雪が溶け、細く繋がった紐は結ばれ、色彩豊かな春は来る。   作:佐倉彩羽

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1週間ぶりくらいの更新ですかね、お久しぶりです。佐倉彩羽です。
今回はいろは回!やったね!!
何回かこのデート回を分けていきます。今回はその待ち合わせから。
待ち合わせってなんか憧れますよね……
ごめーん、待った? ううん、今来たとこ!っていう流れを見ているととても気分が悪くなります。では、本編へ!


ようやく、一色いろはは宣言する。

電話後は、ゆっくりと出かける準備をしていた。

家を出る頃にちらっと交通情報をスマホで確認してみると、

これから乗る路線については混雑も若干緩和されている。

少なくとも、これで待ち合わせ場所に辿り着けない

という心配はなくなった。

 

実際、関東の交通網は雪に対して本当に激弱なのだ。

ことに千葉県は県境に江戸川と利根川があるおかげで、

それらに架かる橋が不通になると、

陸の孤島どころかガチの孤島になってしまい、

『独立国家千葉』の樹立がされてしまう危険がある。

 

外に出ても、空模様は相変わらずで、

アスファルトにはうっすら下が降りたような雪が積もり始めている。

足が取られるほどの積雪では無いが、

シャーベット状になっているおかげで滑りやすくはある。

車輪と足跡で作られた轍を巡りながら、

バス停までの道をゆっくりと歩いた。

 

バスから電車に乗り換えてしばらくすると、目的地の千葉駅に着いた。

改札を出て集合場所へ着き、一色の姿を探すがどこにもいない。

現在の時刻は九時十五分。集合時刻より十五分早く到着した。

一色からの連絡はないかどうかスマホを見ると、

一通のメールが来ていることに気づいた。

 

差出人は『一色いろは』。昨日の電話後に、

今日連絡が来るだろうと思って追加しておいたのだ。

メールを開くと、そこには絵文字と顔文字が多用されて、

いかにもジョシコウセイらしい文章だった。

いや女子高生らしい文章って何? はちまん、しらない。

 

その文字列を要約すると、

どうやら一色の使う電車がまだ動いていないらしく、

出発出来ていないらしい。

少なくとも集合時刻より三十分以上はかかる、

とその文字列に書かれてあった。

 

三十分ならば千葉駅周辺なら簡単に潰せる。

この千葉駅周辺には、駅前から中央の繁華街へ続く通りには、

飲食店や娯楽施設、商業施設が立ち並ぶ

千葉のメインストリートともいえる部分である。

今日は雪の影響からか、少し人通りは少ないが、

それでも住宅地に比べれば人はかなりいる。

 

俺は一色に「着いたら連絡してくれ」とメッセージを送り、

近くのゲーセンへと入る。

いつもの筐体に座り、約三十分ほどプレイすることにした。

近くに財津だか材木松かなんだかの声が聞こえたが一切気にしない。

 

約四十分程だった頃だろうか。ポケットに振動がくる。

その振動の源を掴み、画面を見ると通話マークが出てきた。

相手は一色からだった。ゲーセンを出て、すぐに電話に出る。

 

「もしもし」

『すみません、お待たせしました、

今改札出るとこですけどどこですかー?』

 

少し焦ったような声が聞こえる。

遅れて申し訳ないという気持ちのみが込められてるんだろうと

勝手に思う。まあ声質は甘ったるいんだけど。

 

「いまさっきまでゲーセン行ってた。今抜けたからそっち向かう」

『了解でーす、早めに来てくださいね? 寒いですから』

「おうよ、じゃ」

 

手短に電話を済ませると、俺は早足で集合場所へと向かう。

ここら辺は俺がよく通う場所なのである程度の地理は把握している。

早足で歩を進めていると、

途中途中の地面が凍っている場所に足を滑らせてしまった。

 

「うわっ」

 

体勢を崩し、そのまま転んでしまった。

すぐに立ち上がり、貴重品などを落としていないか確認すると、

後ろから聞いたことがある声がした。

 

「あれー?比企谷?」

 

後ろを振り向くと、制服姿の見知った顔の女子が。折本かおりだ。

 

「なんだよ……」

「こんなとこで何転んでんの? ウケる」

「いやウケな……ウケるか」

 

 何納得しちゃってんの俺。ダメだろ、しっかりしろ、比企谷八幡。

でも知り合いが道端でコケてるのみたら面白いよな。

わからないことは無い。

 折本は笑いながら話を続ける。

 

「比企谷急いでたみたいだけどなんか用事?」

「まぁな、一色に呼ばれてるんだ」

 

 折本は物珍しめな顔でこちらを見て、

「へぇ〜、一色ちゃんが……」などと呟いている。

そして何か考えて、少し面白そうな顔をして話す。

 

「比企谷、ぶっちゃけ一色ちゃんのことどう思う?

あ、一色ちゃんには言わないからさ!」

「あざとい」

 

即答した。だってそうでしょ?あざといいろはす、

略してあざといろはす。あざはすの方がいいか?

 

「あざといか〜、ウケる」

「いやウケねえから」

 

折本はまた腹を抱えて笑い出す。

こいつってこんなにツボ浅いの……?

君サバサバ系女子じゃないの?

