いよいよシロの因子が覚醒?復活?します、楽しみな方は楽しみにしてください
4人はシロが急に生き返った事に困惑していた、シロが生き返ったか否かだけの問題ではない、話の展開についていけないような困惑の仕方だった
その展開に追いついたのかチヨは真っ先に叫ぶ
「シロ!!」
そう言ってチヨはシロを抱きしめた
その抱擁はなくしたものを掴むように力強く、命を確かめるように優しく、なんだか服越しになにか柔らかい何かが伝わってきた。そして今自分が上半身が裸である事にシロは気がついた
「えっちぃ!!じゃない、痛い!!ストップストップ」
「良かった、グスッ、良かった」
チヨは再び涙を流していた、その涙は悲しみではなく嬉しさがこみあげているようだった
「すまん、嫌、さっきはごめんなさい」
シロは申し訳なさそうに背筋を丸めながら謝った、彼女の泣き顔を見ていると罪悪感を刺激される
自分が余計な事に首を突っ込んだ結果だった
アサキムの言う事に従った報いだった
とはいえアサキムはシロをだました訳ではない、彼のいう面白いものは既に目に焼き付けているのだから…また彼と神父がつるんでいない事も分かってきた
その様子を見てかリトは安堵したかのようにため息をつく、良かったと付け加えて
「じゃあ俺はヤミ達の所に行くよ、シロ達はそこにいて神父さんを…」
シロは待ったとかけるように声をかけた
「デビルーク王、まだ話は終わっちゃいない」
きょとんとした表情でリトは振り向いた
「とりあえず上着着ろ」
男の裸体なんて見たくもなさそうに困惑した様子
気持ちが分かるシロはチヨから離れ上着を着直した
「ちょっと」
「続きはまた後、わりい」
チヨはがっくりと気落ちした様子を見せた
リト達の目線が厳しいものになっていくのを感じながらシロは下を向いて苦々しそうに告げた
「デビルーク王…アサキム・ドーウィンを追うこと、彼女の事を知ろうとする事を止めてくれないだろうか?」
突然のシロの言葉にリト達の心に雷が落ちた
「シロ、お前はあそこで、地下室で何を見たんだ!?」
お腹のみ膨れた結城美柑の写真、とは言えない。言えるわけがない
「何も見てない!!俺は、何も見ていない!!」
シロ力強く否定するがリトも負けじと突っかかる
「嘘だ、お前は嘘をついている」
「決めつけるな、デビルーク王!!」
「だったらお前は何で泣いてるんだ」
シロは自分の頬に触れた。頬を伝う雫に言われて初めて気付くシロ、だがそれらを拭うより早く口が動いた
「…俺だって分かんないんだ、どうすれば良いのかとか、どうすれば彼女達は自由でいられたのかとか、俺は!!俺達は…何もできないのか…」
「何の事だか分からないけど、それが美柑の事だっていうんなら俺達も一緒に考えさせてくれよ!!」
シロは腕を横に振って拒否する姿勢を見せた
「俺は嫌だ、あんなもの、貴方達に知られたくない!!」
神父の言っていた言葉が肌を通じて脳裏に刻まれた。ある男の人生を、その男の抱えた痛みを、そのために男が犯した罪を
ならばそれを基に男を捕まえれば良い、これまでもそうしようとしてきたように
だがそれで良いのだろうか?
その男はおそらく存在を知られるだけで波乱の種となれる、そうなってしまっては彼らはどうなるのか?
