METRO Dolls   作:kapebarasan

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休みの日が、仕事になった眠い


旅の始まり

 

 

 

 

 

 ハンターは戻って来なかった。

 駅を離れてポリスを目指す口実を見つけるのは楽ではなかったが、約束は約束だ。

 翌日リガへ向かうキャラバンがあり、護衛役を探していると聞いた僕と2012は、すぐさまその仕事に志願した

 

 

 

 

 「アルチョム!おいアルチョム!」

 

 僕は、僕を呼ぶ声で目を覚ましそちらに体を向ける

 

 「準備できたか?」

 

 「全くマイペースな奴だ、ともかく装備を取ってホームへ行け、連中は俺たちを待ってる向こうで落ち合おう」

 

  「アルチョム、忘れ物するなよ〜」

 

 僕の友人であるユージーンに起こされた僕は、寝床から立ち上がり、机の上から軍用弾薬(お金)とメモ帳を取り部屋を後にする。

 

 「寝坊助ねぇ、キャラバンの人たちも待ってるわよ、さっさと準備して行きましょう」

 

 部屋を出た僕に2012が話しかけてくる。いつから待っていたのだろうか…僕は彼女に頷くと駅の中心部に向けて歩を進めた。

 僕達は住居区の喧騒を抜け、駅中心にある交易所に辿り着いた。

 交易所では、露天の商人たちが、軍用弾薬(お金)と物品を交換する店を開き、両替商がメトロで一番の交換レートだという触れ込みで軍用弾薬と低品質弾薬の交換をしている。

 僕は、その一角にある武器庫に立ち寄りキャラバンの護衛に必要な武器及び装備の調達を行うために武器庫番をしている男に声をかける。

 

 「やぁ、アルチョム武器がほしいのか?」

 

 僕はそうだと武器庫番に伝えた。

 

 「じゃあ、見てってくれ」

 

武器庫番はそう言うとカウンターの下から一丁の銃を取り出す。

 

 「5.45mmサブマシンガン、アーモリー製だ命中率は悪いしすぐ熱くなっちまうだからバカマシンガンなんて呼ばれてる。」

 

武器庫番が銃の説明?をすると彼の後ろから女の声が聞こえて来る

 

 「だれが、バカマシンガンだって!!」

 

 「携行性も抜群だし、メトロの護衛武器として私ほどの適任は居ないんじゃない?それにちょーっと手を加えればカラシニコフなんかに負けないくらい良くなるんだから!!!」

 

 僕は突然聞こえてきた早口な叫びに少し後ずさる、武器庫番は少し困った顔をしながら声に返答する。

 

 「そうやってすぐ熱くなってまくしたてるあたりこの銃の人形だな!」

 

 武器庫番が言い返すと

 

 「いやっそんなに褒めたってさっきバカにしたことはゆるさないからね」

 

と嬉しげな返事が帰ってくる。

 

 「はぁ…うちの従業員(人形)なんだが…このマシンガンと同じでバカですぐ熱くなっちまうもんでな…アルチョムすまなかったな」

 

武器庫番は小声で僕に言う

 

 「ハハハッショートバーストで使えよ、助言だ」

 

僕は、マシンガン(バカマシンガン)を手に取りホルスターに入れる。

 

 「弾も少し持ってけ、見苦しいもの見せちまったせめてものお詫びだ」

 

そう言うと保弾板に装填されたメトロ製5.45mm弾を2本僕に差し出す。

 僕がそれを受け取り、弾薬ポーチに仕舞うと武器庫番は再度カウンターの下から装備品を取り出す。

 

 「それと、バッテリーの充電に使う万能充電器、放射能汚染地域とか崩壊液汚染地域それに地表に出るためのガスマスクとそれのフィルターだろ」

 

 「あと、軍用の治療キットを持ってけ」

 

それらを受け取り装備する。

 

 「よし、これで全部だ頑張れよ」

 

僕は、武器庫番に感謝を述べその場をあとにする。

 

 「はぁ…準備終わった?」

 

 2012は僕に待ち疲れたといったように話しかける。

 あと一つ寄るところがある、と伝えると

 

 「あぁ、アレクセイのところか、出発との前に挨拶くらいはしておかないとね」

 

 彼女はそう言うと

 

 「さぁ早く行きましょ」

 

僕の腕を掴み引っ張るように養父(アレクセイ)のもとへと連れて行った。

 

 

 僕は、2012に連れられ養父(アレクセイ)の居る部屋のドアを開ける。

 彼はデスクに座り事務作業をしていたが扉が開くとそちらに視線を向ける

 

