さらに世乱れし時、山を凌駕せし巨躯の妖現れん。
それらを滅するため豊臣の世において
シロが盛り上がった灰の塊を見て気になる事があったようでそこをじっと見ている。
「あの砂…………見覚えがある、まさか美奈子って人のなのか?」
「…………砂とかは妖とは別の理で動いてるだろうから、拙僧には分からん!!だが斬ると似たような姿になる怪人を見かけたような…………………!!」
法師はライムと姑獲鳥を見て、編み笠を目深にかぶりなおす。
「しかし……遅かったか……」
「嫌、ライムは生きてる。間に合ってる、セーフだ」
シロはガッツポーズを取った後スマホをハイスピードで操作し始めた。
「いいや、遅かったよ。久しぶりだね……シロ、君は人が生きるのに必要なものはなんだと思う?」
アサキムがそう問いかけると、シロは厄介な奴に出会ったと言わんばかりに苦々しそうな表情を浮かべつつ返答した。
「……命だ、んでもってそれを思いのままに使える自由だ」
「それもあるね、だが他にもある……記憶だ。命という器に宿るそれは、主の標となりて未来へと導くんだよ」
「無くたってどうにかなるだろう」
「標を与えてくれる誰かがいるなら、気にするまでもないと言える強き心を持つ人間ならそうだろう。そうでない人間には無くした
あれこれ話をしていると法師がシロの前を通る事で話を遮ってきた。
「今、ここで倒れている男はお前が原因と見て良いんだな?」
「そういう事さ、それを聞く君は何者だい?」
「坊さんだ」
そんな一言でくくっていいとは思えない。
「坊さんだと…………………君は悪霊だろう?それもかなりの数からなっている」
その数に比例してか、感じられる力も強大なものとなっている。
「まあ否定はしない、背負いこんだものの想念で自分が自分でなくなりそうな時もあるしぃ」
そう法師が呟いていると、空間に歪みが見えたような気がした。揺らぎの先にうっすらと見えるものは…………蛇だろうか?人は余裕で丸呑みできるような大きな蛇が見えた。
「ふぅー」
その横で一仕事を終えたようにシロは爽やかな表情を浮かべ、法師に言う。
「坊さん、今警部とブラディクス用に銀河通販でマジックハンド注文したから!!」
「そうか……じゃあ」
法師はどこからか用意した刀を抜いて、アサキムに斬りかかった。アサキムはディスキャリバーでそれを受け止める。
「悪霊が、何故彼を気にかける?」
「奴も充分アレだが、拙僧は『妖の味方』なんでな……それ以上に姑獲鳥を気にかけているのさ!!」
「そんな立ち位置で、よく人と共にいられるね」
悪霊が妖怪の味方だと豪語してはばからないのは譲ったとして、だがそれではいつ人に斬られてもおかしくはない。
「だからこの衣装を着ている……………祓うにも、戯れるにも、丁度良い」
「そう……」
「先回りされたのは拙僧の失敗だが………」
「そうだね……だが気に病む事は無い、時に干渉し……姑獲鳥が産まれなかった事にすればいい」
「できるのか?時の流れを乱す事なぞ」
「僕にも……今の獄鳥にもそれはできない、だができる者はいる」
直接刃をぶつけ合うと見えてきた、この世界の妖怪がどういうものか。無論法師のパターンだけしかまだ分からないが……
「へぇ……魂が無いから、狭間にすら向かう事は叶わないのか……」
「
突如降ってわいた専門用語……だが数多くの並行世界をくぐり抜けたアサキムにとってこの程度は序の口だ。
「
無限獄に堕ちた事による呪い、死を経たとしても蘇る結果へと至らせるそれがアサキムの印象を妖怪たらしめているのだろう……
「だから僕は願うのさ、そうでなくなりたいと……呪われし放浪者としての運命を断ち切りたいと!!」
アサキムが刀を捌いて距離を取ると、今度は法師が弓を持ち、矢を引き絞る。
「清姫伝説、人虎伝…………呪いがどうあれ、人の身から化生に至ったものを
言葉と共に放たれた矢は風を切ってアサキムのいる場所に向かう。アサキムはディスキャリバーで防ぐ。
「この程度で射抜けるとは思わない事だね」
「ならこいつをくらえ」
法師は、アサキムに向かって苦無をぶん投げた……
「……
法師の唱えた通り、一つの苦無がたくさんの数に変化し、束になって向かっていった。