気にしてはならない、目を瞑れ、自由の先にある不自由に飛び込むのもまた自由だ、当人達の問題だ
違う…違う、違う、違う、違う!!そんなもので片付くような軽いものじゃない
今まで考えなかった事を考えたため
シロはこんらんしはじめた
「ハァ…ハァ…」
「言いたくないなら言わなくてもいいけど俺は、俺達は知らなきゃいけない。それにヤミ達があそこにいるんだ、だから上に上がる」
リトがドアを開けようとすると、シロは全速力で近づき阻止した
「言ったろ?進ませねえって」
シロはリトを両手で引っ張りドアから離れさせた
「おっと」
リトが態勢を整えるのを見てからシロは左腕を掲げ力を溜める
「…!?」
~一方そのころ~
クォヴレーは宇宙中をディス・アストラナガンで飛び回り存在をアピールしてまわっていた、ユニクロンの喜ぶ感情を最も集められる手段である戦争への抑止のために
そうする理由と因子の一つであるギド・ルシオン・デビルーク、彼の嫁に面会を求められてしまったのがこの宇宙を駆け回っている中で一番のピンチだった、彼の怨霊というスタンスで銀河中を駆け回っているため会わないわけにはいかない
人気のない場所で会う事にしたが彼女の顔が偶然にも見えてしまったので心が何かに支配されるような気になる、咄嗟に自分を気絶させて事なきを得た、彼女にもある程度察してもらえたから良しとするが
「(感じた事のない高揚感だった、あの感覚…どういうことなのか誰かに聞くことができれば良いんだが…)」
仲間達と一緒にいた頃に抱いた感覚と違う、それはどの女性にも抱かなかった感情の発露のように思う
言葉で表すなら「好き」とか「仲良くしたい」「もっと仲良くなりたい」「一緒にいたい」そういうのを介さずただただ「欲しい」、といったところ、一緒にいたいと考えて2人、仲良くしたいと考えて3人、もっと仲良くなりたいと考えて1人程頭をよぎったのは何故だろうか
「(その感覚の事が分かれば俺ももう少し成長というものができるのかもしれないな…)」
そう考えていると何かを感じディス・アストラナガンの歩みを止めた
「シロ、お前が因子を行使する時が来たのか」
クォヴレーはシロの事を考える、彼に接触し彼の銃を使ってこの世界に出てきたから、感じるのは当然かもしれない…傷を受けた痛みまでは分からないが因子の励起は大きなエネルギーの爆発が起こるようなものだから分かる
「お前が自分の因子を省みる時、俺はともかくキャリコ、スペクトラのようにオリジネイターの影に怯える事がないよう俺は願おう」
クォヴレーはそう言ってディス・アストラナガンで移動を始めた
~教会~
「はぁぁぁぁ」
~シロの子供の頃~
何故だか分からないが警察学校の補習という名目でとある偉い所の学校の講師から直々に色々と教わった
名前はフローラ・ベルフェルディ
心理学の先生らしいが少女漫画から抜け出したようなすらりと伸びた長い手足の女性でいつも科学者の着るような白衣を着ていた。衣服にシワが寄っている様子、水色の髪から寝癖のあった日はないから身だしなみにはよく気をつけていたのかもしれない、髪型をたまにイメチェンしたかのように変えるなど若いような素振りを見せるが百年は生きているとの噂である
換気の悪そうな密室の心に関する話ばかりの繰り返しなのはまだいいが兵器である事についての内容の授業はどう人生を振り返っても一番つまらなく、その授業に対してだけは怒られる事が多かった。それまで授業で怒られるという事自体なかったのに10回は怒られた程だ
兵器は感情を抱かないと言われてもだからなんです?と答えた事もある
色々と悶着のあった結果その授業は無くなり代わりにこういう事を言われた
「シロ、今から君は自分の体の変化を想像してほしい、君はそれを現実にできる力を持っている…と聞けば試す?」
言われた通りに自分の体の変化を考えてみた、テレビで見るロボットのアームだったり、手錠だったり
だが結果は上手くいかなかった、想像したって、念じたって、どうにもならない
「…すいません…」
「何故…」
講師は机を手でバンッと叩いた
「何故お前はいつもいつも私達の望んだ通りに動けないの!!」
その言葉に腹が立ち、ついつい言い返した
「それが人になにか教える態度ですか!?人違いかもしれないじゃないですか!!」
シロが反論すると講師は急に笑い出した、あまりの切り替わり様にシロはどうしたのかと不安になってきた
「人…ははは、人、人か…『人はどうあがいても人にしかなりえない』か」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ、目は覚めた」
