いよいよライムとの決着です。
空も、太陽の色が溶け出したように赤くなっている頃……
アサキムとライムは剣で互いに斬り合っていた。
これは己の障害となる者を排除するためだけの戦いだ。
「ところで君は言った、彼女と親が争わずに済むと……彼女はこの
会話してはいるがお互いに攻撃しあって金属音で少し聞き取りづらい。
「ああ…………別に他愛も無い話だ。捨てたとはいえ、娘と思しい人間が他の星とはいえ王族の人間と近しい間柄になってたんだ。少しはステータスにしたくなるって話でさ……」
当然、諍いも発生する。
「そういう事か……スフィアの覚醒を促すならと踏み込む時もある。でもいい気はしないよね」
「だろう?おじさんも仲直りのために隣人分の尽力はしようとしたけどオレの存在でさ、じいさん達と少し距離できちまったから……そこ突かれたせいでかける目も微々たるものになって」
「そう……」
家族の話をする度に、気分が落ち込んでくるのが分かる。片親ずつなら、誇ってしかるべきなのに……
「たぁ!!」
そうはならないから、こうなっている。
「彼女と会う前より殺気が研ぎ澄まされているようだね……」
「あんたこそ、さっきより調子良くなってるじゃん」
「そうかもしれない……強き負念が僕に、シュロウガに力を与えている……君達が撒く波動が、心地良かったと言えるだろう」
ライムにとってあまりいい気はしなかった。自分に向けられた、そこで終わるべき悪意や自分の失意と悪意を利用されているようで……
「人の悪意で力を増やすなんて、とんだクソヤロウだな!!」
ライムはアサキムに蹴りを入れ、距離を取った。
「いけぇ!!」
ライムはブラディクスの刃を掲げて、アサキムに向けた。そして再びあの飛び道具を放つ。
「さっきの一撃ならば既に見切っている!!」
アサキムは先ほどと同じように、飛び道具が放たれたのと同じ風にディスキャリバーを振るい、跳ね返した。
「分かったろう?無駄なんだよ、ん!?」
ライムはブラディクスを持ちながら回転しつつ突撃してきた。跳ね返した跳び道具は、ブラディクスに絡みつき多分一撃の威力が底上げされている。
「それが本命という事か……確かに良い攻撃だ」
「はぁぁぁぁああああ!!」
ライムはそのままアサキムまで突っ込んで行く。
「だから、唯一の弱所を叩く」
アサキムは思いっきり跳び、降下する時にライムの頭を手で抑えてきた。
「く!!」
アサキムの落下する勢いで、ライムの体勢は崩れされた。ブラディクスは飛んでいって攻撃はままならなくなり、このままでは床にライムの頭がめり込んでしまう。ついでに言うとライムは頭を打って死ぬ。死ぬ事自体に頓着はないがそれで子どもであった頃の自分が苦しむのは嫌だ。
「ほえあー!!」
姑獲鳥が、飛び上がってライムにぶつかり、ライムのクッションと化した。特に頭の部分を狙ったため姑獲鳥は頭に押しつぶされ、目を回す。
ライムは急いでブラディクスを回収した。
「まあ、君はそうするか……しばらくは眠れ」
そう言ってから近寄ってくるアサキムに対しライムはブラディクスを振り上げ、アサキムは後ろに退いて避けた。
「仕切り………直しだ!!」
「いいだろう」
今度はライムがブラディクスを持ちアサキムに向かっていった。
「その意志を断つ!」
アサキムは剣を構えて迎え撃つ態勢を取った。
「させるか!!」
お互いの武器が十字にぶつかり、金属音が響いた。
「とっとと……オレの事を諦めろ!!」
「諦めないさ…………君を越えた先にあるスフィアだ」
「芽亜さんのものだろう?それは!!」
「これは彼女の願いなのさ、そうしない限り再び道は広がる」
「こんな荷物、放っておいてくれれば良かったのに!!」
「大切なもの程、放り出した後が苦痛なものさ」
その瞬間、フラッシュバックが起きた……
『テメェが自分の事をララ達の荷物だと思っているならそれはそれで良い………だが荷物は必要だから背負うんだ、大切なもの程失ったら苦しいし悲しいし場合によっちゃ一生ものの心の傷になってしまうからな……………だから連れて帰る、覚悟しとけよ……人の娘と孫泣かせやがって』