「はあ!!」
アサキムはディスキャリバーを振るい、苦無を全て叩き落とした。
「忍法……か」
アサキムの呟きに追随するようにシロも疑問を呟いた。
「坊さんはお静さんの生前と同じぐらい……いやもっと長命の妖怪で……それで忍者?坊さん?どっち?」
「坊さんだ」
「でも今忍法って」
「坊さんだ!!」
「そう言い張るならそれでいい、だよね?」
忍者が、世を忍ぶ仮の姿としてそういう道を選んだというだけの話だろう。おでん屋で働くニンジャに、介護士として働く忍者もいるのだ。その格好なら忍者としてで無くとも力を振るえる。
「ああ、話が早くて助かる」
それはそうと忍法はそれらしいが武器といい、扱い方といい、忍者のそれではないと言える……忍者が振るうには大きすぎる刀だ……
「挨拶はこれでおしまいだ」
力いっぱいに刀を振るう戦い方は忍者というより武士に近い。
「お前が拙僧の事をなんとなく感じ取ったように拙僧もお前の事がなんとなく分かった」
「………………ほう?」
法師はアサキムに向けて真っ直ぐ指を差してきた。
「随分特殊な
すぐにスフィアとその器、そしてシュロウガが思い浮かんだ。
「だったらどうする?」
「こうだ……急急如律令!!」
法師は術を唱え、札を2枚ばらまいた。
「
『久方ぶりの出陣だ、ごう』
すると床に平面的な紫の結界が出来、甲冑のような出で立ちで足の短めな赤い鬼と
『黄昏時……忍者らしい、良い月である』
若干の緑っぽさを帯びた黒い蛙が、結界から現れた!!
「速さと術重視で行くぞ、
法師が叫ぶと、宣言通り合体を始めた。
『久方ぶりとは申せども、どの程度昔であったものか』
『海の向こうの妖の見聞に行ったから100年ぶりだぞ、見ない間にどんどん足を踏み入れにくい地形へと変わっている……』
『そうか、まあ良い……我らの勇姿、とくとご覧じろ』
『ちなみに祓機巧一機につき一体式鬼……妖が宿る事になる、つまりこの機巧こそ今の我らの器である。そんな我らが複数体集まって産まれる姿……それこそ』
悪鬼滅魄 ダイヨウジン 第四十八話!!
蛙がメインのようで、腕と足と顔部分が蛙の黒い色と同じになっている。
「ハッ!!」
法師はダイヨウジンと呼んだ巨人に飛び乗った。
─一方その頃───────────────────
真が外を見ていると急に、巨大なロボットが現れたのだ。驚いた真は双眼鏡でそのロボットを覗く。
「あれは……」
深紅の胴体、黒い四肢と頭、勇者を思わせるような雄々しい顔。
「お前の好きそうなものだ」
母親の凛は息子の頭に手をポンポンと乗せつつ答えた。
「嘘だろ……二体のみでの合体とか追加戦士か?……嫌、あの合体方法は龍虎王に近い………あれ?母上、龍虎王って何でしたっけ?」
「フッ…………………………………分からん」
─────────────────────────
「……………………………………………」
シロは呆然としているようだ、流れるような勢いで考えもつかない事が起こっているのだから仕方ないとは言えるかもしれないが……
「面白い!!来い、シュロウガ!!」
だがアサキムは違う、少し……ワクワクしていた。戦い自体は嫌いではないのだ……だからシュロウガを召還した。
「行くぞ!!」
「!!」
今度はらしい大きさの忍者刀でダイヨウジンは攻撃してきた。
アサキムはシュロウガの振るうディスキャリバーで受け止めた。
「はぁあ!!」
シュロウガは飛べるが、そこは勢い。ダイヨウジンと格闘しながら走り回った。
「まっきびし、まっきびし」
だがダイヨウジンは、それをこなしつつ不特定多数のトラップをシュロウガの走る先にばらまいていた。
「!!」
これではシュロウガの足を止めざるを得ない、動きの勢いが悪くなるのも仕方ない。
「分身の術!!」
その隙を突かれ本体含め分身10体に走りながら囲まれた、忍者の見た目は伊達ではない。避けようと上に飛べばすぐに本体から攻撃を受けるだろう……
「さあ、どうした?」
声のする方向にラスター・エッジで攻撃するとダイヨウジンが一体煙のように消えた。ご丁寧に分身に喋らせているようだ………
「…………」
ならば風だ、風を読む。ダイヨウジンに当たる風を読むのだ……
見えた!!
