雪が溶け、細く繋がった紐は結ばれ、色彩豊かな春は来る。   作:佐倉彩羽

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こんばんは。佐倉彩羽です。
開幕私事なんですが、無事卒業いたしました。
卒業式が無事開催できてよかったですが、コロナの影響は凄いですね……。
はい、今回はいろはデート回。可愛い可愛い一色いろはちゃんに是非ご注目。
では、どうぞ。


もう既に、比企谷八幡は彼女に薫染されている。

俺と一色が待ち合わせた場所は、千葉駅でも有数のスポットである。

花の都 千葉のモニュメントのすぐそば、東口前だ。

 

一色が着いたと連絡があってから既に五分ほど経過している。

あいつ、ちょっと遅れたら、

せんぱい、おっそーい! って文句つけてきそうだよな。

最近の奉仕部の部室でも雪ノ下だけかと思ったら、

萌え袖で机をダンダン叩いてあざとく言ってるもん。八幡知ってる。

 

目的地の東口につくと、そこには中々の人が。

主に学生が多いが、スーツを着たサラリーマンやOL、

子連れの親も少なくない。

 

この千葉駅というのはJR千葉駅と京成千葉駅、

そして千葉モノレールの千葉駅がほぼ同じ位置に存在しているので

実に多くの人が集まる。

いやね、JR千葉だけでも充分大きいんだよ?

それに京成やモノレールもくっつけちゃうなんてさすが千葉。

そして千葉と名のつく駅がこの周辺だけでも数多く存在するため、

千葉ビギナーはちょっと迷うと思う。

 

一色は前のでーとやらなんやらの練習と同じような格好をして、

自分の携帯とにらめっこをしていた。どうやら、俺の連絡待ちだろうか。

そして時々手袋をつけた手をポケットに突っ込んでは、

さむ……と明らかに声に出てきそうな雰囲気である。

 

俺は後ろからゆっくりと彼女の元へ足を進め、

背中越しの彼女に向かって話しかける。

 

「おい」

 

すると一色の肩がぴくっと跳ね、くるっと後ろを振り向く。

 

「せんぱい、おっそーい! 何分待たせるんですかー?

女の子を待たせちゃダメなんですよ?」

「遅れてきたのお前だろ……。まぁ、すまん」

 

若干不機嫌っぽさを出しているも、

一色は普段よりも少し頬を朱に染めてこちらを向いている。

 

「まぁ、ちゃんと来てくれただけでもいいんですけど……、

では、せんぱい、レッツゴーです!」

 

そういうや否や、一色は俺を先導し、繁華街の方へ向かっていく。

ポケットに手を突っ込んで寒さに一度身震いして、

俺は彼女の横に追いつくよう、少し足を速めた。

 

先程まで降っていた雪は止んだものの、まだ冷たい風が吹く。

 

「一色、大丈夫か?寒くない?」

「正直めっちゃ寒いです。……特に、手」

 

手が寒いのか……。冬場の手足、やばいからなぁ………。

比較的晴れが続くこの関東地方でも冬場は寒い。

新潟とか行ったらもっと寒いんだろうな。やっぱ千葉最高!

俺はポケットからあるものを取りだし、一色に渡す。

 

「ほい、使え」

 

そうすると一色は超不満そうな顔でこちらを見る。

あれ、俺なんかした? なんもしてないよね?

 

「そこは、ほらって言って、

私の手をせんぱいのコートのポケットに突っ込んであっためてくれるとこですよ?

ポイント低いですよ? 私のポイント稼げませんよ?」

「いやいいから。大体見られたら恥ずかしいし見られなくても恥ずかしい」

 

 一色はため息をつくと、俺の腕に手を絡めてきた。

 

「……ならこれで我慢します、これなら暖かいです」

 

おいおいおいおいおい離れろあざとい可愛いいい匂い何この子!

ちょくちょく何か当たってるしなんなの?

