スーパーロボット大戦Z 辺獄編   作:レゴシティの猫

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皆さんこんにちはもしくはこんばんは
何が優雅なのかはさておき今回話に出てくるブラディクスはCVアークゼロを想定しといてください。


第五十話 魔剣(ブラディクス)の優雅な目覚め

「さすがに……きついね、(ちょう)のように舞い、風のように逃げるとしよう」

 

 「逃がさない……」

 

 黒いゴキブリのような機体(ディス・アストラナガン)黒い鳥のような機体(シュロウガ)が追いかけっこをしている。

 一方その頃~

 

 「…………」

 

 目の前で目を瞑り、起きる気配もなく横たわっている青年が妹……美柑を殺した犯人だった。

 そして驚くべき事に、青年の顔は…………

 鏡で散々見た顔だ、子供の頃……何度も近くで笑顔を向けた顔だ、さらにミミを初めとした可愛い子供達の顔もそこにある。

 なんとなくだが、直感も含めシロの言っていた情報は本当であるかのように信じさせてくれる。

 これが本当の事なら、なんて悪夢なのだろう?

 何かの嫌がらせであればまだ良い。だがシロの実直な部分を見て、嫌がらせでこういう事の言える人間じゃないと分かっているから信じざるを得ない。

 

 「なあ……違うんだったら違うって言ってくれよ」

 

 そうだと仮定してから、愛おしさと憎らしさが膨れ上がっている。

 直接話を聞けたら、良いのかもしれない。

 だが期待させないで欲しい。

 その期待を叩き落とさないで欲しい。

 

 「リトさん」

 

 リトの肩にヤミは手を乗せてきた、添えられる温もりが落涙を促す。

 だが、それを阻害する何かが聞こえる。

 

 『んん……』

 

 寝起きのあくびに近い声だ………それより……声の方向にあるのは……

 

 「ああ!!」

 

 「あいつは!?」

 

 刀のような反りを持ち、赤い刃を持つ魔剣、ブラディクス。その昔凛に取り憑いて、所有物扱いして、自分達を攻撃しようとしてきた。

 

 「危険です」

 

 ヤミは即座にリトの前に立つ、攻撃力も防御力も機動力もヤミの方が上だから合理的に考えればそうするべきなのだろうが、リトは納得いかなかった。

 

 「でも、後ろで見てる訳には……」

 

 そしてブラディクスは、はっきりと目覚めた。取っ手の部分にくっついたマジックハンドをぶんと放り出して……

 そして真っ直ぐ飛んでいくマジックハンドをヤミは叩き潰した。

 

 「安いですね、これ」

 

 見てみると確かに、そこらのデパートで子供の玩具として安値で買えるような材質のマジックハンドだった。人の腕ほどの大きさはあるのでその分値は張るかもだが。

 

 「そんな事より……」

 

 ブラディクスだ。赤く光る核っぽさそうな部分が有るという特徴以外はほぼ同じ……

 

 『ああ───なんと良い目覚め、そこの人、このような時この星でなんとおっしゃる?』

 

 「ズコー」

 

 ずっこけてしまった。

 脳内に直接語りかけてくる声は、昔凛に取り憑いたのとは随分違う。ついでに言うと物腰の柔らかさも………

 

 「…………………………おはようございます?」

 

 以前戦ったのと比べ、柔らかい態度だった。そのため、態度の突っぱねようがなく普通に答えてしまった。

 

 『それでは元気よく、おはようございます!!ですが今日の月は大変不機嫌みたいですね、全く顔を出していない。新月と言うのでしたっけ?いけません、私様(わたくしさま)のような者は満月と共に颯爽と舞い降りるべきとライブラリにも書いてあった筈』

 

 どこのライブラリに書いてあるのかは知らないがどうにもキャラが違いすぎて可笑しさがこみ上げる気がしないでもない。

 

 『そこの人、そこの人』

 

 そんなブラディクスから気さくに話しかけられた。

 

 「俺は結城リトだよ、王様」

 

 「私はヤミです、この人の妻です」

 

 簡単に自己紹介をすると、ブラディクスは相槌を打ちつつとんでもない提案をしてきた。

 

