不死身も楽じゃない   作:ああああ

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プロローグ

男は追いすがる死神から逃げていた。携帯電話のソーシャルゲーム。通称Dゲーム。大金に目がくらんだこの男もまたダーウィンズゲームのプレイヤーであり、エンカウントバトルで弱そうなやつを探し狩るのを専門にした新人殺しのクランリーダーだった。ほんの数時日間前、六本木を歩いていたいかにも弱そうな少年を見つけ、勝負を挑んだ。ここまではいつも通りだったはずだった。

 

いつも通り、数人で狙撃ポイントに誘導し狙撃で仕留める。事実、狙撃は成功した。ただいつもと違う点を挙げるとすれば、それは…打たれたはずの少年が立ち上がったことだろう。

 

男は確かに少年の肩と胸に銃弾が着弾したのを見た。実際に、アスファルトを鮮血が汚している。ただ、少年は立ち上がった。

 

時間が巻き戻ったかのように少年の体が再生しだしたのだ。紅く光る彼の視線は男たちに恐怖を抱かせた。そしてそこからは一方的な虐殺が続いた。錯乱したクランのメンバーは、連携を忘れただ銃弾をまき散らし、たった数十秒の間にほぼ全滅し、わずかに残ったメンバーもリーダーの男以外は殺された。

 

打たれた腹をかばいながら、必死に逃げ続けていた男だったが、体力が尽きたのか自販機の前で座り込んでしまう。

 

ゆっくりと焦ることなく歩いて追いついてきた少年はホルスタに収められていた拳銃を、ゆっくりと引き抜く。

 

現れるのは、男のクランを壊滅させた銀一色の拳銃。

 

「な、何なんだよ!なんなんだよお前!お前は俺の仲間に殺されたはずだろ!?確かにお前は銃弾で打ち抜かれたはずだ!!」

 

錯乱したように叫ぶ男の顔は恐怖と憤怒で染まっていた。

 

「ちくしょうが!!俺の仲間を全員殺しやがって!この…」

 

もはや悲鳴にも近い、男の慟哭は彼の最後の言葉となった。

 

「殺したんだから殺されるんだ。当たり前の話だろ?」

 

銃声とともに鮮血が舞い辺り一帯を汚した。しばらくしてから転移が始まり、転移が終わるころには自販機の電源切れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま」

 

「…血の匂いがします。先にお風呂に入ってきたらどうです?」

 

玄関を開け、居間に入ると珍しく部屋から出た鈴音(レイン)がいた。

 

「そうさせてもらうけど…」

 

「なんですか?鬱陶しいのであまり見つめないでほしいのですが」

 

「…相変わらず小さいな」

 

黒髪のボブカットにきれいな蒼瞳。左目の下の泣き黒子は魅力的で精神年齢も高く、とても中1の纏っていい雰囲気ではないが、身長が低いせいか、そこそこ長く一緒にいるせいかは知らないが、あまり色気を感じない。

 

「もしかして喧嘩売ってるんです? 殺しますよ」

 

うわぁー。レインのやつ寝不足だな。めちゃめちゃ機嫌が悪い。めちゃめちゃ目線が冷たい。

 

「冗談だって…」

 

「だいたい、真白だって小さいじゃないですか」

 

「おいコラ、身長の低さを男子にするのは犯罪だから。女子の百倍は傷つくから!っていうか、相変わらず呼び捨てかよ!一応二歳年上だぞ!」

 

「それより、真白」

 

うわ、こいつ話聞く気がないな。昔はあんなに素直でかわいかったのに…。真白さん呼びで、俺の後をついてきたあの可愛い少女は何処へ…

 

異能(シギル)を……『不死神(ハーデス)』を使ったですね」

 

「ッ………」

 

鋭い瞳に睨まれ一瞬怯みそうになるが、何でもないように取り繕って肯定した。

 

「相変わらず鋭いな。…確かに、異能(シギル)を使った。だけど、それは鈴音(レイン)の頼み事とは無関係の戦いで使用したものだし、ストックの数を見れば結果的にはプラスだ。今後の戦いに支障が出るわけじゃあない。問題はないよ」

 

「そういう問題じゃないです!!!」

 

鈴音(レイン)の剣幕に気圧され、重心が後ろに傾いていた俺はあっけなく鈴音(レイン)に押し倒された。

 

「分かっているのですか!?あなたの異能(シギル)は———」

 

「分かってる。分かってるさ。俺のことは俺が一番よく分かってる。…でもこれは俺が選んだ道だし、俺がやりたくてやってることだ。それにダーウィンズゲームをプレーする上で、異能(シギル)を使わないのは無理だ」

 

「ですが…」

 

色々な感情が混ざり、辛そうに、泣きそうになっている鈴音(レイン)を見て少し死にたくなる。うっすらと浮かんだ涙を見て、自分の選択を少し後悔した。先ほど返り討ちにしたクランは、別段異能(シギル)を使わなくても倒せたのだ。初心者や異能を使いこなせないルーキーばかりを狙う小物だ。狙撃にさえ気を付けていれば、手こずることもなかった。そもそも、勝負を挑まれる前に撒くことだってできたのだ。それをしなかったのは俺のエゴだ。

 

でも…今は後悔は忘れる。

 

「らしくないぞ。いつもの冷静さはどうした?」

 

「ッ…」

 

「鈴音にそういう顔は似合わない。いつもみたいに澄まし顔で、自分のしたいようにしてればいいのさ…」

 

「で、ですが…」

 

鈴音(レイン)は解析屋だろ?役割の違いだ。…シャワー浴びてくる。」

 

強引に起き上がり、鈴音(レイン)の涙を拭ってから俺は逃げるように風呂場に足を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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