スーパーロボット大戦Z 辺獄編   作:レゴシティの猫

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みなさんこんにちは(?)
今回の主役はサブタイ通りです、なので前話に引き続き美柑ちゃんの望みが叶って欲しい方はブラウザバックもしくは思いっきりスワイプをお願いします。叶った事で曇る奴なので……


第三十七話 (結城)ライムルート ノゾミと代償

 「ほら、あの子よ」

 

 「あの子が例の」

 

 「分からないわね、どうしてのこのことここに入学したのかしら、うちの子に悪影響が出るザマス」

 

 なんでそんな目を向けるの?

 伝わるんだ、嫌な目線が、親から子供に、だから「こいつは良いんだ」って思われる。やめて、やめて、やめて、やめて!!

 

 「王妃様は何をお考えなのか」

 

 「何故あの子まで王子として扱う必要があるのです!?……………風夏様達にも言える事ではあるのですがあの子はもっと」

 

 なんで、そんな事を言うの?

 

 「あの子には王様の血と………」

 

 自分の産まれについての話を聞いた時全てが繋がった。それと同時に母親は産まれるって分かるまでオレの事なんてアリ一匹分も考えてくれなかった事を知った、だって、そうじゃなかったら、どうして血の繋がった自分の兄と結婚なんか望むんだろう?どうしてダメだって言われてる道を選ぶんだろう?どうしてオレを作るような事をするんだろう?その日、そして記憶を取り戻した日、オレの中で、例えいじめられても心に最低限残っていた自分への人間としての肯定感が、そっくりそのまま消えた。

 

 「オレが……汚れてたから、ずっと……ずっと……汚かったんだ、オレ………あ……………………あ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 (あくい)…………それは移るもの、移る度に痛みをもたらすもの、移る度に広がるもの、誰かに振りまくもの、そして誰かが禁忌に踏み込む時容赦なくその威を示すもの。

 何を以て禁忌かはさておき、そうと定義されてしまえばそこに踏み込む誰かは悪、と断じられる。当人達を蝕むだけでは飽きたらず、その炎はやがて子供へも……

 しかし、懸念すべきはそれだけじゃない、禁忌に踏み込んだ結果が自分であると知る事、そして事実であると知る事。それは子供自身の心を突き刺す、それだけで…………壊れるものもある。

 怒りで導いた答えはこうだ。

 

 自分の欲望だけを優先して伴侶に、周囲に、自分に望まれない子供を産み出すような奴達に、それ以上の時間はやらない………過去にそうしてしまった、する事が予測できる奴はどれほどの遠い過去に行ってでもそうする事が確定した瞬間に壊してやる。

 

 というのを実行するには、人数が多すぎると電王に変身する時悟った。こぼれ落ちた砂を全てすくい取るようなものだ、必ず、取りこぼしが出る。

 一生かかっても終わらない、それに八つ当たりに近い。

 時の運行って奴は遠い過去になればなる程少し何かを変えるだけで多岐に影響が出てしまう。

 だから狙いを色々と削ぎ落とし、答えを結論に変える。

 できるのは、原点………

 それを消しつぶす事だけ。

 オレは手に入れた力でオレ自身を消す。だけどそのままのオレは狙えない、だから結城美柑……オレを産む前の母親の命を狙う。

 こうすればもう、八つ当たりじゃないだろう?

 そう決めたある日、いつか見た女の人が夢に出てきた。ライダーパスを持って寝たのは失敗だったのかもしれない。だいたいはこうだ

 

 『それがあなたの結論?つまんないの』

 

 服装も、顔も時の流れを無視しているように全く変わっていない。

 

 「つまらないもなにもないだろう」

 

 『せっかくアーク様があなたを選べば過去から未来、そして宇宙を飛び回って人類を滅亡させてくれるって予測したのになー』

 

 「オレは別に人類まで滅亡させたいなんて思っちゃいない、オレがいなくなればそれで良い」

 

 『あなたはそう言うけど、この子はなんて言うと思う?』

 

 「?………………!!」

 