声の主はギド・ルシオン・デビルークだ、だが最近死んだのでライムと面識は無かったはずだった。
「なんだこれは……」
「ダメだよ、別の事考えちゃ」
ライムはブラディクスによる攻撃を止め、左手で裏拳を繰り出す。アサキムは30°後ろにのけ反って避けた。その勢いに乗り、ブリッジから手を突いてバック転し蹴りを放つ。ライムは後ずさりしてその攻撃を避けた。
「ああ、クソ!!」
ライムは血による飛び道具を数発放った。アサキムは反復横飛びのように左右に移動し、全て避けた。
アサキムもディスキャリバーとやらで突きを繰り出す……がライムも避ける。
その後も攻撃と移動を繰り返すが決定打をお互い入れる事はできずにいる……回転しての攻撃も先ほどのように突破されるので有効では無さそうだった。
「…………………」
「ハハハ……ハハハハハハハハ!!」
高笑いをして、余裕そうなアサキムに対してライムは少し疲れを感じている。一年半は隣町にも出歩いた事のない生活を送っていたからだろうか?仕方ないので必殺技で決める事にした。
「凍らせてやる……」
ライムはブラディクスを強く握った。タイムフリーズスラッシュを放つための……
「(タイムフリーズスラッシュか……攻撃した相手の血の流れをいじる事によってどこかの闘法のように凍らせる技……あれをくらっても溶かす手段はある……がそう何度も同じ技はくらうのは癪だ)同じ
ライムの挙動を見て、アサキムは急に消えた。
「消えた!!」
左右を見回してもアサキムは、いない。
「ここだよ」
後ろに移動されていた。すぐに目の前に回り込まれた。
「…………」
アサキムはライムに密着する程近づき、ライムのブラディクスを持っている手を片腕で挟み込みロックした。
「!!」
「その剣の届く範囲でしか凍らせられないんだろう?こうすればもうどうにもならないね。そして……仮にも王族だ、だからこの言葉で締めくくろうじゃないか…………
アサキムは黒塗りの装置をライムの額にくっつけた。
「これは!?」
「目覚めよ、ばいばいメモリーくん」
アサキムは装置のトリガー部分を押した、聞いた通りであれば本来なら四方八方に伝わるはずの光がレーザーポインターのように、ライムのみに収束し直撃する。
「さあ……思い出のように、
「あああああ!!」
目に対して、度を越した衝撃が走った。太陽を目にした時に感じる眩しさ……あれの倍以上の衝撃。太陽を虫眼鏡などで見なければこんな事にはなりえないような、そんな衝撃。
「ううう……」
アサキムはライムの拘束を解き、バック転で後退した。やっと開けられた片目に映るばいばいメモリーくんは、砂になって跡形も無くなった。
「因果をいじるのは、割と得意なのさ………だがここまで強くなるとは思わなかったけどね」
ライムは衝撃により座り込んでしまった。
「これは……」
思考の隅から徐々に徐々に、何かが消し飛んでいく。その消し飛んでいったのが何なのか、思い浮かべようとしても全く分からない。それが分かれば消し飛んでいったとは言えないが………………だが、一応は察する事ができる、記憶だ。まるで記憶が、どこか遠くへ消し飛んでいくようだ………
あの韻の踏み方はおそらく王妃の発明品、そこを省みればあまり
そして分かるのは、このままでは記憶が全部消えるだろうという事。この記憶が全て消えれば、おそらく自分が自分でいられなくなる。
「オレは……失うのか?あの女を殺して、やっと掴み取ったものを」
産まれなくなった事で、苦しい思いをしなくて済む自分。
永遠の平穏を貪れる自分。
それは過去を元通りにされたら、全て水の泡となる。
「嫌だ……」
記憶が無くなる……そんな状態で過去を塗り替えられれば、確実に自分はいなくなる。そうなってしまえば、自分がやってきた事の意味が……無くなってしまう。また繰り返す、おんなじ時間のおんなじ自分が、王家の汚点だと泣き叫び、母親を恨んでしまう。
