ソードアート・オンライン - トワイライトブレイズ -   作:弥勒雷電

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第12話『隠された秘密』

アインクラッド42層 サバナの町

 

街についたのは太陽がちょうど西に傾き始めた頃であった。入口から真っ直ぐに道を進み商店街に入る。リズは緊張した面持ちで隣を歩いている。

 

「そんな緊張するなよ」

 

リズは強張った顔を俺に向け頷く。その様子が妙におかしく見て思わず笑い声が出てしまう。刹那リズの鉄拳が鳩尾に飛んできたのは言うまでもない。

 

「あたし、ヘルブレッタさんは何かを知っていると思う」

 

リズの言葉に俺は逡巡し、そして頷く。今まで疑問に思ったことはなかった。ヘルブレッタさんからは俺たちはSAOが始まった時からの関係でとある事故で俺が昏睡状態になった。それであの日目覚めたと聞かされていた。

 

だが、違う。俺にはれっきとした黄昏の茶会という居場所があった。タケルやユキマサ、そしてユリ…

 

唯一無二の仲間とギルドを組んでいた。その事を思い出したからにはヘルブレッタさんの事はもう信用できない。彼は俺に真実を打ち明ける義務がある。

 

俺たちは商店街を抜けて居住区の広がるエリアに出る。とは言ってもここにプレーヤーはあまり住んでいない。何しろエリアの中でもとあるクエストの達成のためだけに立ちよる街だ。住むメリットなんてどこにもない。

 

そうこうしている間に目的の場所に到着した。

 

 

————————-

 

 

「こんにちわ?リズです。ヘルブレッタさんいらっしゃいますか?」

 

あたしは扉をトントンと叩くと中にいるだろうヘルブレッタさんに声をかけた。しかしいくら待っても返事がない。何度か扉を叩くもなしのつぶてだった。

 

後ろに控えるラズエルを見る。彼も首を傾げている。彼自身、ヘルブレッタさんは大抵この時間は家にいるとの事だった。早朝から山へ資源採取に行き、昼間は家て調合の研究と店番、夕方には薬の歩き売りに出るが夜には帰ってくる。

 

それが彼の行動パターンらしい。

 

あたしは徐に扉のノブに手をかけて回してみた。ガチャリという音を鳴らして扉が開く。すると背後からラズエルがドアノブを掴みゆっくりと扉を開けていく。

 

そしてあたしとラズエルは家の中へと足を踏み入れた。

 

「珍しい。ヘルブレッタさんがこの時間に家を空けるなんて。しかも鍵もかけずに」

 

一階の道具屋兼薬屋のカウンターに腰かけ、ラズエルが呟く。二階も一通り見て回ったが人のいる気配はなかった。

 

「あたしちょっと奥見てみる」

 

あと一つだけまだ見てない部屋がある。それはこのカウンターの奥にある部屋。ラズエル曰くヘルブレッタさんの研究室らしい。

 

「おい。勝手に入ったら怒られるで」

 

ラズエルの指摘にもリズは舌を出して応戦する。

 

「だって後はこの部屋だけでしょ?それに何か手がかりがあるかもしれない」

 

あたしはラズエルの制止を振り切り奥の部屋のドアノブに手をかけた。ヒヤリとした感覚が嫌な予感を覚えさせる。だが、私はドアノブを回し扉を開き、中に入った。

 

 

—————————-

 

 

あれだけ言ったのに本当に入りやがった。前にあの部屋に入ろうとした時、普段は温厚無口なヘルブレッタさんが声を荒げて怒り狂ったのを思い出す。

 

それからあの部屋には近づかないようしていたが、よくよく考えるとあそこまで取り乱すのは確かに怪しい。

 

ここには二度と戻ってくる事はないだろうし、まぁ確かに後はここしか手がかりがないのは確かだ。

 

俺は椅子から立ち上がるとリズの後を追った。

 

「なんかあった?」

 

俺が部屋に入った時、リズは何か分厚い本ようなものを読んでいた。

 

「あ、ラズエル、ちょっとこれ…」

 

リズが神妙な面持ちでこちらを見る。その様子だと何か手がかりがあったのだろう。俺はリズの近くにより、彼女が見ている本を覗き込んだ。

 

がしかしその時、店の扉が開く音がした。

思わず目を合わせる俺とリズ。

 

「早く本を元に戻せ!」

 

俺はそう言いつつ辺りを見回す。そしてヘルブレッタがよく薬草を入れている人が1人入れそうな箱を開ける。

 

中にはなにも入ってない。

 

「リズこっち」

 

俺はリズを手招きすると中に入るように促す。最初は嫌がった彼女だが、状況が状況だけに渋々従って中に入る。

 

これでひとまずリズは大丈夫だ。

 

俺は他に隠れる場所がないかを探す。だが、刹那この部屋のドアノブがガチャリと音を立てるのが聞こえる。

 

思わず俺は息を飲んだ。

 

 

—————————

 

 

く、苦しい…

 