 女の人はいつの間にか男の子と手を繋いでいた、目の前の男の子は………無造作に跳ねて、たれ落ちない程度に伸ばした黒に近いボサボサの茶髪、黒、緑、茶による迷彩柄のジャンパー、膝の辺りが擦り切れているズボン、おそらくこの子の見た目はオレだ。

 

 『お兄ちゃん……滅ぼそうよ。人間なんか、いなくなってしまえば良いんだ』

 

 目の光はもう消えている、こいつはおそらく人生で一番叫んだあの日に死んだ、人間としての自覚を持ったオレ。

 

 『オレの存在を同じものだって扱ってくれない人間の方が悪いじゃないか、母さんだって父さんを好きだったから父さんを選んで、父さんはそれを受け入れた。なのにそれでよしとしない奴らがいる、直しようの無いもので責め立ててくる奴らがいる。父さんは遠い星でも、王様だ、だから選択が間違っていたとしてもよっぽどの事がない限り下手な事は言えない。その分オレに向く、しかも目線とかの形の無いものばかりでだ、そんな卑怯者達の目線が大多数なだけでオレは産まれながら悪になるんだ』

 

 「今なら分かる、あいつらはみんな憐憫と愚かしさ、その他諸々の感情と悪意でフィルターをかけて見下しているんだって」

 

 『それを当然のように振る舞う奴らを野放しにして良いわけがない』

 

 「オレもそれは賛成だ」

 

 『だからみんな壊そう?もらった力があればどこからでも、壊せる』

 

 「でもそれはできない」

 

 『どうして?』

 

 理由は一つ

 

 「オレがオレを見下しているからだ」

 

 オレがオレである限りオレはオレ自身を認める事ができない。オレがこんな思いをする事も分からずに、それか考えずにオレをお腹に宿すような事をした母親もだ。

 

 「オレがオレを見下している限り見下す人間も、見下されるような事をする人間も憎む資格が無くなるんだ」

 

  それは心のブレーキになってしまう。

 

 「それにお前はオレじゃないだろ?」

 

 オレは目の前のオレぐらいの年から結城リトの事を父さんとは呼べなくなった、もう一生そうなんだろう。

 

 『じゃあこの子は意味ないとして……』

 

 女の人がそういうとすぐ男の子は消えた。

 

 『復讐(あてつけ)が望みなら派手な方が良いと思わない?』

 

 女の人はオレの背後に回り、肩に首を乗せた。

 

 『あなたの母親の選んだ道の先にオレがいるんだって、見せつけてやるの。あなたの母親の周りの人間かな、たくさんの悲鳴を母親に聞かせるの。きっと楽しい光景になるよ~』

 

 「思わない、世界には無関係な人間が多すぎる。矛先を広く向けたらそいつ達まで巻き込まなきゃいけなくなる、それにあそこはオレを否定ばかりするけどララさん達が笑って暮らしてた場所だ。文字通り台無しにはできない、消えるのはオレと奴だけでいい」

 

 女の人はそれを聞くとオレから離れて吹き出しながら手を叩いた。

 

 『やっぱり悪意より別のものの方が大きすぎる人間はダメだね~せっかく宿ったアーク様をみんなに届けてくれないもの、データの一つとしては面白かったけど、私も忙しいからあなたとはこれまで。』

 

 女の人の企みに乗らなかった人が一人以上いたんだろうか?

 力をくれた事、神様っていう道をくれた事に対するお礼を言う暇を与えないまま女の人は姿を消した、見限られたという事なのかな。変な夢だろう?

