スーパーロボット大戦Z 辺獄編   作:レゴシティの猫

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皆さんこんにちは(?)



第四十二話 イマジン、接触

 アサキムは、カプセルを用いてララにイマジンを取り憑かせた。当のイマジンは早速とばかりに、ララに対してどのイマジンがどの宿主にも唱えたお決まりの言葉で、望みを口にするよう促す。

 

 「お前の望みを言え、どんな望みも叶えてやるぅ。お前の払う代償はたった一つぅ」

 

 「……………………………………………」

 

 だがララはそれについて何も答える事はなく、その代わり拳を一発、まだ形を整えきれていないイマジンに当てた。

 

 「あぶっ」

 

 一つの衝撃で脆く崩れる砂の城と同じように、イマジンの肉体は軽々と消し飛んだ。

 

 「今その話はできないんだ、ごめんね~」

 

 思わず許してしまいそうな、心を射抜かれてしまいそうな、罪作りな笑顔で手を合わせてララは謝った。

 

 「確かに今は……そうだね、だが君はもう既に贄となった、だからもう逃げられない」

 

 目的は果たされたようで、アサキムの浮かべる笑みは屈託のない、楽しげなものだ。

 現在アサキムは凛を見ていない、動きを阻害するために炎で結界を作ったつもりかもしれないがその制御はいわば、お留守になろうとしている。ララの方へ注意が言っているためか炎は少しずつ揺らぎ、薄くなっていった。

 

 「(待っていた、この瞬間を!!)」

 

 凛は木刀を渾身の力でもって振るう、空を切る一撃は風を切り、その勢いのまま炎をかき消した。そして途切れた炎をかいくぐるようにジャンプしてアサキムに向かう。

 

 「(とった!!)」

 

 「!?」

 

 突然の凛の攻撃だが、アサキムは動じる事なくバック転をして避けた。

 

 「届きはしない」

 

 その勢いのまま、アサキムはそのままどこかに行こうとしていた。

 

 「どこに行くの!?」

 

 「また会おう、その時僕は扉の前に立つ。鍵がこの手の中にあらずとも、きっとそこにたどり着いてみせる」

 

 アサキムはある方向を見ながら満足そうにどこかに消えていった。

 

 「ハァ……ハァ…………もう来るな」

 

 凛は今まで息を止めてた分の呼吸をしながら吐き捨てた、そしてイマジンは凛の体に触れる宿主の前に再び姿を表し、待ってましたとばかりに口を開く。まだ砂だから、かき集めればなんとでもなるようだ。

 

 「邪魔者は去ったな、じゃあ……お前の望みを言え……」

 

 イマジンはすぐさま凛に木刀で叩かれた。

 

 「ったあい!!」

 

 屋上の見えにくい所から覗く人間がいる、道化師……………ライムである。ペケとシュロウガが戦っている間に忍び込んで屋上まで来ていた。そして今、ライムは物陰に潜んでいる。

 

 「やりやがったよあいつ……」

 

 アサキムがイマジンを取り憑かせた相手、ララ・サタリン・デビルークはデビルーク星の王妃。そしてライムの父親の正妻。その関係で接点はあった。

 

 イマジンについて元電王のライムが分かっている事をまとめる。

 取り憑いた人間の記憶を基に体を構築する、姿は童話とか……何かしらの物語に登場した動物がほとんど、彼女の場合は彼女の好きな特撮番組のネコだ、多分。ご丁寧にその特撮番組の主人公のコスプレ風に。だからその気になればエセでも炎を吐けるだろう。

 そしてイマジンは取り憑いた人間の望みを叶えようとする、自分の裁量で。ここまでは聞こえは良いかもしれないが野蛮人然とした性格を持つのが多くを占めているため、当然手段も性格に反映されると言えばどうだろうか。

 そしてイマジンは宿主の合否は無視で望みを叶え、契約を完了させる。そうするとイマジンは宿主の最も記憶に焼き付いた時間に自身をタイムトリップさせる事ができる。叶えたい望みがあるという事は、そこに至るまでの記憶があって、その記憶はすぐに引き出せるだろう。だから、その瞬間に現れる事ができる。

