スーパーロボット大戦Z 辺獄編   作:レゴシティの猫

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皆さんこんにちは(?)
ルート別である必要性はなかったのですがルート別……一度やってみたかったんです。


第三十六話 美奈子ルート 師匠の望みってなんだったんだろう?

「次元の道を開き、マイクロンとルナティーク号の力を利用してどこかへ星帝の魂を押し込んだのは良いけどさて、どうしようか」

 

 美奈子の様子を見に行く←

 来夢の様子を見に行く

 

 「彼女に己が何者なのか示すべきか…目覚めれば混乱を招くのもあるかもしれない、少し確かめてみよう」

 

 アサキムはリト達に見つからないか警戒しつつシュロウガで空を飛んだ。

 

 ~一年とちょっと前~

 

 『師匠は、どうしてそんな体であんな所にやってきたんですか?』

 

 私、生まれは知らないけど田舎の教会育ちの美少女(最近外の世界を知って美しさ、かわいさのインフレを感じている)、秋月美奈子はある時、なんだかんだあってしばらくここに住んで、私が師匠と呼び慕う結城美柑のお腹を指差してこんな事を聞いた、膨れたお腹に耳を近づけると分かる命の鼓動、はっきり言えば彼女は妊娠していた、そんな体で裏山に行っていたのかと思うとその事について聞かずにはいられない。

 

 『安静にしてなきゃだめな時期じゃないですか!?ここまで出っ張ったお腹だったら…はっ8ヶ月!!師匠に初めて会ったのが4~5ヶ月前、判明だけはしててもおかしくない、何があったんですか?…はっ、まさか師匠男に捨てられた!?うわーん、誰よこんなハイスペックな美女を捨てるような野郎は!!』

 

 『えっと……』

 

 『その話、私にも聞かせてもらえないか?』

 

 関係性と言えば兄に近い、修道士が話に加わってきた、名前はデレンセン・カールスクラッドだって

 

 『兄さんも加わるんだ…』

 

 『そいつの特徴を聞かせてもらいたい、神の御言葉をいつまででも聞かせて悔い改めさせよう』

 

 しつこさもといありがたさで乗り切れる訳ないのに…変な兄さん

 

 『誤解しないで、男に捨てられたとかそういう訳じゃないから…』

 

 『ならなんで…』

 

 『ナスビちゃんとデレンセンさんは、一番つらい望みの否定のされ方ってどんなのだと思う?』

 

 他の人からのあだ名は秋ナスだけど師匠からはナスビちゃんと呼ばれてた、その師匠の言ってる言葉は質問の答えとしては繋がらないような気がして、聞き返そうと思ったが師匠のあまりにも真剣な目に私も答えなければならないと思ってしまった

 

 『大勢の前で暴露されて笑われる時?』

 

 『武装込みで突かれながら否定される時か?』

 

 『兄さんそれもう死んでない?……』

 

 『どれも嫌だよね、そんな事されるの、でも』

 

 師匠は一呼吸して間をおいた、そうでもしないと上手く喋れなさそうな程『でも』の声がぐずついて、聞くほうも聞いていられない感じだった

 

 『一番つらいのはね、それでめいっぱい苦しんでる人がいるって知らされて否定される時なんだ』

 

 言っている事がどういう事なのか分からなかった、言えたのはただ一つ

 

 『……良く分かりませんけど師匠程の人の望みを否定するなんてひどい人もいますね、そんな奴を見かけたら私が師匠の代わりにけちょんけちょんにしてやりますから』

 

 修道女の服装に相応しくないようなシャドーボクシングだったけど私は兄とは違うのであまり服装にこだわりはない

 

 『苦しんでる人がいるならその人にできるだけの事をすれば良いんじゃないかと思います、できるだけ手伝わせてください』

 

 『………………気持ちだけで良いよ………………ありがとう』

 

 師匠の望み………それが何だったのか、もう確かめる事はできない。だってそれから1ヶ月もしない内に師匠は殺されたらしいから、本当………誰よ師匠の望みを否定するとかそんな事する奴は!!