 

 ~あの日の夜~

 

 「オレは不必要なんだ、おじさんと、ララさんの居る場所には!!」

 

 自分の存在に何の困惑も抱かずに愛情を注いでくれた王妃とモモ、友達と呼んでくれるヒカル、そして眩しく、羨ましく、それ故に憎いと感じてしまう兄弟、姉妹達の平穏を願いながら震えた手でライダーパスを取り出した、両親の秘密を知って、死のうとして、記憶を無くして、思い出して、結局こんな自分を大切にしてくれた人達のために生きよう…ではなく、こんな自分を大切にしてくれた人達のために消えようと思ってしまった、ただ死ぬのではなく、存在自体を無かった事にする形で。

 ベルトを腰に巻いてから真ん中のマークが血のように赤いライダーパスを祈るように片手で額にかざし、そしてベルトから聞こえてくる重苦しいメロディー、叫び声を一通り流してパスを落としてベルトにかざした。

 そして、感情が液体のようにあふれるのと同時に、同じように言葉が口を伝って漏れてくる、子供が母親に重々しい態度で決して聞いてはいけない言葉、何度もはばかられた言葉、漏らす度に周りの怒りと悲しみと哀れみを買った言葉。

 

 「ねえ……なんでオレを産むの?なんで人の規範を踏み外したあんたの人生に、オレを巻き込むの?」

 

 「!!」

 

 「変身!!」

 

 『アークフォーム』

 

 音声と共に、ライダースーツを身にまとった状態になり、アーマーが回転してくっついた後黒いぐるぐると回る電車でできた円環から黒と赤の混じった液体が垂れ流され、流れ終わる頃には仮面が付着した感じの変身になった。

 

 「終点はオレだ、停まれると思うな」

 

 「そこまで?」

 

 母親は大粒の涙を流し始め、怒りとも悲しみともつかない言葉を漏らした。

 

 「そこまで………嫌?そんなに……私のリトへの気持ちを否定するの!?あなたの命まで」

 

 「あんたの気持ちに、オレという結果がついてきた。これが宿命だ」

 

 「グレるだけならまだ良かった、いつかこんな子に育つなんて見せられてもそう思いたくなかった。避けちゃダメなの?」

 

 「ここに来るために、オレは美奈子おばさんを死なせてしまったんだ、あんたのついでにオレの味方してくれたのにな、オレは!!思ってしまった、頭から声がしたんだ、殺せっ殺せって、どうせおじさんと同じで受け入れるようにしか言わないから殺せって、だから階段から落ちるおばさんを助けずに見殺しにしちまった。もう遅い、避けられないんだよ、あんたが、オレを産んだ瞬間からなぁ!!」

 

 「その先には何があるの?」

 

 「何も無い、何もかも無くなるんだよ!!オレの存在も、オレが疎まれる未来も、オレがあんたを恨む理由も!!」

 

 恨む、その言葉に偽りなくオレは彼女の事が憎いと思っている、オレの痛みは全て彼女の望みから始まった。

 

 『美柑を、恨まないでくれ!!』

 

 おじさんは言った、自分の母親を恨むなと言った、だからこそなのに。でも、言うとおりにするならどうすれば良いのだろうか?兄さんや姉さんを?弟や妹を?ただ羨ましいだけなのに!?それともおじさんを?嫌だ、後押しになったかもしれないララさん達まで一緒に恨まなきゃいけない。だったら、自分自身を最大限呪えば良いか。邪魔者として産まれてしまったオレ自身を、でもそうすればおばさんとかが泣きながら必死に止めてくるんだ。なんで?オレはデビルークの王家に必要ないモノを消そうとしただけなのに、母親の欲望の排泄物を消そうとしただけなのに。そうとしか思えなくなったのは母親の選択のせいなのに、ほら……やっぱり母親を恨まなきゃいけなくなるんだ、オレが絶望した分だけ、オレは奴を恨まなきゃ。ああうんざりだ。あの両親の組み合わせで産まれたってだけで異端扱いする奴達の目線が。逃げたい、逃げられない。逃げたい、逃げられない。逃げたい、逃げられない。

 

 「全て無くなるんだ」

 

 「ねえ、約束してよ、ライムがこの後も生きてたら、未来に目を向けるって…そんな姿になってまで誰かと同じように私を否定した分!!」

 

 オレは腰の分割されたデンガッシャーをガンフォーム用に組み立て、ベルトから同じ物を2つ作った。

 

 「ああ……あんたの未来にオレがいなきゃ良かったのに」

 

 そしてパスをベルトにかざす。

 

 「これ以上の時間はやらない」

 

