僕はサシェンカを背負いながらふと僕が子供だった頃を思い出していた…僕は幼い頃に母とメトロに移ったがすぐに暮らしていた駅がネズミに襲撃されたのだ
その戦いで母は死にアレクセイに助けられた、僕はもはや自分の母の顔を思い出すことはできない…
サシェンカを背負い自由が効かなくなった僕をカバーするように74と2012は警戒をしてくれている
「見張りなら僕にも任せて」
サシェンカもそう言うが、僕だけでは無く、頼りになる仲間がいる以上サシェンカにも気を張らせることは少ないかもしれない、そんなことを思いつつトンネルを進むがトンネルには逃げ遅れた難民や家畜だったものが散乱しておりミュータントの襲撃の苛烈さが見て取れる。
そんな有様の通路であろうともサシェンカはさして気にも止めず辺りを見回している、もはや死が日常と化したメトロでの生活しか知らない子供たちには死体と言う物は見慣れてしまっているのだ。
「ここから進めるわ」
2012はトンネルの脇道を見つける。
脇道にはまだ新しい人とミュータントの死骸、この先に難民たちが逃げていったのは間違いないようだ…
僕たちは逃げた難民たちを追いながらトンネルを進み続ける、時折奇襲を仕掛けようとするミュータントを始末する。
遠くから怒号と銃声が聞こえてくる
「まだかなりの距離があるが難民たちはまだ生きている。できるだけ急ぐぞ」
74はそう言うとあたりの警戒を強めつつ少し速度を上げる
「気を付けて穴があるよ」
サシェンカは地面を指差す、そこにはミュータントどもが開けた巣穴のような物が点在しており、覗き込んでも穴の底は見えない落ちたら生きては帰れないだろう…
僕たちは穴に落ちないように最新の注意を払う、そして通路を抜けると広い空間にでる。
「ここでは、グレネードを使っちゃ駄目だよ、ママが言ってた」
サシェンカは僕たちに言う
「確かに、天井が崩れかかっているわ、爆発物をここで使ったら一緒に生き埋めね」
2012はそう言うとミュータントの巣穴を警戒しつつここを通り抜ける。
僕たちは通路や排水路を抜け、ようやく駅から離れることができる道を見つけることができた、難民たちもこの先へと抜けていったに違いない
「ほんとに駅から離れるの?やった!駅から出たことないんだ!ママが言ってたよ、子供が居なくなっちゃう怖い場所だって」
サシェンカは生まれ育った駅から初めて離れると言う好奇心と不安から僕たちに話しかけてくる。
「えぇ駅から出るのよ、怖いモンスターはアルチョムと私たちで追い払うから大丈夫よ」
2012はサシェンカを安心させようとしている、意外と面倒見が良いのだなと僕は思った…
トンネルを進むとかつての換気穴に出る。メトロ内で自然光を見ることができる数少ない場所だ。
「なに?上のアレ?おじさんの写真で見たことがある…」
「あれは…空だ!あれが空でしょ!まるで天井を塗ったみたい…これで有名人だ空を見たぞ!」
サシェンカは生まれて初めて外の世界を見たことにはしゃいでいる。
メトロで生まれた新世代の子どもたちは太陽を見たことはない、僕はそんな子どもたちを新しい種族なのでは?と思ったことを思い出す。
「えぇ、あれが空よいつか間近で見れるといいわね」
2012もサシェンカに話しかけている、
「上に行くしか無いようだな」
そんなことをしつつ74は先へと進む道を探し僕たちに教える。
「足場が不安定だな」
僕は74に言う
「ここしか通れる道はない、サシェンカを背負ってるんだ気を付けろよ」
74に言われ僕は金属の細い橋をかけられた道を上へと進み始める、時折橋が鈍い音を立てて軋むのを感じると思わず冷や汗が出る。
一人づつ橋を登っていき最上段へと辿り着く、細い道を進んでいると何処からか声が聞こえてきた
「離して!この人でなし!サシェンカがまだ外にいるの!おじさんが送るって言っても自分出迎えに行けばよかった」
どうやらサシェンカの母のようだ僕はサシェンカの母が生きていたのだということに喜ぶ
通路に辿り着くと、母を見つけたサシェンカは僕の瀬長から飛び降り駆け出す
「ママ!ママ!」
サシェンカは無事に母親と再開を果たした。
「ありがとよ、あの子は大切な存在だった…」
難民の一人が僕たちに礼をする
「サシェンカ!生きていたのね!ケガはない?おじさんは?どうやってここまで来たの?」
母親はサシェンカを抱きしめる
「おじさんは死んじゃった…けど、この人たちが助けてくれたんだ!」
サシェンカは僕たちを指差す
「なんてこと、息子を助けてくれてありがとう…大したお返しはできないけど、この弾薬を受け取って、少しは役に立つだろうから…」
サシェンカの母親はなけなしの
僕たちは顔を見合わせ、その弾薬を母親に返す。
「まぁ、なんて…ありがとう」
母親は言葉に詰まりながらも感謝をする
「これでよかったのよ、サシェンカ元気でね」
2012も母親とサシェンカに話すと僕たちはそこを離れる。
「ふむ、聞いてくれ」
74は僕たちに話しかける
「彼らから聞いたが、ブラック駅に辿り着くには一回地上に出なければならない、しかもファシスト共が外の壊れた施設を前哨基地に使ってるらしい、彼らが地上への出入り口まで案内してくれる、行こうか…」
74はそう言うとトンネルを奥へと進む
僕たちは難民たちの列を抜け地上への出入り口へと辿り着く
「待ってたぞ、通っでくれ」
兵士は地上への出入り口を開く
「幸運を祈るよ」
兵士はそう言うと扉を閉める
「行くぞ!」
僕たちはまた最悪の地上へと足を進めた…