扉の前に立ち、3度ノックする。
「エリシア・ヒューズ少佐とスヴァン・スタングベルト少佐です。大総統からの出頭命令につき、やって参りました」
「入れ」
すぐにマスタングの声が聞こえた。エリシアは「失礼します」と扉を開けると中に入る。スヴァンがその後に続く。
「マイルズ司令」
スヴァンがそこにいた彼と同じ銀髪に褐色肌、サングラスを掛けている男性に気がつく。東方司令部マイルズ司令であった。
「司令がなぜ?」
スヴァンの問いにマイルズはふっと笑みを浮かべると空いているソファを指差した。
「御託はいいから座りなさい」
マイルズの言葉に2人はソファに腰を下ろす。
「エリシア・ヒューズ少佐、スヴァン・スタングベルト少佐。2人にはリオールへ行ってもらいたい」
マスタングから発せられた言葉に2人は顔を合わせる。
「リオールですか?」
「あそこは確か昔暴動があって今は昔ほどの賑わいはなくなってしまったんですよね?どうしてそこに?」
エリシアとスヴァンがそれぞれ質問をぶつける。
「リオールで旧レト教信者の一派がスム・ダムと呼応しているという情報があった。そこには今回マリエッサから逃亡した幹部グラニア・マラカスが逃げ込んだとの情報もある。彼の捜索と逮捕が君たちの新しい任務だ」
マイルズから出た言葉に2人は衝撃を受ける。
「こちらからはそのあたりに詳しいものを向かわせる。現地で合流してくれ。何か質問はあるか?」
マスタングはそう言うが、2人は率直に何を質問したらいいか分からず黙り込む。
「なければ以上だ。私は今からセントラルへ戻る。報告は直接セントラルへ来たまえ」
そう言うとマスタングが立ち上がる。
マイルズも立ち上がり、それに合わせて2人も慌てて立ち上がると敬礼をする。
「そうだ。大事な事を言い忘れていた。ヒューズ少佐。君が探している人物の目撃情報もリオールであった。任務も大事だが、そのことも心に留めておくといい」
マスタングの言葉にエリシアはぱっと顔をあげる。そして今回の任務におけるマスタングの意図を理解し、頭を下げる。
その様子を見てマスタングは微笑むと執務室を後にした。
——————————
前日大陸歴1930年11月16日
東方地区 リゼンブール
とある民家の電話がなる。
その音を聞いた老女はこんな時間に珍しいと昼ごはんの支度を中断し、電話の元へ向かう。
「はい、ロックベル」
老女は受話器を取るとそう告げた。
「おーマスタング大総統、お元気ですかな?」
その問いに電話口のマスタングの答えが返ってくる。
『なんとかやってますよ。ピナコ殿もご息災で何よりです。早速で申し訳ないのですが“元”鋼のはいらっしゃいますか?』
その問いにピナコは訝しげな表情を浮かべる。
「また何か変な事を企んでるんじゃないだろうね?」
ピナコのその核心をついた言葉にマスタングからハハハとから笑いが電話越しに返ってくる。
「まぁ、いい。ちょっとそのまま待ちな」
ピナコはそう言い、受話器を保留のままおくと部屋の窓際に向かう。窓から外を覗くと大樹の木陰で昼寝をしている金髪の青年を見つけた。
「おーい、エド!お前宛に珍しい人から電話だよ」
その言葉に目を覚ましたエドは大きく伸びをするとまだ寝ぼけ眼の瞳をピナコに向けた。
第2話『謎の男』 完
【 次回予告 】
リオールに降り立ったエリシア達を迎えたのは
懐かしき人物であった。
今闇に紛れしもの達は
自分たちの存在を隠すために行動を起こす
次回、鋼の錬金術師Reverse-蒼氷の錬金術師-
第3話『東方の闇』