雪が溶け、細く繋がった紐は結ばれ、色彩豊かな春は来る。 作:佐倉彩羽
ついにあと今話含め2話まで完結まで来ました……。あと2回しか前書きを書かないことに寂しげな気持ちもある今日この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか。
さて、最終章です。
まぁ章っていっても多分1万文字にも満たないんですが。笑
最後までお付き合いしていただければ幸いです。
では、どうぞ。
あれから一週間経った。
小町の合格発表を後ろに控えた今日。
俺はいつも通り部室で紅茶を飲みつつ、文庫本に目を落としていた。
俺と由比ヶ浜、雪ノ下の関係は比較的良好である。
良好と言うよりは、かつてのような分裂が無かっただけで。
いつも通りの放課後が過ごしていた。
そろそろBrand new daysしちゃうかもしれない。
雪ノ下は家庭問題にケリをつけ、
雪ノ下さん、雪ノ下母との表面的な対立は落ち着いたらしい。
昨日、雪ノ下が母と共に俺の家に訪ねてきて、昨年の事故からわざわざご迷惑おかけしましたと頭を下げてきた時は衝撃だった。いや迷惑かけられてないし。特に謝らなくていいからね?と心の中で思いつつ、
そのまま雪ノ下母に連れられ高級料理店に連れていかれた。
雪ノ下母は姉の言う通り物凄く怖いが、顔立ちは娘達と似ておりとても美人な方なのは知っていたが、なんかここまで親切にされると逆にもう怖い。後ろに何が控えてるんだろう。言質取られてないか心配。
そんなせいか、、雪ノ下さんがかつてより訪れる回数が格段に増えた。
まぁ俺には一切関わってこなくなったので良しとする。それが良い悪い関係なく。普通に怖いもん、あの人。何考えてるか分からないし。
雪ノ下自身そこまで嫌がっていないので、俺たちの放課後に問題は無い。
はずだった。
最近、一色いろはの姿がない。
ここ一週間、やけに会うのが恥ずかしくなってしまったせいか、
まともに会話すらしていない。生徒会室前ですれ違っても、
「よう」
「あ、どうも」
くらいの挨拶を交わすくらいしか出来ていない。何俺思春期男子?
向こうもなにか感じとったのかなにか思うことがあるのか、
奉仕部の部室には訪れなくなった。
かつての俺たち奉仕部の三人とまでは行かないものの、
多少疎遠気味になっている。
生徒会の仕事で忙しいのか、雪ノ下さんが来るようになったのか、
あるいは俺と一緒にいるのが嫌になったのか分からないが、
うちの部室に来ることはかなり少なくなった。
今日は雪ノ下、由比ヶ浜の三人だ。
俺はいつもの文庫本を読み、雪ノ下は手元の雑誌を読み漁っている。
それを由比ヶ浜が横から覗き込んでいて、
なんとも百合百合している光景だ。なんちゃらタイムなんちゃらかよ。
紅茶の香りがほのかに匂い、教室全体を包み込む。
けれどそこにはなにか1ピースかけてしまったような、
空白感が否めない。
ふと、雪ノ下が口を開く。
「最近、一色さん来ないわね。なんかあったの?」
「せ、生徒会の仕事が忙しくなってきたんじゃないかな?
それかサッカー部とか!」
「……何かあったの」
そう俺の方を向いて、発言を促すように言う。
「別に、なんもねえよ」
「何も無かったら、一色さんは来なくなったりしないと思うけれど。
喧嘩でもしたの?」
「いや、してない」
「じゃあ戦争」
「いやそのやり取り前もやったから。別に、なんもねえよ」
そういやこいつ殲滅戦とか言い出したよな……。どうなってんの頭の中。もしかして『諸君、私は戦争が好きだ』みたいになっちゃってる?
