骸骨の魔王と騎士   作:頭領

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エ・ランテル騒動後から法国決着(途中)まで


人類の守り手

「おい、見ろよ。あれが王国三番目のアダマンタイト級冒険者"漆黒の怪物"だぞ」

 

 

「マジかよ…俺、こないだ居なかったから挨拶した方がいいかな?」

 

 

「止めとけ、何でも機嫌悪い時に話し掛けると平気で武器を取り出すほどにイカれてるらしい、関わらなければ英雄なんだがな」

 

 

「おい!バカ!こっち見てるぞ!」

 

 

噂話をしていた冒険者達が慌ててその場を離れていく姿をアダマンタイト級冒険者になったデア・シルトは、何もせずに見逃し、エ・ランテルの街を歩く。

彼はこの街に今日で四日目の滞在になるが、前回とは違いその気分はすこぶる良い、と言いのもこの三日間でこちらの世界に来てからようやく大きく前進できたと感じているからである。

そう感じる理由は幾つかあるが一つ目がデア・シルトと言うユグドラシルから来たプレイヤーを、この世界で有名に出来た事が大きい。冒険者の最高位であるアダマンタイト級とは、人類の守り手と呼ばれるほどに期待され、何処かで新しいアダマンタイト級冒険者が生まれれば冒険者だけでなく国や商人、一般人の話題にも上がるほどの存在である為、上手く行けば各地に散らばっているユグドラシルプレイヤーが勝手にエ・ランテルに集まることを期待できる。

 

 

「おや?おお!これはこれは、デア・シルト殿では御座いませんか」

 

 

「ん?ああ、バルドさんか。どうだいカルネ村産の食料は?」

 

 

デア・シルトに話しかけて来たのは、少し太めだが身なりの整った男バルド・ロフーレという人物。彼は軍事拠点の役割を持つエ・ランテルで食料取引をかなりの部分を担っており、質より量の王国軍相手に食料提供している為その規模は凄まじく、エ・ランテルを代表する大商人の一人である。

そんな彼は現在デア・シルトと手を組み、アンデット騒動で焼けてしまった食料倉庫の一部をカルネ村でザイトルクワエ達によって作られたカルネ村産の食料で賄っており、その品質の良さから貴族達への取引を成功させ更なる躍進を目論んでいる人物でもある。

 

「それはもう好評で!次々と依頼が舞い込んで参ります」

 

 

「そうかそうか、そりゃ良かった。分かってると思うがカルネ村の名前と…」

 

 

「ええ、もちろん売り上げの二割ですよね?」

 

 

「ああ、それでいい」

 

 

「しかし、本当によろしいので?デア・シルト殿の取り分が幾らなんでも少ないように思うのですが?」

 

 

「気にしないでくれ、バルドさんの所とは良い関係を続けたいだけさ、今後の事を考えてな」

 

 

「おお!そうでしたか!では、私もデア・シルト殿の御眼鏡に適う様精進させて頂きます、今後もバルド商会をどうかご贔屓に」

 

 

ご機嫌になったバルドと別れ、街の散歩を再開する。

デア・シルトが前進したと感じる二つ目の理由に金銭関係も上げられる。元々このエ・ランテルが金も情報も手に入りやすい街であったが、カルネ村を拠点とし冒険に出掛けていたデア・シルトは注目を浴びていながらそれを活用していなかった。それを今回、アンデット騒動の解決、アダマンタイト級冒険者の箔を付けた上で活用する事を決めた結果バルド商会という大商人を引き当て、他にも様々な取引を成功させた。これにより今後、冒険に出ている間に多額の資金を獲得できるようになった。それに加えて冒険者組合からの報酬を二割も受け取っていない状況であるため総合した金額がどれ程になるか分からないがユグドラシル硬貨に変換してもそこそこの金額を期待できる。

デア・シルトが散歩を続けていると影に隠れているハンゾウの元にメッセージが届いたようで短い会話で済ませると周囲には聞こえないほどの声でメッセージの内容がデア・シルトに報告される。内容を聞いたデア・シルトは、ヘルムの下で気分的には笑顔を浮かべ、来た道を戻り冒険者組合へ向かい始めた。