 あんまりひどいパターンだと、望みを叶えるという過程すら無視してタイムトリップしようとする。記憶に焼き付いた時間を叶えたい望みを挙げさせる事で引き出そうとするのだから叶えなくても……………良いかどうかは正直分からない、だが成功率は低くなりそうだ。

 その後はイマジンの自由。と言いつつ破壊活動に走るのが多めな印象。

 

 もし王妃が何か望みを言ってしまえば、いつかは分からないが、過去に行って王妃の道のりが汚される。返り討ちは免れないだろうが……

 ライムはそう考えると一目散に病院の屋上から去っていった。

 

 「望み、望み、言え、ホラ!!」

 

 「それはそうと、このまま上下を刻み込むのも悪くないな」

 

 「うん、そうしよう。キョーコちゃんと似たような服だけど、キョーコちゃんじゃないし容赦しないよ!!」

 

 ライムはついぞ見る事は無かった、悪魔的なオーラを放ちながらイマジンに詰め寄る彼女達の姿を。

 

 「ちょっちょっとタンマ、俺望み叶えて肉体欲しいだけだから……ねえ……や゛め゛て゛ー!!」

 

 ライムが階段を降りていると叫び声が聞こえた、随分野太い叫び声なので男だとアタリを付ける事ができる。王妃達がこんな恐ろしい目に遭っているとアピールするような叫び声をあげる筈もなし。

 黄色いつけ鼻に触れながら、ライムは気を落ち着かせた。顔は塗りたくった事で見えにくくはなっている、だが油断はできない。その上から買った仮面で覆い隠した。ブラディクスを隠したフェルトの鎌も携行しながら………

 

 「どうする……」

 

 止めなければ……彼女の大切なものに危害がかかる。ライム自身がかけたのは一旦棚にあげるとして……

 だがこうも思った、過去に飛んでいった先でひょっとすると結城美柑の行動を阻害してくれるかもしれない、と。

 どうせもう何も力はない、おおっぴらに王妃の前をうろつける胆力も最初から持ち合わせていない。関わろうとするだけ無駄だ、ならいっそぐちゃぐちゃになるのを終わるまでそのままにしておくのも悪くないと。

 やはり自分が最初から存在しなければこんな風にはならなかったと、全て自分が産まれてこなければ蒔かれなかった………そもそもアサキムがララにイマジンを取り憑かせる事ができたのはライムがアサキムに手段を渡したからだ。

 

 「…………………………………」

 

 ライムは胎児のままこの世を去った自分と邂逅して、きれいさっぱり抜けたような気がした感覚に再び見舞われた。心……それにつられて全てが重くなっていくような感覚、何をしても楽しいとは思えない感覚、神父、母親への憎しみ、デビルークの人達、何かしようとした時に止めてくれるカイ、親や親類に関係なく接してくれるイマジン、それはもう縁の途切れた事によりもう何の意味もない……だからブレーキにあたる存在はいない。だから…………死んだ方がいいかもしれない。

 だがやはり赤ん坊の自分の事を考えればそうもいかなくなってくる。赤ん坊の自分が、成長するにあたって必ず遭遇する出来事に遭わずに済むのだから、自分が殺した記憶というものを保持していないと………最後のブレーキが死んだ赤ん坊の自分になるなんて露ほども思わなかったが。

 

 「大丈夫ですか?」

 

 女性が一人、声をかけてきた。今は緊急事態だが、善意で声をかけてくる人間を無視するのはあんまりなので、ライムは声をかけてきた女性を見た。

 声をかけてきたのは、西連寺春菜だった。ライムの父親の妻の一人、それなりに優しくしてもらった事はある。

 

 「………………はい、大丈夫です」

 

 「そうですか……悩みがありそうだったので……大丈夫なら良かった」

 

 こんな道端にふさわしくない風体の自分に優しく声をかけてくれるんだと思うと、ライムは心が暖かくなると同時に申し訳なさでそれを打ち消していった。

 イマジンが暴れられると春菜にも被害が及ぶ、もちろん他の人達にも…………

 それはあってはならない事だ、だから。

 

 「待ってください」

 

 「はい?」

 

 「言いにくかったのですが………先程王妃様がイマジンに取り憑かれました」

 

 「え?」

 

 「なので電王に連絡を取りたいのですが………」

 