そう講師は言っても元気にはなっていない、納得はしたがそれで満足したわけではないようだ
それからは補習授業はなくなった
講師は
「私達のやっていた事は間違っていた」
と言って元の職場に戻ったそうだ。それからは彼女に会う事はなかった、後に上司となる人間からは
「フッ…嫌われたわね」
だそうだ
~現在に戻る~
今なら、できる
そう思う気持ちは確信ともいえるくらいに大きかった
「うぉぉぉぉお!!」
シロの左腕は瞬く間に別の金属の物質に変化した、長い砲筒のようになった腕を見てシロも驚いた、チヨも美奈子も驚いていた。種も仕掛けもなさげに腕を金属質に変えられればそうなるのも無理はない、本人すら驚いているのだから。だがリト達はもっと驚いていた
「何だって!?」
「シロ君もヤミちゃん、芽亜ちゃんにネメシスちゃんと同じ変身能力が使えるの!?」
「え、嘘だろ!?」
春菜の予想外の返答にシロは困惑した、ヤミの能力がどういうものかは資料で知っている。変身と書いてトランスと読むその能力は体中を武器に変質させる事ができるとか
しかし、まさか
自分が同じだなんて、一度は伝説と言われる程に人の自由もとい命を奪ったのを知った事で目の敵にしていた彼女、その妹、その他と同じと言われるなんて…思いもしなかった
「まぁいいや今は別にそんなことどうでもいいんだよ」
シロは回り込んで部屋の窓を全開させて戻った
「俺達にとってはどうでもよくないんだけど」
「その話題は後だ後、寝そべってる猫でもこいつは飛ぶぞ」
元の位置に戻ったシロは変質させた左腕をリトに向けた
「リト君!?」
「てめぇ…撃つのか?」
「俺の思い通りの形にできたなら、痛くはないはずだ」
「なあ…芽亜の言葉を借りるなら俺達一応義兄弟って事になるのかもしれないし…」
それはおそらく争いたくないという意味で口走った言葉だろう、だが
「イヤァァァァァァア!!」
「話し合う余地とかもう少し……てっあああああ!!」
今まで他人だと思っていた人間から急に家族認定された事により
シロはますますこんらんした
そして砲筒のようになった左腕から一発何かを発射した、それは竜巻や台風のような形をとって回転しつつ一直線に突っ込んだ
「驚いてばっかりじゃいられないか?春菜ちゃん、危ない!!」
「きゃっ」
「秋月も」
「自分で行けますよ」
リトは近くにいた春菜をできるかぎり遠くに押し出した、美奈子は自分で遠くに行った
「大丈夫!?」
「あ~れ~目が回る~」
風はリトを巻き込み、なおも直進を続けた
事前に窓を開けたのでリトは窓から追い出される格好で外へ飛ばされていった、だが空まで飛んでいったわけでなく外の森ではない原っぱの辺りで風の勢いが弱まりリトは着地させられた
「星のようにはキラーンっとはさせられなかったか」
それらを見届けた後シロは左腕を元に戻した
次の瞬間、目眩がシロを襲う
それは気を抜くと意識を失いそうになるほど激しかった
「ウッ」
シロは膝をつく
「え…嘘、大丈夫?」
「頭がクラクラする…」
頭を小刻みに揺らしながらシロは春菜を見た
「春菜さん…春菜さんの恋人はあっちに行きましたよ、シッシッ」
シロは春菜にあっちへ行けという手振りを示しながら告げた
春菜は迷ったようにきょろきょろと周りを見るとシロを見てから言った
「どうしても地下の事教えたくない?」
「はい」
シロは頷き、肯定の意思を見せた
「君はこれからどうするの?」
「凛さん達を止めに行きます」
「そう…」
「止めないんですか?俺を」
「君が美柑ちゃんについての事で何かを知って泣いてた、だからその涙を信じてみようと思う。それにリト君が無事かどうか知りたい」
春菜はドアを開けてから外に出る素振りを見せる
「でもチヨちゃんには話してあげてね、何を見たのか…後無理はしちゃダメだから」
春菜はそう言い残して部屋を出た
シロは告げる
「目眩はもう治った。チヨも美奈子さんもあっちに行ってくれ、すぐにでも」
チヨはその言葉を聞いて不機嫌そうに黙り込んだ
「チヨ?」
「なんでそうなるのか教えてくれないんだ」
「後で話す…じゃだめか?」
「だめ」
そう言ってる最中に美奈子はチヨの手を引っ張った
「美奈子さん?」
「ここは一つ、言うとおりにしよう」
「待って、待ってったら」
チヨが連れていかれるのを手を合わせながら見届けるとシロは神父に近づいた
「さてと」
シロが寝かされた神父の隣に座ると神父は口を開いた
「お前さん、何故あの娘に言わなかった?」