 

 ~宇宙船内部~

 

 一度死んで生き返った体がどういうものか調べてもらうという名目で私は師匠のお兄さん達の宇宙船に乗せてもらっていた、目的地は偉い先生のいる所……ついでにヤミさんとシロ君の治療と経過観察も兼ねて……でも偉い先生曰わくデビルーク人の患者が多すぎて難しいから、助手と友人に代わりを頼むんだって…その友人はヤミさんと多分シロ君には詳しいらしい、師匠から聞いた事あるけど師匠のお兄さんは王様で伴侶がたくさんいて……その中に傷のだいたいを治したヤミさんがいる、昔見てた特撮の主役もいて実はその内の一人は体が分裂した二重人格者の内の片割れなんだって、そんな人達と繋がりのある師匠はやっぱりすごいな

 

 一応師匠のお兄さんがルナティーク号?の端末を使って警察への通報もした、現地とそれと銀河がつく奴を。現場を荒らした事で叱られたけど、関係者扱いで私が言える事を言ってみたら警察官の人頭を抱えていた、「信じたくない」だって。信じればその捜査は畑違いの領域となるから、とりあえずは一番何かを知っているシロ君の目覚めを待たなければならないらしい

 

 「…………それで来夢がですね…」

 

 「そ、そうなんだ…」

 

 記憶を取り戻した後の会話が殆ど特定の人間の愚痴になってたせいで春菜さんは苦笑いばかりしていた

 

 「おい」

 

 しまいには凛さんに止められてしまった

 

 「愚痴は一言二言ならまだ良いがそれ以降は聞く方が不快になるからな…そろそろやめてくれ」

 

 「すいません…」

 

 なんだか申し訳無くなって私は頭を下げた、忘れていた………人の宇宙船に乗せてもらってる事をすっかり

 

 「分かったらもう気にしないで、そのライム君って人が怪しい人間なんだ」

 

 「あの時は適当な事言ってましたけど本当は師匠の死んだ後に来夢は居座ってきました、部屋はいなくなったみんなの分があるから余裕で足りましたけど」

 

 適当なのはライムの居座った時期ね、後あの日私どうしてたかとか

 

 「そして一緒に暮らしてたのか、愚痴ばかりだがどんな人間なんだ?」

 

 「そうですね……まずはあの日まで遡りますか」

 

 「聞かせてもらいましょうか」

 

 ヤミさんモニター越しに聞き耳たててる?まあいいや

 

 ~一年前~

 

 寝てる間に記憶に何かが起こったようで目の前に知らない神父がいても特に何も疑わずに朝の挨拶をしてしまった、そして神父は苦々しそうに師匠の死を告げてきた、三度くらい嘘いうなって言って、本当の事らしい気配がしたから嘘だって叫びながら彼女の部屋を覗いた、だって認められないじゃん、まだ20代後半の師匠が死ぬなんて、でも誰もいない。今度は外へ飛び出した、見るといつの間にか新しく墓標が作られていた、「結城美柑、ここに眠る」と書かれてあるのを見て呆然とした

 

 『本当に…?』

 

 師匠と呼び泣き叫ぶが美柑の声は聞こえない、何故師匠のような人間が死ななければならないのか分からなくて、泣いた、泣いて、泣いて、墓石に抱きついて師匠と叫んだ、その時……後ろから、声がしたんだ、若い男の人の声

 

 『泣いたって何も変わりゃしねーよ』

 

 『ヒック……うるさいわね、泣かなきゃやってられないのよ、他にできる事なんか無いんだから』

 

 『そうか、なら渇くまで泣いてくれ、おばさん』

 

 『おばさん!?私はおばさんじゃない、あなた…誰?年はいくつ?』

 

 『来夢、17』

 

 存在しないはずの記憶をたどり来夢の事を思い出した、彼は3年前より教会にやってきて今まで住み着いてた、引きこもりがちな人間で師匠とはそう会話をしていないようだった…

 

 『ああ………来夢私は18よ、どう間違えてもお姉さん、お姉さんだからね』

 

 振り返ると包帯を顔中に巻いた神父服の男がそこにいた、体つきは自己申告通り同年代で少し背が低め、それでも私より少し上だけど同じような年の中にはもっとゴツくて背が高い人がいっぱいいるイメージ。まあ少しだけ違和感はあった、この年の人間とは女の子としか一緒に住んでないような気がして、それでも目からこぼれるものの感触は疑いようもなく目の前にいる男は現実と受け止めるしかなかった

