シロをまいたアサキムは教会から少し遠くまで行ってシュロウガから降りた
「さて、どうしようか」
メア、彼女が望む過去へ飛ぶにはうってつけの人間は今教会にはいない、彼の言う時を固定させる手法はだいたい分かるが話題としては真実を伝える事だろう、そうすれば確実にリトに伝わる、彼に真実を知らせる気は起きない。真実を知った先から繋ぐ過去はどのように進んでも彼女の望む過去にあの惨劇は意志一つでどんな世界、どんな人間でも起こりうる可能性のある出来事であった、舞台はここであり、演じたのが彼女達であるだけで
それともう一つ…過去に飛ぶ時、ユニクロンは邪魔者以外の何者でもない、体はまだデビルーク星に存在していたから過去で色々とかえても過去に出現してそうな感じもする
「彼女から新生したユニクロンのスパークを取り出して別の世界に追い出せばボディも後を追っていく…事ができれば良いけれど」
彼女の中からユニクロンを表出させるには、彼女に…できれば彼女だけに真相を教える事が手っ取り早い
「後は彼がどう出るか」
さすがにシロがいずれ見にいくであろう場所にある物だけでは正解には至らないだろうがそれでも彼らはショックを受けずにいられない
「仕方ない」
アサキムは、教会のあるべき方向を見上げた、わずかに見える建物が向かうべき場所を示してくれる
アサキムはもう一度教会へ向かった、ここを去る前にしなければならない事を心で思い浮かべ
~????~
スフィアの中で未だ意識を保っているメアは呟いた、声になっていたかこの際どうでもいい。聞いている人間がいるわけでなし
「甘いよ、呪われし放浪者さん、角砂糖でできたルービックキューブより甘い」
忠告すればどうなるか、それをしなければどうなるか、メアはできればどちらも見てみたかった。己の好奇心の向くままに…闇に心を全て食い尽くされるまでに
~教会 一階~
教会に戻ってから挨拶もそこそこにすぐシロは美奈子に頼んでシャワーを浴びに行った
そして数分後~
「お風呂終わった」
シロが先程リト達と会話した場所に戻ってきた
「やり直し」
イスに座っていた凛からダメ出しを受けた
「何だって!?」
凛は時計を指で差して言い放った
「時計を見ろ、数分しか経っちゃいない、そんなので温まったなんて言わせないからな」
「確かにな、じゃあまた」
納得したシロは再び風呂場に向かった
「………」
いつの間にかそこにいたチヨは様子をただ見ていた
「どうしたの?」
それを見て春菜は質問した
「またか…と思いました」
「まただと、まあそうなんだろうな…まったくあいつは」
凛がむっとしているとチヨがおそるおそる手を上げた
「あの…シロとそちらはどういった関係で」
「あ、俺も聞いて良いかなそれ」
ヤミをイスに寝かしつけたリトもそれに乗っかった
「あいつとは顔見知りでな、そう…あれはヒカル様の出産祝いをみんなが渡す日の3日目の事だった」
凛は語った
「天条院グループの面子もザスティン様の関係者も渡してくるから品物が多すぎてな、沙姫様やザスティン様の手を煩わせる訳にはいかないと私や綾が代わりに受け取っていたんだが…」
「ひょっとしてあの話に出てきたのがシロだったのか?」
「王様!?」
チヨは驚いた様子でリトを見た
「ああそうだ、あれから3年か…」
3年前~
天条院家の持つ別荘に、少年とも青年とも言えるような若い男が一人やってきた、白いシャツにズボン、上に青いコートを羽織り青い目と銀髪を有した姿はさながら擬人化した白猫のような見た目の男だった
「ザスティンさんのお子さんの出産祝いを渡す場所はここで良い?」
「そうですが…」
そう言っている男が抱えている物は…箱ではあったが隙間から大きな瓶の牛乳そのものが5瓶ぐらい隙間から見えていた
「おい待て」
凛は男を引き留めた
「何です?」
「牛乳だな?」
「おいしいですよ」
それは何も考えてなければ思わずつられそうな程良い笑顔だった
「名前は?」
「シロ」
凛はふぅーと息を吸いシロに箱を下ろすように促し、シロが箱を床に置いた後、木刀を持ち出した後シロの頭をチョップで叩いた
「痛い!?」
「送る対象と容器と、量が噛み合ってない。何だあの量は、一つだけでもヒカル様が1日分飲んでも数日で無くならないじゃないか」
