雪が溶け、細く繋がった紐は結ばれ、色彩豊かな春は来る。   作:佐倉彩羽

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こんばんは、佐倉彩羽です。
私事なんですが、昨日ようやく冴えない彼女の育てかたfineを鑑賞しました。地元でやっててよかった……。これまで見てきた映画で一番泣きました。見てない人は上映中の映画館探して是非ご覧ください(露骨な宣伝)
さて、今回はいろはデート回の続編です。
二人でご飯を食べることになった八幡たち。
どうぞお楽しみ下さい!


ふと、比企谷八幡は自分の変化に気づく。

そのままショッピングモール内をブラブラしていると、

そろそろお昼もいい時間だ。

 

「せんぱい、お腹すきました」

「おう、どうする」

「どこでもいいですよ? あ、やっぱりラーメン屋とサイゼはなしで」

 

……うわぁ。為す術もない。

もう何もわからん。

とりあえずパスタとかアボカドとか進めとけばいいだろ……って、

前も同じようなことを彼女に言った気がする。

 

「今日は一色が食いたいもん選べ。前回俺が食べたいやつだったし」

「今日のせんぱい、めっちゃ甘々ですね。糖尿病になりそう」

「その例え分かりやすいけどもっと別の表現なかった一色さん?」

「ないですね、じゃあ行きますか」

「はいはい」

 

すると、また一色が俺の腕を組んでくる。

こいつも今日充分甘いぞ、俺に。

まぁ、たまにはこういう甘いのも悪くはないな。

目的地のカフェはショッピングモールからすぐ近く。

アボカドとかパスタとかだと思ったが思ったより普通のカフェだ。

俺はサッとメニューを決め、一色に声をかける。

 

「決まったか?」

「はい、じゃあ押しますね」

 

さっとメニューを注文し、一息つき、

窓を眺めていると見た事のある人影が。

 

「と、ととと戸塚!? 」

 

つい大きな声を上げてしまった。いや、戸塚いたからね?

天使がいたからね?

 

「戸塚先輩ですかー?あ、ほんとだ!」

 

 しかし、戸塚は俺たちの方を振り向きもせず、そのまま駅の方へ。

 

「あ……」

 

まぁ戸塚も用事あると思うし急いでいるなら仕方ない。

決してこっちに気づかなかったんじゃなくて、

一瞬しか同じひとときを味わえないから、

その一瞬しかない時間よりもゼロで、

また別の機会に長くじっくり話した方がいいしな、うん。

戸塚は俺のことを無視したわけじゃないし、

気づかなかったわけじゃないよな……。な……。

 

「せんぱい、涙出てますよ……」

「う、うぅ……」

「そんなに戸塚先輩に気づかれなかったの悲しいんですか……

 というかー、女の子とデートしているのに、

 他の人のこと話しちゃダメですよー?」

「戸塚は男だ。だからセーフ」

「ダメです」

「はい……。ていうかデートってなんだよ」

「そう言えばなんですけど」

 

一色がぽんと話題を変える。

都合が悪いことは聞いてなかったやつですね。知ってる。

 

「せんぱいの妹さん、そろそろ終わりますね」

「あぁ……。きっと大丈夫さ。小町なら」

「絶対的信頼ですね」

 

そりゃあそうだろう。だってこまちだもん。

世界の妹であり日本人の心が落ちたら一体誰が受かるの?

戸塚? 戸塚しかいなくね?

 

そんなかんやで料理が届く。

一色が勧めるところであるため、味はそこそこ期待できる。

それらを一色は幸せそうに眺めると、

パシャパシャと写真を撮り始める。

 

……これ前回の経験からするにしばらく食べれないやつですよね、

分かります。

前回同様に自分のだけではなく、俺の頼んだものまでも撮影している。

写真を撮り終えて満足したのか、

構えていた携帯を下ろすと、今度はぱっと手を挙げた。

 

「あ、すみませーん、カメラお願いしてもいいですか?」

 

一色が店員に声をかける。その男性店員は若干二十歳ぐらいだろうか。

その一色から携帯を恭しく受け取る。まだ撮るのかよこいつ、

スプーンを手に取ったら、その手をペちペち叩かれる。

見れば一色はこちらの向かい合っていたはずの椅子から、

俺の横にちょこんと座り、俺の膝をぺちぺちと叩き、

 

「はい、せんぱい顔出して、ピースですピース」

「やだよ。別に俺写んなくてもいいだろ。」

「いいから早くです」

 

一色はこちらを向きもせず、口早に言う。

どうやらキメ顔をキープできる時間はそこまで長くないらしい。

 

「あの、お客様……」

 

 店員さんが困ったような微笑みを向けてくる。

どうしましょう……と問いかけてくる視線は、

困惑だけでなく圧力も感じられた。前回と同じじゃねえかよ。

 

「せんぱい早くしてください〜」

 

一色に急かされ、仕方なく皿をずらし、

一色と被らないようにして顔を出す。

 

「では、行きますよ!」

 

そして、二、三度シャッターを切った。

 

「ありがとうございます!」

 

そうお礼を言って、一色が店員さんから携帯を受け取るのを、

深々ソファに沈み込みながら見る。

 

たかたが写真取るだけでこんなに疲れるとは……。

写真撮られると魂抜かれるっていうのも、

あながち嘘じゃないかもしれない。

 

ため息をつくと、コーヒーカップなら立ち上る湯気がふわりと消える。

冷めないうちにいただきたい。

 

「……もう食べていいのか」

「あ、はい。どうぞ」

携帯でさっき撮った写真を確認しながら、一色が軽い調子で答える。

その写真、俺の顔赤くなってそうでやだなぁと思いつつ、

注文した料理をいただく。

 

……うめえじゃねえか。

 

「あ、せんぱい、この後どうします?」

「え、決めてないの?」

「まぁ、二人で決めるのもいいかなーと」

「俺は別に行きたいとこないしな。どこがいい?」

 

 俺がそう尋ねると、一色は目をぱちくりさせている。

 

「……せんぱいって意外と気を使えるんですね」

「はぁ?ばっかお前めちゃくちゃ使えるよ。

 気ぃ使ってるから誰にも迷惑かけないように

 静かに隅っこにいるんだろうが」

 

話しかけたりしないし、並んで歩かずに一歩後ろ歩くし、

誰かの予定を邪魔しないように誰も誘わないし。

気遣いの達人すぎて繰気弾くらいなら今すぐ撃てるレベル。

 

……だったのだが、俺は今日は一色の横に並んで歩き、

明日も由比ヶ浜を誘っている。

 

俺、だいぶ変わったな。いつからこんなになっちまったんだろう。

別に今の俺が嫌いなわけじゃないが、ふとそんなことを思う。

 

「……やっぱせんぱいはせんぱいですね」

「当たり前だろ、人はそう簡単に変わらないさ」

「じゃあ私からリクエストしていいですかー?」

「おう、別にいいけど」

 

 

 

「せんぱいの家、いきたいです」




いかがだったでしょうか。
いろはちゃんのリクエスト、あんなの言われたらドキッとしますね……。書いている中で八幡の変化があまりにも露骨すぎると思いましたが、どう思ったか教えていただけると嬉しいです。
では、次回予告を。小町ちゃんにやってもらいます。
「はいはーい! 受験終わりの小町です。次回はお兄ちゃんといろは先輩のお家デートです! ふふふ、既成事実既成事実っ!」
という訳で、八幡といろはのお家デート、お楽しみください。
ではこの辺で筆を置かせていただきます。
佐倉彩羽

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