 

 『ああそうだ、これを受け取れ』

 

 来夢はかごいっぱいの梨とミキサーとなにかの型を持ってきた、多分お供え物だろうけど器具については意味が分からなかった

 

 『なにこれ?』

 

 『アイスキャンディーの基だ、溶けるとあれだから欲しいなら向こうで作っとけ、なんなら直接食っても良いって伝えといてくれ』

 

 渡して伝えたいものがあるなら自分自身でした方が喜ぶだろうと思って反抗した

 

 『自分で伝えなさいよ』

 

 そう言うと来夢は一式を墓前に置いた後包帯越しでも分かるようなニンマリとした気持ち悪い笑みを浮かべて走り去った

 

 『あ、待ちなさい!!………………………』

 

 追いかけても間に合わない早さで走ってて、追いつけないので来夢の代わりに師匠に伝わるように祈った

 

 『師匠、ライムの野郎がこれ食うか使ってアイスキャンディーにしてくれだって………………この言葉が独り言になってくれますように』

 

 すごくイヤミを感じるけど分かったって伝えといてね

 

 なんか聞こえてきたから師匠が本当に死んでるような気がしてまた涙が出てきた、どこを向いても師匠はいない、あの茶色い髪に、知識の多さに、優しい声に、触れる事はもう叶わないと突きつけられるようだった

 

 『へー梨大好きだと思ったんだがな、それ欲しさに人から取ろうとしたりするしさ』

 

 師匠の言葉(仮)を伝えた時の来夢の言い分だった、師匠が来夢の分の梨を取った事があるようにその時は聞こえた

 

 『師匠がそんなキャラな訳ないじゃん、人の食べる梨に手を伸ばすとか………でもちょっとかわいいような気もしてきた』

 

 『………………おばさんがうらやましいよ』

 

 『今なんて?来夢今なんて言った?』

 

 そこから先はただの乱闘、単なるじゃれあい、語る言葉はありません

 

 ~現在~

 

 「そ、そうか………………彼女は梨はそこまで好きでは無かったように思うが」

 

 凛さんはそう言うけど確かに梨の話題はそこまでしなかったような気もする

 相づちを考えてたら春菜さんは首を傾げだした

 

 「うーん…これだけじゃ分からないか、もう少し教えて欲しいな」

 

 「いつも自分の部屋に籠もりっぱなしで…たまに外に出て犬に懐かれると顔を覆ってそっぽむき出すような奴です」

 

 ~半年前~

 

 自転車での買い物の帰り、見知った顔が目についた

 

 『来るなー!!』

 

 『来夢!?』

 

 一緒に教会に住んでる間包帯を巻いた顔ばかり見てきたからそれが顔という認識になっていた、来夢は散歩をしている人が連れている犬に懐かれ、それを怖がっているようだ。必死にうずくまってから包帯に頭全体を覆っているくせに両手で顔をふさいでいた

 

 『どうしたの?』

 

 私は自転車から降りて押しながら来夢に近づいた

 

 『その声はおばさん、犬が、犬が後ろに』

 

 来夢の後ろを見ると犬がじゃれついていた

 

 『またおばさん……………そんなに怖がってたらわんちゃんがかわいそうでしょ、ほら……ごめんね、このお兄ちゃん怖がりだから』

 

 自転車を止めてわんちゃんを引き離してから私は来夢にもう大丈夫って言った、そして帰り道ー

 

 『来夢も外に出るんだ、意外』

 

 『オレだって本を借りるし返しに外に出る』

 

 『へえー、ていうか普段虫とかクモは怖がらない癖になんでわんちゃんを怖がるのよ』

 

 『あの純真な目で見られたらいたたまれなくなるんだけど……ならない?』

 

 『残念、私はわんちゃんに見られて困るようなやましい事はしてないから』

 

 『まあおばさんはそうだろうけど』

 

 『…………………火傷が治ったら包帯取ってみたら?少しは楽になるかもよ』

 

 『そうは思えないだろうな、オレは』

 

 『………………何かに怯えてるの?来夢』

 

 『オレ自身の全て、てところだ』

 

 ~現在~

 

 「そうですか……」

 