 『……寝ている間相当エネルギーを消費し、このままだと私様(わたくしさま)光沢を失ってしまいそうなのです、やんごとなき貴方方に頼むのもあれですが血をお恵みいただけませんか?』

 

 「えー」

 

 『まあ意地悪、このままでは私様お腹が空いてバタンキューでございます。(そんなお腹はない)私様は剣ですよ、刃物ですよ、バタンキューと倒れたらまずいではありませんか?』

 

 倒れる剣、それはきっと振り下ろされるのと大差ない、ただではすまなさそうだ、考えると寒気がする。

 

 「その物言い……あなたは……本当にブラディクスなんですか?」

 

 『ええ、私様の名はブラディクス……という事になってますね、個体名のような、種族名のような。そこに偽りは無いと思っています、というか何故それを知っているので?』

 

 何故?それを聞かれると弱った、そもそも魔剣(ブラディクス)についてリトが初めて耳にしたのはザスティンの語るホラー調の話、そして本物と戦ってヤミに解説してもらって以降、調べる機会も無い……嫌、終わった問題だと思って調べても無かったのだ。

 

 「それはですね」

 

 ヤミが代わりにブラディクスに魔剣(ブラディクス)の話を聞かせた。2000年前の遥か昔に作られた、知的金属生命体、それがいつしか呪いの魔剣と呼ばれるようになるまでの話を………

 

 『それはブラディクスというものについて誰かが……恐らく開発者が吹聴して回ったという線で良さそうですね』

 

 「何故そう思いますか?」

 

 『あなたは誰かを襲う時に高らかに

 『我こそは○○』

 など己の名前を宣言しますか?

  敵と相対する際自分の特徴をひけらかしますでしょうか?』

 

 「まあ、しないですね」

 

 してたら、ヤミはイヴという名前で有名になっていたかもしれない。元々ヤミはイヴという名前を名付けられて、殺し屋をしている時に金色の闇というコードネームで呼ばれるようになって、そしてそれをもじってヤミと呼ばれるに至ったのだ。

 

 『前者は自分の存在を世に知らしめるという意義がありますがそんな事ができるのはよほど出世欲の強い方でなければなりません。後者においては必ず殺せるという余裕がなければ行うのは心理的に難しい、いざ仕損じた後警戒されれば血をいただく機会が減ります。弱点も広められるかもしれません。話は変わりますが私様ならば人を操る時は動かなくなる(こわれる)までは使わせてもらいます、ですから操られる人間から情報を絞り取るのは難しい。そして何より、あなたの仰るどこかの銀河で作られたという話は、開発者からもたらされた情報等が無ければ発言力においては厳しいのです。2000年の時を隔ててなおその情報が遺されているという事は…………』

 

 「なるほど」

 

 長い話だったが、ヤミの話は開発した側の人間からの情報が含まれていなければ辻褄の合わないそうだ。それはそうと昔凛を操ってたのと根本は同じだと、そういう確信は得られた。

 

 『しかし…………2000年、2000年!!生きるためとはいえあんな強烈な臭いのするものにたからねばならないと思えば、品性にも支障が出るのも無理もないと言えましょう。それはそうと血を与えるのです、さしあたって私様には必要ですから』

 

 「やらないよ」

 

 『どうしてもくれないとおっしゃる?ならば私様、賢くびょーいんを襲うとしましょう。

 ありったけの輸血パックがそこにあると聞きます、肉という壁より薄く、斬りやすい、それでいて大量に摂取できると……ならば逃がす手はありません。

 目指せご馳走の山々』

 

 脅しとも、本気とも掴みきれない恐ろしい言葉が返ってきた。病院は患者のいる所だ、その数だけ何かしらの事情で弱っている人達でいっぱいになる。あわよくばとそっちも標的にするのは明らか。

 

 「ちょっとこいつ昔戦った奴より兵器としての偏差値高すぎません?非人道的で聞いちゃいられないのですが……」

 