 「出発の準備はできたか?」

 

アレクセイは、僕と2012に話しかける。

 

 「えぇ準備はできてるわ、アルチョムもそうでしょ?」

 

 「あぁ」

 

2012につられて僕は返事をする。

 

 「そうか、わかった。」

 

 「知っていると思うが我が駅はリガとの同盟を締結しつつある、こちらからレールカーで人道物資や武器、装備を送ることになった、その車両の警備がお前たちの任務だ」

 

 「距離はそれ程ではないから、難しい任務ではない筈だ、地表探索をしてきた2012も居ることだしな」

 

 「頑張れよ、アルチョム」

 

僕は、養父(アレクセイ)からの激励を受け、黙って頷き2012と部屋を出た。

 

 僕たちは駅のホームにいた、ここでキャラバンのメンバー達が待っている、辺りを見回すとこちらに口笛を吹き手を振る男を見つけた。

 

 「おーい、アルチョム」

 

 「こっちだ早くしろ」

 

 ユージーンが僕たちを呼ぶ、彼のそばにはロシア帽を被った男性が立っている。

 

 「よぅ元気か?出発の準備はできたか?」

 

 キャラバンのリーダーが僕たちに尋ねる。

 

 「準備はできてる、さぁ行こう」

 

僕はそう答えると線路に置かれているレールカーへ向かう

 

 「そこへ座ってくれアルチョムそれに2012だったか」

 

 「ユージーンお前はこっちだ」

 

リーダーが席を決めていく、

 レールカーは車体中央に設置されているレバーを交互に押すと動く仕組みになっており、僕はその正面に座る。

 出発しようとしたとき

 

 「なぁ、リガへいくのか?」

 

 ホームから話しかけられる

 

 「あぁそうだ」

 

リーダーは答える

 

 「頼む、乗せて行ってくれないか?」

 

男が同乗を希望するとリーダーは

 

 「もちろん、だがタダじゃないぞたまにレバーを押してくれ」

 

と、同乗を認める

 

 「もちろんさ」

 

と言い男がレールカーの空いている座席に座る

 

 「よし、じゃあ行くぞ」

 

 「俺たちに幸運を、出発だ」

 

リーダーはトロッコを走らせ始める

 

 僕が(故郷)の外に出るのは今回が初めてだった、そして養父(アレクセイ)に本当のことを話さなかったことが気がかりだった。

  リガからすぐに戻るわけではない、と

だが、ハンターの信頼を裏切るわけにはいかない、彼の忘れ形見となってしまった2012の為にも…

 

 トンネルをレールカーが進んでいく、道中僕たちは世間話をしつつ進み旅は今のところ順調であった

 同乗してきた男は、現在メトロはレッドライン(共産主義者)ファシスト(第四帝国)、ハンザといった組織が統治しており、ハンザを通ればポリスへと辿り着けるが、ハンザは排他的でよそ者をあまり受け付けない、だからといって他の道はレッドラインとファシストの戦争の最前線であり無事に通れる保証が無いと語っており僕は旅路に一抹の不安を覚える

 

 「速度を落とせ!」

 

突然線路脇から兵士が命令をする、僕たちはレールカーを止めて兵士に事情を尋ねた、兵士は

 

 「アレクセイエフスカヤの近くで軍のキャラバンが足止めされている、保安用トンネルを使ってアレクセイエフスカヤを迂回しろ」

 

と僕たちに迂回を命じる

 

 「あぁ…あのトンネルは好かん」

 

リーダーから不満の声が漏れる

 

 「わかった、トンネルを開けろ、ここでずっと止まってても意味がない」

 

リーダーは保安用トンネルを通る決断を下す

 

 「なんで?そのトンネルの何がだめなの?」

 

2012はリーダーに尋ねる

 

 「まぁ…普通のトンネルと同じで薄暗いのだが、ワシは先月そこを通り抜けたそして…とにかく好かんのだよ」

 

リーダーの歯切れの悪い答えに2012は納得いかないといった表情を浮かべる

 レールカーは切り替えられたポイントを渡り薄暗いトンネルの中へ入っていく…

 

 「レールカーに乗ってるし、武器もあるきっと無事に抜けられるだろう」

 

リーダーは自分自身に言い聞かせるように呟く 

 

 トンネルは先程までの【主要道】と異なり手入れが行き届いていないのかあちらこちらがひどく傷んでいる

 

 「ユージーンレバーを押すのを手伝え」

 

リーダーが命令するとユージーンは武器を置き、レールカーのレバーを操作する

 