 ヤミさんは妙に暗い声で相づちをうっていた、人がオーバーに言ってただけの言葉をそんなに重く受け止めるなんてヤミさんは優しい人だと思う

 

 「でも無駄に器用な奴だとは思います、パイプオルガンでマジカルキョーコの主題歌を演奏してたので」

 

 来夢が弾いたその日は遠方からの来客の受けが良かったのは覚えてる、懐かしいと思ってたのだろう、私だって本編は見てた記憶あったし

 

 「変な事する奴もいるもんだな」

 

 そうそう、変なの。懐かしいとは言ってもパイプオルガンだと無駄に荘厳になるからなんか違うの、せめてピアノだったら……と思うけど

 

 「料理も上手い方でしたよ、師匠には及ばないけど少なくとも私以上の腕は持ってます」

 

 「何か作ってたんですか?」

 

 「オムライスを11月に作ってもらいました」

 

 ~11月3日~

 

 『今日は師匠の誕生日か…はぁーあ』

 

 師匠が生きてたら盛大になんか作って祝いたいけどもういないからそんな気分になれない、て腐ってると台所からガチャガチャと音が聞こえてきた

 

 『ミルクよミルク♪こぼれ落ちるな、こぼれ落ちたら臭うもの』

 

 見てみると来夢は何かを作っているようだった、既に割ってある卵6個と牛乳と多めのケチャップと玉ねぎにベーコンとご飯と塩こしょう、なんとなくだがオムライスを作ろうとしているのは分かる

 

 『ええ、来夢…料理できたの?』

 

 来夢が料理をする所を見たのはこれが初めてだった、いつもは私が同居人のよしみで作ってたから……

 

 『………………すぐに終わるから待っててくれ』

 

 慣れているような手付きでの調理でありすぐ終わらせるという言葉に嘘偽りを感じさせなかった

 

 言葉通り来夢と私と神父の分、すぐ出来上がった。でも最後のひと手間だけ妙に長かったんだよ、つまようじにあらかじめ切ってある色紙を付けて…旗を作ってさ。模様は白い紙に赤い十字架……病院!?赤い紙に黒くて真ん中に穴のあいた歯車っぽい物、後青い紙に黄色い三日月を書いてオムライスに刺していった

 

 『おいしい、これおいしい』

 

 そうしてできあがったオムライスは想定外のおいしさだった、オムの部分の割った時の半熟っぷりもさることながらライスの部分の優しい甘み、ケチャップだけではない何か、玉ねぎか……珍しがってるのか食べずに色々な方向から見てる神父を余所にがっついて食べてしまった、来夢が神父に食べ方を教えているのはさすがに加勢するべきだったかと反省してます

 

 『知り合いのおじさんはさ、旗倒したら負けだっていう遊びやってたよ』

 

 来夢が食べている時にそう言ってた、食べ物で遊んじゃ駄目って大人は言うのに……それはさておき

 

 『私が作ったのよりおいしいじゃん、それになんか師匠の作ったご飯に味似てるし』

 

 何か似ていたような気がした、師匠からオムライスを作ってもらった訳じゃないけど……作ってもらえればこんな味だった、そんな気がした。師匠のご飯が懐かしいなと思った、ただそれだけだったがその言葉を聞いて来夢の様子は一変した、急に食べるスピードが早まった、まるでこちらの話を一方的に打ち切るように、食べ終わるといただきますやごちそうさまの合図も出さずに走り去って部屋を出て行った、そういえばこの時からかな?ひきこもるようになったの

 

 『ちょっ、ごちそうさまぐらい言ってよ!!』

 

 『ごちそうさま!!』

 

 仕方ないと思って食べるのを再開した

 

 『やっぱり旗立ってるやつ食べるの難しいな』

 

 旗が邪魔で右から左へ食べる事ができなかった、仕方ないので周りから食べて……

 

 『あ』

 

 スプーンに旗が当たり旗が倒れた、数秒後旗を引っこ抜き、食べてしまった

 

 その頃ライムは部屋の中一人でアイスキャンディーとプリン独り占めしてた事がゴミから判明してそして私も食べさせてもらった

 

 ~現在~

 

 「ひょっとしてライム君って美柑ちゃんの知人?」

 

 「あからさまに関係者ムーヴしてるぞ」

 

 「アイスキャンディー食ってますもんね、師匠の好物」

 