 『full charge』

 

 もう一度

 

 『full charge』

 

 もう少し勢いを強めるために

 

 『over charge』

 

 撃て!!それで全てが終わる、オレが産まれなかった事にするために

 

 「ツッああああああああああ!!」

 

 そしてベルトと赤いプラズマで繋がったデンガッシャーを彼女に向けて引き金を引いた、3つの銃口から放たれるエネルギー弾が寄り集まったから威力も高い。

 

 「ごめんね」

 

 そう聞こえもしたがもう遅い、止まらない、止める気はない、狙いが逸れたって当たればよほど頑丈じゃない限り一撃で終わる。

 強烈な爆発と得体の知れない感覚、それらと共にオレは後方へ飛ばされた、その時パスに修復不可能な程のヒビが入って。

 

 「あっはぁっはぁっはぁっはぁっはぁっはぁっはぁ!!」

 

 目に強烈な痛みを感じながらオレは笑った、オレはデビルークの問題を片付けて、やっと苦しみから解放される、そう思った。自分が生まれるという過去を潰して…しがらみから解放される…と

 だがいつまで経っても、何も変わらない、痛みも何も…目から流れる液体を口にし、鉄の味を感じて吐き気を催しても…何も変わらない。

 

 「はぁっはっははは………はぁ…………」

 

 そういう訳でオレの望みは叶わなかった、そして母殺しの罪だけを背負った、あるかないかとかやるかやらないかの二択で迷ったり悩んだりしてる時より終わった後だから前より楽にはなったかな。

 ところで罪人が罪人になるのも時の運行に沿ってるのかな?だって何かやらかす人間にだってやらかす背景ってものがある、原因がある。オレには「母がオレを産んだ事」っていうのがあってその事で一生もののトラウマを背負わされたからだ、母がそうした原因としては「兄の事がずっと大好きだった、だから結ばれたい」だ、間違ってる事が罪なら間違った事をさせるまでの原因も潰せば良いのにそれこそ悪い事として見られる、だったら罪人が罪人である事は時の運行には正しいって認められてる?だとすれば時の運行は正しいのか?止そう、結局オレを逃がしてくれないからこうなった、逃がして欲しかったが結論だからな。

 

 ~教会~

 

 「奴は、泣いていた……」

 

 オレが奴を撃つ直前、泣いているのを見た……のかもしれない

 

 「そう」

 

 アサキムはそう言って墓に一歩近づいて、そして屈んだ。彼女に捧げるものはないとか言ってたけど心は対象外なのか、嫌、こいつは祈ってすらいない。

 

 「仕方ないよ。人はその重さを感じて、初めて命というものに向き合うんだ。誰だろうとその前に想う事なんてしない、せいぜい自分か相手の愛の証が良い所さ。王妃だって例外じゃないよ」

 

 「ララさんを愚弄するな!!」

 

 …………愚弄しているのはオレか?

 

 「言ったろう?命の重さを感じた時に向き合うって、誰だろうとそこからが始まり。そこから一個の命として見ていく事になる。彼女は始まりからは間違えようとはしなかった…………と思うけど」

 

 『ライム~はい、あーん……おいしい?良かった』

 

 『プリン好きなんだ………母さんがたくさん作っちゃうからね』

 

 『また仕返ししてきたんだ、それでケンカになって、よしよし…………つらかったね、よしよし……』

 

 やっべ、最後の所のせいで胸の所がドクンってなって苦しいな……声につらさと申し訳なさが感じ取れて憎む憎まない関係なくオレが消えれば良いんだって思ってしまう。ああ……奴とおじさんがくっつくのは勝手だ、けどオレはそこに産まれたくなかったな……産まれるべきじゃなかった、産まれるような事をするべきじゃなかったのに。

 

 「ハァ………ハァ…………スタート前に問題があったらどうしようもないだろう」

 

 アサキムは立ち上がり、オレの方を見てきた。なんだ、やるってのか?ここで一喝されても虚ろな目をして蓄えてた考えも何も無くなった人間が残るだけだぞ?