ちなみにそこそこある。着痩せするタイプなんですね。

 

しかし、本当に少し暖かいのは事実だ。

どうせ目的地まではすぐ着くだろうし、

しばらくこのままでもいいか……と

思うと、先程までいたゲームセンター前を通った。

 

そこから出てきたのは、白い髪に巨大な体。

コートに指ぬき手袋をつけたあいつ。

財津だ。いや、材木松か?うん、どうでもいいや。とりあえず無視。

 

通り過ぎると、何やら後ろから声がする。誰だうるさいな。

 

「……お、おい、お主、まさか比企谷八幡……か?」

 

一色が俺の名前に反応し、ぐるっと後ろをむくと、

すぐ嫌な顔をして前を向く。

 

「せんぱい行きましょう」

「おう」

 

華麗なスルー! 流石いろはす! やるぅ!

 

「お、おい待てぇぇぇええええ!」

 

後ろからドタドタうるさい足跡と共に、奴は俺たちの正面に経つと、

 

「八幡、お主一体全体どういうことだ!?なぜ二人が一緒にいる?

 お主まさかデートか、デートだな? どういうことだ!」

 

うっわ材木座めんどくせえし鬱陶しい……。

超寒いから早く店の中行きたいんですけど、

ねえ一色さん、さっさと行きましょう?

と、腕をぐいっと前に動かすと、一色がこちらを見る。そして頷く。

 

「はい!

 今せんぱいとデート中なんで、邪魔しないでもらえますか〜?」

 

……いろはすそういうことじゃない。

うん。早く行こうの意味だったんだけどな……。

 

「ガハハハハ、であろう。お主がまともに……え、マジ?」

 

「当たり前じゃないですか〜?

 材……えーとせんぱいあの人の名前なんでしたっけ」

「えーとな、材木松……、いや財津だ。いや、うーん……」

「は、八幡……お主、相棒の名を忘れおって!

 お主のみ可愛い女子とデートしやがって!

許せん! なりたけ超ギタ三杯でもゆるせんぞ」

 

こいつの基準なりたけなんだ。

しかしなりたけとは分かっているな、材木座。

 

「知らん、じゃあな」

 

そういうと俺は一色と共に材木座の横を通り抜け、

さっさと進んでいく。

 

「は、八幡!まてえぇぇ……」

 

お前は幼児向けアニメの悪役かよなんなんだよめんどくさい。

とりあえず材木座ゾーンを抜け出せてほっとひと安心すると、

一色があるショッピングモールの前で立ち止まる。ここらしい。

 

「行きましょうか」

「そうだな」

 

中に入ると中は外と比べて暖かく、

空調がしっかりしている空間だった。

一色は案内板を見ながらうーんやんーやらぶつぶつ言っている

あいだに時間を見る。

 

今はおよそ10時半頃。小町も入試を頑張って受けている頃だ。

ただひたすらに神様に祈ることくらいしか俺には出来ない。

頑張れ、小町。と心の中で呟いていると、

一色の方は場所が決まったようだ。

 

「せんぱい、ここ行きましょう」

「……は?ここ女性服だぞ?俺男だよ?知ってる?」

「せんぱいに服選んで貰いたいんですー。さ、行きましょう」

 

そうやって進んでいくと、

入ったのにも未だに腕を組んでいることが恥ずかしくなる。

カップルというものは目立ちやすく、

手を繋いでいたり腕を組んでいたりと、結構わかりやすいものだ。

 

「一色、そろそろ離れてくれ、まじで恥ずかしくて死にそう」

「ダメです♡」

「えぇ……」

「……もう少しだけ、組んでください」

 

そういうとさらに腕を絡めてくる。

こいつまじでいい匂いする。シャンプー香水でも使ってるの?

