雪が溶け、細く繋がった紐は結ばれ、色彩豊かな春は来る。   作:佐倉彩羽

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佐倉彩羽と申します。
本日よりシリーズ、やはり俺の青春ラブコメは間違っている。のオリジナルストーリーを投稿していきたいと思います。
今回は本編の前の短いエピソードです。
注意です。
語彙力が一切ない頃(今もですが)に書いた作品の為、皆様が理解不能になる可能性があります。
原作 やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。の表現を直接、使用している箇所がございます。
以上のことを把握した上で、お読みいただけると嬉しいです。


やっぱりうちの生徒会長はあざとい。

放課後の総武高校、特別棟。

  そこは本来ならば一切喧騒は聞こえず、

静かに佇まっているはずだった。

そう、廊下をドンドン走る音なんて聞こえない。

後ろから生徒会長様が走って

こちらへ向かってきているなんて知らない。

 

「せーんぱいっ!」

 

ドスンとした衝撃が背中に来る。

  あいったぁ……なんだこの会長。

  挨拶がわりにバックで殴ってくるって、

あの某国民的アニメの音痴な暴君より酷いぞ。

でもあれは映画になるとイケメンになるよな。

あのシステムなんなんだよ。

 

「あいったぁ……なんだよ仕事の手伝いならやらないぞ?

今日は部活ないからいち早く小町の元へ帰りたいんだが……」

「そのシスコンっぷりは引きます気持ち悪いです」

「千葉のお兄ちゃんは皆シスコンなんだよ!」

そうだ。千葉のお兄ちゃんみんなシスコン。

シスコンに悪いやつはいねーって!

 

「そんなことはどうでもいいんですけど……

私、今日暇じゃないですかー」

「いや知らんわ。」

  実際こいつが平日何してるかなんて知らない。

「せんぱいも暇じゃないですかー?」

「いや俺の予定聞かないのかよ。」

「だってどうせ何もないじゃないですか。せんぱいぼっちですし。

なので、せんぱいには荷物持ちとして、

一緒に買いものに行ってもらうのですっ!」

「は?だから俺帰るっ」

そう言いかけた所を俺の言葉を遮り、

一色はニヤついた顔で言う。

「生徒会長にさせた責任、取ってくれますよね?」

 

  はぁ、それを言われると弱い。

  こいつは一色いろは。俺の後輩で、

訳あって生徒会長を務めている。

まぁ仕事は俺が手伝わされてるんですけどね……

手伝いに連れていかれる時に、

雪ノ下と由比ヶ浜の目が怖いのをどうにかして欲しい。

はちまん、こわい。

 

「はいはい……。で、どこに行くんだよ?」

「駅前のショッピングモールです!

じゃあ荷物取ってくるのでせんぱいは

校門で待っててくださいね〜! ではでは!」

 

  彼女はあざとく敬礼をして、

走って生徒会室の方向へ走っていった。

いや廊下走っちゃダメだろ。走り方までもあざといし。

 俺は自転車を取って校門で待つことにした。

あの子から逃げてもずっとついてくる気がする。

何それ考えただけで怖い。

 

  到着して三分ほどで、彼女の姿が見えた。

昇降口から降りると、俺の姿を見つけたのか若干小走りする。

「すみませーん、少し準備に手間取っちゃいまして……」

そんなあざとく息ゼェゼェさせんな。

可愛いと思っちゃうだろうが。

まぁ実際こいつは顔だけは可愛い。性格が致命傷なだけだ。

 

「あぁ、すっげー待ったわ。」

なんか頬をふくらませこっちを見てる。あざとい。

「そーこーはー、今来たとこって言うとこじゃないんですかね?」

「はいはいそうですね……さっさと行くぞ。」

「はーい。せんぱい、後ろ乗せてってくださいよー」

「ダメだ」

「即答!? ひどくないですかー?」

 

それはそうだ。ここはマイスウィートエンジェル小町専用だ。

あと後ろに乗ったら絶対背中かどこかに掴まるだろう。

そしたら俺のSAN値がピンチになってしまう。

「ひどくないひどくない。荷物は預かってやるよ、ほら。」

  一色から荷物を預かると、やけに軽い。

こいつ家で勉強してねえだろ。マジで。

「せんぱい鞄の中空けないでくださいねー?

漁ったら通報しますよ?」

「そんなことしねえっつーの……。」

 

 校門を出て、駅に向かって歩く。

  彼女と二人で出かけるのは、

デートコースを試すとかなんだかの理由で千葉を回った時以来だ。

あの時は卓球をしたり、カフェに行ったりして、

思ったより楽しかったのを覚えている。

そう考えると、彼女とは奉仕部のメンバー以外で

それなりに同じ時間を過ごしたのだと、

この一年間を思い出していたら、あっという間に着いた。

 

「せんぱーい、さっさと行きますよー。」

「はいよ。」

  自転車を止め、彼女が待つところまで歩いていく。

一月から猛威を奮った寒波が一段落し、

花や草木が芽を出す頃になっている。

 

「もうこんな時期か……。」

「もう少しで三月ですからね〜、私も入学して一年ですよ。」

「時の流れって早いな……。で、何買うんだ?」

「めっちゃスルーしますね、部活の備品ですよっ」

いや、今のからどうやって話を広げろというんですかね。

プロのぼっち舐めるなよ?