 「オムライスもですよ、プリンは違う気もしますけど」

 

 え?師匠オムライス好きなの?オムライスは初耳だよぉ、がっくり

 

 「他に何かないですか?」

 

 後は…

 

 『8月21日か…』

 

 そういってライムはぼけーっとしてたっけ

 

 「8月21日…って何かありましたっけ?」

 

 「何もないかな、ヤミちゃんはどう?」

 

 「何もないですね」

 

 「ああ、大方そいつ自身に何かあるんだろう」

 

 何かある…………何かあると言えば誕生日?誕生日と言えば………あ

 

 「どうした?」

 

 「来夢はよく誰かのためにパイプオルガン演奏してるらしいんですよ」

 

 ふうーごまかせた、師匠の子供の産まれる予定日だったなんて口が裂けても言えないな………病院に予約は入れてたけど……………師匠

 

 「10月16日、25日、12月24日、3月6日、5月3日は…パイプオルガンを30分程弾いてました、2月末と3月3日と4月1日と5月10日と7月7日と8月8日と9月21日と11月8日と12月5日は一時間程延々と」

 

 「……何を弾いてた?」

 

 「メロディーに関してあまり詳しくはないですけど生誕を祝う唄…とかの類だったような………無学ですいません」

 

 「じゃあ……」

 

 「ライムは料理上手で顔に包帯を巻いて私達の誕生日を知ってるひきこもりの男という事か……誰だ?私は知らん」

 

 この人達の誕生日だったんだ………うん?てことは師匠に対して弾く気はなかったって事になるよね……次会ったら問い詰めて弾かせよう、師匠の……私の師匠のために!!

 

 『そろそろ着くぞ』

 

 「わぁー」

 

 大きな洋館が見えた、良いなあ、私もこういうの欲しいなあ…教会って住居部分のほとんどがシェアハウスみたいなものだし

 

 師匠のお兄さんもついて行きたそうだったけど

 

 「くっ」

 

 「リト君!?」

 

 「大丈夫か?」

 

 「限界か……俺にこれは越えられないみたいだ」

 

 目を回して倒れてしまった、発明品の副作用で急いで帰らないとまずいらしい、そういう訳でみんなは私とシロ君ペア、ヤミさんと宇宙船をそこに降ろしてからお兄さんだけ回収して別の所に行っちゃった、夜近いしここにお邪魔するしかないか、と思って扉に近づくと

 

 「ヤミちゃん、大丈夫!?」

 

 急にヤミさんそっくりのメガネをかけた金髪ストレートロング美女がやってきた!!そして走ってここにやってこようとしたせいで道につまづいてこけちゃった、何もないところでこける人初めて見た気がするけど

 

 「危ない!!」

 

 お顔を地面に激突させるのだけは防ごうと私はかがんで両手を伸ばした、少しはクッションになれたみたい

 

 「助けてくれてありがとうございます」

 

 ペコリと頭を下げられたからつられてこっちもペコリと頭を下げてしまった

 

 「私はティアーユ・ルナティークです」

 

 「私は秋月美奈子です」

 

 「あなたが美奈子ちゃんね、あなたはこっち」

 

 そう言うと金髪美女はヤミさんのいる方に向かっていった、あの慌てようから察するにあの人ヤミさんは肉親なのだろう、あ……また転んだ、仕方ない

 

 「あたたたたた」

 

 「大丈夫ですか?」

 

 「重ね重ねすいません」

 

 「落ち着いてください、本当……落ち着いてください、特に階段では」

 

 「ごめんなさい……」

 

 階段のくだりは私個人の経験からの意見だよ、一応死因だし

 

 「見てられないのでついて行きますよ」

 

 と、言うわけで私は目の前の金髪美女に付き添った、まあ白い宇宙船まで早歩きでついていけば良いから楽だった

 

 「では」

 

 「すいませーん」

 

 オレンジのシャツと青のジーンズ姿で上から白衣を纏った同じ年ぐらいの女の子が走ってこっちに来た、サラサラしてそうな藍色の髪、人当たりの良さそうな雰囲気、なんだか清楚な感じがすごかった

 

 「ティアーユ先生は……」

 

 「もうなんか始めたみたいです」

 