「ザスティンさんと沙姫様に飲んでもらえば」
「食べ物関係はデリケートなんだ、特に沙姫様やヒカル様にはな、分量とか何も知らないやつが持ってきていいものじゃない」
「誰も教えてくれなかったし…」
シロはボソッと呟いた
「何だと!?…………………ならこれから覚えろ」
凛は仕方無さそうにシロに言い聞かせた
「一応沙姫様にどうするか聞いてみない、凛」
「そうするか」
その日、天条院邸でたくさんの人が天条院家の人間を含め牛乳を飲んだ、牛乳自体はおいしい牛乳だったので好評を博した。その後天条院グループの中でシロの名は牛乳の思い出も添えて知れ渡った、そして後日シロは無知な事をお詫びしたいとぬいぐるみ「シロニャーくん」を渡してきた
「なんかシロから聞いたような気がする」
「ぬいぐるみは良いものだった、ポーズが招き猫だった事は気になるが」
凛はシロニャーくんの事を思い出した、それは白猫をモチーフとしたぬいぐるみに黒色の服を着せたようだった。伸びた方の腕の肉球にはコインが握られ服の胸部分には時計が、カラフルな色のローマ字による数字と両方とも黒い針、余白は白で描かれており生地は子供が触っても何も問題なく子供が抱きかかえられる程の大きさだった、一度触らせてもらったが反発が低く一瞬だけ思わず笑みがこぼれてしまった、首輪の鈴に代わる物が鈴並みの大きさでフェルトとはいえ英語でミルクと書いてある空き瓶だったのはどれだけ牛乳が好きなんだと聞きたくなるが
「凛?」
「何でもない、何でもないからな」
何かが表情に出ていたのか、次からは気をつけようと凛は思った
「けど…あいつは元だけど銀河警察の人間だった、教えてもらう環境とかは割と良かったように思うんだ」
リトはその事について疑問に思ったのか指を自分の顔に当てて考える仕草をしだした
「触れる機会がなかっただけなんじゃないかな?」
「春菜ちゃんの言った通りかもしれない」
「もしくは教える必要がなかった…とか?」
チヨは唐突に疑問を呟いた
「何をだよ」
「ヒカル様の件、そういうのシロはあんまり関わらなさそうだったから…てシロ!?」
シロはいつの間にか風呂から上がっていた、時間を見てみたが今度は大丈夫だった
「今度こそ終わった…はずだ」
慣れない事をしたと表情が物語っていた
「………お疲れ」
長い時間お風呂に浸かる事に慣れてないようだと考えつつ凛は労いの言葉を送った
「フルーツ牛乳が飲みたい」
「我慢しろ」
ここでフルーツがつく牛乳がある確率は極端に低い気がした
「分かりましたよ、それで…凛さんはこれからどうするんです?」
「それは…」
デビルーク星に戻る事が一番望ましい、だが戻って何かできる訳ではない、美柑の事も知りたいが一番情報を持っていそうなアサキムは既にここから去ったためこれ以上何かつかめる訳でもなさそうだった
「俺はデビルーク星に戻る事にするよ、向こうの俺だけに色々とさせるのも悪いし」
「私は…」
答えが見つけられないのか、凛の口は上手く動かずそこから先が言えなかった。そうして迷っている内に
「チヨさーん、早く戻ってきてー」
美奈子の声が聞こえた、何かを作ってたのかここから離れていた所から聞こえてきた
「あ、まずいな…忘れてた、ちょっと」
チヨは何か大事なものを思い出して慌てるような勢いで立ち上がってすぐにどこかへ行った
「さてと」
それを見てすぐにという訳ではないが少ししてシロもまた立ち上がった
「どこに行くんだ?」
「トイレ」
「何故さっき行かなかった!?」
こっちに来るまでに済ませてしまえば良かっただろうと凛はシロに言い放った、気を失っているヤミに一応配慮をしたつもりだったがそれでも少し声が大きくなってしまった
「それはそうかもしれないけど…行きたくなるのは仕方ないと思う」
シロは心苦しそうにボソボソと呟いた、お互いに沈黙が続いた後シロはトイレに行こうとした
「待てよ」
突然リトはシロに声をかけた
「なんだ?」
「あのチヨって女の子、泣かせるなよ。泣かせちゃダメだからな」
「何をしたらあいつは泣くんだ?」
そんな事はしないという自信のある言葉でもなく、本当に分からないような風でシロは答えた