「ククク……風が呼んでいる!!」
アサキムはディスキャリバーの剣先から衝撃波を放ち、ダイヨウジンの一体に攻撃した。
「む……」
ダイヨウジンは走るのを止め、避けた。
「ランブリング・ディスキャリバー!!」
急いでダイヨウジンに近づき、連続で斬りつけた。
「ハハハ………ん?」
その時に気づいたが斬った手応えがない、ない事はないが想定していたものより薄っぺらい。そのため〆の攻撃をする気が失せた。
「この手応えの無さは……」
気がつくとダイヨウジンの大きさまである大きな紙が、ズタズタになっていてもパンッと真っ直ぐ張っていた状態から力の抜けたように風にだらしなく流されていった。
「身代わりか」
「変わり身の術だ…………」
ダイヨウジンは、いつの間にかシュロウガの後ろにいた。刀を振るおうとする気配がしたのでノールックでダイヨウジンの腹部にディスキャリバーを突き立てガード。
「おっと」
ダイヨウジンは避けて宙返りする。
「いけぇ!!」
着地する前にダイヨウジンが苦無を投げてきた、だがこの攻撃はシュロウガを狙っている訳ではないようで、苦無はシュロウガの向こうにある空き地に突き刺さる。
「
ダイヨウジンが印を結ぶと苦無を起点に風が巻き起こった。ビル一つには届くように見える高さのいわば台風、近寄ればひどい目に遭うのは目に見えている……がそこは近づかなければ良いだけの話である。
「ぉぉぉおおおおおお!!」
だがダイヨウジンは鎖鎌を手に持ち、分銅と鎖を飛ばしてきた。その鎖は近くにいない事で油断していたシュロウガに巻きついて拘束し、アサキムが鎖を認識した瞬間シュロウガを風の方へ引っ張っていった。
「くっ」
風に引っ張られ、身を切るような風がシュロウガを襲う。
「っ跳べないか……ならば、穿て!!」
「雷撃!!」
シュロウガは風に巻き込まれながら
「雷撃!!雷撃!!雷撃!!雷撃!!雷撃!!雷撃!!雷撃!!」
「邪眼よ、撃ち抜け!!」
延々と続くラスター・エッジに対して連射で対抗するダイヨウジン。
ぶつかって、そのたびに閃光へと変わっていくため少々眩しすぎた。
「埒が明かん!!」
法師が叫ぶと、ダイヨウジンは忍者刀を掲げて飛び上がった。
「
「自分の掛けた罠に向かうとは滑稽だね!!」
「いいや、もうおしまいだ!!」
ダイヨウジンの仕掛けた風は、法師の発言のタイミングで止まった。罠の効果の切れる時間を熟知している……流石仕掛け人だと感心せざるを得ない。
「はぁ!!」
ダイヨウジンの忍者刀が炎を纏い、5回閃く。
「…………………」
避けるには、間に合わない……だが、攻撃をする事でダメージを減らす事はできそうだった。
「トラジック・ジェノサイダー!!」
獄鳥を4発飛ばし、ガード。最後の一撃はディスキャリバーでガードした……爆発が生じ、両者お互いに吹っ飛んでしまった。
「やったのか?」
シロが呟いていると………
「かはぁ!!」
白い梱包物が飛んできてシロの頭にぶつかってきた……よろけながらシロは体を起こす。
「あれ、こんな仕様だったっけ……?まあいいや」
注文した通りの品物であったためか、気を取り直してブラディクスを回収する作業に入った。
「そっと…………そーっと…………」
シロがゆっくりブラディクスに近づき、回収しようとしていると……両者、同時に立ち上がる。
「流石……普通の妖とは違うな……」
「……………………………………長居しすぎたか」
突如黒い何かが飛来してきた。
「う………………………」
法師の怖いものを見たような声が聞こえたが、そこはスルー……
「千客万来とは言うが僕は客を待つ身じゃないんだ、勘弁して欲しいね」
「そう言うな、この機体に潜む魂がお前に会いたがっていた……無論、俺もな」
黒く、禍々しい、鎌を掲げた悪魔のような姿。この宇宙で一度協力する羽目になった事のあるその名前は……ディス・アストラナガン
いかがでしたか?面白いと思っていただければ嬉しいです。
では……ビギュン(効果音)