不死身も楽じゃない   作:ああああ

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原作と同じ部分はすっ飛ばしていきますのであまり描写しません。ご了承ください。


宝探しゲーム ー後編ー

「ハァ…ハァ…ハァ…。なあ、そろそろ…通してくれると、助かる…んだけど?」

 

「それはできませんねー」

 

先ほどから、俺の前に立ちふさがりホテルに行かせようとしてくれない逆十字のついた黒い祭服を纏うこの男。最初に見た時マジでやばいと思ったが案の定だったな…。強すぎる。

 

「いやあ、しかし。死んでもよみがえる異能(シギル)って反則じゃありません?」

 

「ははっ、一方的に俺を殺しておいてよく言うぜ……」

 

「いやいや、誇っていいと思うよ?僕に一撃でも入れられるプレイヤーは稀だからさ」

 

方や血だらけでスプラッタ状態、方やほとんど無傷。俺は膝をつき、向こうは余裕の表情で立っている。この構図だけで、こいつと俺にどれだけの差があるかを示しているといえる。もう四回は死んだ。全然勝つビジョンが浮かばないけど、こいつを倒さなければレインとも合流できない。どうにかしないと…。

 

「君にちょっかいをかけたのは八割方は純粋な興味なんだ。戦ってみてわかったけど、やっぱり君はまだ手札を隠してる。もしくは使いこなせていないのかな?いずれにせよ、これ以上の戦闘は無駄みたいだねー」

 

「ごちゃごちゃうるせえよ|道化!」

 

「おっと」

 

苦し紛れのナイフの投擲もあっさり躱される。

 

「…そういうあんたの能力もだいぶ分かってきたぜ?弾丸を防いだ時点で念動系統の能力であることは分かっていたが、さっきの斬撃ではっきりした。お前の異能はベクトルに干渉するタイプのものだ!」

 

半分以上はハッタリだ。正直確信に至るには戦闘回数が少なすぎる。というか、一方的にやられ過ぎた。だけど何とかして対策を練るための時間を稼がないと、マジでやばい。

 

「へー。結構いい線いってるねー。僕に殺されながらも見てるところは視てたわけか。彼が言う通り、確かに使えそうだねー」

 

「『彼』…だと?」

 

こいつに俺の情報を流した奴がいるのか?

 

「僕の異能をほぼ言い当てたご褒美に良いことを教えてあげよー今回のイベントリングを集める必要は究極的に言えば必要ないのは理解してるよね?本物の宝は渋谷駅のどこかにあるんだけど、分かるかな?」

 

「最後のダイヤモンドのリングの示す数値が分かれば座標で特定できる」

 

「おぉーすごいー。この分なら僕のヒントはいらなかったみたいだね。じゃあ、さらに耳寄りな情報を教えてあげよう。ダイヤの番号は185911だよ」

 

「おい、何でそんなことお前が知ってる!?」

 

まだ存在してないダイヤの番号。もし本当に185911なら、こいつは何でそんなことを知ってるんだ?法則があるのか?もしくは———

 

「さあね?お後がよろしいようですので道化の私めはこの辺で」

 

「まて!!!!あ………」

 

叫んだ次の瞬間意識が遠のき、気が付いた時には奴はもういなくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

渋谷駅構内でレインはピンチに陥っていた。

一足先に、渋谷駅についていたレインはエイスのメンバーと鉢合わせてしまったのだ。何とか脱出を試みるもあえなく失敗。左腕は折られ、王に捕まり仲間もいない。

まさに絶望的な状況だ。しかし、この絶望的な状況であってもレインは助けが来ることを信じ時間稼ぎのために舌を回す。否、恐怖と痛みで体がこわばり、動かせる部分が舌ぐらいしかないのである。

 

レインは、知っていることを話せと迫ってくる王に無駄話と挑発で時間を稼ぐ。

 

「あなたによく似ていると思いませんか?壺中の王」

 

(腕を折られるのがこんなに痛いとは思いませんでしたが、思ったよりも思考は働くものですね)

 

痛みの恐怖に体が震えるが、頭だけは常に冷静であった。その理由の一端を担っているのは一人の存在だろう。

 

「ガキがッ…まずは指をそぎ落としてやる、その後は耳だ。安心しろよ、よく回る舌は最後まで残してやるからよぉ!」

 

「………マシロさんッ」

 

王の異能(シギル)虚空の王がレインに牙をむこうとしたその瞬間———

 

「おい」

 

「ああん?」

 

そこには少年が立っていた。一体どうやったのかもわからない。しかし、確かに包囲網を抜け一人の少年が立っていた。全身を血に染めた死神がそこには立っていた。

 

王が立っている位置から三メートルほどの位置。しかし、次の瞬間には王の目の前に肉薄し、その顔面を蹴り飛ばした。ドガン!