 

 

 

 

リ・エスティーゼ王国はここ数年に渡って行われているバハルス帝国との戦争の際だけ多くの民を徴兵し軍としている。

そんなその場しのぎの軍の中には、戦時以外は野盗をしている犯罪者集団も傭兵として紛れ込んでいる。

エ・ランテル近郊の森の奥にある洞窟を根城にしている"死を撒く剣団"もその内の1つである。

そんな消えても問題にならない犯罪者集団が今壊滅しようとしていた。

昼間だというのに魔法の光で照らされた薄暗い洞窟の中には大量の野盗達の死体が散らばり、最奥から鋭い金属音だけが響いていた。

音の発信源である死を撒く剣団最強の男"ブレイン・アングラウス"は、ある男に勝つためだけに鍛え上げられた肉体と外道に堕ちてまで手にいれた"刀"を自身の持てる全ての力で相手に向かい幾度となく振るうが、相手はそこら辺の死体から抜いた質の悪い剣で軽くいなすだけで反撃はしない。

ブレインは、この打ち込み稽古のようなものが始まってから自分が品定めされているだけだと理解しているが目の前の男なのか女なのかハッキリと判断しづらい中性的な顔立ちの人物が自分の遥か上の強者だと気付いたからには挑まずには要られなかった。

そもそもの話、相手は目の前の人物以外参加していないだけで12人の老若男女がブレイン達を観察して居る。目の前の人物が尋常では無いだけで他の者もブレインと同等かそれ以上の強者。自分の強さにはプライドのあったブレインからすれば笑うしかない状況だった。

彼らは、その強さだけでなく見た目も異常だった。ブレインには、見慣れない服もいれば貴族が鑑賞用に作らせそうな武具を着用する者もいる。

唯一、目を背けたくなる格好の老婆だけが戦う者では無い事はわかるがそれでも油断できない気配を感じさせる。

彼らが結局何者なのかはブレインはわからないが、剣士として意地がある彼は自信が繰り出せる最強の技を放つ決意をする。

距離を取り、腰を落として構えると今まで以上に鋭く短い呼吸を繰り返し彼のオリジナル武技〈領域〉〈神閃〉を組み合わせた回避不能かつ一撃必殺《虎落笛》の準備が整う。相手は相変わらずの無表情でブレインの領域に足を踏み込む。

鞘から抜き放たれた刀身は、音速を越え空気を切り裂き相手の首を切り飛ばす完璧な一刀だった。

 

 

「マジかよ……」

 

 

「お見事です」

 

しかし、ブレインの目の前には折れた剣先を真っ直ぐ向ける無傷の相手が立っていた。

それと、声を聞いてようやく相手が男だと判断する、

 

「参考までに、どうやって今のを捌いたんだ?」

 

 

「簡単ですよ、あなたの刀に合わせて、こう」

 

 

剣を斜めにして指先を滑らせる。要するに先ほどまでの打ち込みとほとんど変わりない対応をしただけだった。

長年を掛けて生み出した最強の一刀を簡単に破られたブレインのショックは大きかった、がそれ以上にブレインの中にはまだ自分は強くなれると確信めいたものが強く沸き上がり心が折れずに済んだ。

ブレインは気分とは裏腹に全身の緊張が解けて膝が震え出すと無様に尻餅を付き観察していた者達から笑い声が上がる。

それをブレインの相手が注意すると手を伸ばしブレインを立ち上がらせる。

 

 

「で?俺は合格か?」

 

 

「もちろんです。あなたは今後人の為にその力を使って貰います」

 

 

「人の?……あんたら法国の特殊部隊か、噂は聞いていたが……」

 

 

ブレインが知っている噂は最初に聞いた時は鼻で笑ったが法国には表に出ない特殊部隊がありその中には周辺国家最強のガゼフ並みの強者ばかりが組み込まれた部隊があると言う噂だった。

ブレインの反応に、男は困った様に笑って仲間の方を見ると肩を竦めた。何人かが目を反らす様子にあいつらが噂の原因かとブレインも何となく納得する。

 

 

「我々も出来る限り静かに任務を全うしているのですがね、どうしても我々が戦うとなると噂になってしまうのです」

 