でもちゃんと休みの日を使って

部活の備品を買いに行くのは偉いと思う。

そういうところ八幡的にポイント高い。

 

「あいよ。さっさと行くぞ。外寒いし。」

  店の中に入り、一色は買うものを決めていたのか、

数分で買い物を済ませていた。

あれ? 俺が今日来た意味ある?

「お待たせしました〜」

「やけに早いな、よし、帰るか。」

 

 今日は金曜日。一週間の疲れを癒し、ゆっくり休みたい。

 週末はスーパーヒーロータイムからのプリキュアという、

大事な用事があるのだ。

 

「ちょっ、待ってくださいよ!」

「なんだよ買うもん終わったんだろ?」

「まだ時間ありますし、ちょっと遊んでいきませんか?」

「やだ。帰る。」

「えー。遊びましょうよー、可愛い後輩と遊べるチャンスですよ?」

「いや別に遊びたくないし。俺帰ってコタツ入りたいし

休みたいし小町に会いたいし。」

「可愛いは否定しないんですね〜、

でもシスコンっぷりはは引きますけど。」

「ほっとけ」

 

実際こいつ顔は可愛いから否定できないんだよなぁ……

そして千葉のお兄ちゃんは皆シスコンって言ってるだろうが。

 

「じゃーせんぱい、妹さんの誕生日プレゼント買いません?」

「よし行こう。まずはどこから行く?」

「切り替えはやっ! えーと、こっちの方とか……?」

「あいつも頭の悪そうなぽわぽわしてるの好きそうだからな」

こいつは男ウケに全ステータスを振っているから、

そっち系は強いはずだ。

まぁ小町は誰にも渡さないんですけどね!

「りょうかいでーす!じゃあ行きましょうー!」

 

 一色がおすすめした店は、男一人で入りにくそうな店だった。

「おい一色。俺店の外で待ってるから。」

「はい?せんぱいも一緒に行くんですよ?」

なんだこいつの顔。

きょとんと首傾げて可愛い顔で「戦争反対。」みたいな

正論を言ってくるのが腹が立つ。

 

「いや、それはあれがあれでな……? 

あ、俺より一色の方がこういうの詳しいだろ?」

一色は意地悪そうな顔でこちらを見る。なんだよ。

「へぇ〜せんぱいって妹さんの誕生日プレゼント、

自分で選ばないんですか〜

せんぱいの妹愛ってそんなもんだったんですね。」

 うわぁ……、痛いとこつかれた。

しかし俺の妹愛がこんなもんだと見られるのは、

流石に千葉の兄として恥だ。

 

「よし、行く。」

「せんぱいちょろっ」

「ん?なんか言ったか?」

「いーえ何にも!さぁさぁ行きましょ〜」

 

結局一色に勧められるがままに、

フリルがついたエプロンを買った。

「……これ、こんな値段すんのかよ」

「せんぱい妹ちゃんのだからって気合い入りまくりでしたよっ」

「じゃあ次はゲーセンです! ゲーセン! 行きますよ!」

「おいちょっ」

 

 一色に腕を引っ張られ、結局ゲーセンへ。

「せんぱい、プリクラですよ、プリクラ! 行きますよ!」

プリクラか……。前戸塚と撮りに行った以来だな。

あれは男子同士だったからギリ撮ることができた。

いや、戸塚は戸塚だ。男じゃない。まだ可能性は残ってる!

 

「無理。それだけは無理。それに取る理由が無いしな。」

「可愛い後輩との思い出が増えますよー?」

「お前と半年近く過ごしたから思い出なんて山ほどあるわ……」

 こいつとは生徒会選挙の時から関わっているが、

人との関わりがほぼない俺にとっては、

奉仕部の次に関わった奴かもしれん。

「……せんぱい熟年夫婦の会話みたいですよっ。

思い出が山ほどとかっ」

 

……うわ。俺めっちゃ恥ずかしいこと言ってるじゃん! 

無意識って怖い。ナチュラルに死にたくなる。

「そうだな、自分で言って気持ち悪いと思った。

で、帰るんだっけ?」

「せんぱい……ダメ、ですか?」

 

出た! いろはす名物上目遣い! もうこの手には乗らないぞ!