 

 「どうあっても堕ちる道しかないのも彼女への試練か……………君は堕ちて何を得た?」

 

 「ん?……………………」

 

 「答えられないなら」

 

 アサキムはオレに切りかかってきた。

 

 「君の罪に終止符を打つ!!」

 

 オレはそれを屈んで避け、距離を取った。

 

 「オレを討って良いのはヤミおばさん達だけなんだよ!!」

 

 ただし敵として、結城リトの子、彼女達の望んだ在り方の汚点、膿として…………………ではなく憎き結城美柑の仇として討たれたい。顔を見せないままが良い、顔を見られてララさん達を悲しみの淵に沈めさせるのは嫌だ、もう既に悲しませてるって?自覚はしてる、義妹が死ぬのと義妹の子供が死にたいっ死にたいって泣き叫ぶのを聞くの、どっちがつらいんだろうな?

 

 「つくづく君は……彼女達の心を抉る事しかできないみたいだね」

 

 「だから消えようと思ったのに」

 

 拳で攻撃を試みた。

 

 「と言っても君が引き金を弾いちゃダメじゃないか、因果一つあればそこに縁、存在の痕跡をつけるってね!!」

 

 だがそれはアサキムの剣を持たない方の掌で防がれたのだ。

 

 「誰かの価値観に心を染めた、それが君の運命を決めたんだよ。」

 

 「誰かと繋がってでしか人間は生きられないんだったら、染まらなきゃいけないだろ!?言葉だって音の塊だ、一人一人が好き放題音を出しても意味を分からせられない。誰かに染まるからそこに込められた意味を読み取る事ができるんだ、そうやって人は生きてきた!!」

 

 「君は人を語るが、君は人間かな?それとも」

 

 何を言えば正解なのか分からない……だが人間どうかなら答えは一つ

 

 「オレは人間じゃない、そういう風に見られてきた、だからオレは人間だって見られたいんだよ!!」

 

 でもオレじゃダメなんだ。

 

 アサキムはつかんだオレの拳を放すと今度はオレの胸ぐらをつかんで叫んだ。

 

 「ならば君は戦わなければならなかった、君と同じ人間が安心して生きられるように、君も人間の可能性だと認めさせなければならなかった!!」

 

 味方か……ララさん達だけじゃ足りない、もっとたくさん、目の前がそれらで一杯になるぐらいの味方が欲しかったのかもしれない。でもオセロみたいに敵から味方に変えるのは苦手で………抗うとか、戦うとか、気力が湧かないよ、オレのようなのがが敗者になるのは時間が、歴史が証明してるから。

 

 「そのために、君は親と呼べる者を手に掛けた。強く固いモノを切り裂いた。問おう、それで君は何を得た!?」

 

 「それは……」

 

 得たものに関して何も言えない、言葉が口から出ようとしない、文字の羅列がたくさん並んで、頭の中で推敲を繰り返しているけど、戦っている最中で3文字で取り消される。

 

 「答えられないか、ならば君が君自身を肯定できるまで守ろうとした神父の罪は無駄になる……」

 

 無駄?神父のやった事が無駄……?

 

 ~あの日~

 

 神父との出会いはパスが壊れた後だった。

 

 気がつくと墓地で人の話し声が聞こえてきたからオレは墓地に行ってみた。仕方ないだろう?まるでお祭りみたいな騒ぎ声をしてたんだから

 

 「ワッハッハッハッハ!!」

 

 「あほくさ………」

 

 でもすぐに飽きてさっきの場所に戻ろうと思った、人の話に加われる程の図々しさもなく、勇気もない。

 

 「随分生気の抜けた子羊じゃのう」

 

 「誰だ?」

 

 突然声をかけられたから驚いて振り向くと目の前に一人の老人の神父が、いた。戦国時代や江戸時代とかの古くさい服装で丸顔の……

 

 「誰だとはこちらの台詞じゃ、見たことのない服装じゃがお前さんも宇宙人とかいう奴か?」

 

 「一応親は日の本で産まれてるが」

 

