~一方そのころ~
風夏はララと母親の春菜と一緒に東京の某所、ミルクディッパーという所に向かっていた。
『出せー!!ここから出せー!!』
ララが今持っている一枚の札から、ずーっと男の声、イマジンの声が聞こえてくる。
「ダーメ」
『ケチー!!ケチンボ!!ケチトンボ!!ケチの助!!』
下手な駄々っ子よりも喚いており、近くを通る人は声の方の先にいるララに目がいく。だが、声が大の男であるのとそれに該当する人間が近くにいないため追求されるのは避ける事ができている。
こうなったのには理由がある。
説明のため時を少し遡るとしよう……
~結城家の別荘~
風夏は共用スペースで宿題のドリルを片付け、絵本を開いたままそれを枕にうつ伏せに寝転んでいた。それを見つかって頭を撫でられた……感覚から見て父親だった、だからその気は無かったが本格的に眠りつつある。
「……読み疲れちゃったか、寝るならベッドの上だけにしとけよな」
夢見心地になりながら、風夏は声を振り絞った。
「ララさん探しに行くの?パパ」
「……………まあ、まあな……なんかイマジンがって」
イマジン、まだ風夏にはそれがなんの事だか分からなかった。
「ママの事もよろしく、おやすみ」
「おやすみ……」
だが、眠る前にドアをいじくる音と、開閉する音が聞こえてきた。
「あ、帰ってきた」
風夏は眠りかけた目をこすり、絵本をたたむよう軽くリトに叱られつつも玄関に向かった。
「ただいま~」
「戻ったぞ」
見えたのは謎の怪人の手をとって引っ張ってる凛といつの間にかララから分離した状態で、抱きかかえられて帰ってきたペケ。
「無事……そうだな」
「うん!!」
ララの元気の良い返事を聞きリトはホッとした、下から見て風夏もつられてホッとした顔になった。
「私もな」
「ただいま~風夏」
「ペケはどうしたの?」
「バッテリー切れみたい」
確かに普段の小言の絶えない様子からは考えられない程元気がなさそうだ。
「おつかれさま、ペケちゃん」
『はい』
「さも当然のように家に上がってるけど……こいつがイマジン?」
「どうも、この度ピンクな人に取り憑いたイマジンです。」
イマジンはララの髪を指差して言った、ララの髪はピンク色だ、ララだけではなくその妹、母、娘も。
「(話聞いてたやつより話せそうだな)、ちょっと座って待ってて」
リトはすぐにその場を立ち去った、おそらく来客に対しての
イマジン…………宇宙人とは違うのだろうか?
だが、考えようとすると泣きべそをかいているような声がして……風夏はなんとなくだがイマジンに声をかけた。
「どうしたの、泣きそうだよ?」
そのイマジンは、風夏の言葉を聞いて、見た目では分からないが号泣した。
「グスッひどいんだよー、契約者がオレの事いじめてくるんだよー」
「そ……そんな事してたの?はい」
リトはイマジンに水を入れたコップを渡した後にララと凜の方を見た。言うまでもなく、説明求むといった所だろう……ララはペケをソファーに寝かせてから充電し、それに答えた。
「そこまではしてないよー」
「少し危害を加えるとどうなるのか教えてやっただけだ、あの男……アサキム・ドーウィンの差し金のようだし」
その名前を聞き、コップの水を飲んでいたイマジンは言いたい事ができたように飲み干すまでのピッチをあげた。
「へぇー俺を捕まえたあいつってそんな名前なのか………………」
イマジンはリトの方を指差した。
「似てるな、あんた。あ、水ありがとう。ごちそうさん」
「はい、どういたしまして……?」
「?」
『へ?』
「?」
ララ達は、近くにいる人間の顔を見合わせて首を傾げた。何故か?理由が分からないので風夏はリトに質問した。
「パパ、なんで皆はてなばっかりなの?」
「アサキムって奴はな、俺とは顔とか、それ以外も何も似てなかったんだ」
「ふーん」
アサキム……思い出したが、最近父母達の間で話題になってるダークなイケメン、実は異母弟のラズが会っていたらしいイケメン、どんな人間だろうか?
「それはそうとさっきはごめんね~」
「全くおんなじノリで威嚇してきて謝ってきて、なんなの俺の契約者サイコパスなの?」
サイコ……パス?