……そんな目をうるうるさせるな、

可愛いしちょっと俺が悪いみたいになる。

そして周りの目線が痛い。これは諦めるべきだな。

 

「まぁ、一回位なら。」

「やった! じゃあ行きますよ!」

 連れられるまま、一色は筐体を選び、慣れた手つきで操作する。

プリクラってなんであんなビッチくさいんだろうな。

三浦が清楚に見えてくるぞ。

 

「いっくよ〜!」

筐体から音声が流れる。

「せんぱい、笑って笑って!」

「えっそんな笑えって言われても急には」

 

パシャッ。

 

今の顔絶対酷かった。もうはちまん、みたくない。

「もういちまーい!」

……嘘だろ。

焦っているあいだにまた一枚。

 

「さいごだよー!」 

 横の一色は最後ということでかなり近づいてきた。

こいつすげえいい匂いだな。女子高生って感じ。

 シャッターをきる直前、一色は俺の脇腹をつついた。

思わずにやけてしまう。

 

  パシャッ。

 短くシャッターを切る音が聞こえる。

「せんぱい、いい笑顔でしたよ!」

「こんやろ……」

 

 デコレーションは一色が全てやってくれた。

「はい、せんぱいの分です!」

「おう、サンキュ。」

「携帯に貼っていてもいいんですよ?」

「いや貼らねえから。お、そろそろいい時間だな。」

 よし、これで帰れる!小町が待ってるマイホームへ!

 

「せんぱい、お腹すきましたぁ」 

 確かにそろそろお腹が空いた。

 小町の誕プレ買うのを手伝ってもらったし、

ご飯は食べてからの方がいいか。

「もうこんな時間だしな。サイゼでも寄ってくか。」

「せんぱいほんとサイゼ好きですね……」

 

 結局サイゼでご飯を食べることにした。学生に優しいサイゼ、最高!

「美味かったな。」

「美味しかったですね〜。あ、奢りありがとです。」

「あぁ、気にすんな。そろそろ帰るぞ。

お前ん家の親も心配するだろうし。」

 結局二十一時三十分。かなり遅くなってしまった。

「まぁちょうどいいですしね、帰りますか。」

 行きのように自転車のカゴに彼女の荷物をいれ、

ゆっくり進んでいく。

 

「せんぱい」

「ん?」

「今日はありがとうございました」

「ん。いいよ別に。妹の誕プレ買えたし。」

 こいつのおかげでいいものが買えた。

ちょっと誕生日まで早いが、早めに準備できたことは良かった。

 

「今日のせんぱいは二十点ですね!」

「前回より十点上がってるな、ちなみに内訳は?」

「まず葉山先輩じゃないのでマイナス十点です」

「だから最初から無理難題なんだよなぁ」

 それなら葉山連れてこいよ。まったく。

「それから、言動諸々含めてマイナス四十点です」

「それはまぁ、妥当だな。」

「女の子にひょこひょこついてきちゃうあたり、

マイナス五十点です」

「ちょっとー。また0点ですか……?」

 

「でーも!」

 そういって彼女は先に進み、こちらにくるっと振り向く。

「プリクラ撮ってくれて、楽しかったので二十点あげますっ」

  いつものあざといスマイルでこちらを見る。

「それが素ならいいんだけどな……」

「嫌だな〜素に決まってるじゃないですかー?」

 これのどこが素なんだろうか。これが素だったらこいつ凄いぞ。

 

「まぁ俺も小町の誕プレ買えたしそれなりに楽しかったからな。

俺からも三十点やろう。」

「何この人上から……なんか腹立ちますね」

 いいながらも、一色は笑顔だった。

 なんだよ。素の方が可愛いじゃねえか。

 

「一応俺先輩だからね?」

「立場は私の方が上ですけどねー」

  生徒会長にさせたのは俺なんですけどね。

「あ、ここまででいいですよせんぱい」

「ん。了解。じゃあな。気をつけて帰れよ。」

「はいはーい!せんぱいもまた来週〜」

 そう彼女は駅の中へと消えていった。

 俺は彼女の姿が見えるまで、そこに立っていた。

 

×××'

 

「じゃあねゆきのん!また明日、ゆきのんちでね!」

「えぇ、美味しいお店を教えてくれてありがとう、由比ヶ浜さん。」

「うんん、いいの!ゆきのんといると楽しいしね!」

「そ、そう……。」

「あれ?あそこにいるの、ヒッキーといろはちゃんじゃない?」

「ほんとだわ。何か仲良さそうに話しているけど。」

「今日ヒッキーに部活ないよって平塚先生が言ったら

すぐ帰ったらしいけど……」

「一色さんと遊びに行っていたのね……」

「由比ヶ浜さん、そろそろ帰るわ。もう遅いことだし。」

「そ、そうだね!私も帰るよ!じゃあね、ゆきのん……」




長くなってしまったのでエピソードは2つ分けることにしました。
次回は八幡、いろはを取り巻く環境と、
結衣、雪乃の心情にご注目ください。
皆さん大好きっべー君も登場します!
では今日はこのあたりで筆を置かせて頂きます。

2月某日 埼玉の地でMAXコーヒーに浸りつつ 佐倉彩羽

投稿頻度なんですけどどれがいいですかね?

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