「今言ったらチヨにまで心臓に穴が開くかもしれないだろ?俺も助かるなんて思っちゃいなかったがチヨが同じように助かるとは限らない」
神父は自嘲ぎみに笑う、後ろで驚くような声が聞こえてきたのは気のせいだろうか
「あの娘と共に仕返しをしても良かったのじゃぞ、お前さんが右で娘が左。どうじゃろう?」
「俺は、憎むのはできる限りしたくないし憎まれるのも憎ませるのも嫌なんだ。憎むなって言っても止まらないものは止まらない」
それに…
「アサキムのせいで神父さんはもうすぐ再び天に還るみたいだしな」
神父の目が大きく開いた、シロの言葉に驚きを隠せないようだ
「何故知っておる?」
「神父さんの言ってた事は聞こえていたよ」
「聞こえていたのか…全部?」
「ああ、さっきから全部…体中に刻まれたみたいにな」
「ならば聞かせてくれ、お前さんは来夢の事をどうしようと思っておるんじゃ?」
しばらく考えた、だが出たのはどれも似たような結論ばかり
「そいつとデビルーク王達を関わらせちゃいけない…とは思う」
「そうか、お前さんもそう思うか」
シロは頷いた
「ただし神父さんのように胸に穴は開ける気はないがな」
「お前さん、根に持っとるじゃろ?」
シロは違いないと思い苦笑いをした
「泣けそうなぐらい痛かったからな、というかそんなにしゃべって大丈夫なのか?」
「どうせわしはこれから再び主に裁かれに行く、美奈子に伝えておくれ、だましてすまなかったと…だがくじけないで欲しい…と」
くじけないで欲しいという言葉にシロはぽかんと口を開けつつ疑問を持ったが次第に一つの仮説が立ってきた
「まさか美奈子って人も…!?」
「主よ、迷い子達の罪によるものなれど再びの生を受けた奇跡に報いる事のできなかったわしを許したもうな、人を欺き、命まで奪い、あげくただ一人の少年の心すら救えずに終わるわしを許したもうな」
やはり神父の証言は嘘と見ていい、本当は別の神父…この時代に生きていた神父が今いる神父の証言通りの行動をしたのだろう
一人の少年の心を救えなかった
それはきっとその少年に関わってきた大人達に非がある…とシロは思えてきた
大人達は少年の苦しみを取り除く事ができなかった、現在(今)を受け入れられないという思いを変えられなかった
神父はそいつらのやりきれなかった分を埋めようともしていたみたいだった
先ほど聞いた話で方法は間違っても少年を救いたいと願った気持ちに嘘はないと分かっている、神父は少年を救おうとしていたのは間違いないのだからそこは汲んで欲しい…と考えていると
神父は身体全体が砂もしくは灰とも言える状態と化した、どちらにせよ砂時計に使えそうな物質となった
さっきから聞こえた所によると神父の命という時計の針はずっと昔から止まっていたらしい、だが一年半前のある日を境に再び動き出した、そういった奇跡と引き換えと言えば説明はできる
一度終わった命が戻るべき場所に戻ったと考えれば納得できる
だが
「神父さん…」
シロにとっては今目の前で終わった命だった
少なくとも一年半からさっきまで生きていた命だった
存在自体は歪んでいたものだけれども、彼は再び過去に取り残されてしまった。
もうそれと向き合う事は叶わない、と考えていくにつれて惜別の気持ちがこみ上げ涙へと変わる
「確かここだとこうするんだったっけ」
シロは指で十字を切り、二階を向いた
「デビルーク王とあいつは関わらせちゃいけないんだ、だから俺が捕まえてやる」
そう呟いてからシロは階段へ向かうためのドアを開けた
いかがでしたか?
面白いと思ってもらえたら幸いです
堕ちた果実編、もう少し続けるかやめとこうか決めたいと思います
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来夢君の変身する所見たい
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シロがアイスで尋問される所が見たい
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美奈子と美柑の絡み見たかった
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犯人の事はっきりさせろ
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もういい、もうたくさんだ
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察したのでもう結構