「だってさ、喜ぶといい……姑獲鳥、今君の基となった人間の子供は自己の喪失を恐れている。それを望んでいた彼が、厭う事ができるようになったんだ、彼は自分の記憶に重みを感じ始めた!!」
ライムは立ち上がろうとして足に力を入れた。
「うるさい……ブラディクス……オレの血でも肉でもくれてやるから……こいつに……ハァ!!一撃を!!」
くらわさせて欲しい。そう願うより先に体の方に限界が来たようで、ライムは力を入れた足に力が入らなくなり、うつぶせに寝転んでしまった。
「…………………」
諦めざるを得なさそうだ。疲労感がその感情を手助けして、不思議と感情が楽になってきた。ただ、名前も結局覚えていない神父に申し訳ないような気もしてくる。
「ホエア」
姑獲鳥の弱った声が聞こえる…………確か母親となる人間から産まれる妖怪だったような……本人であってたまるかとは思うが、少しぐらいは感傷的にならざるを得ない。
「なあ」
呼びかけに応じているのか、起き抜けに行動するようにおぼつかない足取りではあるが近づいて頭をすり寄らせてきている。
「なんで、あんたは良くて、オレはダメなんだ?」
「まあいい…………………無駄に痛い思いさせてごめん…………」
もうすぐこの自分がいなくなると考えると、謝るのにも苦は無くなってきたように思える。
再び目覚める頃には、ライムという存在は無くなっているだろう。少なくとも母親を殺したライムという存在は……それが長い目で見れば吉なのか、凶なのかはさておき、もうライムには選択肢は一つしか残されていない。
受け入れる?いったい何を受け入れるのだろうか?
「さようなら」
さっきまで思い浮かべられたはずの優しそうな女性達と男性達の顔も思い出せなくなっている。これ以上失う事を知覚しながら失っていくより、何も知らないまま何もかも失っている方が楽な気がした…………だからもう眠りにつくしかないのだ。
「おやすみ」
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罪により産まれ、罪により生きる彼は今眠りについた。次に目覚める頃には、彼の記憶はない。取り戻せたとしても、その時には過去を変えているだろう。だが具体的には何をすれば良いのか?それを考えるより先に……言葉を贈る。
「君の罪に終焉を、君への罰に合いの手を……次に会う時は互いに縁の断ち切れる事を祈ろうか」
そして、いずれ存在意義の無くなる姑獲鳥にトドメを刺しておくべきか……
考えるまでも無かった。
「用も無いのに、何かをする方がおかしいか」
アサキムはその場にいるライムと姑獲鳥を後にした。
「次は王妃の番だ……もう契約を完了させてなければ良いけど」
望みは自分の力で叶えたそうな彼女の事だ、滅多な事では望みを口にして契約を完了はさせないだろう。
と思っていると異様な気配がアサキムの方に迫ってきた……のを感じた。
「そこか!?」
アサキムはディスキャリバーを投げた。
「!?あの剣は!!」
少しこの世界で聞き覚えのある叫び声。
「下がってくれ」
投げた先に現れたのは、馬に騎乗した法師と純白な翼を生やし飛んでいるシロ。
シロはいつの間にか翼に不似合いな茶髪へと変化していた、だがそこは法師と比べれば問題では無い。法師からは軽く見て1000人を下らない程のまつろわぬ霊を内包しているように見え、それだけでなく核となる特殊な因子も感じる。
「もっと高く、跳べ!!」
法師が手綱を動かすと、馬は指示通り飛びアサキムのディスキャリバーを避けた。法師は応酬とでも言わんばかりにアサキムに柄杓を投げてきた。
横に移動して避けたアサキムは感嘆の思いがこみ上げその感情を目線に宿す。その間に法師は馬から勢い良く飛び降り、馬に手を振った。
「ご苦労だった。下がってくれ」
そして法師は、ライム達を探しているようだった。
いかがでしたか?面白かったと思っていただければ幸いです。次回はいよいよロボ戦ですぞ。
では……ビギュン(効果音)