 

「で〜で〜? この後は一色ちゃんとデートですか〜?」

「いや違う、……多分。」

「だよね、ウケる。ま、楽しんできなよ〜」

 

折本は俺の横を通り過ぎると、そのままさっと行ってしまった。

何がしたかったんだ、あいつ……

こんなことで時間を食うのももったいない。

俺は足元に気をつけて、急いで一色のもとへ向かった。

 

 

---------------------------

 携帯から振動がする。

せんぱいかな? という淡い期待を込めて画面を見る。

すると、電話の主は意外な人だった。

 

「……もしもし」

『あ、一色ちゃん?私だけど』

「はい、折本さん、どうしたんですか?」

 

折本さんはおかしげに、そして楽しそうに話し始める。

 

『いやさぁ〜さっき比企谷が道でコケてるの見かけてさ〜

超ウケたから少し話してたのよ、

そしたらこの後一色ちゃんに呼ばれてるって聞いてさ』

 

この人は私とは同じ系列の人間だが、

向こうは気づいているかどうか分からない。

一応ここは"葉山先輩に一途な天然女子高生"一色いろはで答えよう。

 

「そうなんですか〜、それで、せんぱい何か言ってました?

全然来ないんですよ〜」

『ううん、特には。でさでさ、一色ちゃん』

 

 ちょっとさっきの明るいような、

はっちゃけた雰囲気からがらっと変わった。

何やら秘密事を話すみたいに。

 

 

『一色ちゃんってさ、ぶっちゃけ比企谷好きだよね?』

 

 

せんぱいのことが、好き。

この気持ちを好きというのかは分からない。

 

私にとってせんぱいはどんな人だろう。

 

ただの知り合いではない。

戸部先輩のようにただの使える先輩でもない。

それなりに優秀だし使いやすいけど。

私はせんぱいといた期間がそれほど長くない。

雪ノ下先輩や結衣先輩のように、

せんぱいと長い間苦楽を共にしてきた訳でもない。

 

なのに、なんでこんなにせんぱいにこだわるんだろう。

葉山先輩のように、すんごく運動神経がいい訳でもない。

葉山先輩のように、文理系どちらもできるほど頭がいい訳でもない。

葉山先輩のように、学年クラス関係なく友好関係が広いわけでもない。

 

 それなのに、なぜ。

 

私は葉山先輩が好きなはず。

カッコよくて運動が出来て勉強できるなんでも超人の。

一度振られたくらいじゃ諦められないと思っていた。

 

バレンタインのイベントも、

私達が葉山先輩にチョコレートを渡したいということから始まった。

 

でも、時が流れる中で私の中での違和感が生じたのは確かだ。

 

本当に葉山先輩が好きなのか。

 

生徒会長になったのも葉山先輩のサポートが欲しかったのもひとつだ。

けれど結局は私はほとんどの仕事をせんぱいに頼ってしまっている。

"好きなはず"の葉山先輩といることが出来る時間を、

せんぱいといる。

 

なんでこんなことしているんだろう。

重いと思われるから?それはそうかもしれないけど違うし……

 

 そう考えると、折本さんが電話口からまた話す。

 

「一色ちゃんってさー、葉山君狙ってたんじゃなかったっけ?

でも葉山君といるよりも、比企谷といる方が多くない?

だから諦めて比企谷にターゲット変えたのかなー

って思ったんだけど的外れかな?」

「せんぱいが奉仕部だからじゃないですかね?」

 

っていうかなんでこの人は私が葉山先輩好きって知ってるの、なんで?

女の裏社会? まさか書記ちゃん? 違うよねそうだと言ってください。

 

「いやーそんなことないと思うよ?

だってあと二人、同じ部員の子いるじゃん?

あの子達と比企谷付き合ってないって言ってたし!

あいつ、高校になってからちょっと変わってさー、

前までは喋り方キモいしキョドり方ウザかったんだけど、

高校に入ってあってから、なんか横にいても嫌な感じないんだよね〜

あ、別に好きとかじゃないよ?

中学と比べてだから、友達としてはアリかなって」

 

 

 ―あぁ、そうか。私が葉山先輩より、せんぱいと長くいた理由。

 

 

せんぱいのそばが、心地よかったから。

 

 

あのせんぱいは不器用だけど優しくて、

自分を犠牲にして人を変えちゃう。

上辺だけの友達しかいない、裏で悪口や陰口を言われて、

無理やり生徒会長にさせようとした人達を、見返してやろうと、

私のことを考えて、好都合な提案をしてくれた。

 

 私の周りにほとんどいない、自分の素を見せられる人。

 せんぱいのそばに居ると、わたしはわたしのままでいられる。

 わたしの裏も表も、嘘もホントもちゃんと傍で見ててくれた。

 

そんなせんぱいのことが—

 

 

「私、せんぱいが大好きです」

 

 

『……そっか。

  ……頑張ってね、一色ちゃん』

「はい、折本さん、頑張ります!」

『うん、じゃあね、楽しんで!』

 

 今日、伝えよう。

気持ちが決まってすぐだ。でも今伝えたい。

 そうしないとあの二人に取られちゃう。

 雪ノ下先輩、結衣先輩、早い者勝ちですからね!

 

 

 

 

 

……

……

「私も、ちゃんと伝えなきゃな」

 




いかがだったでしょうか。
ようやくいろはちゃんがご自分の気持ちに気づいたって感じです。俺ガイルのキャラクターはこうだから面白い。
というわけで次回予告です。いろはちゃんよろしくお願いします!
「はいはーい、次回は、先輩と私のデート回!はてさてどうなるのか、お楽しみに〜」
というわけでデート回③です。いろはちゃんの活躍を乞うご期待。
ではこの辺りで筆を置かせて頂きます。
3月某日、生活リズムの乱れに危惧しつつ。
佐倉彩羽

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