「人の持ってる喜怒哀楽の内喜と楽の割合が多いだけだが」
「ララがお前にした事に関しちゃ悪いと思うけどさ、今の発言は良くないよ」
「へーいよ」
嫌そうな受け答えの後、イマジンは急にリト達の方を向いた。
「でもそのやられっぱなしの時間はおしまい、さあ……ショータイム、だ!!」
イマジンはそう叫ぶと、黄色く光る球へと変化し、ララに突っ込んでいく。
「きゃ」
ララが軽く叫ぶと体に、近づくと危険そうなビリビリした光が流れ、それが一旦落ち着いてからララの感じが変わり始めた。
『ははは、このナイス、バディ!!てっおっも!!』
ララは人が変わったように胸を誇張する態勢を取った、実際ぎゅっとされた時の感覚からみるに
『漲るパワー!!』
ララは、右手を掲げて炎を出現させた。彼女の好きな番組の主人公、らしいキョーコのやる事をとうとう真似しだしたのかと呆気にとられた。
『燃やせ燃やせぇ!!』
ララが音頭をとるようにドンドンと地面を踏み、いつもとは違う方向性で楽しそうにしていると、リトはララの身体に向かってジャンプをかまそうとした。
「俺のララから離れろー!!」
リアクションも、いつものララとは何かが違った。
『ハッ(リトの方を見る)ハッ(もう一度)もしかして、これイマジン史上最悪の展開か?ヤメロー!!』
何が最悪の展開か、子供の風夏には分からない。だが少し気になる。何が起こるか……
「いけません、風夏様ぁ!!」
見てみたい、そう思って見ていたが近くにいた侍女に目と耳を塞がれた。
「風夏様、見てはなりません、まだ御身には早ようございます…………?」
「何か?」
「いえ、いつもならここで快音かイチャイ………気になさらず」
侍女の警戒と力が緩くなったので目を覆った手を押しのけると、リトとララがお互いを睨みながら取っ組み合っているのが見えた。
絵面だけで言えばこんな光景は異質だ、夫婦喧嘩というものはあまり見た事はないが二人の間で絶対ここまでの勢いの争いは起こり得はしない……というのが風夏の認識である。自分の母親ともそうだ。
「……………………………」
『……………………………変な事したら契約者の尻尾でぐるぐる巻きにすんぞ』
「でも
『マジでか………』
ララは言われると、リトを押しのけてから確かめるように自分の尻尾を握り締め
『グハァッ』
脇をこちょこちょされた猫のようにのたうち回ったのだった。和室の壁をぶち破れて、かつ階段を転げ落ちても変わらないであろう勢いで回転するその様子を今まで呆然としつつ見ていた凛も行動に移る。
「間抜け過ぎて見ちゃいられない、王妃から離れろ」
例によって木刀を持ち出す凛、だが、たまには手刀で落とすのも格好良くて良いんじゃないかと風夏は思う。
『やなこった~この体は人質として使わせてもらう。あんな怖い思いをさせてくる奴が1人減るのも好都合だしよ』
これまたララが普段しないようなあっかんべーの表情を作り、立ち上がれるようになったララは逃げ出した。もう少し真剣な顔でそれをすれば、風夏も変な気分が起きたかもしれない。
「王妃には妹がいる、怖いぞ……私達とは比べようもないオーラを見せるかもしれないな」
『イヤー!!』
そしてララは家の中を走り回りながら泣いた。
「水野さん、どういう話なの?これ」
近くの侍女にどういう状況か聞いてみる事にした。下の名前は覚えてないが一応地球人だそうだ。
「王妃様の御体に先程の妖怪変化が取り憑いているようです。」
つまり……ララの体はイマジンに取り憑いているという事だろう、その場合ララはどうなるのか?