 「そうですか……ではついて来てください」

 

 屋敷に戻ってどこかに案内されて、ほんの少しだけ待たされた

 

 「どうぞー」

 「はーい」

 

 扉を開けるとさっきの女の子が待っていた

 

 「改めましてこんばんは、私は村雨静です、静先生と呼んでください」

 

 「こんばんは、よろしくお願いします、静先生」

 

 それから血を取られたり、熱と脈を測られたりした

 

 「血の方はもう少し待ってくださいね、他は生きている方と何も変わってはいません………」

 

 静先生は急に下を向いて黙り込んだ

 

 「静先生?」

 

 どうかしたのかと私から立ち上がって静先生に近づいたその時

 

 「ばぁ!!」

 

 急に静先生が上半身だけ幽霊の仕草で飛び出してきた

 

 「きゃぁ!!」

 

 驚いて尻餅をついた、静先生はかわいい系の女の子だから怖かったかって聞かれたらそうでもなくて勢いで押された感じだった、さっきのはこれが目的かと理解したのと同時に何故こんな事をされるのかと疑問が湧いた

 

 「やっぱり幽霊とは違うみたいですね、すみません、立てますか?」

 

 静先生は手を差し伸べてきたのでその手を借りた、その時頭がぐらぐらして気づいたら少し時間が飛んでいた

 

 「美柑さん、妊娠してたんですか!?」

 

 「え?なんでバレたの!?何も言わなかったのになんでバレたの!?」

 

 「良いこと聞いたんだブーン!!」

 

 知らない声がしたから振り向いたけど誰もいない

 

 「誰か、います!!」

 

 ……………どこ?

 

 「上です!!」

 

 静先生の指差す方向を見ると童話に出てきそうなシルエットがサッカーボール並みにデカくてゆるい感じの丸い蜂がそこにいた、糸のような腕で糸のようなあんよ、かわいい!!ハチの妖精のようなそいつは目が合うと逃げ出した

 

 「あっ待ってくださーい」

 

 私と静先生はハチの妖精を追いかけた、ジーンズ姿の静先生はともかく私はロングスカートだから走るのがきついきつい、こけないように注意しないと

 

 「デビルーク王室じゃなくてぽっと出のあの小娘を見張っておいて正解だったんだブーン、スクープスクープだブーン、これで女王たまも褒めてくれるんだブーン!!」

 

 「虚、または真を謳うならその前に一つだけ」

 

 「!?ナニモンだブーン!!」

 

 「ある世界ではね、狼に乗った三匹の猿の神像を以てこんな言葉を贈るんだ、ミザル・トゥバル、イワザル・トゥバル、キカザル・トゥバルと」

 

 扉を開けて外に出ると黒い格好のイケメンが剣を持ってない方の人差し指を口元に当てて黙るように促す仕草をした後

 

 「それを破る者には悉く狼が口を開けて飲み込みに行くらしいねぇ!!」

 

 剣を振るって知らない蜂の尻尾を突いた

 

 「痛いんだブーン!!助けてほしいブーン!!」

 

 泣き叫ぶ事ができたからそこまで深くはなさそう、だけど

 

 「目に映る姿と同じように肉体も柔らかいか、柔らかすぎて僕も少し焦る所だった」

 

 知らない蜂は地面に激突して泣いた、まあ今静先生が虫取り網で捕まえたからいっか

 

 「大丈夫ですか?」

 

 「怖いんだブーン!!」

 

 ハチの妖精はうずくまっちゃった、震えてる所を見るとなんかよしよししたくなってきたかも

 

 騒ぎを聞いて金髪の先生も宇宙船越しに見てきた

 

 「今の言葉は君達にも言える、もし言えば……分かるだろう?」

 

 イケメンは剣をしまってから今度は私達に向かって語りかけてきた

 

 「分かった、もうこれ以上死にたくないし」

 

 「へえ……思いだしたんだ、己のたどった運命を」

 

 「うん……」

 

 「分かりません、はっきり言ってください」

 

 「用は済んだ…………でも君がさっきの事を伝えようと思うなら僕は君の魂を仮の器ごと散らす事になる、こんな風に……ね(眼力)」

 

 イケメンは静先生に一睨みをしてきた

 

 「ぴゃっ!!」

 

 静先生!!