 先程は考えるのを止めてたが力がないならないなりに、ある者に頼れば良い。だがライム自身で頼みに行くのは駄目だ、別人だろうがオーナーに知られてしまう。

 ライムは、衣服を手でさすり何もない事をジェスチャーでアピールした。そもそもライムの着ている道化師の衣装に何かを突っ込むためのポケットはない。

 

 「スマホ、ないんですか?」

 

 「お恥ずかしながら……」

 

 ついでに財布も置き忘れてきた。

 

 「私が連絡しましょうか?」

 

 「メモとかもあれば………」

 

 見ず知らずの野郎の言葉を信用してくれる人間に対して図々しすぎるのもいい加減にしろよとライム自身は思ったが

 

 「はい」

 

 「すみません」

 

 春菜はすぐさまボールペンも一緒に渡してきたのですぐに書き上げた。

 

 「彩南じゃなくてえっと……」

 

 手袋が厚すぎて書けている気がしないので、ライムは手袋を外した。素肌が露わになった時、春菜は興味深そうにライムの手を見つめた。

 

 「なんですか?」

 

 「あなたの手、リト君みたい」

 

 結城リトの手の形をそこまで把握しているのかとライムは仮面の下で驚いた。夫婦だからというのもあるがよく見ていると感心せざるを得ない。

 

 「親しい方ですか?そうなのでしょうね」

 

 「ええ……私の大切な人」

 

 「そうですか……ならずっと仲良しでいられますように、では」

 

 ライムは手袋を再び着用し、春菜に手を振った。心の中で、何度もライムは謝った。一般論的に大事な部分は全く触れてもいないが。

 

 『何が正解か……分からないけど、挫けないようにね』

 

 幻聴が聞こえてきたような気がした、過去に言われた事をただ反芻しているだけだが。

 

 「ふん」

 

 春菜はライムの手がリトとそっくりだと言った。本当は手だけじゃない、一応顔も体型も……それもそのはず、誰の腹から産まれたとかいう話題は一切禁句として結城リトの因子を一番継いでいるのはライムに他ならない、だが同じ能力が起きるかと聞かれればそれはないと即答できる、そもそも環境が違う。

 片や惑星の王女達、それと美少女達に布一つすらない距離のスキンシップを取り、なおかつ湧き上がったものを溜め込み似たような事の繰り返しを経たリト。

 片やそんな体験もなく、両親の秘密を知って以降それを忘れない限りリビドーが湧き上がらなくなったライム。

 よしんばラッキースケベを起こせても、無表情のままであろう自分を想像し、ライムは自嘲的に笑った。

 

 「白けるな、ははは……」

 

 腕を噛まれる感触、痛みで我に返ると……

 スケボーのような車輪の転がる音が、聞こえてくる。

 どんどん音が大きくなっていく、つまり原因が近づいていく。

 ライムは反射的に電柱に隠れた。

 原因は遠のいていく、後ろからなら良いかとこっそり覗いた。

 シロだ、元銀河警察のシロがローラースケートを履いて春菜の所にやって来た、春菜を見て急に足が靴に替わったので変身能力を使用したのだろう。変身能力……腕をナイフ、シロのように足をローラースケート、髪を蛇の形に変えるなど体中の構造を自在に変化させる事のできる、体の構成素材がナノマシンの人間だから持てる能力である。変身能力の所持者は今のところヤミにメアとネメシス、シロぐらいだ。共通点は……ある組織で作られた生命体といった所。

 

 「チヨちゃんは元気?」

 

 「落ち込んでいるのも収まって、元気にやってます。そっちは?」

 

 「それが……」

 

 春菜はシロに近況を説明した。

 

 「つまり……子供を産んだ友達の方に付きっきりで自分も自粛してたらそれで王様成分が足りなくて悶々とした気持ちを散歩で沈めようとしたら、王様と似たような手の形をしたピエロの人に会ったと。そしてなんかペケと黒いロボットが戦って避難しようとしてた……とああ……ハーレムってその辺大変デスネ!!王様に言わなきゃ」

 

 シロが回れ右してどこかに行こうとすると春菜は赤面しながら慌てて引き止めた。

 

 「だ、大丈夫だから……後で(ボソッ)」

 

 「まあそこはお二人でなんとかしてもらうとして、イマジン?の件は一回確かめてみた方がいいと思いますよ?」

 