「ララさんはどうなるの?」
「噂が本当だとすればララ様の何かしらの望みを叶え、過去をぐちゃぐちゃにしようとするでしょう。そして私の雇用も……ララ様が特異点であるなら取り憑かれても自力で引っ剥がす事ができますが……あ、特異点というのは…………よく分かりませんね」
「ペケちゃん、どうにかならない?」
動きを強制させるギプスのようにイマジンを抑えてくれないかという心持ちで頼んでみた。
『ララ様が受け入れてくれないときついですね、下手すると内側から壊されるかも……』
「うーん、ララさんどうしたら良いかな……」
急に謎の札が机の中にあったのを思い出した、謎の法師からなんか授業のおまけのようにもらった札。
「あ」
「どうしました?」
「札があった」
「あのよう………すごそうな札でございますか」
風夏は自分の部屋に向かって札を回収した、どのくらいかは風夏には分からないが古びた紙で読めない文字が書かれている。明日以降に詳しい人に調べてもらう予定だったが撤回、急いでイマジンの元に向かう。
「ねえねえ」
『ん?さっきの嬢ちゃんか、なんだ?』
ララに取り憑いたイマジンはリト達とは違う態度で風夏の言葉に応えた、警戒心を緩められる相手だと思われてるのだろう。
「これ、効くかな……」
『ん?』
ララに取り憑いたイマジンは屈んだ。
知らない法師がくれた札、効き目があるかどうか分からないが、ダメ元で風夏はララの額に札を貼った。
『ッ!!引っ張られるー』
効き目があるのか黄色い光が、札の中に吸い込まれていく。
『嘘だー!!』
「ありがとう、風夏」
元に戻ったララは風夏と、二人でハイタッチした。
『まったく嬢ちゃんめ……ぴえん』
「さーて、この子どうしよう……」
それからテーブルで、イマジンの宿る札を囲みラズも話に加わっての会議が始まった。
「まさかあのうさんくさい札が役に立つとはな……どんな顔だったか覚えてないか?風夏、ラズ」
風夏は首を横に振った。
「私、見てない」
「妖怪さんでな、髪が長くて爪も長かったんだぜ」
「髪は白かったか?」
「黒かったぜ!!」
「そうか……犬系ではないのか、だが札使うのは別人の方か」
『それはそうと望みを言うならいつでも受け付けるからな』
「言わないよ」
『ちぇっあー』
ふてくされたイマジンの声を遮るかのように玄関から誰かが入ってくる音が聞こえた。
『あ』
「ただいま」
『おいてかれた……』
イマジンの札を置き去りにして……
「春菜ちゃん……おかえり」
「リト君……ただいま」
「ママー」
風夏は春菜に向かって駆け寄った。
「ただいま、風夏……ごめんね一人で家から離れて」
「うん」
「それから、ララさん……話があるけど」
そして春菜も話に加わった。
春菜は解決の糸口を持って帰ってきてくれたのだった。
春菜が言うには、謎の道化から電王がいるという場所を教えてもらったようだ。それからシロというヤミの弟分に言われて一旦帰って来たそうな。
『え……うそ、電王の所に連れてかれるの?嫌だークソゥ、出れねえ!!』
そこに有るのは札しかないのにイマジンが如何に暴れてるのかが分かる気がしてきた。
「大人しくしてて、マジカルキョーコでも見よう?」
マジカルキョーコのDVDの表紙を見たがどことなくイマジンがマジカルキョーコに似ている事が分かる。そういうので少しは話も弾めば良いかと思った。
『嫌だ、大人しくなんてしないぞ、俺は諦めねえからな』
「えぇ……」
札も今のところ一枚限りの物品であり、別れた法師も行方は分からない、そもそも誰だか分からないのだ。誰だか分かれば探しようがあるが唯一の手がかりは法師の声とラズの主観だけだ、どうしようもない。札に封じ込められているイマジンがどう出るか分からない以上対策を立てた方が良い、そのための電王だそうだ。
不確実だが、電王とやらに頼らねばならないのも確かなようだ。
………
そんな訳で、ミルクディッパーという場所に行かないといけない。知らない道化師からの情報を当てにしないといけないのもあれだが……春菜が検索した所によると喫茶店だそうな。
電王……どういうのかは分からないがどこにいるのだろうか?
宇宙船でひとっ飛び……するには停めておく所の広さが足りない、仕方ないので少し歩く事になった。
「ついたかな」
二階建ての白っぽい建物、そこがミルクディッパーだそうだ。
ドアを開くと、白黒の大きな望遠鏡が目に入った。ベルの音があまり聞こえなくなる程……
だが、人の声は話が別だった。
「早いですけど、どうぞ……」
春菜達より少し上ぐらいのお姉さんがいて、そのお姉さんが声をかけてきた。
「注文は何にしましょうか」
風夏はミルク、ララと春菜はコーヒーを頼んだ。
そしてミルクだけ先に来た。
「待ってて……今コーヒーがいい仕事をしているので……母の受け売りですけど」
遠目から見て、本棚には星に関する本がずらりと並んでいた。よく見ると新品もそこかしこにある、地球人と宇宙人の交流が活発化し星々に行けるようになっても観るという行為自体を気に入っている人間がいる証かもしれない。
「星……好き?」