 

 ああ、間に合った……倒れて後頭部が床に直撃するのは避けれた………………………………………………あれ?静先生が2人いる、片方透けてて、和風の白い衣服に身を包んでるその姿はまるで

 

 『びっくりして出てしまいました』

 

 「えーーーーーーーーーーー!!」

 

 静先生、幽霊だったの!?

 

 「思ったより簡単に剥がれた……少し足りないんじゃないかな?己を器に宿す力が」

 

 黒い格好のイケメンって静先生が幽霊だって事知ってるの?そんな言い方してるけど

 

 「その力を求めるなら人ならざる者と相争う者に会う事を勧めよう、隠世へと妖魔を祓う術を知るなら常世にてその魂を縛る術も得ている筈だ」

 

 と言い残してイケメンは去ろうとした

 

 「待って、あなたがヤミちゃんに怪我をさせたの?」

 

 金髪ストレートロングの美女が宇宙船から外へやってきた

 

 「そうさ、でも認める事を望んじゃいないんだろう?僕が君の望むままにしても彼女は喜ばないよ」

 

 改めてイケメンは去った、急に現れて急に去っていった、突風が通り過ぎていったような余韻を残して

 

 「とかなんとか言ってあのイケメン、静先生をその人達に押しつけようとしてる感じがダダ漏れなので気にしない方が良いと思います」

 

 「わ、分かりました」

 

 私達は保健室に戻った、金髪ストレートロングの美女の手伝いもあり蜂を網から出して手当てして、金髪美女は戻っていった。それから静先生の事について教えてもらった、彼女は本当に昔から幽霊で今の体はバイオロイドらしい、よくわかんないけどそのバイオロイドmgwrてこと?

 

 「それから……」

 

 糸のような細い腕でコップをつかんでストロー越しにジュースを飲んでいる蜂に話を振った、子どもの書いたお絵かきのような顔で蜂特有のあの顔に寄ってないから見やすい

 

 「あなたは誰ですか?」

 

 「ボクはハニーズ星のビー助だブン、女王たまに耳寄りの情報をお届けするのがボクの仕事なんだブーン」

 

 こんなかわいいハチが……情報屋ってやつ?

 

 「ビースケ君は何しにここに来たの?」

 

 「小娘に言う言葉はないんだブーン、そこのお姉たま、お姉たまってお呼びしていいかブーン?」

 

 おばさんの次は小娘か……まあいいか、小娘は

 

 「え?ええ………ビースケ君は美柑さんの事を知ってどうするつもりだったのですか?」

 

 「お腹の子はデビルークの王たまの子だってみんなに言う予定だったんだブーン」

 

 「そうなのですか?」

 

 「お姉たまは知ってるブン?噂にあるんだブーン、デビルークの王たまの妹は王たまの事がLOVEなんだブーン、言えばきっとみんな信じるんだブーン」

 

 静先生の頭に雷が落ちた、まあ幻だけど

 

 「取り憑いてないので知りませんでした」

 

 「ちょっと静先生……」

 

 私は静先生の耳に近づいて小声でぼそぼそと提案した、言葉の勢いによる洗脳、すなわち言いくるめる事を

 

 「ビースケ君、なんでそれを悪い事をしたのを言いふらそうとするように言うんですか?」

 

 「だって悪い事らしいんだブーン!!向こうが墓穴掘ったんだブーン!!」

 

 「何も悪くない、いい?何も悪くないんだよ、師匠のお腹の子が誰の子だろうといちいち騒ぐ事じゃないんだから」

 

 「小娘は黙るんだブーン、難しい話だブーン」

 

 「宇宙人ってもっと認識ゆるいと思ってた、先生!!お願いします!!」

 

 「ビースケ君、私も悪い事ではないと思います」

 

 「悪くない悪くない悪くない悪くない悪くない悪くない悪くない悪くない悪くない(小声)」

 

 「お姉たまがそう言うならそうかもしれないブンね」

 