それを聞いて唖然とした表情を浮かべて後、リトはシロの肩を叩き言った
「とりあえず無事でいろ、良いな」
「ああ…分かった」
シロはそこは分かったようで声に一切の疑問も迷いもなかった、そしてシロは扉まで行ってくるりと回ってリト達の方を向いた
「それじゃあ凛さん、王様以外の他の人も話の腰オレから折って悪いけどオレが戻ってくるまでに考えてくれよ」
シロは足早にトイレに向かった
「リト君、何であんなこと…」
春菜がリトに分からない事を聞くように質問を始めた、確かにリトがシロに言った言葉はトイレの前後に言う言葉じゃなかった
「なんだか…シロに黒いモヤモヤした物が見えてしまったんだ、だから…つい」
「だったら追いかけた方が良いんじゃないか?」
「本当にトイレだったらどうする?」
リトの問いに一同は黙った、下手をすれば他人のトイレの邪魔をする羽目になる。しかもここは自分の家でもないから怪しい動きは避けるのが無難だった
「お待たせー、嫌待ってなかったですよね、ところでシロは?」
チヨが皿に盛った玉子焼を持って戻ってきた
「トイレだけど…何してたの」
リトが説明と質問をするとチヨは頷きつつ答えた
「皆さんが外に出て暇だったので美奈子と料理の練習させてもらってました、一応ですけど皆さん食べます?」
「シロが帰ってきたらって事にしよう」
そんなこんなで一同はシロを待つ事にした
「そういえばシロは熱いものが苦手だが大丈夫なのか?」
「待ってれば冷えるので大丈夫…でした」
~教会 内部~
シロはトイレを終えて部屋から出た
「終わった終わった」
そこから先はどうしよう
リト達を呼んで大勢で地下倉庫を調べようか、アサキムの言う面白いもの…それをみんなが見せればどうなるのか
考えるまでもない、アサキムのような雰囲気の人間の言う面白いものは大抵当事者にとって面白くないものである可能性が高い…というのがシロの少ない年数ではあるが銀河警察をやってきた経験から言える事だった
それが地球でいうパンドラの箱であるのならアサキムから言われた通りに一人で見に行った方が良いのではないのか。それが罠だろうと動かずに憶測だけを立てるよりは良い
「行くか」
シロはそう言ってトイレから地下倉庫に向けて出発した、無論聞こえないように足音を出さないようにしながら
だが途中ですぐ神父に出くわしてしまった
「おや、何をしているのかね?」
不審者を見る顔で神父はシロを見た、確かに教会で暮らしていた美柑の家族であるリト達と違いシロはほぼ部外者に近い存在だった
「………実は……」
シロは神父に外での経緯を説明した
「というわけで地下倉庫の中を調べても良いかな?」
「……良かろう」
意外にも神父は快くシロの要求に応じシロに道案内を始めた
一度地下への階段に足を踏み入れると辺りが暗さを増した、地下にこそ明かりを付けなければいけないのではないかとシロは疑問に思う
「疑いはせんのか?初めて会った人間の言う事じゃぞ」
「あいにく疑ったり取捨選択をできるぐらいの情報を持ってる訳じゃないからな、その情報が罠だろうと踏み抜くしかない」
嘘か本当か、分からないがそれを確かめるためにも色々と知っておかなければいけない
「その通りかもしれんのう」
とやり取りを続ける内に一つの扉の前にやってきた
「ここじゃ」
神父は鍵を使い倉庫の扉を開けた
「ここに面白いとか価値のあるものがあるとは思えんがのう」
「自分で言うのか…」
だが、もうこの場所は美柑のいた場所としてその道の人間に価値があるものになる
「ここにアサキムが言っていた『面白い物』があるのか…」
倉庫の中も薄暗く、明かりも最低限しかないのでシロは胸のポケットから万年筆のような物体を取り出し、スイッチを押した。すると万年筆のような物体は光を放ちだした
「便利なものを持ってるのう」
神父はすごい物を見たような表情だった
「ただの携行用ライトだけど」
「すごい時代になったものじゃ…」
「これで驚いてたら保たないよ、神父さん…今は宇宙から人がやってきて溶け込むようなご時世だからさ」
「宇宙から人じゃと…?」
有り得ないという声色だった
「疑ってるのか?地球にも昔からちょろちょろ来訪してたらしいけどな、不時着したとも言うけど。モロに生態が違うから異端として扱われたという噂もない事はないし、そういうのって聞いた事はないか?」
