「オルデル・エナジウムとは聖界ファバーナの北西部に位置するポワティエ鉱山から発掘されインパール博士によって実用化されたのです」
俺は講義を受けている。もちろんギャレもクリスもいる。マシリアはとっくに修了しているはずだ。席に座っている四人に一人は眠気に教われているか、夢の中をさ迷っているかだ。ギャレなんか夢と現実を行ったり来たりしてる。寝言が全て軍に入って経験したことばかりだから、嫌でも鼓膜に響く。
「オルデリクスとはオルデル・エナジウムを装着したソルダ、すなわち聖剣は器であり授術媒介機能を有する援護と強化を同時に行うことが可能な授術方式のことであります」
なんとも難しい単語を羅列した授業を行っているのがサヴァン・ロード先生だ。若干十六歳で教官になった秀才。同じ年の俺とは雲泥の差だ。
マシリア曰く、聖界の中でもかなり高貴な地位にいるらしい。王位を継承する権利があるとかないとか。政治の話はよく分からない。
クリスがこっちを見てニコッと笑った。それが何を意味するのか俺にはわからない。
「ファバーナの父と呼ばれるオウル・グランヴィアによってもたらされた破壊的革新的技術をグランヴィア・オーバー・テクノロジーと呼ばれています。そして応用した理論体系をゴット(GOT)システムと名付けられました。オルデル・エナジウムを用いた技術との類似性は指摘されますが仮説の域を出ず、今ではテクノロジーの存在そのものを疑問視する声が多いと言われています」
グランヴィア・オーバー・テクノロジーか。ノートに書くだけでもロマンを感じる。頭文字を取るとジー・オー・ティーなる。つまりゴット。神様か?いや、神様はゴッドか。
「次に思念体の歴史について――」
あっ!鐘がなった。もう終わりか。ノートを取るのは好きじゃないんだけど、こういう横文字の多い話をする授業って嫌いじゃないんだよ、俺。
「最後にギャレ・ボマード君、君に問題をプレゼントしましょう」
「へあ……?」
完全に寝ぼけている。しかもまだ寝ようとしている。
「グランヴィア・オーバー・テクノロジーの理論を体系化したシステムを頭文字を取ってなんと呼ばれるでしょうか?答えてみて下さい」
駄目だ。机にうつ伏せでヨダレを垂らしてノートが無惨な姿を晒している。
(トムが代わりに答えてあげたら?)
ロード先生には聞こえない程度の声で囁くクリス。
(バレたら俺も補講しなきゃいけなくなるんだぞ)
(じゃあワタシが代わりに答えるね。バレたらトムに強要されたって言っちゃうから♪)
(汚ない。メチャクチャ心が汚れてるよクリスは)
(しょうがないよね。だってワタシたち仲間でしょ?)
都合のいい言葉だな。仲間って。
(罪な女でしょ?ワタシって)
なんでちょっと嬉しそうなんだ?
とりあえず早く答えないとマシリアにもまた怒られちまう。
(ゴッド・システム……)
「聞こえません。もう少し大きな声で」
「ゴッド・システムです!」
「違います。
やっちまった……。
「ギャレ・ボマード、そしてトム・シェマーゼの二名は特別補講を受けるように」
「ええっ!?俺も!?」
「ふふふ……なにゴッド・システムって。神様じゃないんだから」
クリスは就寝前まで弱味を握ったかのように笑いのネタにしてきた。ギャレも日頃の憂さ晴らしの標的にしてきた。元はと言えばお前のせいだろ。
でもマシリアなら放って置いてくれると思ったが、そんな淡い期待は呆気なく打ち砕かれた。
「君には笑いの神様が憑いているんだろう」
俺は一晩中、枕に顔を埋めて泣いた。