった。

 

 

「……彼は?……デア・シルト君は何処に言った!?」

 

 

「いや?ここに居るんだが?」

 

 

「うお!?いつの間に!?」

 

 

「見てろって言ったのに、後ろ振り向いたら誰も見てないから確認しに来たんだよ。ちゃんと見たんだろうな?」

 

デア・シルトは地面に着地した後、相手が弱かったにしても思いっきり技を放てた事に満足して振り向いた。

しかし、拍手の一つも起こらず見ている者すら居なかった、もしかして巻き込んだか!?と焦ったデア・シルトは急いで城壁に登った。そこで見たのは震えて縮こまる冒険者達だった。

そして、呆れていた所でアインザックが騒ぎだした。

 

 

「あ、ああ、それは大丈夫。ちゃんと見てたとも、な?」

 

 

「は、はい!!」

 

 

漆黒の剣が代表として返事をすると、そのままメンバー四人で色々質問をしようするが、まぁ後でなと流されてしまう。

 

「とりあえず、このアンデット騒動を終わらせてからだな、共同墓地の霊廟に仲間が黒幕捕らえてるからアインザック組合長付き合って貰うぞ。あと誰か衛兵連れてきてくれ、流石にこれは国家レベルの問題だろ?」

 

 

「黒幕だと?一体何者なんだ?」

 

 

「ズーラーノーンの高弟だとさ」

 

 

「ズーラーノーンだと!?」

 

 

ズーラーノーンとは、魔法詠唱者の集団なのだがアンデットを使い過激な行動をとる為、周辺国家に敵視されている。しかし、それでも勢力を保ち続けるほどの力を持つ厄介な集団である。

デア・シルトは知らなかったが意外と有名な集団らしく、冒険者達もザワザワと騒ぎになる。

 

 

「おい!今は話して暇は無いぞ。とっとと衛兵を連れてくる者、街に知らせる者に別れて行動しろ!」

 

 

組合長らしい一面を見せたアインザックが号令をかけると一斉に冒険者達が動き出す。デア・シルトも感心してから、こちらも動き出す。

 

 

「ところでアインザック組合長、ンフィーレア・バレアレって知ってるか?」

 

 

「ん?もちろん知っている。エ・ランテルでも最高位の薬師で有名なタレント持ちだからな、冒険者達も頼りにしている人物だ、彼がどうかしたのか?」

 

 

「そいつが霊廟と捕まっていた、マジックアイテムで意識を奪われた状態でな」

 

 

「なに!?彼は無事なのか!」

 

「生きてはいるが無事とは言えんな、ともかく詳しくは霊廟に行ってから話す」

 

 

アインザックに急かされ霊廟の中にたどり着くと、デア・シュラム達とその横にローブ姿の男女が並べられていた。

 

「お久しぶりですね、アインザックさん!えっと、この赤色のローブの人がカジットさん、今回の主犯格です。周りの黒いローブの人達は弟子だそうですよ」

 

 

「これがズーラーノーンの高弟か……その女性は一体何者だ?」

 

 

「この人は、クレマンティーヌさん。見てくださいよ、この人冒険者を襲ってプレートを奪う悪い人なんですよ」

 

 

デア・シュラムがクレマンティーヌからローブを剥ぐとビキニアーマーの様な鎧に大量の冒険者プレートが打ち込まれていた、露出度の高い服装に一瞬ドキッとしたが打ち込まれたプレートの数にアインザックは怒りを覚えた。

 

 

「…彼女ことは、衛兵に任せるとして。ンフィーレア君は何処だ?」

 

 

「あ、彼はこっちですよ」

 

デア・シュラムが指差すのは布に包まれた人くらいの大きさをした物だった、嫌な気配に覚悟を決め、見せてくれと言うと布が取られる。

そこには、ほぼ全裸に近いほど肌が透けて見える衣服を纏って、布を被らされていたにも関わらず棒立ちのンフィーレアがいた。近づいて声を掛けてても反応せず、頭にクモの巣の様なサークレットを見つけて手を伸ばした所でデア・シルトに止められる。

 

 

「それには、触れないほうがいいぞ。下手に触ってンフィーレアからそれが外れると発狂する代物らしいからな」

 

 

「な、なんだと?」

 

 

デア・シルトが言うには、ンフィーレアの頭に付けているのは、スレイン法国の最秘宝"叡者の額冠"であり、着用者の自我を封じることで、人間そのものを超高位魔法を吐き出すだけのアイテムと変える神器であり、一度着用したら最後、取り外した時には使用者は発狂してしまうとの事だった。

 

 

「そんなアイテムが……」

 

 

「どうする?ンフィーレアを犠牲にすれば強力なアイテムが手に入るぞ?」

 

 

「ふざけるな!!人を犠牲にしてまで魔法一つ放ってどうすると言うのだ!!私はこんなもの認めんぞ!!」

 

デア・シルトの言葉にアインザックは思わず怒りを露にしてしまうがすぐにデア・シルトが悪い訳ではないと思いだすと怒りを静め謝罪する。

 

 

「いやいや、組合長。気にしないでくれ、まだ短い付き合いだがあんたのそういう所を俺は気に入ってるんだ、ンフィーレアの件は俺に任せろ」

 

 

「デア・シルト君……」

 

 

闇の中から小刀を取り出すと叡者の額冠のみを素早く切りつけ破壊する、その瞬間ンフィーレアの体が前に倒れ、デア・シルトが優しく受け止める。

 

 

「これで問題ないだろう。さて、衛兵の声も聞こえて来た事だし、俺達の役割も終わりだな」

 

 

「ああ、すまないが今回の事情聴取が有るだろうから、二三日は、街に滞在して貰うぞ」

 

 

「……アゼルリシア山脈攻略がまた遠退いたか」

 

 

 

 

 




遅くなりました、次回の展開で思いきった事をしたくて原作を読み直したんですがはっきりとしなかったので二次創作ですしやりたいようにやろうと思います。
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