 

およそ人体ではなるはずのないような強烈な炸裂音と同時に王は数メートル吹き飛ばされる。強烈な威力に加え、油断し切ってまともに食らったからとはいえその威力は尋常なものではなかった。

 

原理としては死んで再生すれば元通りになるんだから、リミッターを外して無理な動きをしても問題ないよねっという無茶苦茶な理論のもと、無茶な動きをしているだけなのだが。

 

しかし、それを知らないものからすればその少年はあまりに恐ろしく、狂気的に見えた。

 

「…マシロさん」

 

「ごめん、遅くなった」

 

安心しきったレインは力が抜けかける。

 

マシロは、バランスを崩したレインをふわりとお姫様抱っこの形で抱きかかえると後ろを振り向き、声をかける。

 

「おい、レインのことは任せるぞ。スドウカナメ」

 

有無を言わせぬその迫力にカナメはあらゆる質問を飲み込んで了承した。

 

「ああ、もちろんだ。それで…」

 

カナメは言葉を続けることができなかった。なぜなら事態が動いたからだ。

 

「調子こいてんじゃねえぞ!!!!!!!」

 

「うるせぇよ」

 

王の咆哮に我を取り戻したクランのメンバーも銃を構える。

 

「ここはどうにかしてやる。ゲームはお前が何とかしろ!スドウカナメ」

 

「わ、分かった!」

 

「てめえら!逃がすんじゃねえ!撃て!!!!」

 

マシロは王の脇腹にナイフを投げつけた。

 

浅くしか刺さらなかったそのナイフを一瞬のうちに、超接近したマシロが蹴りで押し込む。

 

ブシュ!

 

そして、右手に持っているナイフで、王の左肩を刺し穿つ。

 

「ガァァァァァァ!」

 

再度ナイフで王を切り裂こうとしたマシロの腕が宙に舞う。王の虚空の王によって、斬り飛ばされたのだ。

 

「グッ……く、なめてんじゃねえぞ!ガキィ!」

 

王が転移で逃げた瞬間、手下たちの銃の乱射が始まる。本来であればそれで終わりだ。しかし、その程度でマシロは止まらなかった。

 

もちろん、マシロには弾丸の雨を走り抜けるスピードはない。だから、致命的な分だけ避けた。

 

「なっ!?」

 

驚いたのはいったい誰だったか。

 

マシロは心臓、頭部、両足を狙った弾丸以外を無抵抗に喰らった。散る血飛沫、肉体中を穿つ弾丸も関係なしと、突き進む。

 

迅速に動くためだけにわざと攻撃を受け入れる姿勢は、まさに狂人(怪物)

 

弾丸のうち一つが右足にあたる。バランスを崩したマシロはその場で倒れかけるが、すぐに疾走を開始する。

 

マシロの痛覚は悲鳴を上げるが、マシロには慣れ親しんだ感覚だ。

 

腹部に三ヶ所、肩部に二か所、右足に一か所被弾する。しかし、幸いなことに足の被弾は側面をえぐられただけだ。動かせることを確信したマシロは止まらない。

 

走る、走る、走る走る。

 

圧倒的に優勢だった王の手下たちは次第にマシロの狂気に呑まれていった。

 

「がぁ!?」

 

マシロから一番近い位置にいたクランのメンバーの首をナイフで素早く切り裂き、銃を奪う。

 

「痛ぇぇぇ!!!!」

 

「グがぁ!?」

 

死体を盾にしながら、銃を乱射。二人被弾したのを確認し、ライフルを投擲。怯んだ敵を持っていた投げナイフで仕留める。

 

陣形が崩れたのを確信し、再びマシロは疾駆する。弾丸の雨など存在していない様に、ただただ走る。

 

(ワン)ンンンンン!!!!!!」

 

そして、ついに王のいる場所まで到達する。片腕は切り飛ばされ、右足は弾丸に打たれ、他の部位も血が噴き出している。今にも死にそうなマシロの目は憎悪と殺意で未だ血走っていた。

 

狂気に呑まれていたのは王の手下だけではない。王自身もまた目の前の狂人(怪物)に呑まれていた。故に、転移で躱す前にマシロの牙が届いた。

 

腕も足も使えないマシロは王のその首に噛みついた。

 

ここで顎が壊れてもいい。こいつの首を何としても噛み千切る。それほどの覚悟と憎悪が込められた獣のごとき攻撃。王の首から血が噴き出るのと同時に、マシロの首は切断され、宙を舞った。

 

倒れ伏す首なし死体。しかし、その勢いと狂気に王ですらすぐには言葉が出なかった。

 

「クソ!気色悪ィ。おいお前ら!俺は逃げた野郎どもを追いかけるてめえらも手分けしてぶち殺せ!」

 

そう言って、王は転移で消える。残された王の手下も何人かはカナメたちを追いかけるために、走り出した。

 

残ったのは先ほどのマシロの狂気に呑まれ、動けなくなった者たち。

 

そして、一同はさらなる恐怖を体験することになる。

 

むくりと少年は起き上がる。纏っていた服には確かに彼の血が付着している。胴体には大量の穴が開いていた。しかし、立ち上がる。

 

「ヒッ………」

 

何処からともなく悲鳴が上がる。それはあまりにおぞましい光景だった。そう、殺しても死なない人間など恐怖でしかないのだ。否、それは、もはや人間ではない。ただの怪物である。

 

時間が巻き戻るかのように弾丸は体から排出され、血と臓物と肉片が体に戻っていく。そして、再度首が宙を舞いながら切断された体の部位に戻っていく。気が付けば、傷は綺麗サッパリ消え元から死んだことなどないかのように修復されていた。

 

「ふぅ…一日で五回以上死ぬのは久しぶりだな」

 

「「「…………」」」

 

「レインの姿を見て頭に血が上ってたけど、よくよく考えれば爆弾を括り付けて人間爆弾特攻すれば、確実に殺せたな。いやぁ、うっかりしてた」

 

「「「…………」」」

 

唖然。この場にいるマシロ以外の人間は言葉を発することができなかった。マシロの異様な雰囲気に呑まれ、引き金に手をかける動作すら遅れた。故に、銃声が響くことなく

 

「それじゃあ、クソ野郎の皆さん。さようなら」

 

この場にいたものがどうなったのかは語るまでもないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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