 

少し歩くと目的の女性服ショップへ。

女子中高生が好きなような頭の悪そうなアイテムが置かれている。

前もこのような店に一色と来た記憶がある。 マリンピアのところだ。

あの時は小町の誕プレを買うために行ったが、今回は一色の服だ。

服のセンスがない俺にとっては難関ミッション。

 

店に入るなや否や、一色は冬物の服を見つけると、

うーんやんーなどと唸りながら、迷っている。

俺には色が違うくらいしかわからないんですがそれは……。

 

「せんぱい、どっちがいいですかねー?これとこれ」

 

一色が提示してきたのはピンク色の冬にしては露出が多い服。

もうひとつは黄色のフリフリしたあれがついてる服。

正直言うとフリフリがついてて色が違うしかわかりません。

知らない知らない僕は何も知らない。

 

「これ冬服なのに薄いし寒くないの?」

「は?」

 

 はい出ました素の「は? 」。軽く傷つくし怖いからやめて欲しい。

 

「これ春物ですけど……。冬物はもう買い揃えてるんで」

「あ、はいそうなんですか……」

「で、どっちがいいですかねー?

 せんぱいは露出が多い方が好きですか?」

 

そうですね胸元がまあまあ空いてますけど、

その服は由比ヶ浜さんの方が色々とサイズがあってますしいいんじゃないですか。

どこがサイズあってるかなんて言わないけど。うん。決して言わない。

 

「黄色だな」

「なんでですかー?」

「一色は黄色っていうイメージがあるしな、

 なんかよくわかんないけど俺が好きな方にした。」

「はぁそうですか、ちょっと試着してきます」

 

一色はサッと試着室に入って着替えを行っている。

これあれだろ、青春ラブコメに出てくる着替えたと思ったら、

着替え途中でカーテン開けちゃって見えちゃうやつだろ。

しかし俺はそんなラブコメトリックには引っかからない。

一色が開けてくれることを祈る。

 

すると、カーテンが開く音がした。

出てきたのは腕を後ろで組み、

俺が選んだ黄色の服にミニスカート姿の一色。

元々スタイルはいいが、こうやってミニスカートをはくと脚の美しさがより顕著に現れる。

 お腹周りは程よくくびれ、一見慎ましげだがはっきりと強調する胸元。

 

 こいつ可愛いじゃん、がらになく思った。

 

「……どうですかね」

「いいんじゃねえの、その、似合ってるよ」

 

 俺が柄になくそう言うとと、一色は頬を朱に染めて、うんうんと頷くと、

 

「そうですか、じゃあ買います!」

 

にっこり笑ったその笑顔は、

一色いろはという少女の、普段はあざといと感じるその笑顔も、

可愛いと、感じている俺がいた。大分毒されてきてるな。

 

ササッと着替え終わった一色と共にレジに並ぶ。

一色は何やら不思議そうな顔をしている。

 

「せんぱい外で待っててもいいんですよ?」

「いや、いい」

「……そうですか」

 

 お互い無言のまま、俺たちの番が来た。

レジの人がスキャンし、一色が財布を出そうとする手を止める。

 

「はい、お願いします」

 

俺の財布から代金をほい、とだす。

 

「え、ちょっ」

「ちょうど頂きますね……ありがとうございましたー、

 またお越しくださいませ」

 

 店から出ると、一色が少し困惑したような、困った表情で見る。

 

「……いいんですか?」

「……ああ。その……似合ってたし」

「あ、ありがとうございます」

 

ちょこんとお辞儀して、にっこりと笑った。

そう笑った彼女の顔は少女のように可愛く、そして綺麗だった。

 

―そうやって誤魔化さない人に受け取って貰えたら、

 ちょっと嬉しいもんだけどね

 

 あぁ、分かったよ、小町。確かに嬉しいな、

 誤魔化さない人に受け取って貰えたら。




いかがだったでしょうか。
八幡が素直すぎたかなぁ、と思っていますがどう思ったかなど、是非感想をくださると嬉しいです。
というわけで次回予告。戸塚くんにお願いします。
「はい、えーっと……、次回は、八幡と一色さんのデート回の続き……って、八幡たちデートしてるの……!?」
はい、いろはデート回です。お楽しみに。
ちなみに今後の予定ですが、1週間に1-2本、このシリーズを投稿できたらな、と考えています。
もう全て完成はしていて、新作も書き始めています。
最後までごゆっくりお付き合い下さい。
では、このあたりで、筆を置かせて頂きます。
3月某日、卒業アルバムを覗いて学校生活の思い出を思い出しながら。
佐倉彩羽

投稿頻度なんですけどどれがいいですかね?

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