 ふぅー、一件落着……じゃない、謎が解けてその先で行き詰まった感じ、師匠の望みはおそらく、大好きな人と一緒に生きる事、師匠はお兄さんの事が大好きだって事、真偽はともかくとして師匠のお腹の子供がお兄さんとの子供だって言われたらみんな信じるぐらいには……本当にそうだとしてもまあ良いんじゃないかとは思う、それで師匠に対する気持ちが変わる訳じゃないし、現に今そうと考えてもうわ気持ち悪、態度変えようとは思えない。人の己と違う所を下に見てから否定する、そういうのはあってはならないって私達を今まで育ててくれた方の神父が言ってた、創立以来の教会の家訓、すなわち教訓だそうだ

 

 だが問題はそれでよしとしない奴らだろう、そいつらの内の誰かが師匠を否定した……?誰だろう、師匠の心を折る程に師匠の夢を否定をした奴は……それが分かればやる事は一つなのに

 

 「それはそうと幽霊でいるってどんな感じですか?」

 

 「昔は寂しいと思ってましたが、今は未来の友達ができて楽しいですね」

 

 幽霊って本を読んだ影響でもっと暗くてドロドロしたものだと思ってた、死ぬ前に心に抱え込んだ暗いものをまとって現れるから怖いものになる、だから人に危害を加える、そんなものだって。でも静先生が幽霊って分かって例外もいることが分かった

 

 「だから一度死んだとしても、それで友達を作ったり、未来に目を向けたりするのを諦める必要はないと思います。それにあなたにはあなただけの体があるんですから」

 

 自分だけの体……か、そう言われると気が楽になってきた、都会行って住んでみるのもありかな?

 

 「そうですか、そう言われるとなんだか気が楽になってきました。ありがとうございます」

 

 「それはそうと美柑さんの子供の件は言わないんですか?」

 

 「師匠のお腹の件は黙っておいた方が良いと思ったんです、師匠だけでいっぱいいっぱいなのに子供までって………」

 

 「それはダメだと思います」

 

 ………急に静先生の表情が真剣なそれになった

 

 「言わない限り、春菜さん達の中でその子は存在しないのと同じになります。寂しくはないですか?本当はいたのに、いなかった事にされるのは………」

 

 地雷、踏んじゃったかな……なんだかそんな気がした、例外とはいえ幽霊だもん。死んでまで気にする事の一つぐらいあるよね、そして静先生は寂しいまま死んでしまったと見た私だった

 

 「まあそう…………かも?」

 

 「そうですよ、寂しくないと思うように育ってしまわない限り……きっと」

 

 「でも言ったら静先生に私達散らされるんでしょ?あの黒い格好のイケメンに」

 

 黒い格好のイケメン、名前は確かアサキム・ドーウィン。格好と髪は黒ずくめでさっきは暖かかったけれどいつ冷たく突き刺さるか分からない秋の風のような人、それでいて綺麗な赤い瞳に脳をとろけさせるような甘い声が全てを肯定したい気にさせる、正直あのマスクとボイスは卑怯

 

 「う……………そうでした」

 

 「あのお兄たまひどいブンよ、ボクの体に剣を突き刺したんだブン」

 

 「よしよし、痛かったね……今度から狙われないように行動しようね」

 

 そう言って私はビースケ君の頭をなでてみた、頭の触覚、その間の部分がものすごくモチモチしてて、まるでぬいぐるみのような感触、いやされる~

 

 「小娘に慰められても嬉しくないんだブーン、お姉たま~」

 

 なんとなく分かった、このハチは年上好きだ、直感で判別できるぐらいこのハチは年上好きだ。

 

 「よしよし……」

 

 「ブーン」

 

 静先生に撫でられるとビースケ君は気持ちが良さそう、なんか違うのかな?年の差って……嫌、多分心の問題かもしれない、ビースケ君の。

 

 「……………」

 

 …………どうしよっかな?みんなに師匠のお腹の事を言うの……殺されたくはないなあ、一度死んだ命だから惜しくはないと言える人もいるだろうし惜しいと思う人もいる、私は後者、前者みたいに言えるのは一度目すらそんな風に扱った、それかそういう風に扱える可能性のあった人なんだろう。かといって話さないのは静先生の言葉を聞いて良くないように思えてくるのも確かだ、迷って良いかな?もう少し、私の望みが叶うまで……自分の目で都会とか、外の世界を見れるまで、奇跡がくれた私の時間を使いたい。




いかがでしたか?急に長すぎと思ってますでしょうか?面白いと思っていただければ幸いです。
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