 「ここからスピードを上げていく周囲の警戒を怠るなよ、頼むぞアルチョム、2012」

 

リーダーの指示に僕と2012は武器を構えて警戒する

道を進んでいると耳鳴りがし、リーダーと男が意識を失う

 

 「一体何が起こってるんだ?」

 

 「何?みんなどうしたの?」

 

2012とユージーンが困惑し、僕は進行方向からそちらの方向に向きかえるとレールカーの後方に眩しい光が輝いており僕とユージーンも激しい耳鳴りとともに意識を失ってしまった。

 

 

 僕は白い空間にいた。

 

 「アルチョム!」

 

僕を呼ぶ声がする…

 

 「こっちだ!」

 

ハンターが何かと戦っている

 

 『我々が生き残るにはこの驚異を排除しなければならない、どんな代償を払っても排除しなければならない!』

 

最後にハンターが語っていた言葉が響く

 ハンターが銃を発砲する、射線の先には何も見えない…突然虚空から黒く長い腕が飛び出しハンターを襲う

 

 「グァァァ!!」

 

ハンターは痛みの悲鳴をあげ地面に倒れ伏す

 僕に黒い腕が伸びてくる、しかし腕は何もせずに僕から遠ざかっていく…突然乾いた銃声が離れていく腕に向けて放たれる

 

 「起きて!!アルチョム!!」

 

 2012が僕を揺さぶり起こす。

 

 「良かった、早くみんなを起こすわよ!」

 

 僕は頷くとユージーンを揺さぶる

 

 「なっ何が起きたんだ?」

 

 「私もわからないわよ、すごい光が見えたと思ったら皆気を失っているんだもの…」

 

 皆困惑しつつもリーダーや男を起こすべく立ち上がる、

ネズミの鳴き声が聞こえる、僕はレールカーの後方を見ると大量のネズミがこちらに逃げてきている

 

 「何か来るぞ!」

 

僕は、叫び銃を構える

 

 「起きろ!、起きろボリス!早く起きろ!」

 

ユージーンはリーダーを起こそうと必死に揺すっている

 

 獣の鳴き声がトンネル内に響く…暗闇からミュータントの群れが現れこちらに走ってくる、僕はサブマシンガン(バカマシンガン)をショートバーストでミュータントに叩き込んでいく

 

 「こんなときに!」

 

2012も自身の銃で応戦する

 

 「あー!!!」

 

ユージーンはミュータントから逃げるべくレールカーのレバーを操作する、レールカーは操作に答え移動を開始する

 ミュータントがレールカーにジャンプし取り付く、僕は近距離のフルバーストをミュータントに撃ち込み落下させる、一匹落とされたことなど気にも止めず群れはこちらに迫ってくる

 銃声や争う音でリーダーが目を覚ます、それと同時に男がミュータントに掴まれレールカーから引き摺り下ろそうとする

 

 「アルチョム!これを使え!」

 

 ユージーンは自身のショットガンを僕に手渡す、僕は男を引き摺り下ろそうとしているミュータントに散弾を叩き込む

ミュータントはレールカーから落下していくが男の服に爪が引っ掛かり男も一緒に落ちていってしまう、

 

 「クソッ!!」

 

僕の口から悪態が飛び出す、その瞬間僕の右肩に強い衝撃が走る、ミュータントが僕に体当たりをしたのだ

 

 「アルチョム!!駄目ぇ!!」

 

2012の叫びが聞こえる…

 

 僕はレールカーから転げ落ちその衝撃でトンネルの隙間に入る

僕の目の前をミュータントの群れが通過していく…

群れが通過した後、僕は隙間から抜け出しレールカーへ全力で走った、鐘の音が聞こえる…駅が近かったようだ

 

 「アルチョム!!こっちよ!!」

 

2012が伸ばす手に捕まり僕はレールカーに引き揚げられる

 

 「燃やせ!!」

 

 駅の見張りが備え付きの火炎放射器をトンネルに向けて発射する

 

 「ヤツらをぶっ飛ばすぞ!!」

 

数秒後そこには黒く焦げたミュータントの死体と先程より炎で明るく照らされたトンネルが残っでいた…

 

 「良かったアルチョム、あなたまで居なくなっ…いいえ取り敢えずは無事を喜びましょう、全くドジなんだから」

 

 2012は心底安心した様子で僕に語りかける、彼女のその表情を見て僕は生き残れたのだと改めて実感させられた…

 




チョイ出しバスタードちゃん(容姿は決めてない

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