不死身も楽じゃない   作:ああああ

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宝探しゲーム ー前編ー

「お久しぶりですね、ダンジョウさん」

 

新宿の西側に位置する年季の入った定食屋に入るとに覚えのある背中を見つけた。空手の胴着を着ているロシア人ぽい人などそうはいないと確信し、声をかけた。

 

「マシロか。久しぶりダナ。会うのはオ前が雪蘭と戦っテ以来カ」

 

彼は新宿を拠点とするクラン【ダンジョウ拳闘倶楽部】のリーダーであり、少しの間だけだが鍛えてもらっていたことがある。

実力は確かで、日本ランキング4位の実力者で、1対1なら戦車と戦ってもと豪語するほど強い。

 

「はは、あの時はひどい目に遭いましたよ。彼女、ほんとに人間なのか疑いたくなりますよ」

 

「そうカ?割と善戦していたように思えるガナ」

 

「ははっ、そりゃ僕が死に慣れているからでしょうね」

 

「マシロが言うと笑えんナ」

 

厨房のおじさんにチキン南蛮定食を頼みダンジョウさんの隣に座る。

 

「そういえば聞きましたか?例のマスコット君(バンダ君)負けたらしいですよ」

 

「ああ、噂話程度には聞いた。それがどうシタ?」

 

「彼自身は雑魚なんで負けても不思議はないんですけど、倒したのがソロの新人らししくて」

 

「ほう」

 

「それにこれはオフレコですけど、無敗の女王が負けたらしいんですよね」

 

「興味深い話ダナ」

 

ダンジョウさんが食べる手を休めこちらに視線を向ける。どうやら、話の続きを聞きたいらしい。

 

「Dゲームでソロの新人が生き残れる確率は限りなく低い。そんな中で二連勝を果たした彼はおそらく注目の的となるでしょう。僕としても気になっていまして」

 

「なるほどつまり、そのプレイヤーを見つけたら連絡してほしいというわけカ。しかし、そんなもの俺に頼まなくテも解析屋に頼めばいいダロウ?」

 

ダンジョウさんはいぶかしげな視線を向けてくる。確かに、俺とレインの関係をある程度知っているものからすれば不自然な頼みだ。

 

「…いま彼女は別の情報収集で忙しくて」

 

「……宝探しゲームか?」

 

「ええ、久しぶりのイベントですからね」

 

「…まあ、見つけたら連絡はしてやる。だが、わざわざ探しに行くなんて面倒な真似はシナイゾ」

 

「それでいいですよ。僕としてもやるべきことは山ほどありますから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シブヤの街は嫌いだ。Dゲームのプレイヤーにとってこの場所ほど治安の悪い場所はない。昔、ギョクトともその話になったが、仕切っているクランが問題なのだ。俺もギョクトも必要に駆られれば、相手を殺すが別段殺しが楽しいわけではない。だが、この場所を仕切っているクランのリーダー…あの男は違う。あれは生粋のサイコパスだ。だからできればシブヤには来たくなかったんだがイベント会場がここなのだから仕方がない。

 

宝探しゲーム…。転送されてから数分で銃声が聞こえるようになり、それと同時に一般人の退去が始まった。幸いにも俺が転送された場所には敵はいなかったし、罠も仕掛けやすかったので、籠城の準備を整えながらスマホを熟読する。

 

「なるほど、性格の悪いゲームだな。意図的に説明を省いてやがる」

 

要するに参加者300人によるリングの争奪戦。終了時間までにリングを3つ以上所持していないプレイヤーは強制転送で殺される。リングは7種類あり、それぞれ宝石の名が付けられている。

 

「この書き方だとクリア条件がリングを集めることだと錯覚するプレイヤーが大半だろうな」

 

宝を見つけ出すのがクリア条件だが、宝がリングだとは書いてない。とすると、リングの回収は宝への道標ってことかな?いや、リング自体が全くのフェイクだって可能性もある。

 

「どちらにせよある程度のリングは必要か。いや、その前にレインとの合流が先だな」

 