 ヤミの言葉に同感だった、前に戦ったブラディクスは一心不乱に目の前の血を求めているブラディクスだった。今目の前にいるブラディクスは効率的に血を採れる場所を心得ており……気分次第でいつでも実行するようだ。

 

 『私様とてつらいのです。人はまだ良い、食物を口に放り込み、分解し血肉に変えられる。しかし私様はそれができない、既製品にしかありつけないのです』

 

 ならば、自分なら……

 自分の血で穏便に片付けられるなら……

 

 「分かった……俺の血、やるよ」

 

 そう思ったリトは自分で親指を傷つけ、そこから垂れた血をブラディクスに当てた。

 

 「ちょっと、リトさん!!」

 

 「……ごめん、ヤミ……」

 

 『私様、垂れ流しの蛇口で渇きを癒やす趣味は毛頭無いのですが』

 

 とは言いつつも自分に付いた血を拒む気はないようで、ブラディクスに光沢が宿りだした。

 

 『……む、この味は……………慈愛と悲しみ…………何かつらい事を経験しました?まあいいでしょう、あなたに免じびょーいんは諦めます……人間的に言うと舌が潤いました』

 

 確かに機嫌と早口加減が良くなったような気がする、ほぼ念でしか会話をしていないはずだが……

 

 「……………あなたは何故ここに?」

 

 ヤミの質問に、ブラディクスは快く答える。

 

 『そうですね、あれは私様が産まれて間もない頃…………』

──────────────────────────

 

 始めに抱いたのは疑問。生命あるものなら、否、心宿るものなら全ての存在が一度は抱く疑問。

 

 『私様は誰……?』

 

 その答えは、本能的な欲求(アプローチ)によって理解した。

 

 『私様はブラディクス……ああ、血が欲しい。血を採らねば』

 

 自分が何者か理解すると同時に、血が欲しくなった、子供が生きるため……最も手近な食物として母の乳を吸いたいと願うように。

 だが、自分の形は剣だ。知能ある者とはいえ、刃が体の殆どの面積を占めている、剣なのだ。駆動においては不便この上ない、扱いやすい体がいる。

 運が良かったのか、悪かったのか、丁度良く動かしやすそうな肉体が自分を持っていたのだ。ブラディクスには分かっていた、どれだけ鎧や衣装で肌身を見せないようにしていようが……人間の肉体がそこにある事を……

 ならば答えは一つ

 操ろう。

 大地を踏みしめる足を得よう。

 自らを振るう腕(かいな)を得よう。

 波長云々は操れば分かる筈だ。

 そして…………

 

 『味も見ておこう』

 

 せっかく取り憑くのだ、人体の味も把握しておきたい、美味しければ非常食としての運用もよし、そうでなくても動かせすれば良いと思った。

 

 『失礼』

 

 柄の部分から管を伸ばし、ブラディクスを持っている人間の手首を貫いた。

 貫かれてなお微動だにしない人間に意識を向ける事無く、ブラディクスは血を吸い取った。直接干渉できた以上、もういつでも操れるという確信はあった。

 

 『う……負念と淀み濃ゆすぎ、胃がもたれる……(そんな胃はない)』

 

 それは、初めての(ごはん)としてはいただけない味だった。怯えから来るものであるならまだしも、相手を滅ぼすという感情で一杯になっていたのだ。

 何故か精神が浸食されていくように感じた。上書きされていくような……そんな自覚すら無くなっていくような気がした、胡蝶の夢レベルの生の実感の短さに辟易しつつも流れに任せるしかないと片付けるしか術も無く………

 少しは未来予測ぐらいしておけば良かったと反省する間も無く、ブラディクスのメモリー機能は停止した。

 

──────────────────────────

 

 『という訳で、それ以降の記憶は私様にはないのです』

 

 「そうでしたか…………という事はあなたが取り憑く予定だった人との経路(パス)はあなたが目覚めるまでずっと繋がったまま…………その間主導権を握られていたとか?」

 

 『ハッ確かに』

 

 「しかし触手使えたんですね」

 

 『ええ………見ていてください』

 

 「?」

 

 「遅くなってすまん!!」

 

 モモとナナが空からやってきた、彼女達はララの発明品によって衣服に翼が付き、飛べるのだ。

 