 今のは対過去の人間用にそれっぽく言ってみただけだ、それっぽくな……

 

 「真偽はつかんが信じよう、少し話をせんか?」

 

 「なんでだ」

 

 「自分は罪を犯した……そういう顔をしておる、自覚のあるなしに関わらずそういう人間は常に邪気をまとっておるからの。話してもらうぞ、今日の本がどうなっておるかなどの話のついでとして」

 

 神父って人達は人に説き伏せるのも役割の内だからそういう人の表情とか雰囲気ってのを読むのが上手いんだろうな……

 促されて、色々と吐かされた。懺悔室の場所をまるで我が家のように案内してたからここに詳しい人だ、多分………時間はかかったけど説明はした。

 

 「そうか………」

 

 神父の口からため息が漏れていた、未来では飢饉も防げるようになったのは良いけどまだオレのような人間がいる事を知って落胆しているようだ。

 

 「生きていられるならそれで良いとは思うがの、飢えで苦しんで死ぬ人間に信じるものを否定される人間、他にももっと色々な事で悩む人間だっておる、それらと比べれば………」

 

 そしてまた、オレはキレてしまった。

 

 「ちっぽけだってか?誰かの受けた傷の方が深いってか?あんたもオレの周りの人間とおんなじか!?結局みんなそうだ、自分とか誰かの受けた痛みを誇示して、突き放して、放置して、しまいにはそれを受け入れろだ。反吐がでる」

 

 その時は……イライラしていた、どうにもできなかった。オレが消えるのはできなかったし

 

 「比べられる人間はいいよ、比べられる余裕があって、自分の痛みでいっぱいいっぱいになって他人がどうこうとか考えられないんだ」

 

 「…………ふむ」

 

 神父は言うだけ言ったオレの言葉を否定するでも、怒るでもなく頷いていた。怒られるのはたくさんだったからその沈黙はありがたかったよ。

 

 話す事が無くなったから懺悔室を出て、散歩する事にした。

 

 「入り口に倒れておる奴がおるぞ!!」

 

 「おばさんか……」

 

 もう……血を出すくらい頭を強打してるから生きてる訳がないと確信していた。

 

 「話に聞いたお前さんのおばさんか?」

 

 「ああ…………」

 

 「様子を見にいかんか?」

 

 そう言われて渋々神父の後を追った。

 

 「息をしておるぞ」

 

 「なんだって!?」

 

 あの時、実際に確かめるのは怖かった。嫌な感情の渦に呑まれて、下手をしたら確実にとどめをさすかもしれない。今はそうでもないかもしれないけど、ちょっと怖い。

 

 「寝ていた場所へ運んでおけ、興奮するなら話は別じゃが」

 

 あんなに後頭部を強打していたのに生きてる事は不思議だが、良かったとは思う。興奮………は正直していない。だから運ぶ事にした。

 

 「オレは身内には欲情しないんだ、誰かと違ってな」

 

 誰かって…………誰だろうね?それで神父は悲しそうな顔でオレを見てきた。言いたい事は分かる、その誰かとつい比べてしまった事、年頃の女の子の無防備な姿を見て年頃の男の子が興奮しないと言った事。例外は多々あるだろうけどオレがそうなら既に神父にそう言ってる。

 

 「じゃあ」

 

 おばさんと教会の連中の事は神父に任せようと思って教会を去ろうとした。

 

 「どこへいく?」

 

 「奴が昔行ったって場所だ」

 

 自分の運命を終わらせるには最適な場所だ、森の中で誰にも気づかれないってのが高ポイント。問題は奴の話だとゆるキャラ然とした変なのがいるってだけで……

 

 「それで良いのか?」

 

 「なにがだ」

 

 「お前さんは確かに罪人じゃ、それは自分が死を選べば償えるものではないぞ」

 

 「償いって何をしろってんだよ……」

 

 「まずはお前さんが罪を背負ったその先で何をしたかったのかを確認する事じゃ、人が悪い事をしてしまうのは欲望、欲求のためじゃからの」

 

 それっぽい答えはでなくて、やっと口に出せたのは

 