「あやつ達の言ってる事は本当だったか」
神父の声色が沈んでいた。間違いなく過去に何かがあった、だがこれ以上その話についてあれこれと聞くのは酷のような気がした。神父自身が何かしたという訳でもないだろうし
シロは倉庫の中を本格的に探り出した
色々と目を向けている内に一つの写真をシロは見つけた
「これがアサキムの言っていたものか」
先ほど見せてもらった美柑の写真と彼女の髪型が変わってないおかげでどの写真がどれかなどがすぐに分かった、彼女はこの教会の中でそれなりに人気者だったのかもしれない、真ん中で座っていて修道女や修道士合わせてそれなりの数に囲まれていた、美奈子も彼女の隣に立って笑っていた、師匠と慕っていたのは嘘じゃないだろう。美柑自身は苦笑いだった、なにか悩みがあるのだろうと写真からでも感じられたが違和感もあった
「これは…」
この写真に写っている人達の人数と今ここにいる人数とがかけ離れている事、次に美柑の事で気になるものがあった
彼女のお腹は服の上からでも分かる程膨れており、かつ顎は膨れていない。これが意味するのは…
「怪奇現象か?嫌、違うか…聞いた事がある、人は」
その時、ブツブツと呟く声と同時に小さな爆発音がした、それから異様な喪失感を感じた、今まで感じた事のない激痛と共に、痛みを感じる部分を撫でてみると左胸が開いていた。そして急に力が入らなくなってシロは倒れてしまった、口から血が湧き出てくるのはいい気分ではなく気持ちが悪かった
「ぐはっ」
「心臓を攻めたのに大した奴じゃ」
神父の声が聞こえた
「何故…神父さん」
シロは神父の声のする方向を見て呟いた
いや、違うとシロは思った。さっきの写真が去年から一昨年の間に撮った写真だとするのなら、ここにいる神父も写っているべきだった…が、写真の中に今いる神父はいなかった、写真の中に神父自体はいたがどれも髭の有無や髪の色、顔の骨格から生じる丸みなどの特徴はどれも目の前の神父にはつながらない、整形手術をしたと言われればそれまでだが
「違う…貴方は、だ…れ……だ…?」
問い詰めたくても、もう口が動いてくれそうにない、意識が飛んでいく感覚に伴う物理的な激しい痛みはそろそろ死ぬんだと確信させるには充分だった
「これから神に召される君には何を言っても無意味じゃろう」
神父は指で十字を切りわざとらしく哀悼の意を示す素振りを見せた、何か別に言葉を唱えてもいたようだがもうシロはそれを見れる状態ではない
「チ…ヨ……」
そう口から声が出た後、シロは何も考えられなくなった、何故その言葉が出たのかを考えるにはもうシロには時間が足りない
「おっとそうじゃ」
神父は例の写真を持ち力を込めた、すると写真は燃え、跡もなく消え去った
「ワシのいた時代にはなかったものじゃな、この写真とやらは」
いかがでしたか?面白いと思ってもらえれば幸いです。
ルービックキューブ云々の話は芽亜さんなら一回食ってそうな気がしたのでつい
そろそろ投稿して一年ですね(唐突)、なので外伝など一ついってみようかと思います。本編早くしろと言われればその通りです。遅くてすみません
堕ちた果実編、もう少し続けるかやめとこうか決めたいと思います
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来夢君の変身する所見たい
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シロがアイスで尋問される所が見たい
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美奈子と美柑の絡み見たかった
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犯人の事はっきりさせろ
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もういい、もうたくさんだ
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察したのでもう結構