 『そこのマダム達、失礼』

 

 ブラディクスは待ちわびていたかのように声を上げる、ナナとモモも先ほどのリト達と同じように驚きを隠せないようだった。

 

 「え?」

 

 「なんであいつが……!?」

 

 モモとナナが驚いている間に、ブラディクスは、刃の1部分を触手のように変えて、真っ直ぐ伸ばしモモとナナの二の腕に縫い付けるように突き刺した。

 

       テ  ン  タ  ク  ル  ス

 

○   イ   ン   パ   ク   ト

 

 「きゃっ」

 

 「うっ」

 

 ナナとモモは、苦痛のあまり表情を歪ませる。当然だ、二の腕とはいえ、凶器のサイズが注射器程になってたとはいえ、刺されたのだ。

 

 『仕上げはかっちりと』

 

 そして刺された箇所を何かで埋めているようだ。

 

 「大丈夫か?」

 

 「大丈夫ですか?」

 

 「ああ、ちょっと目眩がするぐらいだ……」

 

 目眩がするほど血を抜き取られたという事だろうか?

 

 「リトさんこそ、指の所大丈夫ですか?」

 

 「ああ…………まあな」

 

 お互いの無事を確認している間、ブラディクスはモモとナナの血をレビューしていた。

 

 『んーん、片方は運動栄養欲求が満たされ、行き届いて、まさしくライブなお味、デリシャス!!もう片方は……運動栄養は良いのですが少し何かを我慢してますね、いけませんね…………いけません。良き血には淀みがあってはいけないのです、淀みとは迷い、欲求不満……色々と有ります………他にもありますがまあ良いでしょう。ありがとうございます、あ……ベンチはあっちです』

 

 ブラディクスは先ほどモモとナナを襲った部分の刃で、ベンチを指差した。

 

 「それはそうですがリトさんでしか解消できない想いがですね、でも今ちょっと唯さんの事で立て込んでいるので自粛してるんです~」

 

 「だからあれほど子供達と教育番組のダンス一緒に踊らないかって言ったのに」

 

 人、それを昇華という。

 

 「ナナお姉様、私ナナお姉様ほど単純でないので体動かせばなんとかいける訳ではないので(おこ)」

 

 「な、私だってなー!!」

 

 ナナは怒り、モモを追いかけ回す。姉妹同士で仲良くわちゃわちゃしている感があり、微笑ましくはある。

 だが外で妻の欲求不満をカミングアウトされ、今、唯が子供を産んだとか美柑が死んだとか色々あるとはいえそれに気づかなかった自分が情けなく思えてきたリト。

 

 「ごめんモモ、ナナ、ヤミ、それはそうと何してくれてるんだてめえ!!」

 

 それはそれとして言わなければならない事のあるリトはブラディクスにつかみかかった。

 

 『勘違いなさらないでください、私様はびょーいんを諦めると言っただけで…………それに私様、いたずらにマダムの柔肌を傷つけたい訳ではありません。蚊のようにプスリといかせてもらっただけですので、何……注射器とさほど変わりはしません』

 

 「そういう問題じゃねえ……!!」

 

 『そもそももらい方というものが有ります。あんな垂れこぼす前提の受け取り方で満足できますでしょうか?』

 

 「う……」

 

 「屁理屈を!!」

 

 ヤミはすかさず腕をガントレットの形状に変身しブラディクスを攻撃。

 

 『アッハン』

 

 ブラディクスは刃全体をウナギのようにくねらせて避けた。

 

 「!?」

 

 それを見てヤミは動きがぎこちなくなった。ヤミは苦手なのだ、ニュルニュルしたものとかは…………

 

 『来ると分かってくらう私様ではないのです、仕掛けられた時、逃げようと背を向ければ大ダメージ、背を向けずに行動すればローダメージ』

 

 「ニュルニュルしてる……この展性………なんの液体金属ですか?」

 

 知らない言葉が出てくる。

 

 「液体金属?」

 

 「固体と流体、両方の形態を常温で引き出せる金属です。そのため兵器としての自由度の高さはヤミさんのナノマシンと遜色ありません、あんまり暑かったり寒かったりするとあれですが」