すると、由比ヶ浜を見ればあわあわしながら何か小さな声で呟いている。
「じゃあ由比ヶ浜さん? 一色さんと喧嘩でもしたの?」
「いや喧嘩とかじゃなくて多分ヒッキーがいろはちゃんのこと意識しだしたからだと思うけど……」
最後の方が声が小さくなっていて、
隣にいた雪ノ下でさえよく聞こえなかったのか、雪ノ下は首を傾げている。
「比企谷くん? 意識? 何を言っているのかしら」
やはり由比ヶ浜結衣は嘘をつけない。
由比ヶ浜は俺に向かってなんか言えと目で合図するが、
その目を逸らして俺は手元の文庫本を読んでいた。
「ヒッキー」
「比企谷くん」
二人に呼ばれるが、俺はひたすら文庫本に目を落とす。
ただ内容は一切入ってこなくて、
ただその文字列を眺めているに過ぎない。
見なくてもわかる二人の視線が痛い! 痛いってホント!
― わたしがもし急にいなくなってしまったら清様、どうなさる?
その一文がふと、目に入った。
―わたしがもし急にいなくなってしまったら先輩、どうしますか
それが彼女の声で脳内再生された。
実にくだらない。そんな幻想や空想を持ってそれに対して怖気づいたり、どうしようと慌てふためいてはいけない。
けれど。
もし、彼女が居なくなるとするならば。
俺はどうするだろう。
そんな事をかんがえていると、もう既に日は沈み始めている。
ふと、部室の扉の奥に、人影が見えた。
その人影は扉に一歩近づくと、ガラガラッと勢いよく扉を開けた。
自然と三人の意識がそちらへ向かう。
そこには。
彼女がいた。
「いろはちゃん!久しぶり!最近来ないからどうしたかと思ったよ〜」
「お久しぶりです、結衣先輩。突然で申し訳ないですけど、
……せんぱい、借りていいですか」
「……ええ、時間と暇を持て余しているしいいんじゃないかしら」
「……うん、ヒッキー、行ってらっしゃい」
手持ちの文庫本を鞄にしまうと、
用意されていた紅茶を一気に飲み干し、湯呑みを置く。
この後何が待っているかなんて知らない。
けれど、すぐ終わらないのは分かった。
「ん、じゃあ、行ってくるわ。また明日な」
「行ってらっしゃい」
そう後ろから聞こえる声を手を挙げて応じ、
かつては小さく見えたその背中を、ゆっくりと追いかけた。
× × ×
「行っちゃったね」
「そうね」
「少しくらい休んでいけばいいのに」
「そうね。まだ夕暮れが綺麗な時間まで少しあるわ」
「そうでもしないと動かないからじゃない?ヘタレだし」
「それもそうね。わざわざ自分から動くなんて、大変ね。女性なら待つのが一般的なのに」
「まあ、ヒッキーだしね」
「そうね、比企谷くんだもの」
「ねぇ、由比ヶ浜さん」
「ん?どしたん?」
「本当に、あれで良かったの?」
「……うん」
「ゆきのんも、それでいいんでしょ?」
「私は……由比ヶ浜さんがそれでいいなら」
「……あたしはね、ゆきのんを応援するって決めたの。
あたしってずるいから。全部欲しくなっちゃうから。
けど、ゆきのんはヒッキーから離れることを決めたんだよね。
ヒッキーに頼りっきりにならないように、今度は助けられるように。
もう、あたしは泣かない。今度は二人を応援するの。
二人が上手くいくようにーって。
本当はね、あたし、だって……、そこに、いたかったけど……っ」
「由比ヶ浜さん……」
「うわわぁぁぁぁん……、ヒッキー……」
「やっぱり、あなたって、強い子ね……」
いかがだったでしょうか。
ここリテイク4回しました。マジで大変。もうガハマちゃんいい子すぎて泣ける。
是非最後以外にも、これまで立てておいた伏線をちょこっとずつ回収しているので、前話等含めてお読みいただければ幸いです。
さて、次回が最終回になる訳ですが……。
ここまで数ヶ月、投稿感覚が1週間に1-2本でやって来ましたが、もう完結してしまうとは……。はやいなぁ……。序盤とか見れば私の語彙力の欠如が見て取れますね。
次回予告は最終回!ようやくこのストーリーも終わりになります!初めての長編(?)ストーリーを完結できることが正直楽しみでしかありません!是非、最後までお付き合いしていただけると幸いです。
またこの物語を書くにあたって、「春の雪」(三島由紀夫 著)を参考にさせて頂きました。ありがとうございます。
では、次回でお会いしましょう。
5月某日、眠気と戦いつつ俺ガイル作品に触れて
佐倉彩羽
投稿頻度なんですけどどれがいいですかね?
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