鋼の錬金術師Reverse 蒼氷の錬金術師   作:弥勒雷電

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第6話『黒曜の砦』part 4

大陸暦1930年11月24日

東方地区リオール レト教総本部

 

総本部の周りは普段と同じ喧噪が流れている。

 

そんな中、民間車に偽装した軍用車が何台か総本部周辺に車を止めた。そしてその中の一台は最も人通りの少ない路地への入り口に車を停めると路地側の扉を開いた。

 

車の中から8つの人影が路地へと飛び出す。

 

勿論、街の喧騒を楽しむ人々には路地へと入っていく人影には気づいていない。

 

「こっちだ」

 

その影の中で1人、ライオネットがそう手引きをする。その手招きに反応する7つの影の中にエリシアとスヴァン、エドの姿もある。

 

「このマンホールがお前らの情報にあった総本部の中に繋がる隠し通路だ。作戦通り俺たちはここから内部に潜入し、対象を確保する。お祈りの時間が始まる今がチャンスだ。行くぞ」

 

ライオネットの言葉に7人は首を縦に振る。それを確認したライオネットは先頭を切ってマンホールの下に降りて行く。

 

その次にスヴァンが、エリシアがエドも続き、他のライオネットの部下を4人も続いた。

 

ドブ臭い匂いが鼻をつき、エリシアは思わず手で鼻を覆う。地下水道をしばらく進むと下水道に出た。

 

下水道には灯りがない。もちろん潜入に気づかれない為、ランプのような光源は持ってきていない。また足元も足音のする靴ではなく、足袋に似た履き物を使っている。

 

8人は下水道へ出ると目が慣れるまで待った。

 

一方の総本部の正面玄関ではイライザが車の中で時を今か今かと待っていた。もちろん彼女と同様に総本部周辺に配置された10台の車に総勢80名の部下が待機している。

 

半分はライオネットが連れてきた第2連隊、半分はイライザ以下、リオール駐屯軍の精鋭。いずれもライオネットとイライザが選び抜いた兵たちである。

 

街中で動くにはこの人数が限界であった。

 

その時、総本部の鐘の音が鳴り響く。

 

街中に聞こえるだろうその大音量はレト教総本部で週1回行われるお祈りの時間の合図である。

 

すると眼前の黒紫色の建物から白い服を着た人々がゾロゾロと出てくる。そして街の至る所からも人々が総本部に集まってきていた。

 

「全員配置につけ」

 

イライザはその光景を確認すると通信機越しに指示を出す。その声に乗じて、総本部周辺に配置された車から同じく白装束を身につけた兵たちが降りるとレト教信者の流れに乗る。

 

その群れの中に紛れたイライザは胸の高まりを隠せずにいた。今日の作戦がうまく行けば、レト教の本性を民衆に分からせることができ、彼らを解散に追い込める。

 

彼女はそう信じて疑わない。

 

情報通りお祈りに備え門は開かれている。

イライザは先頭でその中に入った。そして彼女の部下達、ライオネットの部下達もその後に続く。

 

そしてイライザは見上げる。

 

 

リオール駐屯軍司令部と同じ黒紫色に輝く建物を、そしてその頂きの間に立つ1人の男性を。

 

 

そしてそんなイライザに挑むかのようにその黒曜の砦の頂きに立つ男性は大きく手を広げた。

 

 

 

第6話『黒曜の砦』 完

 

 




【 次回予告 】

人は何故こうも愚かなのだろうか。

イライザは自身の足枷を破壊するために

ライオネットは己の役目を果たすために

それぞれ動き始める

その時、エリシア達が目にしたものとは…


次回、鋼の錬金術師Reverse -蒼氷の錬金術師


第7話『命の価値』


紅き煌めく残像はまさに夢の如し

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