 「……………………何も無くなる?逃げたい?」

 

 「そうじゃったな、それは生きてはできないのか?死ななければできないのか?一度死ぬとそこからはどこにもいけはせん」

 

 「………………………分からない、オレは…………」

 

 考えようとは思った、考え続けた。でも何も思い浮かばない、いなくなる事だけが最善の答えだとしか思えずにいた。

 

 「お前さんはまず生きてみる事から始めなければならないようじゃな、お前さんが命を奪った人間も、そやつと親しい人間もその姿ではただ苛立たせるだけよ」

 

 「……………」

 

 突然ドアの叩く音がしてきた。

 

 窓の粗さで分かりにくいが人がたくさんいた、教会の中に入ろうとしているのか。

 

 「なら今日は眠っておれ」

 

 言うとおりにした翌朝、外でたくさんの人間が倒れていた。後でオーナーに聞いて分かったけどその犠牲者は全て数年から数百年の間に一度死んだ人間達らしい。

 

 「死んでる!?」

 

 「お前さんを認めようとはせなんだ、それに過去の人間はできるだけ少ない方がいいじゃろう」

 

 「聖職者の癖に人殺すのかよ」

 

 「聖職者とて人よ……必要があれば、しなければならないなら殺す、じゃが同じような顔を人かそうでないなどとより分けて理由を付けて殺す、より性質が悪いかもしれん」

 

 「……………………………」

 

 色々あったんだろうとその時思った、オレの年……当時オレは17だからおそらく3~4倍程の時間を神父はかけている。

 

 「お前さんには時間が必要じゃ、お前さんが生気を取り戻すまで悩まなくなるまで、あの女性も含めてわしが守ろう」

 

 言葉通り神父はこの一年と少し目の前のオレとおばさんを守ろうとしてくれた、救おうとはしてくれたんだ、そんな事しなくても良かったんだ。でもやった、そこにはどんなに手段があれでも人を救いたいって思いがあった。だから無駄には終わって欲しくない………オレは結局変われなかったけど、無駄とは言いたくない。オレのエゴがそうさせているとしても………

 

 ――

 

 オレはアサキムを睨み、叫んだ。

 

 「無駄じゃない、無駄であってたまるもんか!!」

 

 ジタバタして、振りほどいてアサキムの胸部分を蹴った。

 

 「……………答えは出せたか?」

 

 何もでない、何も。結局それは変わらない、生きてみる事では解決しないみたいだ。アサキムの言ってたみたいに命を感じるってので何かつかめるのか?

 

 命を感じる、か……ああ、そういえばもうすぐ……

 

 「いつか見つける……それに、妹が産まれるんだ。オレがおじさんに見つけられる少し前に、もうすぐだ。もうすぐ…………こうなった以上オレ自身でその瞬間を見てみたい。オレのように生きてるだけでみんなに迷惑をかける事のない、かわいい妹だ。愛される事に何のためらいもいらない、姉さん達の妹だ!!」

 

 「答えは未来にあると言う訳か……良い顔だ、その道のりが故に否定しなければならないのが残念だよ。」

 

 親指の肉を噛み、血をブラディクスに染み込ませる。多少輝きが増してるから元気がその分戻ったって事だ、でも今からその元気以上の事をやってもらう。

 

 「お前にこれ以上の時間はやらない!!」

 

 ブラディクスを選んだ理由、それは相手の時間を止めるために傷口から相手の血を操って凍らせるためだ、それとイマジンを切り裂いた箇所から血を行き渡らせて凍らせる、輸血する感覚で。

 パスのない状態じゃ、ごっこしかできないだろうけどやるしかない。

 

 「フルチャージ」

 

 言ったろ?ごっこしかできないって、セリフも言わないと。

 

 「でやぁぁぁあ!!」

 

 「良いだろう、その答えがどれだけのものか」

 

 でも、もしこれも防がれたら…………そう思っていると変な鳥が木の上に乗っかってるのが見えた、オレンジ色の布を着込んだカラスのように見える鳥、色は暗闇だからよくわからないけど多分鳥