人ひとりなら充分に入れるだろう箱の中であたしは圧迫感を感じている。それは紛れもなくこの度のパートナーのせいである。一度閉じれた蓋が開き、ラズエルが無理矢理体をねじ込んで来たのだ。

 

間一髪のところで彼はヘルブレッタさんに見つからずに済んだ。彼が箱に入り、蓋を閉めた時、扉が開く音が聞こえた。

 

「ちょっと引っ付きすぎ。ハラスメント警告が出るわよ」

 

あたしはこの圧迫感の主であるラズエルに悪態をつく。確かにこの密着状態ではハラスメント警告が出ないことが不思議だ。

 

「牢獄送りだけは勘弁」

 

ラズエルの返答にそんな事するわけないでしょと心の中で呟く。ここまで男性と密着する事なんてこの世界にいればほとんどない。あたしは心臓の鼓動が早くなるを感じ、ラズエルにそれが伝わらないかだけが心配だった。

 

「それで何の用だ?」

 

その時、あたし達がここにはいる事を知らないヘルブレッタさんの声が聞こえる。するとラズエルの身体が少しだけ動いた。あたしはその刹那、更に体温が上がるのを感じる。

 

「1人じゃない?」

 

ラズエルの言葉に私も意識を外に集中してみる。確かにヘルブレッタさん以外にも誰かがいるようである。しかしすぐにあたしの集中力は瓦解する。そして私はその諸悪の根源を力一杯つねった。

 

そう。彼がゴソゴソと動いた時から彼の肘があたしの胸に当たっているのだ。ラズエルは一瞬息を飲むとその状況に気がついたようですぐに態勢を変えた。

 

 

————————-

 

 

完全なる不可抗力だった。

 

まさかリズの胸に肘が当たっていたなんて気がつかなかった。体温がかっと暑くなり、俺は外の意識に集中する。今までリズを女の子として意識をした事はなかったが、流石にこの状況はやばい。

 

「黙ってないでなんとか言え」

 

刹那、ヘルブレッタさんの声で俺は正気を取り戻した。正直助かったと胸を撫で下ろす。

 

「オマエイバショシッテイル」

 

その声を聞いた時、俺の中で雷が走った。この気味の悪い声、忘れる訳がない。あの展望台で俺に神経毒を見舞ったフードコートの野郎。

 

「あいつが勝手に出て行ってからは何も知らない。興味もない」

 

ヘルブレッタさんのその言葉に俺は違和感を持った。この2人初対面とはどうも思えない。

 

「アイツハオレタチニヒツヨウナオトコダ。ソレハワカッテイルダロウ。イバショヲシッテイルナラハイテモラオウ」

 

男の声に俺は更に困惑する。

こいつは俺のなにを知っているんだろう。正直分からない。皆目見当がつかない。

 

「知らないと言ったら知らない。それにお前は何か勘違いしてないか?俺とあいつはそんな関係じゃない。事実を言おうか?あいつは勝手に出て行った。だから俺はもう何も知らない。分かったら帰ってくれ」

 

ヘルブレッタさんがそう言うとガサゴソと争い合う音が聞こえた。俺はそのまま飛び出したい衝動を抑える。

 

「フン、ムヤミニオマエトアラソウキハナイ。ダガ、サクセンハワカッテイルナ?ワレワレノ メザストトコロハ、アノカタノイシヲツグコト」

 

あの方の意思?

 

「分かってるよ。バルバト。俺もそれには賛成だ。だから今まで協力してきた」

 

衝撃的だった。やはりヘルブレッタさんとこいつらは繋がっていたのか。

 

「ナラ、ワカッテイルダロウ。オレタチニハ、アノオトコガヒツヨウダ。ヨイヘンジヲキタイシテイル」

 

バルバトとヘルブレッタさんが呼んだ男がそう言うと気配が消えた。転移結晶でも使ったのだろうか?1人残されたヘルブレッタさんに色々聞きたかったが、今顔を出す事は何の何よりもまずい。

 

「あーくそう!!」

 

ヘルブレッタさんはそう叫ぶとガシャンと何かが割れる音、ポリゴンが四散する音が聞こえる。おそらく机の上に置いてあった花瓶だろう。

 

ヘルブレッタさんはそのまま部屋を後にする。そして玄関のドアが開かれ閉じる音がした。

 

俺はリズの方を見る。リズは少し紅潮した顔に困惑の色を浮かべている。表情が忙しいやつだと正直思う。俺は少しだけ蓋を持ち上げると部屋の中の様子を見た。外も含めてだれの気配も感じない。

 

「よし、出よう」

 

俺はそうリズに告げると蓋を開けて外に飛び出す。

 

「ほんっと男ってデリカシーもないんだから」

 

続けて出てきたリズのその言葉に俺は首をかしげる。その様子がリズの神経を逆撫でさせたのかプイッと横を向いてしまった。

 

「と、とりあえず長居は無用やな。一旦出よう」

 

俺は神がかり的な不機嫌さ、身体いっぱいに表現しているリズに恐る恐るそう告げた。

 

 

—第11話『隠された秘密』 完

 

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