 「それもそうだね」

 

 シロの助言を受け、春菜はスマホを慣れた手つきで操作していた。おそらくララに連絡を取るつもりだろう。

 

 「ララさん、もしもし…あ、ララさん…実はね……ピエロの人からイマジンがって………本当なんだ、ありがとう。じゃあ私は電王を探しに行くから、じゃあね」

 

 春菜は電話を終え、スマホを直した。

 

 「本当だったみたい」

 

 「探すのは良いですが電話関係は個人でやっちゃダメかと………そいつの知らない間に引っ越して外れを引いたりとかありますし、相手次第で干渉されたりとか」

 

 盲点だった、電王の先輩の住所を春菜に伝えたのは良いが……未来だとその住所だが今は別の所に住んでるかもしれない、という事を見落としていた。

 

 「という訳で帰って出直しててください、噂だと取り憑かれた人連れて歩いてると良いみたいですね」

 

 「うん」

 

 春菜はシロに促されて、どこかへ行った。それを見届けてしばらくの沈黙の後、シロは声を出した。

 

 「誰だ、そこにいるのは」

 

 ライムは即刻手を上げて、敵意のない事を示すためにゆっくりと歩く。

 

 「…………………」

 

 「名前は?」

 

 言いたくないので、ライムは黙秘する事にした。

 

 「…………………」

 

 「お前のそれは地か、それとも仕事服か?にしても相応しい場所というものがあるだろう。一人で道端をほっつき歩いてるとか……」

 

 「道化に相応しくない場所なんてありませんよ」

 

 「喋ったな……質問を戻す、名前は?」

 

 放っておけば無限に繰り返す気だという事をある程度悟ったライムは適当にごまかす事にした。

 

 「ププリン・ティータイムと申します」

 

 「そんな適当な名前………………あるのかもな、わりぃわりぃ、俺はミルク・ビン」

 

 シロは相手が善人か悪人かという問題がなければ話は通じる方だ、だからある程度ごまかせると思いたい。向こうも同レベルの偽名を使っているのでどっちもどっちと解決させられる。

 

 「実は俺ライムって人を探しているんだ、この辺りでそういう名前の人間を知ってるか?知人にそっくりな顔がいるって聞いたんだが」

 

 「会ってどうしたいんです?」

 

 「うーん、まず聞かなきゃいけない事があってそれをはっきりさせるとでも言うか」

 

 母親の一件だろうと察しはつく、神父がおそらくバラしたのだろう、とも。

 

 「というかさっきの春菜さんの言ってたピエロってティータイムさんじゃないのか?」

 

 シロが急に核心に近づいたのでライムは驚きのあまりフリーズしてしまった。

 

 「電王の住所をある程度知っていて、デビルークの王妃と彼女が繋がりがある事を知ってる」

 

 フリーズが溶けたのでライムは反論した。

 

 「こっちだけの特ダネをばらまいただけだし、ララさんと春菜さんの事だってちょっと宇宙のニュースに詳しい人ならみんな知ってる事じゃないか」

 

 「さっき春菜さんが言っていたのもあるし俺が話で聞いたライムも実は電王関係者で……」

 

 「うざったいな……シロさんは割とそういうところあるよな、触れないで欲しいものを軽々と触れようとするんだ」

 

 ライムははっと気がつき仮面越しに口に手を当てた。今シロはミルク・ビンだったのだ、追究が始まるかもしれない。

 

 「なんか随分俺の事知ってる素振りだな、だが俺はお前の事を全く知らない。失礼」

 

 「あ」

 

 シロはライムの仮面を取った後、変身能力で指一本をパイプのような円い筒の放水銃に変えてからライムの顔面に発射した、流れるような一連の動作に対応できず、そのため化粧が一気に剥がれ落ち、素顔が露わになった。もうごまかしは効かない。いっそのこと、開き直って対応しておいた方が良いレベルだ。

 

 「その顔……………」

 

 シロは驚き、ライムを凝視した。髪や目の色がデビルーク王の妹なだけでほぼデビルーク王の顔だから……

 

 「シロさんお望みのライムっていう奴の顔だけど?」




いかがでしたか(?)
面白いと思っていただければ嬉しいです。
では、ビギュン(効果音)
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