 

 『エアーアギャー』

 

 オレの方を向いて鳴きやがったが不快な感じはしない、むしろ湧き出る安心感があった。赤ん坊みたいな鳴き声はよく聞けば心臓に悪いが。

 

 「でぇりゃぁあああ!!」

 

 「はあっ!!」

 

 決まった、そう確信できた。腕の部分を斬られたけどそこから出る血はブラディクスに塗りたくっておこう、まあ奴とは痛み分けって事で。

 

 「これは!?」

 

 「どうだ!?」

 

 アサキムの腕を切り裂く事に成功した、瞬間傷口から凍りついているのが薄い氷で段々と覆われている一部始終から見てとれた。

 

 「じゃあな!!」

 

 洗濯物を取り込むのはやめとくか、外に出よう。出て、どうしよう?

 

 暗闇の中走っていると、マスコットみたいな奴らが見える。半透明になったり、鮮明になったりして、しまいには見えなくなったりと不気味な奴らだ。

 いつも目が会うとすぐ顔を背けて逃げだすから、慣れてるけど少々不快。

 オレがオレ自身を認められなくなってからだ、こんなものが見えるようになったのは。オレが生きてちゃダメだと思ってる時が一番よく見える。

 そのことで誰にも相談はしていない。目を背けられてるだけなんだからな………そういうのは信用できるしかるべき人に会えたらって所か……待ってろよ異母妹、その顔をたっぷり拝んでやる。祝福がお似合いだから、その通りに、その通りに。

 

 ~数十分後~

 

 シュロウガは舞い降り、凍りついたアサキムに対して光線ラスター・エッジを放った、その熱で氷を溶かし、アサキムはそれによって解き放たれる。

 

 「危なかった、シュロウガに意識を移さなければ凍りついたまま動けなくなる所だった」

 

 血から凍てつく感触は確かに時すらも止まるように思えた、そしてある程度の脱力感……血を吸い取られたのは明白だ、だから生きていると感触がつかめてアサキムはほっとしたのか肩を上下させ深呼吸をした。

 

 「贖うとしてもそうでないとしても、これで彼も少しは前を向けるだろう。嫌、そうでもないか……彼が案じていたのは妹だった。デビルークで聞いた話が本当だったのは良いとして、自分を認められない心はそのままという訳だが」

 

 アサキムは地面を見下ろした、布を巻いた鳥がアサキムを見つめている、大層大層憎らしそうに。

 

 「まあいい、、それより君が今構うべき相手は向こうだ、そのために産まれたんだろう。

 僕を相手にするのは、後で良い、後が良い。

 僕が過去を目指す限り、必ずその時が来る、それまでに餌を見繕う事にするよ、だから君も本懐を果たすと良い。そうだろう?確か……………」

 

 …………………

 

 鳥も頷いて飛びたち、アサキムも出ていき、そして教会には誰もいなくなったのでした。

 

 「知りもせず、拒みもしなかった。故に大切な人間を失った。

  禁忌と言われる道を欲した、故にその先から死を贈られた。

  痛みからの解放を試みた、故に未来を狭めた。

 罪が罰を産み出すなら罰もまた罪を産み出す、僕も似たようなものか。己の大罪故に無限獄に堕ち、またそのために罪を重ねようとしている。」

 

 話は変わるがつい口走った言葉の意味はなんだろうか?

 「危なかった」と、そうアサキム自身は言った。

 いっそここで凍りついてしまえばスフィアに頼らずとも時が止まるという擬似的な「死」を得られたはずだろう、だがそれは違うみたいで

 

 「溶ければまた動ける、それは再び僕の歩みは続く事になる。だからこれは違うと、そういう事だろう?」

 

 シュロウガはアサキムに寄り添う、でもアサキムの疑問に答えてはくれない。

 

 「答えてはくれないか……どちらにしろやるべき事はある」




いかがでしたか?
面白いと思っていただければ幸いです。
次から新章が始まります、新しいキャラとロボ出すので楽しみにしといてください。
では!!ビギュン(効果音)
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