 

「…あんたら、普通じゃ無さそうだもんな」

 

 

 

「まぁ、詳しい説明は本国に戻ってからゆっくりとしますよ、それより今回私達がここに来た理由をお話しましょう」

 

 

男は隊長と呼んでくださいと短い自己紹介をすると、ここに来た目的をブレインに話し、協力を求めてきた。

彼らはここ最近、近辺にあるカルネ村周辺で起きている異常事態の数々を調査しに来たという。

カルネ村という名前にはブレインも覚えがあった。ただ、法国の特殊部隊レベルの胡散臭い話だと思っていたが。

 

 

「知っていましたか、ここに来た甲斐があったというものです。では、知っている限りを話して下さい」

 

 

「念のために言っておくが、俺は団員からの又聞きだからな?」

 

 

「構いません」

 

 

「そうか、えっと確かだな…」

 

 

ブレインが思い出しながら話した内容に隊長達は困惑を示す。ブレインもだろうなと思う。

その内容が、村にある日突然バハルス帝国の騎士が襲ってきて、一人また一人と殺されていく中でとある村娘の願いが世界に届き、漆黒の英雄とその仲間を呼び出し村を救った。その英雄は、村を救うと元の世界帰るために必要な何かを探しに冒険者なった。と言うもの。

これは、死を撒く剣団に元吟遊詩人がいて先日大金を手に入れた時に開かれた酒の席で吟った内容である。

 

 

「……ま、 まあ、噂なんてそんな物ですよね、我々の方でも情報収集に長けた部隊がエ・ランテルでの侵入捜査から戻ってくる頃合いですから、そちらを待ちましょう」

 

 

「……何かすまんな」

 

 

気まずい雰囲気をどうにかするため、隊長以外も自己紹介をする。彼ら漆黒聖典の装備にも興味を持ったブレインだったがそれ以上に彼らの強さや独自の技といったものに興味を示したブレインは、短い時間ながら打ち解ける事に成功する。後は、ブレインがどれ程六大神を崇められるかが問題だが。

話が一段落した辺りで、偵察に出ていた暗殺者の男が戻って来ると一緒に何人かの顔を隠した女性達と仲間では無いのか縛られた二人の男女が洞窟の中に入って来る。

彼女達が隊長の言っていた風花部隊らしく、エ・ランテルで得た情報を漆黒聖典にスラスラと報告していく。その内容がまた驚くべきものだったが。

 

 

「隊長、こりゃもしかすると…」

 

 

「他の神が降臨されたか、我々が知らない神の血を引き継ぎし神人ですか」

 

 

「隊長、上層部に報告は?」

 

 

「事実確認が済んでいませんでしたが、上層部もあなた方と同じ結論に至り我々が派遣されたのです」

 

 

「では、なぜカイレ様まで……」

 

 

「万が一の為です。六大神様のように人の味方をして下されば本国にご案内し、大罪を犯した者達と同類だった場合は、推定破滅の竜王を支配した後戦う事になりますから」

 

 

隊長の言葉を聞いた漆黒聖典達の顔に覚悟が生まれる、ブレインからすると、こいつら相手に戦える奴がいるのか疑問だったが内容から察するにいるのだろうとブレインも覚悟を決める。

そんな彼らを馬鹿にする様な静かな笑いが縛られた女から上がる。

漆黒聖典達の視線が彼女に集まると、隣に立つブレインや風花聖典達も震え上がるほどの圧が向けられるが、彼女は更に耐えきれなかったのか大きな声で笑い出す。

 

 

「何が可笑しいのですか?裏切り者の元第九席次疾風走破」

 

 

「いやー、だってさ……あんたらが言ってる事、全部あの方がお望みになってる事なんだもん」

 

 

余裕の態度を崩さずに元第九席次クレマンティーヌが放った言葉にその場全員が驚きの表情を見せる。

 

 

「クレマンティーヌ!!貴様!今の言葉はどういう意味だ!!あの方とは誰の事だ!!」

 

 