お姉さんは本棚の本を見ている風夏に話しかけてきた。
「あんまり」
それを聞いてお姉さんは少しの間ガクリと頭を下に向けた。
「……………あら」
ずっこけつつもお姉さんは淹れたコーヒーを持ってきた、その間お姉さんがララのポケットを見ているのが分かった、確かにひどいレベルの砂を撒き散らしているがワザとではない、はずだ。そういえばその中には札が入ってるような……
「あの…………あなた、ひょっとしてイマジンに取り憑かれててます?」
「うん、そうだよ。だからここに来たんだ~」
春菜はララにそっと耳打ちした。
「ボソッ(ララさん……今更だけどちょっと怪しくない?)」
「分かってる、急に信用はできないかもしれないけど……そういうの、役に立てると思うから」
ドアを開く音がする……来客ではなさそうだから多分、裏口から誰か来たようだ……
「コハナちゃーん、来ーたよー」
スイカの皮をかぶった怪人のような誰かがやってきた。
「デネブ!?父さんの所に行ってたんじゃないの?」
「せっかく、愛理さんと二人きりの旅行なんだ。そっとしておかないと……それを言うならコハナちゃんも行けば良かったじゃないか、侑斗だって心の中ではコハナちゃんとも行きたいと思っているんだ」
「そこ突かれると何も言えないわね」
「あの?」
「あ……私は桜井コハナ、小さい花ね、こっちは」
「デネブです。あ……これデネブキャンディーです。侑斗と、愛理さんと、コハナちゃんをよろしく。おいしいよ」
デネブと名乗る怪人は風夏にペロペロキャンディーをくれ、春菜達にもどうぞと言いつつアメ玉をくれた、コハナと知らない誰か2人の事も宣伝しつつ。
「ありがとう」
「どういたしまして」
デネブは風夏がぺこりと頭を下げると同じく頭をぺこりと下げた。悪い奴ではなさそうな気がした。
「コハナ、
「あなたの妹ってハナちゃんって言うんだ?私の名前の基になった人もハナなんだって……」
「うん、唯さ………」
そこから先を言おうとすると、春菜に手で遮られた。
「話がややこしくなるから……ね?」
「はーい」
コハナも何かを察してくれたのかそれ以上は聞かなかった。
「ところでイマジンに何を言いましたか?」
ララは自己紹介と、イマジンの事について話した。
「その人、怪しい」
「それもそうだけどすごい札だなぁ、これにイマジン封印したって」
『誰かの望み叶えてんのか、良いなあ』
「でも……安心しきれないわね…………」
ビリリッと不吉な音がした、ハナは札を破いているようだ。
「あ」
それで上手くいくか分からなかったから電王なるものに話を聞こうとしたのだが……仕方ない。
『お?』
すかさず黄色い光は、札から飛び出した。そして灰になった状態、空から生えた下半身と地面に埋まった上半身として出てきた……
「ありがとさん」
言うまでもなく、封印が解けてしまったようだ……イマジンは灰だがランニングをしようする感覚でミルクディッパーから出て行こうとした。
そして、イマジンがドアを開けるために形を整えた途端、コハナはイマジンを殴った。
「コハナちゃん、ハナちゃんにそっくり……」
だが、その対応はイマジンには良くなかったみたいだ。
「全く、どいつもこいつもすぐ殴れば良いみたいな扱いしやがって、あったまきた!!」
逆鱗に触れるというより、積もり積もったものがなだれ込むような怒り。ちょっと仕方ない気もしてきた。
だが余裕を持って見てはいられない。イマジンは口元から火を出そうとしていた。
「風夏!!」
「こっちです、こっち」
春菜に覆うように庇われ、デネブに外に導かれながら、コハナとララがイマジンに突っ込んで行くのを見た。
「リトとの時間を、壊させたりしないから」
「それがあんたの望みか?」
「違うよ、これは私の抱負で、絶対自分でやるって気持ち。」
「そうよ……こいつに望みなんか言っちゃダメ、だって」
「望み……」
叔母の顔が急に浮かんだ、失踪していつの間にか死んだ叔母………会いたい。
「叔母さんに……会いたい」
その一言で、気まずい空気が流れた。コハナとデネブはきょとんとしていたが……
「わりぃ、嬢ちゃんの望みはちょっと叶えられそうにない……またな」
イマジンはどこかから持ち出したホウキに乗ってどこかへ去った。
「待ちなさいよ!!行っちゃったか……」
「これで終わったのかな?」
「いいえ」
コハナは否定した。
「ララさんにそのうちまた接触してくると思います。イマジンが過去に行く事を諦めたりしない限り……」
コハナは身支度を整えようとしだす。
「コハナちゃん、今日は団体の予約があるって言ってなかったっけ?それにコハナちゃんが強くてもベルトがない、だから、ダメだ」
「団体の予約………あ、いけない。母さん達も今日は無理そうだし……イマジンはモモタロス達に頼むか……デネブ、頼める?」
「ああ……任せておけ!!」
そんな訳でデネブがついて来るようになった。
「電王……ではないかもしれないけど頼りにしてください」
いかがでしたか?
電王でなくゼロノスなのはライム君にとって大きな誤算みたいです。
では。ビギュン(効果音)