籠城にための準備にあまり意味がなくなったことを嘆きながらも、スマホをかざしリングが集まっている場所を探す。…とりあえずあのホテルを目指していくか。

 

いつも通り、黒塗りの仮面をかぶり俺は街へと駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『イベント開始から一時間が経過しましたぁ!!!様々な場所で乱戦が繰り広げられている中、一際目立っているのがこの男!!!最近はめったに顔を見せなくなっていた謎のAランカー!!!マシロです!!!』

 

マリオの咆哮に、大闘技場中が沸いた。

 

クラブ「トリニティ」。ここではDゲームを利用した賭博が行われており、今回もまた大規模な賭博が行われていた

そもそも何故こんなことができるのかと言えば、支配人たるテミスが過去行われたイベントをクリアして報酬としてDゲームを利用した賭博場を開く権利、それに加えてイベントの参加者のワイルドカードをGMから与えられているからである。「トリニティ」の戦力はそうでもないが、政界と財界と関わりが深いクランであり、客の数は尋常なものではない。

 

モニターに映っているのは黒い仮面をした一人の少年とそれを取り囲む四人構成のクランだった。

 

マシロは囲んでいる人間の武器に視線を向ける。サングラスをかけている男が一人、茶髪の少女が一人、ピアスをしている男が一人、細身の男が一人で合計四人だ。

 

全員がマシンガンや拳銃を構えている。

 

自身もパーカーの懐のホルスターから銀色の拳銃を抜いたマシロは、照準をサングラスの拳銃に合わせ、閃光弾をサングラスの方に軽く放り投げた。

 

一瞬の硬直と隙が生まれ、全員の動きが固まる。

 

その一瞬にマシロは引き金を引き、サングラスの手からAKを撃ち弾いた。AKはカラカラと道路を滑っていく。

 

勢いを殺すことなく、四人全員の手元の武器を打ち抜く。

 

マシロはこれで戦意がなくなればとも思ったが、やはりそう簡単にはいかないらしい。炸裂することなく転がっている閃光弾を見てこれが罠だと悟ったサングラスは今度はナイフを取り出し、マシロ目掛けて襲い掛かってきた。 

 

この時点で、マシロは対象の捕縛を殺害に切り替えた。マシロは一切焦ることなく、拳銃をホルスターに戻し、ナイフを抜く。

 

その間にサングラスは距離を詰め、

 

「クソが!」

 

思い切り、上段からナイフを振り下ろす。

 

しかし、そんな単純でキレの悪い攻撃はマシロにはかすりもしなかった。あっさりとナイフを避け、振り下ろされた腕を掴み勢いはそのままに一本背負いでサングラスの男を床面に叩きつけた。

 

ズダンッ! という派手な音を響かせ、サングラスの男はアスファルトに叩きつけられ、痛みで悶える。叩きつけると同時にナイフを投擲し、武器を拾いに行った細身を仕留める。

 

「ぐ、があ……ッ」

 

激しい衝撃と痛みにサングラスは呻く。が、そこで手を緩めるほどマシロは甘くない。首根っこを摑まえて、自身の前に構え盾にする。

 

反応が遅れた茶髪は拳銃をそのまま発砲…サングラスを仕留める結果となった。すぐさま、サングラスの陰からマシロが飛び出て、茫然としている茶髪に攻撃を仕掛ける。

 

ピアスの男がこちらを攻撃できないように茶髪に肉薄しピアスの男を拳銃で仕留める。

 

仕上げに、後ろに回った少女のこめかみに拳銃を突き付け発砲した。乾いた銃声と共に、わずか数十秒の間に四人が命を落とした。

 

『きっ!? 決まった-っ!!強い!強い!強い!!何という洗練された動きだー!四対一で異能(シギル)も使わず、あっという間に制圧してしまったぁぁぁ!!!!!この男を止めることは誰にもできないのかー!?』

 

「「「「おおおおおおお!!!!!!!」」」」

 

会場が先ほどの盛り上がりをさらにしのぐほどの勢いで沸く。

 

その後もマシロの快進撃が止まることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

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