怒声を上げてクレマンティーヌに掴みかかったのは、クレマンティーヌの兄"クアイエッセ・ハゼイア・クインティア"。彼はクレマンティーヌが裏切った挙げ句国の最秘宝を盗んだ事を知った時は普段の優しげな雰囲気が一変して隊長が止めに入るほどの騒ぎになった。そして今、目の前で反省する様子を見せないどころか挑発するような発言をしたクレマンティーヌを明確な殺意を持って締め上げている。

クレマンティーヌの性格を考えると素直に話すとは思えないが、それでも貴重な情報源に違いない彼女を殺される訳には行かず、隊長が止めに入ろうとした時、クレマンティーヌの表情に全員が違和感を覚える。クレマンティーヌが見せた表情は、苦痛でも、普段の人を小馬鹿にした薄ら笑いでも無く、純粋な目の前に新しいオモチャや大好物を並べられた子供が見せる様な明るい笑顔だった。

 

 

 

「ねぇ、お兄ちゃん。失うならやっぱり足から?それとも腕?」

 

 

「なにを……!?」

 

クアイエッセがそれに気付き怯んだ瞬間、彼の右腕が肘まで何かに寄って切断され宙を舞う。

驚愕した漆黒聖典だったが即座に護衛対象であるカイレを守る様に陣形を作り、ブレインも刀を構える。

 

 

「ぐぅッ!クレマンティーヌ!!!何をした!!?」

 

 

「あっははは!!どう?痛い?ねぇ?優秀なお兄ちゃん?きゃははは!!」

 

 

咄嗟に痛みに耐えポーションを乱暴に振り掛けたクアイエッセが、クレマンティーヌを睨み付けるがクレマンティーヌは、それすら愉快だと言いたげに笑い続ける、彼女の拘束は簡単に外れるが、周囲の風花聖典は、彼女を止める気配を見せない。

 

「うーん、そうねぇ、次は左足お願いします」

 

クレマンティーヌがクアイエッセの左足を指差すと、先ほどと同じように突然クアイエッセの左足が膝から切断される。痛みで絶叫するクアイエッセとクレマンティーヌの笑い声だけが響く。

謎の攻撃を見極めようとしていた漆黒聖典達は、油断していなかったにも関わらず二度目の攻撃でもその正体を見極められず驚きの声が上がる。

 

 

「落ち着け、僅かだが見えた。クアイエッセの影に何か潜んでいる、武器は小刀だ」

 

 

隊長が漆黒聖典だけに聞こえるように呟く、そのお陰で漆黒聖典に落ち着きが戻るがそれでも隠密系や探知系に優れた者達が気付けなかった影に潜む何者かに対する警戒心が高まる。

隊長は、声を出さずに指示を送るとクレマンティーヌが三度目の指示を出すタイミングを待った。しかし、必死に立ち上がろうとしていたクアイエッセは三度目の攻撃を受ける前に力無く地面に倒れると動かなくなった。

 

 

「え~だらしないなぁ、もっと楽しみたかったのに………まぁ、糞兄貴も結局あの方達に比べればこんなもんか」

 

 

「疾風踏破、答えろ。貴様が言う、あの方とは誰だ?風花聖典は、何故貴様に従う?」

 

 

「知りたい?教えて上げても良いけど、その代わりにケイセケコゥクを渡してくんない?それをあの方に渡すのが私の任務なんだよね」

 

 

「貴様…あの方とやらから力を借りて調子に乗ったか?」

 

 

漆黒聖典達は、基本任務達成が最優先事項だがそれ以上にクレマンティーヌが欲しがったケイセイコゥクを守る事が重要な任務でもあった。それを寄越せと言った時点で漆黒聖典とあの方との敵対は決まった様なもの。隊長は影に潜む何者かを警戒しながらクレマンティーヌを殺す事に決めた。

 

 

「あーあ、大人しく渡しとけば良かったのに、来ちゃったよ」

 

 

漆黒聖典の殺意を受けても構える事すらしなかったクレマンティーヌはそう言うと、洞窟の入り口方向に跪いた。

不意を突かれた漆黒聖典達が困惑した所で、クレマンティーヌ達が待っていた来客は現れ、数分後には全員意識を失った。

 

 





書く時間が……内容もぐちゃぐちゃや……
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