 

 「ありがと、モモ」

 

 「お役に立てて光栄です」

 

 リトの言葉に笑顔で返すモモを見て、少し気がほぐれた。

 

 『というわけで、また日を改めて……私様今から鞘作ってきますので』

 

 ブラディクスは、ジャンプしてどこか別の場所に向かおうとしていた。

 

 「捕まえた!!」

 

 そうはさせまいとナナはブラディクスを両手で持つ、片方は刃の部分なのでおそるおそる峰の部分を支えるといった風に。

 

 「はぁ!!」

 

 ブラディクスはナナに膝蹴りで真っ二つに割られた。

 

 『吸血種というだけで……このような仕打ち、率直に言ってひどい』

 

 「お前とは関係ないかもしれないがこっちは服バッサリされてるんだ、悪く思うな!!」

 

 「私もですよ」

 

 『ああ……それはそれは、災難でしたね……』

 

 「あなたが人の血を狙って襲う限り、私達は何度だって眠らせますから」

 

 ブラディクスが動かなくなった後でシロが空から戻ってきた。

 

 「王妃の妹君も来たのか」

 

 シロは辺りをうろうろして状況を確認しようとする。

 

 「げっブラディクス、目覚めてるのか?」

 

 「もう終わったぞー」

 

 「そ……そうなのか」

 

 「シロ、あなたの持ってたマジックハンドちょっと安くありませんか?」

 

 「だから良いんだよ、下手に高性能な奴使ったらそれ伝って操られるかもしれないだろ?」

 

 確かに安くても接触の少ない方が良いのかもしれない。

 しばらく雑談に耽った……

 

 「注意削がれてるし……こいつはもらった」

 

 シロは猫が獲物に飛びかかるようにダイナミックに飛び、ライムのいる場所に着地しライムを担ぐ。

 

 「ああ!!」

 

 ヤミは声を挙げて驚き、ナナとモモはきょとんとした表情でシロを見る。

 

 「おいてけ……おいてけ……」

 

 リトはシロの前に立ち置いてくように促した。

 

 「こいつは、重要参考人だ……銀河警察に預けさせてもらう」

 

 「でも……そいつは俺の子だろ?」

 

 それを聞いてナナとモモは驚いた、初耳なのもそうだし……

 

 「え!?」

 

 「マジか!?どういう事だ?」

 

 「あんまりおおっぴらに言うのもあれだけど、そうさ。だからこそ貴方達の元に預ける訳にはいかないんだ。被害者遺族の感情を余計に悪くさせないように、私刑をさせないようにってのも銀河警察の役割でね……変に情が湧かれても困るんだ」

 

 「え……でもクビになったんですよね?」

 

 「警部がいる、だから警部に引き渡せば良い」

 

 「わざわざ私達がそうさせるとでも?」

 

 モモはシロに向かって睨みつける。

 

 「対策はしている、姉さん以外はな」

 

 シロは除草剤とスプレー缶を出してきた、スプレー缶には唐辛子と書いてあるのが見て取れる。何か出たらすぐに吹きかける気だ。

 

 「これがあればキャノンフラワーも何も怖く……!!」

 

 モモはシロに高速で近づき、シロの腹部に一発を放つ!!

 

 「があああああああ!!」

 

 シロは衝撃のあまり、眼と口から銀色の粒子を吐き出し膝を地につけた。

 

 「お供を呼び出すだけが私達の強さじゃないんですよ白猫君」

 

 「おいたわしやシロ………」

 

 「勉強になった……」

 

 「その人を放して」

 

 「ダメだ…………こいつと話させる訳には!!こいつの言葉聞いたら悲しくなるぞ」

 

 「それは私達が決める事です」

 

 『ちょっと待ったー!!白猫やー!!』

 

 白馬に乗る法衣を着た透明人間が、突進するようにこちらに、ライムに向かって来ている。

 

 『それ以上争うのは良くない、皆様方ーふるへゆらゆら……破ァ!!』

 

 法師の袖がライムに近づくとライムは額に何かを当てられたように揺れた。

 

