不死身も楽じゃない   作:ああああ

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第5話

あの後俺がレインを探している間にゲームはクリアされた。スドウカナメが見事(ワン)を出し抜いたらしい。ざまあ見やがれ。

 

とりあえず、カエデさんの治療を受けるため負傷したレインを抱えて、ダンジョウ拳闘倶楽部に駆け込んだ。

 

しかし、レインの腕を見て冷静さをやはり失っていた俺は返り血や自分の血で汚した服を着ていったものだから、ひと悶着あった。

 

ひとまず、ダンジョウさんに落ち着けと怒られて、冷静になってからレインから詳しくカナメたちのことを聞き、状況を把握した。

 

結果として、レインは普通に病院で処置を受けることになった。カエデさんの薬師恩寵(ヒーリンググレイス)は肉体を元通り繋げることも可能だが、あくまで自然治癒を高めるだけなので、あまり意味がないらしい。

 

スドウカナメはダンジョウさんと交渉の末、同盟を結ぶことを目標に鍛えてもらっている。他のメンバーは待機といった形だ。

 

「明日、《保険屋》のカネヒラと連絡を取ってヒイラギさんの娘さんに保険金が支払われるのかの確認に行ってきます」

 

ダンジョウ拳闘倶楽部の一室で、レインと今後の行動のすり合わせをする。

 

「それはいいけど、結局スドウカナメのクランに入るって決意は変わらないのか?」

 

「ええ、こちらとしても利益のある提案です」

 

「まあ、将来的なことを考えれば確かにスドウカナメに賭ける価値はあるのかもしれない。無敗の女王もいることだしな」

 

「ええ、それに王と事を構えてしまった以上同じく敵対しているメンバーの中で最も戦力があるクランに所属しておきたいところですから…それよりも」

 

「ん?」

 

「そろそろ放してもらえません?」

 

今の俺がどんな体勢かといえばレインを膝にのせて、後ろから腕を回して抱きかかえているという状態だ。レインの身体はいつも温かく命を実感できる。俺の不死神(ハーデス)は確かに強力な異能ではある。Dゲーム内で勝利または殺した人数分の命のストックを手に入れることができ、ストックがあるうちは殺されても死なない。

 

どれだけ欠損しようと、どれだけおかしくなろうと死んで蘇れば元通りに戻っている…不死の異能(シギル)。こう見えて汎用性は高いし、使いたくないけど奥の手もなくはない。確かに、一見チートに見えるかもしれないが、それ相応の代価が付いている。

 

死んだ回数によるがその後のフィードバックがきつい。具体的には言えば、睡眠時に過去の自分の死亡体験を追体験させられる。しかもかなりリアルだ。性格の悪いことにその時の感情も痛みも再現される。

 

昔は何度か発狂しかけた。苦しくて怖くて、自殺したこともある。が、質の悪いことに死ねないのだ。この異能(シギル)は。蘇生に関してはon、offが随意的にはできないのだ。

 

マジでレインがいなかったら、精神的に壊れていたことだろう。

 

かなり慣れた今でも死んでから数日は寝れない。五回も死ねば、三日間は悪夢が続くだろう。最悪だ。あの道化野郎許せねえ。

 

「もうちょい待って。今回は割と跳ね返りがきつくて」

 

「………今回は何回死んだんです?」

 

「五回は死んでる。一人ヤバいのがいたんだ。他のやつらには一回も殺されなかった(・・・・・・・・・・・・・・・)んだけどな」

 

「そうですか…」

 

「………」

 

「ありがとうございました」

 

ちょっと気まずい空気が流れ始めると、突然レインがお礼を言ってきた。

 

「なんのお礼?」

 

(ワン)から助けてもらったことバタバタしていてお礼し損ねていたので」

 

「別に俺がしたくてしたことだし、レインが襲われてたら助けないって選択肢はないしな」

 

「‥‥…」

 

俺の服の裾を掴んで少し泣きそうになりながら考え込む姿は庇護欲を誘うが、こっちも泣きたくなるので話題をそらすことにした。

 

「それにしてもレインは小さくて抱きやすいわー」

 

「…喧嘩売ってるんですか?私もう中一なんですけど」

 

「いやいや、俺からすればコンパクトなサイズでちょうど…「降りますよ?」はいすいません」

 

段々と俺を見るレインの目がゴミを見る目に変わってきたので、この辺でやめておこう。他のことで話題をそらさないと…。

 

「花屋の娘さんに会いに行くって言ってたけど、実際に会いに行くのか?」

 

「いえ、保険金が支払われるかの確認しか頼まれていませんので、直接会う気はありません」

 

「そっか…一応言っておくけど、レインが感じるべきは責任感や罪悪感じゃなくて、感謝の念だけだぞ。置いていかれる側の悲しみや絶望に同情するのも共感するのも仕方ないけど、責任を感じたってレインにはどうしようもなかったことだからな」

 

「…分かってますよ」

 

相変わらずの無表情でそっぽを向くレインはあまり納得しているようには見えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ、イヌカイ」

 

「ああ?なんだよ?」

 

「マシロってどんな奴なんだ?」

 

ダンジョウに頼み込み自分を鍛えてもらうことと同盟を組むことを提案し、ひとまず訓練をつけてもらえることになったカナメは、イヌカイに訓練をつけてもらっていた。

 

いつもの訓練の休憩時間。カナメは汗ばむ体をタオルで軽くふきながら、床に横になっているイヌカイに気になっていることを尋ねる。

 

「俺に聞くのかそれ?解析屋にでも聞けばいいじゃねえか。只ならぬ関係っぽそうだし」

 

「そう思ったんだけど、しばらくは二人にしてやれってダンジョウさんに言われてな」

 

「ダンジョウさんがねえ…俺が知ってることなんて大したことねえぞ?」

 

「一応聞かせてくれ」

 

「本名は知らねえが、プレイヤーネームはマシロ。ダンジョウさんと同じくAランクのプレイヤーで日本ランキングは6位。一時期ここにも通っていたらしくて、実力はダンジョウさんと互角らしい。俺が知ってるのはこのぐらいだ」

 

「あんまり役に立たねえな」

 

「喧嘩売ってんのかてめえ!」

 

「冗談だ」

 

(それにしてもランキング6位か。シュカとそろってランキング上位が二人。幸先がいいな)

 

「ああ、もう一つ噂があったな」

 

「噂?」

 

「解析屋について過剰に調べまわると死神に消されるってやつ」

 

「物騒な噂だな」

 

「だけどあの様子じゃ噂はほんとみたいんだな」

 

「ああ、確かに」

 

カナメはレインを王から助けた時のマシロの迫力を思い出して納得する。自分に向けられた感情ではないのにもかかわらず、殺されると錯覚するほど密度の濃い怒気だった。

 

「ま、余計なこと考えないで今は強くなることを考えるんだな。じゃねえと、ダンジョウさんは納得してくれないぜ?」

 

「そうだな」

 

イヌカイの言うことももっともだと考え、カナメは頭を切り替え再び訓練に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

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