 「一体何を!?」

 

 既に距離が離れているが、法師は振り返る事無く大声で喋る。マイクを使っているのか、声に機械的なエコーもついて……

 

 『妖巫女(あやかしみこ)のように他人に無償でくれてやるような魄力の無い拙僧にできるのは単なる気つけのみだ……が、死人でなければ効果はある』

 

 よく分からない言葉が出てきたが人はそれをケチという、だが魄は命の一部というらしいからあまりそれをケチるからといって責める筋合いは無いのかもしれない。

 

 「ううん………」

 

 『そいつの魂力、つまり精神力は今は不安定だ。もしかしたらライムとやらは記憶喪失になっているかもしれん、精神力の基盤として記憶は割と占めているから……もうこれしかする事は無さそうだし、じゃあ、お静ちゃんとその他諸々の安否を確認してくるから』

 

 法師は全速力で駆け抜けていく。車ならば法廷速度は余裕で越えるような勢いで……追いかけるという選択肢を取らせる間も与えてはくれない。

 

 「なんだったんだ……?」

 

 「急に去ってくんだもんな………話も聞けなかった」

 

 ナナは動物と心を通わせられるのだ、馬に話を聞く気だったのだろう……

 

 「でも初めて見たな、あんな馬……」

 

 影も形も無くなり、追えなくなった馬と法師より……それよりもライムだ、ライムが目を覚まそうとしている。

 

 「こうして見るとそっくりですね……」

 

 モモは良いものを見たかのようにうっとりとしていた。確かにそっくりだ、だからこそ向き合わなくちゃいけない。

 

 「………………んん」

 

 ライムは目を覚まそうとしている。

 それを聞いてか、シロは彼を担ぐのを止め、ゆっくりと降ろす。

 ライムは瞳の色まで、美柑そっくりで……リトは懐かしくなった。

 

 「…………誰!?」

 

 ライムは、リト達の顔を見るなり怯えるように顔をひきつらせ、後ずさりしていた。

 

 「助けて」

 

 ライムはシロの後ろに隠れる。

 

 「お、落ち着いてください」

 

 「お姉さん達を見てると、怖いんだ…………オレなんか消えてしまえば良いって……思わずにいられない」

 

 あまりの突然っぷりに言っている言葉の内容の重さとは逆にしんと静まり返ってしまった。

 

 「あ……ごめんなさい、オレ……自分でもどうしてそうなのか全く分かんなくて」

 

 記憶を失ったという情報は本当のようだ、その為もう情報は聞き出せないだろう。ほっとするような、そうでもないような……

 

 「リトさんそっくりの面でそんなに怯えられると……ショックです」

 

 モモは少しふてくされ、顔を膨らます。

 

 「モモ、他に言う事あるだろーが」

 

 ナナはライムを抱きしめる。

 

 「よしよし……大丈夫だからな……落ち着けよ……」

 

 「う……うん………」

 

 ライムは少し安心を得たように背を丸くした。

 

 「雨降って地固まるとは言っても、その雨が強すぎるとな……さて、どう転ぶか」

 

 その様子を眺めていたシロが呟くと、空から列車が現れた。

 緑の機関車のように見える列車。

 春菜にララは、風夏は時の列車を持つ人と会う事ができたのか?

 

 『空を翔る列車とは………素晴らしい、見てて気分が晴れ渡るようです』

 

 折れたはずのブラディクスは、何もなかったようにシロに語りかける。

 

 「え……生きてんの?」

 

 『マダムの良き血を蓄えた、しなやかな体から繰り広げる攻撃は大変美しく極まっていました。ですが私様折れたくらいで壊れはしないのです』

 

 ブラディクスは、ビチャビチャと液体音を立てつつ折れた刃をたちまち接合する形で修復した。

 

 「うわぁ……どうやったら永眠するんだ?」

 

 『それは……』

 

 「ゴクリ」

 

 『ヒ・ミ・ツ』




いかがでしたか?
良識のある吸血鬼は、今回のブラディクスのような事を考えてはいけません。
ではまた……ビギュン(効果音)
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